2014年12月24日水曜日

Hector McDonnell "Irish Round Towers" (Wooden Books Gift Book)

ヨーロッパにはやたら塔があるけど、アイルランドには特に円柱の塔が多いらしく、アイルランドに散在する円柱のガイドブック。実際には、アイルランド人以外はあまり知らないようだ。ほとんどが見張り台とか時計台とかそんなことらしい。日本語訳もあり。

A good guidebook to Ireland.

Wooden Books (2005/6/1)
ISBN-13: 978-1904263319

2014年12月4日木曜日

Scott Adams "Dilbert 2015 Day-to-Day Calendar"

来年の机上カレンダーもDilbertで。使い始めて何年になるのか忘れたけど、十数年くらい使っているのかもしれない・・・。Dilbert自体は別に日替わりでWebで見れるわけだけど、机の上にあるとWebにはあまりアクセスしなくなった。Scott Adamsは最近何か本を書いているのかと思ったら、"How to Fail at Almost Everything and Still Win Big"とかいう自伝じみたものを出しているようだ。この作者、マンガを読んでいる限りは全く気が付かないが、実は典型的なアメリカン自己啓発系みたいな考え方をするところがあり、あんまり裏側を知りたくないような気もする。"God's Debris"も同じような理由で読んでいない。以前の記事で紹介したけど、単なるマンガのcompilationじゃなくて、作者の考えが活字で表明されている本として、"The Dilbert Principle"と"The Dilbert Future"と"The Joy of Work"と"Dilbert and the Way of the Weasel"の四冊は間違いのないところだが、マジな話なら、作者のblogでも読んでいればいいわけだしな・・・。

My yearly purchase. I do not remember , but for more than ten years?

Andrews McMeel Publishing; Pag版 (2014/7/8)
ISBN-13: 978-1449451509

2014年11月30日日曜日

Jeff Kinney "Diary of a Wimpy Kid #9: The Long Haul"

予約買いしたものの時間がなくて読むのが遅くなった。毎度確実に面白いシリーズで、とにかく日本語訳を読むより原文を読むことを推奨する。普通にギャグマンガ読むより、全然笑える。

今回は車に乗って家族旅行ということで、途中で色々な大惨事が起こる。今までで一番ドタバタが酷く、ちとやり過ぎな気もした。最後のほうはほとんど犯罪レベルというかリアルに深刻なことになり、笑っていられるレベルを越えている気もするが、この辺りは個人差もあるんだろう。こういうのは振り幅がないとダメだし。

このシリーズについては、日本語訳もずっと出ているし、児童書として推奨もされているんだろうけど、そういう種類の本ではない気もする。どっちかというと"The Simpsons"に近く、保守層から批判されそうなものだ。一貫して教育というものに対してシニカルだし、特に今回は犯罪性の点から文句を言う親が出かねない。まあ、わたしとしては、面白いから、ずっと愛読し続けるか・・・。

Hysterical, Cynical, never disappointing.

Harry N. Abrams (2014/11/4)
ISBN-13: 978-1419711893

2014年11月19日水曜日

Dan Saffer "Microinteractions: Full-Color Edition: Designing With Details"

ユーザインターフェースのデザインについて、わりと包括的な解説書。といっても、こういうのは特に体系性や網羅性はないもので、様々なアイデアと部品をなんとなく並べることになるけど、わりとしっかり語っている印象がある。翻訳もなかなか良さげではある。

This kind of book can never be complete nor systematic. That said, this book seems to succeed to some extent. At this point, this is the best book of this kind.

Oreilly & Associates Inc; Full Color ed(2013/11/4)
ISBN-13: 978-1491945926

2014年11月10日月曜日

McGraw-Hill Education "Beginner's German Reader"

超初歩的なドイツ語のリーダー。過去形すらほとんど出ていなかったような。ちょっとした文章と質問がついている。解答はないけど、どうでもいいだろう。イラストが多いので、分からない単語も推測できる。巻末には語彙も収録されているが、完全ではないので、辞書はあったほうが良い。初学者には良いんでは。そんなに面白くはないがすぐに読み終わるし。

Ein Lesebuch fuer Anfaenger.

Glencoe/McGraw-Hill; 1版 (1988/1/1)
ISBN-13: 978-0844221700

2014年11月9日日曜日

David M. Gwynn "The Roman Republic: A Very Short Introduction"

ローマの出現(トロイアの滅亡とかアエネイアースくらい)から共和制の終焉(カエサルがどうとか)くらいまでの通史。"Roman Empire"に比べると、普通の標準的な通史と言えるだろう。しかしまあ、特にカルタゴと西方でのローマの軍事行動を見ていると、まさしく暴力の組織的な使用方法に秀でていたのがローマの栄光なわけで、成功する国家というものはこういうことかと思う。その上で文化とか芸術もあるわけで・・・。

A standard history of republican Rome.

Oxford Univ Pr(2012/10/25)
ISBN-13: 978-0199595112

2014年10月22日水曜日

S. A. Smith "The Russian Revolution: A Very Short Introduction"

1920年代までのロシア革命の概説。政治だけでなく、経済社会文化面でのボルシェビキの政策と人々の暮らしも詳しい。色々あって惨憺たる歴史だ。しかし、彼らが何を目指して、何を間違って、何に成功したのか学ぶべきだろう。第一次大戦でボコボコにされた後進専制君主国では、他にどんな選択肢があったのかもよく分からないが・・・。合わせて読みたい"The Soviet Union"と"Russian History"。

だいたい団塊の世代は左翼だし、わたしたちもコルホーズとかソホーズとかがまるで優れた制度であるかのように教えられてきた気がするが、もっと上の世代は、少なくとも庶民レベルでは反共であるように思う。というのも、我々がソ連の実情をリアルタイムで知っていたように、彼らもロシア革命の結果をある程度肌で知っていたからなんだろう。おおざっぱには「統治されているのに不満を持った下々の労働者が革命を起こして自分たちで統治しようと試みたが、なにぶん下々の者は資本家たちのように大局的見地に立てないので自滅した。資本家も労働者もそれぞれの役割があるのだから、それぞれの役割を果たすことに専念せよ」みたいな話で、正直なところ、この本を読んでいると、この意見に同意するところもある。日本でも「お前は額に汗して働く労働者か」ということで、人格を判定する風があったらしいが、ソ連は国家レベルでそれをやっていたのであり、実にゾッとする。少し金持ちな風を見せると近所の人にチクられて強制収容所送りなんて期間が何十年もあったわけで、政治というのは恐ろしいものだ。

というのがわたしの感想だが、人それぞれ様々な教訓を得るだろう。革命をどう考えるにしても、色々考えることの多い本ではあった。今時、共産主義革命を起こそうなんてムキも少ないし、そろそろ冷静に社会主義革命の何が良くて何が悪かったのか、考え直しても良いころだ。

An excellent account of the revolution. There are few people trying to cause a socialist revolution, so now we can assess the socialism in more balanced ways.

Oxford Univ Pr(2002/5/16)
ISBN-13: 978-0192853950

2014年10月4日土曜日

International Chamber of Commerce "Incoterms 2010: ICC Rules for the Use of Domestic and International Trade Terms"

Incotermsと言っても普通の人は何のことか知らないと思うが、International Commercial Terms国際取引条件の略で、貿易の際の各種条件を規格化したものである。これを利用してたとえば"CIF Yokohama"と言えば、「輸出者が商品を輸出港で運送人に引き渡した時点で輸出者の責任は終わるが輸送費と保険料は輸出者モチで輸入港横浜での通関とかもろもろは輸入者がすること」等々という意味になる。まあ、特に貿易と関係していなくても、海外から届いた荷物に"DAT Narita"だの"FOB New York"だのというラベルがついているのを見たことのある人はいるだろう。

というわけで、貿易に関わる人は事務所に置いておくべき本で、できれば通読しておくべきだろう。わたしはというと、仕事では実際には国際運送業者に丸投げということが多いが、貿易実務検定を取ろうと思ったので、一通り目を通している。いわゆる貿易実務のマニュアルみたいな本は日本語でもいくらでもあるし、Incotermsに言及していない本はありえないが、大して分厚いわけでもないので、一度原文を見ておくべきだろう。素人でもなかなか面白いもので、貿易実務を垣間見ることができる。

A must-have for traders.

ICC Publishing S.A. (2010/11/1)
ISBN-13: 978-9284200801

2014年9月24日水曜日

Lawrence M. Principe "The Scientific Revolution: A Very Short Introduction"

15世紀前後に起こった科学革命の歴史的な記述。つまり、科学革命の理論とかを提示するというよりは、近代科学の始まりの叙述である。キリスト教が科学を抑圧したとかいうような俗説は排除しているので、安心して読める。わたし個人としては、知識として特に新しい話はなかったが、この分野は初めてという人にはお勧めできる。

A basic description of the scientific revolution. Free from prevalent beliefs. Recommendable for novices in this area.

Oxford University Press (2011/5/19)
978-0199567416

2014年9月12日金曜日

Randall Munroe "What If: Serious Scientific Answers to Absurd Hypothetical Questions"

予約買いで期待を裏切られず、一気読みした一冊。まだAmazon.co.jpではあまり売れていないようだが、.comのほうでは既に大絶賛されている。コアなファンのせいで過大評価されている気がしなくもないが、わたしも相当なファンなので判定できない。著者のサイトによれば、日本語訳は早川書房から出るらしい。余程下手を打たない限り日本語訳でも売れると思うが、出版時期が不明なようだ。普段からxkcdを読んでいるファンであれば、"xkcd volume0"は買わなくても、この本は買って損はない。
xkcdを知らない人は単にサイトを見てもらったほうが早いが、元NASAのロボット技師が週に数本短いマンガを描いているもので、タダで読めるから、数本読めばテイストが分かるだろう。かなり理系度が高めではある。
この本にも結構な頻度でマンガが挟まれるが、基本的には文字の本で、読者から寄せられたムチャな仮定上の質問にバカ正直に科学的に考えて答えていく形をとっている。中には面白いものやそれほどでもないものが含まれるが、退屈はしない。たとえば:
  • 野球の投手が光速の90%で投球すると何が起こるか。
  • 中性子星の密度の弾丸が地球上にあったら何が起こるか。
  • 大英帝国にはいつから日が沈んでいないのか。
  • 紙のWikipediaを維持するには何台プリンタが必要か。
  • 雨が雨粒ではなく一滴で全部降ってきたら何が起こるか。

あらためて見ると普通の質問も混ざっているが、一々真剣に科学的に答えていく。"The Physics of Superheroes"みたいに教育目的で書かれているわけではなく、一般に売るにはやや専門的過ぎる感じもあるので、日本語訳にはかなり訳注が付くのかもしれない。早川書房というのは妥当な線だろう・・・。ただ、SFファンにこれを限定するのは惜しい。現にわたしもSFファンじゃないし。迷ったら買いの本だと思う。続編が出るなら当然予約するつもり。
At the time of writing this article, this book has already gained huge lauds around the world. I have nothing to say, except for that I would like to pre-order a Book II.
John Murray Publishers Ltd (2014/9/4)
ISBN-13: 978-1848549579

2014年9月2日火曜日

Martin Luck "Hormones: A Very Short Introduction"

日本語で言うと「内分泌学」とか言うのだろうか。最初に概要と歴史、最後に今後の展開がある以外は、各系統のケーススタディ。生殖・血圧尿関係・骨カルシウムの代謝・脂肪食欲関係・甲状腺ホルモンの作用・サーカディアンリズム関係。わりと淡々と説明している感じだが、非常に面白い。というのも、普通の人が考えているよりホルモンの生成・作用が遥かに複雑だからだ。いわゆる「心」というものは神経によって構成される電気回路を中心に考える傾向があるが、実際には神経と密接な関係のある化学物質によって気分感情が影響を受けるというか、むしろそっちのほうが心と考えるべきなのかもしれない。全身の細胞は神経によって作用に影響を受ける部分もあるけど、ホルモンの影響のほうが遥かに大きくて複雑なのであり、感銘を受ける。

それはそれとして、特にOxford Very Short Introductionsを読んでいると、つくづく日本の新書は知的レベルが落ちたなと感じる・・・。まあ、数も増えたが・・・。特にこういう医学関係だと、ここまで高水準な本は新書ではまずないどころか、あからさまな疑似科学本を結構な出版社が出している有様で、むしろ単にこういう本を翻訳したほうが良いと思う。売れないのかもしれないが・・・。

A great introduction. Chiefly comprised of several areas(axis) of hormonal mechanisms. Impressive.

Oxford Univ Pr (2014/09)
ISBN-13: 978-0199672875

2014年8月22日金曜日

John H. Holland "Complexity: A Very Short Introduction"

複雑系、特に複雑適応系(CAS)の概略。対象としては言語・生態系・市場など、ツールとしてはグラフ理論・マルコフ連鎖などが例示されているが、数式は出てこないし、どのみちあまり深みもない。創発性とか対称性の破れなどがテーマになっている。一つにはこの分野がまだ手探りの初期段階というのもあるだろうけど、もしかするとこの著者の語り方が下手なのかもしれないと疑う。どうも複雑適応系の形式的なモデル化を目指す方向の説明らしいが、多くの話が機械学習とか人工知能とかで聞いたようなことだ。ただ、最終章で現状のその類の研究がCASを取り扱うには力不足であることを明白に示しているわけで、確かにそれ以上の話ではあるらしい。まあ「複雑系」と名のつくpop scienceみたいな本は日本語でもあるし、ちとそういうのと比較しないと、この本の評価はできないが、個人的には、あまり面白くない本ではあった。

Complex systems, especially CAS are explained. But for me, it did not provide new insights....

Oxford Univ Pr (2014/09)
ISBN-13: 978-0199662548

2014年8月11日月曜日

Hugh Bowden "Alexander the Great: A Very Short Introduction"

基本的にはアレクサンダー大王の伝記。範囲はマケドニアからエジプト・トルコ・アフガニスタン・パキスタン・インド洋まで広いが、王位にあったのは8年だし、32歳で死んでいるので期間は短い。その間、ほとんど行軍しているが、軍事行動自体の記述は少ない。その点はちょっと残念が気がするが、実際のところ、信頼するに足る史料が少ないのだろう。俗説を訂正しながら、大体アレクサンダーの行軍の過程を追う。というと面倒くさい本のような印象を与えかねないが、実際には一気に読んでしまう。アレクサンダーの行動自体面白いが、俗説のほうもそこそこ面白いからだ。

こういう本が出てくる状況を説明すると、西洋ではアレクサンダー大王伝説(Alexander romance)が大量に作られており、そうでない真剣な伝記の試みも過去二千年以上に渡って膨大な蓄積がある。できるだけ事実に近いアレクサンダー大王像を取り出そうとすると、同時代人による記録を参照することになるが、それも鵜呑みにはできないようなことだ。特にローマ人が語る場合は、ローマの政治状況なども影響したり、時の皇帝の教訓に資するように書いたりするから難しい。たとえばWikipediaのアレクサンダー大王の項にはもっともらしいことが大量に書いてあるが、その前にこの本を読むべきだろう。とにかく、予備知識なしでも、面白く読める。これも翻訳してほしいところだが、アレクサンダー大王という名に感じる熱量が、西洋人と日本人じゃちょっと違うかね。

Fascinating presentation of Alexander III. We can find a lot of information on Alexander the Great, for example, in Wikipedia. However, you should read this book first, if what you want is a historically real Alexandros.

Oxford Univ Pr(2014/09)
ISBN-13: 978-0198706151

2014年8月10日日曜日

Matt Tweed "Essential Elements: Atoms, Quarks, and the Periodic Table" (Wooden Books)

周期表の紹介にとどまらず、電子軌道とか原子以下の素粒子の話にまで突入し、最終的には超ひも理論まで解説。Wooden booksとしては、かなり情報が深く、中学生でも読めるとは思うが、大学生とかが読んでも勉強になりかねない。短い本だが、是非図書室には置いておきたい本だ。

Very informative and academic for a wooden book yet easy to follow. An very attractive cute book.

Walker & Co (2003/04)
ISBN-13: 978-0802714084

2014年8月6日水曜日

David Norman "Dinosaurs: A Very Short Introduction"

いわゆる恐竜の解説。かなり専門的で、特段難しいわけではないが、子ども向きではない。VSIにありがちなことで、図版が少なく、半分くらいは研究史。あとは恐竜の生理や生態をわずかな手がかりから再構成していく作業の紹介で、深い世界ではあるが、一般にはウケないかな。

A very academic book. Half of the book consists of a history of the research. The other half consists of researchers' trial of reconstructing dinosaurs' physiology, modes of living etc. Few pictures, as is often the case with this series.

Oxford Univ Pr (2005/12/15)
ISBN-13: 978-0192804198

2014年8月5日火曜日

James A. Millward "The Silk Road: A Very Short Introduction"

シルクロードの歴史だけど、編年史というよりは色々な交流の紹介。というとありがちな気がするが、この本は面白過ぎて読むのに時間がかかった。合わせて読みたいThe Mongols: A Very Short Introductionだけど、時代はそれより遥かに長いし、The Mongolsが読み物として一気に読んでしまうのに対し、こちらはまめちしきが多くて、一々調べてしまうので時間がかかるのだ。たとえば・・・、

  • 横から見るとXで、上に布が張ってあるだけの折りたたみ椅子は、北アフリカで発明されて200年頃に中国に伝わった。中国で固定椅子が普通になるのはずっと後である。
  • ナスは東南アジアまたは南アジア原産だがイランに伝わり、戻ってきた時には今のように紫色でちょっと長くなっていた。
  • 751年タラスの戦いで、サマルカンドにつれて行かれた唐の職人が紙工場を作ったが、ヨーロッパが紙を作り始めたのは12世紀末になってからである(スペイン)。
  • ローマ人は絹を愛していたが製法を全く知らず、クレオパトラは輸入した絹織物をリフォームして着ていた。
  • 「一本ではすぐに折れるが束になると折れない」という教訓は古くはイソップ寓話にあるが、ユーラシア全体に伝わり、モンゴルでは王母が言ったことになっている。
というようなことはほんの一例で、一々感心して調べていると、時間がかかる。わたしとしては面白かったし、大変勉強になった。結構世界観が変わる。「シルクロード」というタイトルの本は日本でも多いが、これを翻訳しても十分競争できると思う。まあ、売ろうとすると、もう少し図版写真が欲しいのかなあ。

A very good introduction to the Silk Road. A lot of fascinating facts on each page.

Oxford Univ Pr(2013/4/12)
ISBN-13: 978-0199782864

2014年7月18日金曜日

Morry Sofer "Global Business Dictionary: English, Chinese, French, German, Japanese, Russian"

これはビジネス辞書というより、ビジネス用語六か国語対照表と言ったところ。Amazonに表示されているタイトルが間違っているが、見出し語は英語で、対応する中国語・フランス語・ドイツ語・日本語・ロシア語が挙げられている。日本語だけ見ているとどうかというような訳語もあるが、特に完全に定訳のある専門用語などでは正確なようだ。フランス語やドイツ語については、ほぼ間違いないと思われる。もちろん、それぞれの言語の辞書で引きなおして確認することは必要だと思うが。

何語のどの専門分野でも、一般的な辞書を使っているととんでもない間違いをすることがある。特にわたしの場合はフランス語のビジネス辞書が必要なのだが、最も頼りになる白水社の「経済フランス語辞典」は入手困難である。古いとは言え素晴らしい辞書なので、是非改訂して再版して欲しいのだが・・・。もちろん、英仏あるいは英和であれば、他に色々あるが、間接的にでもフランス語と日本語が接続しているビジネス辞書を探すと、まあこれくらいのところ。さらに、ドイツ語・中国語・ロシア語もついてくるから、わたし的には効率的だ。リアルに正確な翻訳のためには、この本は参考にしかならないが、それでも第一歩にはなる。

Schreiber Pub (2005/10/30)
ISBN-13: 978-0884003090

John Marzluff, Tony Angell "Gifts of the Crow: How Perception, Emotion, and Thought Allow Smart Birds to Behave Like Humans"

これは翻訳も出ている名著だが、ちと専門的過ぎる部分が・・・。カラスの賢い行動を色々解明していて、行動を紹介しているところは非常に面白いのだが、それに一々ついてくる脳科学的説明が、多分、一般人にはウけない。とはいえ、行動を紹介している部分に関しては、日本からの報告も多くて面白すぎるので、カラスが好きな人には必読だ。カラスが賢いことは、特に日本人は良く知っていると思うが、多分、この本で解明されている賢さは、予想を上回る。

The best book on the crow. Passages sometimes get too complicated for laymen, because the anatomy of birds' brain are not too interesting. Still, fascinating and the best source for us raven-lovers.

Atria Books; 1版 (2012/6/5)
ISBN-13: 978-1439198735

2014年7月16日水曜日

Charles Dickens "A Christmas Carol"

有名だし、短いから読んでみたということで、まあ確かにベタで面白い。問題があるとしたら、この種の「改心」という現象を信じているかどうかで、正直なところ、観念的なキリスト教文明だなあと思うのである。

A famous novel. Therefore, worth reading. Amusing, except for that I do not believe the phenomena called "reform".

antam Classics (1986/11/1)
ISBN-13: 978-0553212440

2014年7月11日金曜日

Morris Rossabi "The Mongols: A Very Short Introduction"

モンゴル帝国興亡史。時代的にはチンギス=ハンの登場から、元・チャガタイ=ハン国・イル=ハン国・キプチャク=ハン国の崩壊まで。面倒くさい学術的な話は抜きにして、シンプルかつ痛快にモンゴル帝国の興亡を描く。地域的には東は朝鮮から西はハンガリー・ポーランドまで。中国・ロシア・ウクライナ・アゼルバイジャン・イラン・トルコなどは占領されている。エジプト・日本・ベトナム・ビルマ・ジャワなどにはモンゴルは撃退された。

タイトルが分かりにくいが、現代モンゴルとかは完全に対象外で、モンゴル帝国最盛期の最も面白いところのみをシンプルに叙述している本で、一気に読んでしまった。Oxford Very Short Introductionsの歴史カテゴリの中では間違いなく最も面白かった。ちなみに二位は"Russian History"だが、もちろん内容はかぶる部分もある。ロシアがタタール人(Golden Horde)から受けた影響については若干解釈が違うが、とにかく痛快で、予備知識はほとんどいらない。もっとも地域が広大なので世界地図はあったほうが良い。わたしも世界史に特に詳しいわけでなく、モンゴルについては日本でサムライたちに撃退されたとか、中央アジアの都市を次々蹂躙してたくらいの漠然とした知識しかなかったが、実際にはサマルカンドどころかバクダッド・シリアまで侵攻してエジプトを窺っていたくらいで要するに草原がある限りは進撃していたらしい。他方、密林や島嶼での戦闘には向いていなかったらしく、日本やベトナムには撃退されている。この本では軍事面だけでなく、特に文化面の交流もシルクロードを中心に深く描かれていて、そちらも非常に面白い。あいにくと日本はサムライたちがモンゴルを撃退してしまったが、やっぱりたった100万人の貧しいモンゴル人たちが史上最大の帝国を築いたというのはスゴいことだ。どんどんこっち方面の本を読んでいきたい。

As few as a million of poor Mongols built the world's largest empire throughout the Eurasian continent. Remarkable. Most brutal, yet military forces of Japan, Egypt &c succeeded to defeat the Mongols. There is always something to learn from the history. Rossabi depicts not only the Mongols military history, but also explains cultural heritage of the Mongols, which is also really fascinating. One of the best books in VSI.

Oxford Univ Pr (2012/5/4)
ISBN-13: 978-0199840892

2014年7月8日火曜日

Peter Atkins "Physical Chemistry: A Very Short Introduction"

物理化学、または計算化学の概説。タイトルが地味だが、なかなかエキサイティングな内容で、日本語で類書を見たことがないが、VSIの中でも名著と言える。これを翻訳すれば化学志望者が増えそうだ。関連分野として、熱力学、量子力学、生命科学、材料、電池、超電導、量子コンピュータ、ナノテクとか、他にも数えきれないくらいの分野が登場し、それらとの関連で物理化学の現状と今後の課題がどんどん示される。まさに化学の最先端というところ。なんとなく化学というと、もう終わっているような気もしていたが、とんでもないことで、無限のフロンティアが広がっている。特に近頃は計算量が増えているし、技術的にも原子単位でモノを作ったりするので、この先も何が起こるか分かったものではない。わたしとしては、最近、甲種危険物取扱者を取ったくらいのことで、化学に若干興味を持っている程度だが、予備知識としては高校程度の物理化学で十分だ。合わせて読みたいSupercondutivityThe Laws of Thermodynamicsと言ったところ。いずれも名著だ。三つとも翻訳すれば売れると思う。

A bland title, exciting contents. Really fascinating.

Oxford Univ Pr (2014/6/24)
ISBN-13: 978-0199689095

2014年7月1日火曜日

Ali Rattansi "Racism: A Very Short Introduction"

これは翻訳するべきだし、日本語の似たような本より読みやすいだろう。標準的な教科書として、そこそこ売れる気がする。白黒はっきりつけるような簡単な本ではないが、世間に蔓延るいい加減な単純化を避けている本は、日本であまり見かけない気がする。日本で同じような本があるとすれば、どうせ単純な結論ありきみたいな説教本が想像され、手に取る前に読む気をなくすわけだが、そういうムキにはお勧めしたい。差別と言っても色々で複雑に絡みあっているものだが、この本の中心的な主題はあくまで人種差別で、特にユダヤ人や黒人がテーマとなる。もっとも、たとえば黒人といっても、差別する側のほうで既に定義があいまいだし、今となっては、自分が差別主義者であると考えている人なんかほとんどいない。にも関わらず社会レベルで観察すれば明白に差別は存在する。たとえば、アメリカでは黒人が白人を殺すと、白人が黒人を殺した時より15倍の確率で死刑になるらしいが。じゃあみんな偽善者として断罪するべきというのもムチャな単純化で、話が複雑になるのは避けられない。もちろん、単なる正々堂々とした人種差別主義も存在し、その論拠をすべて論破するくらいのことはこの本でも十分にやっているが、主たる論点は、もっと混沌としたものだ。

Very good overview on racism. This is not an easy topic, since there are few who think themselves as racists. Yet there are abundance of evidence of racism. Then, we all are hypocrites? This is not a all-or-nothing matter. That is why this book is sometimes described as challenging, I guess.

Oxford Univ Pr (2007/4/5)
ISBN-13: 978-0192805904

2014年6月30日月曜日

Hermione Lee "Biography: A Very Short Introduction"

「伝記」というジャンルの歴史。著者は英文学関係の伝記を書くのが専門のようで、出てくる例も基本的にそんな感じ。伝記と言っても、ただの歴史みたいなところから、「模範的な生き方」を示すものとか、「作品解読のための伝記」とか、心理分析とか、まあ、色々な見方というか書き方があるわけで。著者自身が伝記作家なので、色々な方法論などを研究した集大成みたいなものかもしれない。良い本だと思うし、特に伝記を書こうというような人には必読書だと思うが、何分にも例示されるのがイギリス人ばかりなので、翻訳してもあまり一般には売れないかもしれない。

It describes varieties of ways to telling someone's biography. Interesting.

Oxford Univ Pr(2009/8/31)
ISBN-13: 978-0199533541

2014年6月26日木曜日

R. D. Laing "Wisdom, Madness and Folly"

レインの著作をたいてい読み終えてしまってから、最後に読んだ本。わたしがレインを読み始めた頃は、既にいわゆる反精神医学というのも失敗が明らかになっていた頃だったと思う。レインは、わたしにとっては、精神分析からもっと広大な哲学の世界への懸け橋だった。もちろん、実存主義はとっくに力を失っていて、みんながバカにしていたが。わたしの理解では、レインは実存主義的な心理学を分裂病(統合失調症)患者に適用して、いわば正常人に対するのと同じように分析できると考えたんだと思う。現状はというと、実存主義は哲学としては現象学にオーバーライドされ、精神病の理解としては、脳科学ないし行動療法のようなもっと単純な話に完全に圧倒されている。二つの流れに共通しているのは、実存主義が絶対視していた自己意識というものを軽視しようとする風だと思うが、そんな簡単に済む話かねえと最近は思う。この本についてはエッセイ的なところでもあるし、わりと入りやすいところだろう。

An autobiography and also a good intro to Laing.

Canongate Pub Ltd(1999/03) ISBN-13: 978-0862418311

John Stuart Mill "The Autobiography of John Stuart Mill"

これを読んだのはかなり前だが、ミルの頭の良さというより、そもそもの家庭環境とか受けた教育とかを知るにつけて絶望するしかない。今時あまりヘヴィな人文的教養とか流行らないのかもしれないが、もしかすると、文学部などで大学院に進学しようなどと考えている、さして裕福でない家庭の出身者は、早めにこういう本を読んで絶望しておいたほうが良いのかもしれない。

This book brings to those who want to be a scholar in so-called liberal arts a desperation, which I think a good thing.

ARC Manor (2008/9/1)
ISBN-13: 978-1604503142

2014年6月25日水曜日

Donald Winch "Malthus: A Very Short Introduction"

まあ、昔から経済学者の考えることは変わらないというか。中心的な主題はリカードとの対立を軸に語られるので、一応経済学史の知識がないと読みにくいと思う。

A good overview on Malthus's scholarship.

Oxford Univ Pr (2013/7/24)
ISBN-13: 978-0199670413

John Dunn "Locke: A Very Short Introduction"

ロックの伝記・思想の概要。有名ではあるが、名前だけ教科書で知っているという多数の有名人の一人で、何か一冊読んでおくという場合にはVSIは外れは少ない。この本も読みやすいし、類書も少ないんじゃないかと思う。個人的には信頼trustの概念は注目だ。政治哲学で「信頼」という概念は貧弱過ぎて、何か別のものに還元しないと成立しないような感じが常識化しているが、本当にそうなのかどうかはもう少し考える必要があるのかもしれない。それはそれとして、著者Dunnの立場としては、Lockeは基本的に悲劇的に失敗した思想家だそうで、まあハードな理論化には完全に失敗しているのかもしれないが、良識のある人だったんだとは思う。

A good intro to Lockes's scholarship.

Oxford Univ Pr(2003/7/31)
ISBN-13: 978-0192803948

Paul Cartledge "Ancient Greece: A Very Short Introduction"

一般的な古代ギリシア史だが、都市毎に論じられている点が特徴。スケールが違うが、日本の戦国時代を大名ごとに編集したようなものだ。というわけで、予備知識として、一応、古代ギリシア全体の漠然とした通史でも把握していないと、いきなりこれは読みにくいかもしれない。高校の世界史レベルでもいいかと思う。わたしは古典ギリシア語もやっていたことがあるので、この本はなかなか萌えるものがあったが、多少とも古代ギリシアに興味があれば楽しく読めるだろう。

Concise histories of 11 ancient Greek cities. Maybe you need to have some knowledge about ancient Greece beforehand. Fascinating.

Oxford Univ Pr (2011/11/10)
ISBN-13: 978-0199601349

2014年6月24日火曜日

Germaine Greer "Shakespeare: A Very Short Introduction"

これは・・・。シェイクスピア入門ということではなくて、シェイクスピアの世界に関するランダムな逍遥批評というところか。初心者が読むのには適していないし、ある程度ハマっていないと楽しくないだろう。わたしとしては、実はあまりシェイクスピアを原文読みしたことはなく、翻訳劇しか知らないが、にしてもあまり感心しなかった。

Not an introduction but random thoughts about Shakespeare's world.

Oxford Univ Pr (T) (2002/5/16)
ISBN-13: 978-0192802491

Terrell Carver "Engels: A Very Short Introduction"

エンゲルスについては、「マルクスの第二バイオリン」「第二バイオリンに謝れ」というやり取りしか知らないくらいだが、この本もやはりマルクスとエンゲルスの差異を表すのに紙幅を割かれている。どっちにしろマルクス主義として一括されてしまうが、歴史に興味がなくても、一応これくらい読んでおいたらいいかもれしれない。

A good book which explains the difference between Engels and Marx.

Oxford Univ Pr (2003/7/31)
ISBN-13: 978-0192804662

Peter Singer "Marx: A Very Short Introduction"

しばらくVSIの思想家本を読んでいるが、これは出色だ。著者はVSIのHegelも書いていて、こちらも悪くない。マルクスに関してはそこそこ色々読んでいるが、入門書としては一番だと思う。特に日本語だと、ムダに戦闘的だったり晦渋だったりバカだったりするし。

個人的には、少なくとも小学校は日教組全面支配で、今から思うと完全にバカ共産主義の典型的な教育で酷い被害を受けたし、大学は大学で平気で古いマルクス主義経済学をやっていて、まあ話としては面白いが、学問的レベルが激低だったりで、いわゆるマルクス主義者には嫌悪感しかない。本書にもバクーニンの異議(結局酷い独裁政権ができるだけでしょ)が挙げられているが、別にソ連が崩壊しなくても日教組レベルで恐ろしい状況が生まれていたわけで、あの状況を恐ろしいと認識できない人間が共産主義なんかやっているんだろう。ゾッとする。いや、逆に完全右傾化教育も同様に酷いと思うが。

しかし、そんなわけでマルクス研究者は、経済学から哲学方向へシフトし、特にフランス語圏からその潮流が日本に流れ込んだこともあり、好き嫌いはさておき、マルクスの生み出した概念などは我々の思考に完全に入り込んでいる。特に近頃のワーキングプアとかブラック企業とかいう話を聞いていると、普通にマルクス主義が復活するとは思えないが、労働から疎外されるという主張は一定の説得力を持つようになるだろう。承認欲求とかいう言葉も流行っていて、まあ基本的には労働していない人間が騒いでいるが、人間らしい労働こそが真っ当な承認欲求を満たす方法だと主張することもできるだろう。そういう方向でも一つの示唆にはなるかもしれない。別に今さらマルクス主義者が増えたりもしないだろうし、こういう本で見直してみてもいいと思う。

Very good intro. It is not probable that Marxists increase at this stage of history. Now we can discuss Marx's legacy without much ado.

Oxford Univ Pr (2001/1/18)
ISBN-13: 978-0192854056

2014年6月23日月曜日

Jonathan Culler "Barthes: A Very Short Introduction"

多方面にわたるロラン・バルトの活動をコンパクトに解説。わたしとしては、懐かしいというしかないが、久しぶりに何か読んでみようかというくらいの気にはなった。文芸批評とか、そういうのに興味のある人にはお勧めだが、最近は流行らないかね。

A good intro to Roland Barthesる

Oxford Univ Pr (2002/5/16)
ISBN-13: 978-0192801593

Jonathan Howard "Darwin: A Very Short Introduction"

中心はダーウィンが進化論を発明する過程の紹介。我々としては進化論は常識化しているし、キリスト教徒でもないので衝撃を受けることもないが、ちとこのあたりの感覚が西洋人と違う。ただ、キリスト教抜きにしても、進化論を確立するのは概念的に大変だったのは確からしい。地質学は当時既に、色々な景観が現に観察されている諸現象から生成されえることを示しており、同じことをダーウィンは生物学についてやったということだが、その背景が丁寧に追われている。あと、いわゆるダーウィニズムは政治などに利用されることもあるが、そのあたりはあまり深く探究されない。

A good intro to Darwin's discovery and theorization.

Oxford Univ Pr(2001/6/7)
ISBN-13: 978-0192854544

Anthony Stevens "Jung: A Very Short Introduction"

ユンクに関しては日本では河合隼雄のイメージで流布しており、わたしとしても、「ユリイカ」を読んでいるややオカルト気味の教育学部の女子が好き好んでいるというイメージで、特に個人的には尊敬していない。まあ、一冊ということなら、この本は明らかにユンクに肩入れしているが、悪くないところだろう。部分的にはフロイトより明らかに正しいことも言っていて、意識だろうと無意識だろうと妄想だろうと、全く個人的なものであることなんかあり得ない。しかしまあ、オカルトと言って悪ければ、文学だろう。そして、幻想文学を何かしらの形で読み解いて何かに還元するという行為は、ジョークの解説と同じで、例外なく面白くないものだ。

A good intro to Jung.

Susanne Reichert, Horst Kopleck, Rob Scriven, Gaelle Amiot-Cadey "Collins German Grammar (Collins Easy Learning)"

ドイツ語の文法を一冊にまとめたもの。これのフランス語用(Collins French Grammar)も非常に優れた本だが、ドイツ語用も同様だ。文法参考書的にも使えるが、ドイツ語の勉強を始めたら、早いうちに読んでしまったほうがいい。ドイツ語文法の習得なんて長い道のりのような気もするが、要するにこの本に書いてあることが全部で、丸暗記の得意な人なら数週間で全部叩き込めるだろう。例文に全部訳文がついているのも重要なポイントだ。

Definitely the best book for learning German grammar. When you have read through this short book, all you need will be ample vocabulary.

Harpercollins Pub Ltd(2011/05)
ISBN-13: 978-0007367818

2014年6月20日金曜日

Anthony Storr "Freud: A Very Short Introduction"

フロイトの伝記込の入門書だが、ベーシックなところで評価しつつも、壮大な精神分析体系になるとわりと批判的。わたしとしては穏当なところだと思う。個人的には昔、精神分析にハマったことがあり、それが、わたしが哲学などを勉強するに至った元々の出発点で、今となっては懐かしい。結局、わたしが精神分析とそれに連関するような形で実存主義哲学から学んだのは、人類に対する悪意だったような気がする。Very short introductionで言えば、Dreamingなんかは、夢判断という狭い範囲ではあるが、フロイトを全面否定している。わたしとしても、今となってはあまりフロイトを読もうという気にならないのだが、キリスト教と同じで、別に信じていなくても、その用語とか概念を何となく使ってしまっているということはあるし・・・。

A well-balance (I suppose) intro to Freud.

Oxford Univ Pr (2001/6/28)
ISBN-13: 978-0192854551

Anthony Storr "Solitude: A Return to the Self"

孤独の価値を説いた本ということで、わたしがこういう本を見逃すはずもなく、十年以上前に読んだ。今でも不滅の名著みたいに読み継がれているようだ。ただ、当時から思っていたし、今見直しても同じことだが、なんか天才というか創造性のある人にとって孤独が重要だと言われても、普通の何でもない孤独な人になんか届くのかなとは思う。クリエイティブな仕事で孤独を正当化できる人はそれでいいんじゃないかと思うが・・・。

A recommendation of solitude for creative people.

Free Press(2005/10/3)
ISBN-13: 978-0743280747

Henry Chadwick "Augustine: A Very Short Introduction"

アウグスティヌスの伝記と思想。他に類書を知らないけど、多分、コンパクトで最善の部類だろう。哲学史を勉強していると、西洋哲学はほとんどがアウグスティヌスへ何らかの形で言及していて、なんとなくイメージを持っているという人が大半だと思う。とりあえず、このあたりを読んでおくと、少し理解が変わってくるかもしれない。まあ、個人的には、あまり共感できない人ではある。

A good (or the only) intro to Augustine.

Oxford Univ Pr(2001/6/7)
ISBN-13: 978-0192854520

2014年6月18日水曜日

Robert Wokler "Rousseau: A Very Short Introduction"

正直なところ、わたしはデリダにネタにされているルソーしか知らないが、おそらくルソーがデリダの議論を理解してもほとんど反論しなかったと思う。ルソーと言えば、堕落した文明状態に高貴な自然状態を対置したようなことだが、別に彼はこれを事実として主張したわけではないからだ。しかし、まあ、彼の言う自然状態が恣意的なものでないという保証もないわけで、一種の文明批評と理解するくらいだろうか。

A good intro to Rousseau.

Oxford Univ Pr (2001/12/6)
ISBN-13: 978-0192801982

Simon Blackburn "Ethics: A Very Short Introduction"

倫理学入門ということだが、まあ基本的な理論と問題点の指摘を軸に話をしていて、最近ありがちな、極端な例を持ち出して「君たちならどうする」みたいなスタンスではない。穏当なところで、類書の中でもお勧めの部類だろう。カントとかハバマスの企てには敬意を払うが、実際のところ、単一の原理から出発して全ての倫理問題に対する判断を自動化しようというようなのも流行らないというか、無理なことはわかっている。なんならキリスト教の唯一神を前提にしても無理だろう。真面目な人は神が死んだ→善悪なんか存在しないから何でもできると考えて、それを実践しようとするが、それが無理なのもよく分かっている。別にそれはキリスト教の残滓のせいとかではなく、そもそも人間はそんな概念では存在していないので、完全な利己主義も内部矛盾を起こして崩壊する。ドストエフスキーはそういうことだとわたしは理解している。読んでいて思ったのは、倫理に対する科学的なアプローチ、つまり、無あるいは勝手な第一原理から倫理を構築しようとするのではなく、既に存在する倫理から共通する法則などを探っていく人類学というか文法学みたいなアプローチのほうが先がある気がする。倫理はとりとめのない世界で、これくらいとりとめのない本が適切だろう。

A good intro to ethics, among many other similar books abundant.

Oxford Univ Pr (T) (2009/9/14)
ISBN-13: 978-0192804426

2014年6月17日火曜日

Quentin Skinner "Machiavelli: A Very Short Introduction"

伝記と君主論の解釈部分、さらに哲学者としての面と歴史学者としての仕事を概観。マキャベルリと言えば、偽善を臆面もなく痛快に主張したことで他の人文主義者と一線を画す印象だが、この本を読んでもその通りだ。ただ、君主の徳を統治の基本に置いているのは人文主義一般と共通で、ただ徳の解釈がちょっと違うというところだろう。別に我々は人文主義者ではないので、一々彼の所説に衝撃を受けたりしないが、なかなか過酷な人生で読んでいて退屈はしなかった。

A good overview on Machiavelli's works.

Oxford Univ Pr(2001/1/18)
ISBN-13: 978-0192854070

Richard Tuck "Hobbes: A Very Short Introduction"

ホッブズの入門書。他に似たような本を読んだことがない(存在しないのかも)けど、意外に面白い。最大の理由は、わたしが人文主義者をあまり知らないからで、時代の空気を読めたからだが、やはり大きな理由として、そもそもホッブズの考え方が、現代人にわりと近いからだろう。ルネサンスの懐疑論が政治に応用されたらこういうことにならざるを得ない。万人の万人に対する闘争とという状況はわりと誰にでもわかりやすいし、ゲーム理論は故意なのか偶然なのか、ほぼそういう前提に組み立てられていて、この本でも後半で言及される。

The best sole intro to Hobbes.

Oxford Univ Pr (T) (2002/8/29)
ISBN-13: 978-0192802552

2014年6月16日月曜日

E. P. Sanders "Paul: A Very Short Introduction"

使徒パウロの思想というか神学の読解。もちろん多少キリスト教の知識は必要だが、別にわたしのような異教徒でも普通に感心して読める。キリスト教には明らかに説明の必要な矛盾、たとえば旧約聖書と新約聖書で神が言っていることが違うとか、なんで全知全能の神の作った世界が悪に満ちているのとか、いくつもあり、辻褄を合わせるために神学というか哲学が発展していく。この本でのパウロ読解は、わりとそういう側面からパウロがどう考えていたかを考えていく。著者はユダヤ教研究の大家だそうで、パウロの思考を当時の想定で読むのには最適任者のようだ。

Fascinating and logical even for a pagan like me.

Oxford Univ Pr (T); New Ed版 (2001/6/7)
ISBN-13: 978-0192854513

Peter Singer "Hegel: A Very Short Introduction"

ヘーゲルの入門書はほかにいくらでもあるが、これは割と身近な問題と関係づけて話してくれるので、最も親しみやすい部類だろう。西洋哲学が分かりにくいのは、主にキリスト教由来の未確認の前提が多すぎるせいだが、たいていが元はヘーゲルに戻れる。そのヘーゲルも未確認の勝手な前提の中で理屈をこね回しているような印象が強いが、それでもカントに比べれば前提を破壊して進んでいる。わたしの考えでは、西洋哲学は未確認の前提を破壊する歴史だが、最初からそんな前提を共有していないと、何と戦っているのか分からないというような・・・。ともあれ、ヘーゲル入門としては良い。

A good introduction to Hegel. Readable enough.

Oxford Univ Pr (2001/12/6)
ISBN-13: 978-0192801975

Patrick Gardiner "Kierkegaard: A Very Short Introduction"

キルケゴールの若干の伝記と思想の要約。キルケゴールについては、日本で最も読まれている「死に至る病」「不安の概念」「誘惑者の日記」しか読んでいないが、それぞれ特に難解なわけでもないし、この本より読みやすいかもしれない。伝記部分については、これらの著書から予想されるような人柄で、全く予想とはずれない。だいたい、クソ真面目な自意識過剰な人がキリスト教、特に偽善の問題に真剣に取り組むと、「死に至る病」みたいなことにならざるを得ないのは自明に思われる。そして、その心理分析は苛烈に鋭いが、にしても勝手・独善的過ぎるというのは、多分、カフカも同じことを感じたのだろう。人を偽善者呼ばわりして傷つける論法の豊富さは、いわゆる実存主義に分類される哲学者に共通だ。唯一絶対神とイエスという実在の歴史上の人物を和解させるだけでも大変なのに、「理性」だの「倫理」だのに加えて「自分」という新たな神を導入すれば、「自分」が酷い目に遭うのは当然だ。ひとまず、この本を読む前に、上の三冊は読んでおいたほうが良いと思うし、できればキリスト教にある程度理解があったほうがいいだろう。

A good introduction, but I recommend that one should read Kierkegaard's several famous books first.

Oxford Univ Pr(2002/5/16)
ISBN-13: 978-0192802569

2014年6月13日金曜日

Jerry Brotton "The Renaissance: A Very Short Introduction"

ルネッサンスを一望するガイド。なぜルネッサンスとかいう現象が発生したのか明らかにならないまま、文芸・芸術に限らず、科学、航海、商業、宗教などほぼ全分野の現象を解説。てんこ盛り過ぎて評判があまり良くないようだが、面白いと思うけどな。個人的には特に人文主義の勃興が面白かったが、やはり、なんでそんなものが勃興したのかはよく分からない。まあ、分かっているみたいに解説されるより良いだろう。そもそもルネッサンスという概念自体が19世紀のナショナリズムの時代に発明されたそうで、事実を過剰に単純化しているのは間違いない。暗黒の中世が唐突に終わって明るいヨーロッパになったようなイメージだが、どうなんかね。関係のない日本人からすると、別にそんなに変わった気もしないが。

A good overview on the "renaissance".

John Heskett "Design: A Very Short Introduction"

タイトルから予想されるように、工業デザインを中心とした、わりとランダムな考察で、特に深みとか体系とかはない。いや、著者の中にはあるのかもしれないが・・・・。日本への言及も多いが、日本でシャワートイレが普及したのは、ビデを別に置くためには住居が狭すぎるからとか。いやまあ確かにそうかもしれないが・・・。

A random treatment on design.

Oxford Univ Pr (2005/9/22)
ISBN-13: 978-0192854469

Robert Skidelsky "Keynes: A Very Short Introduction"

ケインズの伝記少しと思想の変遷を追った本。本書の大部分は90年代、ケインズ経済学が終わったことになっていた頃に書かれているので、「終わったケインズ経済学の総括」みたいなスタンスになっている。今となっては話が違うのはエピローグにある通りで。ケインズというと、人格円満で聡明な活動家みたいなイメージしかなかったが、まあ、そんな完璧な人もいないということらしい。全然経済学の知識がない人が読むのは厳しいが、多少ともケインズに興味があれば、読んで損はないだろう。

An overview of Keynes's economic theories written when everybody thought "Keynensian economics is now dead".

Oxford Univ Pr (2010/11/23)
ISBN-13: 978-0199591640

Ray Monk "Wittgenstein: Duty"

これも読んだのは随分前だが、とにかくヴィトゲンシュタインの伝記の定番で、日本でもそこそこ読まれているらしい。生涯自体面白いし、そもそも時代背景が面白い。あいにくとわたしはヴィトゲンシュタインの哲学がそんなに面白い気がしていないが、ファンなら当然読むべきだろう。

A standard biography of Wittgenstein. Fascinating.

Vintage Books; New Ed版 (1992/10/27)
ISBN-13: 978-0099883708

2014年6月12日木曜日

Gil Troy "The Reagan Revolution: A Very Short Introduction"

レーガンの伝記込の、レーガンの政策の評価。well-balancedとか言われているが、レーガン政権に好意的なのはタイトルからも明らかだ。だいたいが、ベトナム戦争とかでグダグダになったアメリカに愛国心と自信を取り戻した保守派大統領といったところで、この本を読んでも大枠その印象は変わらない。一つ意外だったのは、レーガンにそんなに「バカ」の印象があるのかということだったが、G.W.ブッシュのせいで掻き消されているだけらしい。実際には、そんな極端な保守派でもないし、バカでもなかったということだが、まだ評価するのは早すぎる気もする。

A well-balanced or rather a positive account of Reagan presidency.

Oxford Univ Pr (T) (2009/7/30)
ISBN-13: 978-0195317107

Philip Ball "Molecules: A Very Short Introduction"

タイトルからして謎だが、要は生物化学とか分子生物学とかいう話が中心のポピュラーサイエンス読み物である。従って、学問としての化学の入門書でもないし、工業化学の入門書でもない。ただ、面白い様々な分子が紹介されていくだけの気楽な読み物だ。やたら文芸作品からの引用が多い。個人的には化学という分野は詰んでいるような印象を持っていたが、こうして見ると、いくらでも創意工夫の余地もあるし、生物化学はまだ解明されていない謎が無限にある。

Good reading for a pop science.

Oxford Univ Pr (T) (2003/09)
ISBN-13: 978-0192854308

Richard Bauckham "Jesus: A Very Short Introduction"

これは・・・かなり評判が良いようだが、どう考えても信者向けだろう・・・。筆者の立場ははっきりしていて、もちろん、一応歴史的な人物として四福音書を基本としてイエスを描写するという建前だが、歴史は単なる事実ではなく解釈であると言い切ってから始まっている。もちろん解釈を離れた歴史的事実なんかあるわけないが、わたしのような非信者からすると、やはり解釈に入りすぎている。ひとまず、イエスが行ったとかいう奇蹟とかを字義通り信じていないと、かなり引っかかりながら読むことになるのは間違いない。読みやすいのは事実だが。

I bet this book is for Christians.

Oxford Univ Pr (2011/8/11)
ISBN-13: 978-0199575275

Kenneth Minogue "Politics: A Very Short Introduction"

これも一つのVSIの典型で「自分が自分の分野について普段考えているわりと壮大な色々なこと」を初心者向けと称してつらつら書いたもの。つまり、論文として傍証を固めて提示しようとすると巨大な著書になってしまうが、まあ、ラフに語る分には初心者にも面白いだろうというような。つまり、あまり教科書のように体系だったものではないが、個々の考察については、研究書ではお目にかかれない断言に満ちており、読みやすいし記憶にも残る。たとえばこの本によると西洋は一貫して専制を嫌っていて、それはギリシアvsペルシアの頃からそうなのだそうだ。全体的には特に構造はないが、政治史というか政治体制史というか政治思想史というか。

Miscellaneous thoughts about history of politics or political thinking. Not organized still interesting.

Oxford Univ Pr New Ed版 (2000/6/15)
ISBN-13: 978-0192853882

2014年6月10日火曜日

Malcolm Gaskill "Witchcraft: A Very Short Introduction"

例によってタイトルが短すぎて意味が分からないが、著者は歴史学者で、主題は特に西洋史上の「魔女狩り」である。もちろん魔女自体は特にアフリカなんか今でもいるし、魔女=悪でもないので実際の考察の範囲はもっと広い。特に何か理論が提示されるわけでもなく、ランダムなエピソードと考察みたいな感じだが、基本的に話が上手く、非常に面白い。「魔女狩り」のイメージは人によって違うと思うが、時代と状況によって色々な様相があるようだ。たとえば、単なる異教の儀式がwitchcraftと呼ばれいるだけのこともあるし、純粋に政治上・党派上の理由で敵対者を魔女狩りしている場合もあるし、本当に人を呪い殺そうとした人が魔女狩りされている場合もある。まあ人を呪い殺そうとする人は別に現代日本にも普通にいるわけで、昔はもっといただろうし、見つかったら裁かれていた。わたしが一番興味を惹かれるのは集団ヒステリーというか、中央の権力が弱まった時の社会心理学的メカニズムだが、特に理論は提示されないものの、そういう例もことかかない。というか、わたしとしては、魔女狩りにかこつけた変なポストモダンなヨーロッパ近代論とかを読まされるより、これくらいの冷静なよもやま話のほうが学ぶことが多い気がする。これは翻訳したら売れると思う。

Miscellaneous talks about witchcraft or witch-hunting. It does not a unified grand theory, but fascinating. Honestly, I hate those profound theories like "to understand witchcraft is to understand modern Europe". I love Gaskill's candid way of presenting historical facts and brief overview of wide range of thinking.

Oxford Univ Pr (T) (2010/5/20)
ISBN-13: 978-0199236954

Andy Thompson "Native British Trees"

Elmやらashやらhazelやら、日本で言えば銀杏とか松とか杉とか、普通の木の図鑑。図鑑と言ってもwooden booksなので全部イラストだ。内容的に特に科学的でも文学的でもない。博物学的興味というか。

Descriptions and illustrations.

Wooden Books (2005/2/15)
978-1904263326

2014年6月8日日曜日

Christopher Nobes "Accounting a Very Short Introduction: A Very Short Introduction"

会計(学)の初歩の初歩。こう言っているわたしが日商簿記2級とBATIC Accountant Levelを所持していることを考慮しても、まあ、高校生でも読める程度だ。範囲としては、商業簿記・工業簿記の説明も浅くあるが、他にも財務諸表の見方とか監査の仕事とか歴史的転回とか国際的な基準(IFRSとか)をまんべんなく薄く解説。日本で言えば、「社長のための経理の本」みたいなのよりはやや学問的だが、レベル的には大して変わらない。個人的には、中途半端な解説書を読むより、単に日商簿記を取るほうが余程良いと思うが、まあ会計学をこれから学ぶと言う人は、こういう本も一冊くらい読んでおいて損はないかもしれない。

A general introductory guidebook for newbies of accounting.

Oxford Univ Pr (T) (2014/5/27)
978-0199684311

2014年5月13日火曜日

Foster Provost, Tom Fawcett "Data Science for Business"

ある時期から急に「ビッグデータ」というbuzz wordが出現し、それに対応して書かれたような本だが、類書の中でも抜きんでていると思う。米国でも好評のようだ。何でもいいから一冊ということであれば、少しハードでも良ければ、この本を読むのが一番実り多いんじゃないかな。

この手の本の通例として「できるだけ数式は使わないで」という前置きが入るが、その割には結構数式が入り込んでいる。わたしとしては、こういうマネジメント向けに簡易化された技術書は大抵バカにしているが、この本については、数学力に自信がある・数式のほうが理解が速いという人でも読む価値があるだろう。というのも、データサイエンスは範囲が広くて、いずれにせよ全容を把握する本は一冊は読んでおいたほうが良いからだ。

反面、この本を読んでも素人が直ちに何かができるわけではない。ただ、データ分析専門家と相当程度の会話ができるようになるということだ。実際、この分野は専門家といってもいい加減なのが多いし、偽者を見分けるのも重要で、この本に書いてある程度の知識は必要だろう。数値処理に詳しい人間が、幅広いビジネスの視点から見て、有用なデータ分析をするとは限らない。むしろ有害な分析結果を持ってくることもある。

A must read regardless if you are a specialist or not. A great overview on a very vast field.

Oreilly & Associates Inc; 1版 (2013/8/16)
ISBN-13: 978-1449361327

2014年5月1日木曜日

Bernard A. Wood "Human Evolution: A Very Short Introduction"

人類というか、人類以前の猿人とか以降の人類に関する化石研究というか、化石研究史。VSIにありがちな話で、猿人とか原人とか旧人とか新人に関する事実というより、研究史という側面のほうが大きい。無理もないことで、読めばわかることだが、結局、何も分かっていないに近いからだ。そもそも生物の進化の仕組み自体よく分かっていないし、化石も数的に少ない。

A history of the study on fossils of earlier primates.

Oxford Univ Pr (T) (2005/4/30)
978-0192803603

2014年4月22日火曜日

Hector McDonnell "Holy Hills and Pagan Places of Ireland"

アイルランド遺跡案内というか古代自然文化案内というか。あまり文学的説明はなく、ある程度アイルランドを知っているのが前提のようだ。固有名詞がバンバン出てくる割に説明が薄く(というかそんなに深い伝承があるわけでもないのかもしれない)、旅行ガイドみたいに考えてもいいのかもしれない。

A guidebook for Ireland.

Wooden Books (2008/3/20)
ISBN-13: 978-1904263623

2014年3月24日月曜日

Mignon Fogarty "Grammar Girl's 101 Words to Sound Smart (Quick & Dirty Tips)"

単語集だけど、大学入試(SAT)レベルくらいだろう。大学レベルなら知っているべきだが、確かに微妙に気取った感じのする言葉が並んでいる気はする。語源・変遷も含めて解説がしっかりしているのと、用例が実際の使用例から採取されていて長いのが特徴だ。と言っても、薄い本だし、一節が短いので英語学習と思って気軽にお勧めできる。

I guess it is good for SAT or something like that. 101 words to sound pedantic, maybe.

St. Martin's Griffin (2011/11/8)
ISBN-13: 978-0312573461

2014年3月12日水曜日

Ernest Hemingway "The Old Man and the Sea"

名作とされているし短いし英語もそんなに難しくないと思うし、是非なく読んで損はないところ。わたしは好きだが、何も起こらないので退屈する人が多数いても不思議ではない。ハードボイルドとはこういうことだ。

You may find this novel boring, because nothing happens. But I really love it.

Arrow Books; New Ed版 (1994/8/18)
ISBN-13: 978-0099908401

2014年2月23日日曜日

Harry Collis "101 American English Proverbs"

アメリカの諺101選。一ページ一諺だが半分はイラストで残りに使用例。まあまあ面白い。この手の本には多少とも「こんなの聞いたことないよ」みたいなのが含まれているものだが、この本についてはそんなことはほとんどなかった。知っていて損のない諺ばかりで、たとえば英検一級を目指しているとかなら、全部知っていないとダメだろう。

All ESL students must know these 101 proverbs.

McGraw-Hill; 2版 (2009/1/23)
ISBN-13: 978-0071615884

2014年2月22日土曜日

Harry Collis "101 American English Idioms"

タイトル通り、アメリカの慣用句(最後のほうはただの諺だったりするが)を101個集めたもの。一つにつき一ページだが、ページの大半をイラストが占めており、数行実例があるくらいで読むのが楽。まあ、あまり自分で使うのは危険かもしれないが、アメリカ人の会話を理解するには必須だろう。

A good book for ESL students.

McGraw-Hill; 2版 (2007/2/12)
ISBN-13: 978-0071487726

2014年2月21日金曜日

Kenneth O. Morgan "Twentieth-Century Britain: A Very Short Introduction"

政治・経済・文化・社会などから見た普通の学校的二十世紀英国史。短いので面白いところが随分飛ばされている恨みはあるが、英国に興味を持って英語を勉強している人などにも良いと思う。

For British people this book may be too short, for us non-native English readers, this is a very good introduction to the topic, I guess.

Oxford Univ Pr (2005/8/11)
ISBN-13: 978-0192853974

2014年2月19日水曜日

Michael Newman "Socialism: A Very Short Introduction"

社会主義の理論・歴史の解説。理論は常に歴史とともに発展しているので、別々に解説されているわけではない。個人的にはキューバとスウェーデンの例は興味深いところだが、理論重視の人は退屈するようだ。いろいろ考えるところはあるが、社会主義の考え方も政策のレパートリーの一つとして持っておいて損はないというのが妥当なところだろう。社会主義だけでやっていけるわけじゃないのは明白だが、資本主義の考え方だけでやっていけるほど世界は単純でもないし。

A good introduction to socialism. After all, as more options we have and less dogmatic we are, better we manage.

Oxford Univ Pr (2005/9/22)
ISBN-13: 978-0192804310

2014年2月16日日曜日

Rana Mitter "Modern China: A Very Short Introduction"

清末期以降から胡錦濤くらいまでの現代中国史。前半は普通の政治史で、後半は、社会・文化・経済などの各方面の解説。日本語でこういう本はムダに感情的に重くなるし、もちろん中国共産党公認の歴史を読む気にもならないので、VSIだと楽に読める。もともと中国情勢に関する情報は、検閲があるため、英語で読むのが一番という評判である。この本は、面白いし、それなりにバランスも取れているのだろう。ただし、日本人から見ると、チベットやウイグルの問題や、日本を含めた東南アジア各国との領有権問題などについて全く触れられていないのは気になるところではある。どっちにしろ、本を出版しただけで逮捕されたりするような国には住みたくないものだ。この本にしても、中国国内では読めるのかどうか。

A good introduction, though I notice the absence of important themes such as Tibet, Uyghurs, territorial conflicts with south-east Asian countries.

Oxford Univ Pr (2008/4/7)
ISBN-13: 978-0199228027

2014年2月5日水曜日

Bill Wilder "Cloud Architecture Patterns"

クラウドネイティブなシステムを開発する時の基本技術の概説。読みやすい。クラウド特有の問題を広く扱った基本書・教科書と言っていいだろう。例示にWindows Asureが使われているが、この件についてはあまりこだわる必要はない。個人的にはあまりこういう話に下位レベルまで触るようなことは避けたいが、まあ知っておくにこしたことはない。

A very authentic resource for cloud-native developments.

Oreilly & Associates Inc (2012/10/5)
ISBN-13: 978-1449319779

2014年2月4日火曜日

Kaplan "KAPLAN SAT FLASH"

大学入試対策用の600枚のカードだが、1/3が算数・1/3が文法・1/3が単語。おそらく算数は日本で言えば中卒くらいで問題なく、アメリカの大学入試のレベルの低さに衝撃を受ける。文法もTOEICより簡単なくらいではないか・・・。もちろん、この点については、ネイティブが間違える文法と日本人が間違える文法が全然違うということがある。我々としては、単語カードが最も重要だが、通常のSAT用の単語集よりかなり易しい気がした。少なくとも、わたしとしては、知らない単語はほとんどなかった。もっとも、TOEICよりは遥かに難しいが、英検一級には遠く及ばない感じ。自分で単語帳を作る手間すら惜しむようなわたしのような人種には最適だ。

1200 cards included. 400 math cards: too easy for Japanese high school. 400 grammar cards: for natives, maybe OK. for us, a bit too easy; foreigners do not make this sort of mistakes. 400 vocabulary cards, great.

Kaplan Publishing; 4th版 (2011/11/2)
ISBN-13: 978-1609781125

2014年2月3日月曜日

Stephen Mumford, Rani Lill Anjum "Causation: A Very Short Introduction"

「因果関係とは何か」という件についての形而上学入門書。ヒューム・カントあたりから始まり、途中でアリストテレスなどに逆戻りしたりするが、基本的には突っ込みどころの多い説の検討をして次の説に移るという感じでまんべんなく各派閥が紹介されている。最終的にはベイジアンネットワークにまで進んでいる。因果関係は、形而上学の中でも最も収拾のつかない領域と言え、現に因果関係を表す論理記号とか電子回路もないわけだが、その分それほどテクニカルじゃないところで考えることも多いし、哲学の入門書としても良いのではないかと思う。特に最後の確率統計的な解釈のあたりは、理系の人でも深く考えることがあるのではないかと思う。

Well written. So organized as possible. It is still messy chiefly because the subject itself is messy. The authors guide through main schools.

Oxford Univ Pr (T) (2014/01)
978-0199684434

2014年1月31日金曜日

Annie Heminway "Better Reading French, 2nd Edition"

これはフランス語の読本として英語圏では絶賛されているようだ。主題・難易度が多彩な多数な文章を収録し、それぞれ内容的・文法的に気の利いた問題が付属、最後に解答例もあるので独習も可能であり、ほとんどこの種の本の完成形と言っていいのではないか。レベルはさまざまではあるが、仏検2級とかDELF B1くらいのレベル。一応一通り文法を終えたくらいなら着手できるだろう。

とはいえ、個人的にはやはりこういう読本の類は苦手で、専門書のほうが楽ではある。しかし、こういう一般的フランス語力もつけたほうがいいのかねえ。

A very good reader. Perfect.

McGraw-Hill; 2版 (2011/10/6)
ISBN-13: 978-0071770293

2014年1月30日木曜日

Ann Dix "Teeline Fast"

Teelineとは英語の速記術で、これはその入門書。フランス語のディクテで、「全部聞き取れているのに書ききれない」というフラストレーションから買ってみたが、買ってから分かったが、Teelineは基本的に英語向けである。結局、なかなか独習は難しいという結論である。まあ、これを参考に独自の速記法を開発したりしてもいいかもしれない。

A good primer to Teeline system.

Heinemann (2012/2/8)
ISBN-13: 978-0435453527

R. D. Laing "The Divided Self: An Existential Study in Sanity and Madness"

本棚から発掘した・・・。いわゆる「反精神医学」というもので、レインは実存主義哲学の精神分裂病への応用の代表と言える。結局、精神病の治療法としては全く効果がなかったようだが、わたしにとっては、後にも先にもこれほど衝撃を受けた本はない。哲学に深入りする切っ掛けになった忌むべき本である。以後、レインの書いたものは自伝に至るまでほぼ全部読んだし、ミンコフスキーだの木村敏だの読みまくったものだ。今となって思えば、レインの言っていることは誰にでもどの家庭でも多少はあることで、正気と病気の違いは、単にそこにどれだけ執着しているかだけの差でしかない。差が出る原因は遺伝なのか何なのかよく分からないが、実存的問題が精神病を起こすというわけではないようだ。まあそれはそれとして、実存哲学の入門書として悪くないだろう。実存哲学自体が既に滅亡しているんでアレだが・・・。

A good introduction to existentialism.

Penguin Books; Reprint版 (1965/8/30)
ISBN-13: 978-0140135374

2014年1月24日金曜日

Mark D. Chapman "Anglicanism: A Very Short Introduction"

このタイトルで意味が分かる人は少ないと思うが、要は英国国教会(とその仲間)の歴史である。仲間というのは、英国国教会の流れを組む教会は英国以外のアメリカやインドなどにも存在し、なんでそんなことが可能なのか理解できないが、日本にまで存在するのである。内容的にはかなりマニアックというか、内部にいる人にしかここまで深い知識は必要ないというようなくらいだ。ガチの信者でなければ、英国史の一面として読む分には面白い。英国通を目指すならこの本は必読かもしれない。

わたしはというと、わけあって、キリスト教自体にはそこそこ詳しいが、今まで英国国教会についての本は読んだことがなかった。一般的な知識としては、直接的には国王が離婚するためにローマ・カトリックから領内の教会をご都合主義的に強権で自分の支配下においた組織であり、実際この本でもその通りに記述されている。どうもこのあたりのドライさと信仰心の両立は、キリスト教についてはいつも不可解に思うところだ。

Very unique and amusing.

Oxford Univ Pr (2006/7/27)
ISBN-13: 978-0192806932

Andrew King "Stars: A Very Short Introduction"

星の一生の概説・・・というと中高生向きの科学書にありがちなテーマに思えるが、高校程度の地学と物理くらいの知識がないと分かりにくいところもあるような気がする。基本的にはH-R図に沿って解説されるが、最後のほう、コンパクト星と連星系あたりの話は、少なくともわたしは地学の時間に聞いたことがない。だいたい、高校の地学は博物学みたいなところもあり、星の進化については「そういうものだ」ということで、原理などの解説は少なかったが、ここではさらに深く解説されている。ここで必然的に物理の知識も多少は必要になる。志の高い高校生なら、わりと良さげな翻訳も出ているので読めそうだ。

Fascinating. The author explains how stars evolve and how we know that, following the "H-R diagram". Maybe a bit difficult for laymen.

Oxford Univ Pr (2012/9/7)
ISBN-13: 978-0199602926

2014年1月21日火曜日

Philip V. Bohlman "World Music: A Very Short Introduction"

CDショップの「ワールドミュージック」の棚に並んでいるような音楽に関する概説というか、音楽人類学的な雑駁な議論。要は民族音楽の話で、雑駁だが著者としては一貫して民族音楽の他者性の利用のされ方に関心があるようだ。世界音楽と言っても所詮西洋の観点からの整理に過ぎず文化帝国主義云々とか、国家主義者によって民族音楽が保護活用されて云々とか、逆に反体制派に「土着」とかいう名目で民族音楽が利用されて云々とか、まあそんなこんなで。特段画期的な考察があるわけではなく、現在の音楽流通の様子を眺めている。

個人的には、フランス語の勉強をしていると、やたらアフリカの音楽に学びとかいうミュージシャンのインタビューを聞くことが多く、もちろん旧植民地という事情があるのだが、正直なところ、ほぼ全員が同じようなことしか言っていない。それも今に始まったことではないのだろう。民族の独自性を称揚するはずの国歌が、みんな同じに聴こえるという絶望的な現実はよく考える価値がある気がする。もっと小さなレベルに行くと、どこの学校の校歌も同じに聴こえるのと同じ現象なのだろうか。このあたり、論理のメスの入りにくいところである。

It presents a wide range of phenomena of so-called "world music". Miscellaneous themes, but it seems that the author constantly is intrigued by various ways by which "ethnicity" is exploited for political causes.

Oxford Univ Pr (T) (2002/8/29)
ISBN-13: 978-0192854292

2014年1月8日水曜日

Jonathan Slack "Stem Cells: A Very Short Introduction"

幹細胞に関する概説書。最初に簡単な細胞の生物学の解説。続いて、ES細胞・iPS細胞・組織特異的幹細胞(tissue-specific stem cell)の科学技術的解説と応用例の解説。最後に幹細胞研究の将来展望と若干の政治学など。重点はあくまで科学・技術・臨床の解説にあり、倫理や扇情的な未来予測については記述は薄い。特にiPS細胞については非現実的な解説書や報道が多い中、この本はVSIの中でも名著と言える。少し難しいかもしれないが、高校程度の生物学の知識があれば読めるんじゃないかと思う。医学部生が読んでもいいのではないか。

というのも、この本でも主張されていることだが、とにかくiPS細胞の臨床応用については、大衆の期待が高いし、科学者のほうでも予算獲得のため、あまり熱狂に水を差すようなことを言わないことになっている。かくして金集めのために詐欺的な宣伝も行われるし、新聞も「世紀の誤報」をやってくれるわけだ。もちろん、この件については、日本も最先端の技術を誇っているはずであり、現に京大や山中教授の本もあるが、この淡々とした本も基礎科学の把握に有効だ。少なくとも、いい加減な新聞社やジャーナリストが書いた物に騙されなくなるだろう。

A great overview of technologies around stem cells.

Oxford Univ Pr (2012/3/24)
ISBN-13: 978-0199603381

2014年1月5日日曜日

Daniel Freeman, Jason Freeman "Anxiety: A Very Short Introduction"

タイトルが短過ぎて意味が分からないのはVSIの毎度のことだ。基本的には、恐怖症・社会恐怖症(対人恐怖症)・パニック障害・強迫神経症・PTSDなどの概説。各症状について疫学的・神経学的・遺伝的・心理的な解説がされているが、いずれにせよ現在ではCBT(Cognitive Behaviour Therapy: 認知行動療法)が目覚ましい成功を挙げているので、心理的なメカニズムの解説(と言っても仮説の域を出ないが)が中心になる。対策としてはCBTが中心だが、それほど複雑な話でもないし、悩んでいる人はさっさと医者にかかったほうがよい。まあ、医学的に診断を下されるまでいかなくても、誰しも心配・不安の類は日常的に経験することだし、心理メカニズムの解説は色々面白い。わたしとしては、自分自身もかつては結構な心配性だったことがあるし(坐禅で治った)、周囲にも絵に描いたような強迫神経症とか閉所恐怖症の人もいるので、連中が英語が読めるのなら推薦したいところだ。

A general account of phobias, PDST, panic disorder, etc. CBT is successive enough now, so psychological account is the main theme.

Oxford Univ Pr (2012/7/5)
ISBN-13: 978-0199567157