2020年10月16日金曜日

Curt Siodmak "Donovan's Brain" [ドノヴァンの脳髄]

これは面白くて二日で読んだ。実際、何度も映画になり、翻訳もされている。マッドサイエンティストが脳を培養器に浮かべている、という古典的なホラーSFの絵を確立した名作だ。1943年の出版らしい。

ネタバレしない程度に言うと、脳を生体外で生かす研究をしている医者が、事故で偶然生きている人間の脳を盗み出すことに成功して培養器で研究し始める。テレパシーで脳の思考を読み取ることに成功するが、この脳が元富豪かつ極悪人で、そのうち医者の体を乗っ取って犯罪的なことをし始めるという…。

良く言えばハードボイルド、悪く言えば何の工夫もない文章で、最初のうちはそんなに面白くないような気もしたが、どんどん謎が深まっていく。謎というのは脳の構造の謎ではなくて、培養器の中の脳が科学者を操って何をしようとしているのかという謎で、そんなに複雑すぎることもなく、わたしでもついていける話だ。

基本的にはこの医者の日記という形式だが、この医者自体がそもそもサイコパスで、サイコパスの主観手記はそれだけで面白い。ただ、後半になると、脳のほうがそれを上回るサイコパスぶりを発揮し始めて、医者は邪悪な霊に体を乗っ取られた正常人みたいなスタンスになり、それはそれで面白いが、面白さの種類が変わっている。

この小説は、児童向けにも何度も翻訳されていて、わたしも小学生の頃一度読んだ記憶がある。翻訳というより翻案に近かったと思うが、今原作を読んだ感じのほうが面白い気がした。

The horror SF with the image of "a brain in a test tube".

ISBN-13 : 978-1584450788
Pulpless.Com Inc (1999/7/4)
言語: : 英語

2020年10月13日火曜日

Matthew Cobb "Smell: A Very Short Introduction" [嗅覚:非常に短い入門]

目次:1.どのように我々は嗅ぐか 2.遺伝子で嗅ぐ 3.においの信号 4.においと位置と記憶 5.においの生態学 6.文化の中のにおい 7.未来のにおい

においに関するあらゆる話というようなことで、とにかく該博で、一体何の専門家なのか分からない。こういう人は例えば第六章なんかは、それだけのために急に文献をリサーチしているのだろうか…。というような印象だが、実際には多分、昆虫の嗅覚の専門家なのだろう。もともと昆虫の話は面白話が多いものだが、この本でも一番熱いのは昆虫の話だ。

人間の話もあることはある。なんでも雄豚の唾液に含まれるアンドロステノンという物質は豚に対してはフェロモンとして作用するが、このにおいは人によって良いにおいと言う人と臭いという人がはっきり分かれ、両者に対応するDNAのシーケンスが判明している。つまり、DNAシーケンスからその人がアンドロステノンを良いにおいと言うか臭いというかが正確に予測できるし、逆も予測できる。そしてそれが豚肉の好き嫌いにも影響していることが分かっており、豚肉を食べるとか食べないとかは文化とか宗教というより、その下にある遺伝子の問題に過ぎないのではないかとか云々。

という話もあるが、やはりこの本の中心は昆虫なんで、人間の話は期待しないほうが良い。人間については、人間のフェロモンというものは未だ発見されておらず、そんなものを謳う香水の類は全部インチキとか。昆虫の話はそれなりにグロかったりするが、虫好きの人は平気だろう。わたしとしては、昆虫にあまり興味がないが、たまにはこういう話も面白かった。

関係ないが、この本を読んでいる間に神奈川県東部で異臭騒ぎが頻発していてまだ原因不明である。神奈川県の東京湾側は埋め立て地で、もともと水が淀んでいて掘削すると臭いらしい。わたしとしては数百年のうちに蓄積した有機物がここのところのステイホームでついに飽和して青潮が発生したのではないかと思っている。そんなことはこの本と関係なく、この本は悪臭公害のことはほとんど書いていないが、火星の表面は鉄とマグネシウムと硫黄なので、人が呼吸できる大気を作っても臭くて住めないとかそんなことは書いてある。

A book for insect lovers....

ISBN-13 : 978-0198825258
Oxford Univ Pr (2020/7/1)
言語:英語

2020年10月12日月曜日

"Sports Illustrated 2021 Swimsuit Calendar" [スポーツイラストレイテッド2021水着カレンダー]

そろそろ来年のカレンダーの手配をする時期で、今年はこれを自室で使っているが、来年はこれを職場に置こうかと…。わたしの机の上なんか覗き込まないと見えない。今年はLiz Climoだったが、見たことがあるマンガが多い。この日めくり+月カレンダーが毎日ついているというパターンは日本でもあると良いのだが。これには日本の祝日が書いていないという重大な弱点があるが、一応机の上がリゾート気分にはなる。

A good old plain day-to-day calendar.

ISBN-13 : 978-1438874128
Dateworks (2020/7/15)
言語:英語

2020年10月7日水曜日

Jeff Kinney "Rowley Jefferson's Awesome Friendly Adventure" [ローリー・ジェファーソンの恐ろしくフレンドリーな冒険]

Diary of a Wimpy Kidのスピンオフの二冊目。日本語訳が出ないのは残念なことだ。最初あまり面白くないのかと思ったが、そんなことはなかった。翻訳すれば売れそうだが、本編のがどれだけ売れているのかにもよるか…。

こういう構成がよくあるのかどうか知らないが、ローリーが書く物語と、それに対するグレッグの批評パートが交互に来る。純真な作者と金儲けとクレーマーの心配ばかり考えている編集者といったところだろうか。最終的には伏線が全部回収されているし、かなり練られたプロットに思われる。我々が知っているローリーの書ける代物ではないというのが正直なところだが、面白いからいいだろう。読むのに半日もかからない。

I love this series.

ISBN-13 : 978-1419749094
出版社 : Harry N. Abrams (2020/8/4)
言語: : 英語