2014年6月30日月曜日

Hermione Lee "Biography: A Very Short Introduction"

「伝記」というジャンルの歴史。著者は英文学関係の伝記を書くのが専門のようで、出てくる例も基本的にそんな感じ。伝記と言っても、ただの歴史みたいなところから、「模範的な生き方」を示すものとか、「作品解読のための伝記」とか、心理分析とか、まあ、色々な見方というか書き方があるわけで。著者自身が伝記作家なので、色々な方法論などを研究した集大成みたいなものかもしれない。良い本だと思うし、特に伝記を書こうというような人には必読書だと思うが、何分にも例示されるのがイギリス人ばかりなので、翻訳してもあまり一般には売れないかもしれない。

It describes varieties of ways to telling someone's biography. Interesting.

Oxford Univ Pr(2009/8/31)
ISBN-13: 978-0199533541

2014年6月26日木曜日

R. D. Laing "Wisdom, Madness and Folly"

レインの著作をたいてい読み終えてしまってから、最後に読んだ本。わたしがレインを読み始めた頃は、既にいわゆる反精神医学というのも失敗が明らかになっていた頃だったと思う。レインは、わたしにとっては、精神分析からもっと広大な哲学の世界への懸け橋だった。もちろん、実存主義はとっくに力を失っていて、みんながバカにしていたが。わたしの理解では、レインは実存主義的な心理学を分裂病(統合失調症)患者に適用して、いわば正常人に対するのと同じように分析できると考えたんだと思う。現状はというと、実存主義は哲学としては現象学にオーバーライドされ、精神病の理解としては、脳科学ないし行動療法のようなもっと単純な話に完全に圧倒されている。二つの流れに共通しているのは、実存主義が絶対視していた自己意識というものを軽視しようとする風だと思うが、そんな簡単に済む話かねえと最近は思う。この本についてはエッセイ的なところでもあるし、わりと入りやすいところだろう。

An autobiography and also a good intro to Laing.

Canongate Pub Ltd(1999/03) ISBN-13: 978-0862418311

John Stuart Mill "The Autobiography of John Stuart Mill"

これを読んだのはかなり前だが、ミルの頭の良さというより、そもそもの家庭環境とか受けた教育とかを知るにつけて絶望するしかない。今時あまりヘヴィな人文的教養とか流行らないのかもしれないが、もしかすると、文学部などで大学院に進学しようなどと考えている、さして裕福でない家庭の出身者は、早めにこういう本を読んで絶望しておいたほうが良いのかもしれない。

This book brings to those who want to be a scholar in so-called liberal arts a desperation, which I think a good thing.

ARC Manor (2008/9/1)
ISBN-13: 978-1604503142

2014年6月25日水曜日

Donald Winch "Malthus: A Very Short Introduction"

まあ、昔から経済学者の考えることは変わらないというか。中心的な主題はリカードとの対立を軸に語られるので、一応経済学史の知識がないと読みにくいと思う。

A good overview on Malthus's scholarship.

Oxford Univ Pr (2013/7/24)
ISBN-13: 978-0199670413

John Dunn "Locke: A Very Short Introduction"

ロックの伝記・思想の概要。有名ではあるが、名前だけ教科書で知っているという多数の有名人の一人で、何か一冊読んでおくという場合にはVSIは外れは少ない。この本も読みやすいし、類書も少ないんじゃないかと思う。個人的には信頼trustの概念は注目だ。政治哲学で「信頼」という概念は貧弱過ぎて、何か別のものに還元しないと成立しないような感じが常識化しているが、本当にそうなのかどうかはもう少し考える必要があるのかもしれない。それはそれとして、著者Dunnの立場としては、Lockeは基本的に悲劇的に失敗した思想家だそうで、まあハードな理論化には完全に失敗しているのかもしれないが、良識のある人だったんだとは思う。

A good intro to Lockes's scholarship.

Oxford Univ Pr(2003/7/31)
ISBN-13: 978-0192803948

Paul Cartledge "Ancient Greece: A Very Short Introduction"

一般的な古代ギリシア史だが、都市毎に論じられている点が特徴。スケールが違うが、日本の戦国時代を大名ごとに編集したようなものだ。というわけで、予備知識として、一応、古代ギリシア全体の漠然とした通史でも把握していないと、いきなりこれは読みにくいかもしれない。高校の世界史レベルでもいいかと思う。わたしは古典ギリシア語もやっていたことがあるので、この本はなかなか萌えるものがあったが、多少とも古代ギリシアに興味があれば楽しく読めるだろう。

Concise histories of 11 ancient Greek cities. Maybe you need to have some knowledge about ancient Greece beforehand. Fascinating.

Oxford Univ Pr (2011/11/10)
ISBN-13: 978-0199601349

2014年6月24日火曜日

Germaine Greer "Shakespeare: A Very Short Introduction"

これは・・・。シェイクスピア入門ということではなくて、シェイクスピアの世界に関するランダムな逍遥批評というところか。初心者が読むのには適していないし、ある程度ハマっていないと楽しくないだろう。わたしとしては、実はあまりシェイクスピアを原文読みしたことはなく、翻訳劇しか知らないが、にしてもあまり感心しなかった。

Not an introduction but random thoughts about Shakespeare's world.

Oxford Univ Pr (T) (2002/5/16)
ISBN-13: 978-0192802491

Terrell Carver "Engels: A Very Short Introduction"

エンゲルスについては、「マルクスの第二バイオリン」「第二バイオリンに謝れ」というやり取りしか知らないくらいだが、この本もやはりマルクスとエンゲルスの差異を表すのに紙幅を割かれている。どっちにしろマルクス主義として一括されてしまうが、歴史に興味がなくても、一応これくらい読んでおいたらいいかもれしれない。

A good book which explains the difference between Engels and Marx.

Oxford Univ Pr (2003/7/31)
ISBN-13: 978-0192804662

Peter Singer "Marx: A Very Short Introduction"

しばらくVSIの思想家本を読んでいるが、これは出色だ。著者はVSIのHegelも書いていて、こちらも悪くない。マルクスに関してはそこそこ色々読んでいるが、入門書としては一番だと思う。特に日本語だと、ムダに戦闘的だったり晦渋だったりバカだったりするし。

個人的には、少なくとも小学校は日教組全面支配で、今から思うと完全にバカ共産主義の典型的な教育で酷い被害を受けたし、大学は大学で平気で古いマルクス主義経済学をやっていて、まあ話としては面白いが、学問的レベルが激低だったりで、いわゆるマルクス主義者には嫌悪感しかない。本書にもバクーニンの異議(結局酷い独裁政権ができるだけでしょ)が挙げられているが、別にソ連が崩壊しなくても日教組レベルで恐ろしい状況が生まれていたわけで、あの状況を恐ろしいと認識できない人間が共産主義なんかやっているんだろう。ゾッとする。いや、逆に完全右傾化教育も同様に酷いと思うが。

しかし、そんなわけでマルクス研究者は、経済学から哲学方向へシフトし、特にフランス語圏からその潮流が日本に流れ込んだこともあり、好き嫌いはさておき、マルクスの生み出した概念などは我々の思考に完全に入り込んでいる。特に近頃のワーキングプアとかブラック企業とかいう話を聞いていると、普通にマルクス主義が復活するとは思えないが、労働から疎外されるという主張は一定の説得力を持つようになるだろう。承認欲求とかいう言葉も流行っていて、まあ基本的には労働していない人間が騒いでいるが、人間らしい労働こそが真っ当な承認欲求を満たす方法だと主張することもできるだろう。そういう方向でも一つの示唆にはなるかもしれない。別に今さらマルクス主義者が増えたりもしないだろうし、こういう本で見直してみてもいいと思う。

Very good intro. It is not probable that Marxists increase at this stage of history. Now we can discuss Marx's legacy without much ado.

Oxford Univ Pr (2001/1/18)
ISBN-13: 978-0192854056

2014年6月23日月曜日

Jonathan Culler "Barthes: A Very Short Introduction"

多方面にわたるロラン・バルトの活動をコンパクトに解説。わたしとしては、懐かしいというしかないが、久しぶりに何か読んでみようかというくらいの気にはなった。文芸批評とか、そういうのに興味のある人にはお勧めだが、最近は流行らないかね。

A good intro to Roland Barthesる

Oxford Univ Pr (2002/5/16)
ISBN-13: 978-0192801593

Jonathan Howard "Darwin: A Very Short Introduction"

中心はダーウィンが進化論を発明する過程の紹介。我々としては進化論は常識化しているし、キリスト教徒でもないので衝撃を受けることもないが、ちとこのあたりの感覚が西洋人と違う。ただ、キリスト教抜きにしても、進化論を確立するのは概念的に大変だったのは確からしい。地質学は当時既に、色々な景観が現に観察されている諸現象から生成されえることを示しており、同じことをダーウィンは生物学についてやったということだが、その背景が丁寧に追われている。あと、いわゆるダーウィニズムは政治などに利用されることもあるが、そのあたりはあまり深く探究されない。

A good intro to Darwin's discovery and theorization.

Oxford Univ Pr(2001/6/7)
ISBN-13: 978-0192854544

Anthony Stevens "Jung: A Very Short Introduction"

ユンクに関しては日本では河合隼雄のイメージで流布しており、わたしとしても、「ユリイカ」を読んでいるややオカルト気味の教育学部の女子が好き好んでいるというイメージで、特に個人的には尊敬していない。まあ、一冊ということなら、この本は明らかにユンクに肩入れしているが、悪くないところだろう。部分的にはフロイトより明らかに正しいことも言っていて、意識だろうと無意識だろうと妄想だろうと、全く個人的なものであることなんかあり得ない。しかしまあ、オカルトと言って悪ければ、文学だろう。そして、幻想文学を何かしらの形で読み解いて何かに還元するという行為は、ジョークの解説と同じで、例外なく面白くないものだ。

A good intro to Jung.

Susanne Reichert, Horst Kopleck, Rob Scriven, Gaelle Amiot-Cadey "Collins German Grammar (Collins Easy Learning)"

ドイツ語の文法を一冊にまとめたもの。これのフランス語用(Collins French Grammar)も非常に優れた本だが、ドイツ語用も同様だ。文法参考書的にも使えるが、ドイツ語の勉強を始めたら、早いうちに読んでしまったほうがいい。ドイツ語文法の習得なんて長い道のりのような気もするが、要するにこの本に書いてあることが全部で、丸暗記の得意な人なら数週間で全部叩き込めるだろう。例文に全部訳文がついているのも重要なポイントだ。

Definitely the best book for learning German grammar. When you have read through this short book, all you need will be ample vocabulary.

Harpercollins Pub Ltd(2011/05)
ISBN-13: 978-0007367818

2014年6月20日金曜日

Anthony Storr "Freud: A Very Short Introduction"

フロイトの伝記込の入門書だが、ベーシックなところで評価しつつも、壮大な精神分析体系になるとわりと批判的。わたしとしては穏当なところだと思う。個人的には昔、精神分析にハマったことがあり、それが、わたしが哲学などを勉強するに至った元々の出発点で、今となっては懐かしい。結局、わたしが精神分析とそれに連関するような形で実存主義哲学から学んだのは、人類に対する悪意だったような気がする。Very short introductionで言えば、Dreamingなんかは、夢判断という狭い範囲ではあるが、フロイトを全面否定している。わたしとしても、今となってはあまりフロイトを読もうという気にならないのだが、キリスト教と同じで、別に信じていなくても、その用語とか概念を何となく使ってしまっているということはあるし・・・。

A well-balance (I suppose) intro to Freud.

Oxford Univ Pr (2001/6/28)
ISBN-13: 978-0192854551

Anthony Storr "Solitude: A Return to the Self"

孤独の価値を説いた本ということで、わたしがこういう本を見逃すはずもなく、十年以上前に読んだ。今でも不滅の名著みたいに読み継がれているようだ。ただ、当時から思っていたし、今見直しても同じことだが、なんか天才というか創造性のある人にとって孤独が重要だと言われても、普通の何でもない孤独な人になんか届くのかなとは思う。クリエイティブな仕事で孤独を正当化できる人はそれでいいんじゃないかと思うが・・・。

A recommendation of solitude for creative people.

Free Press(2005/10/3)
ISBN-13: 978-0743280747

Henry Chadwick "Augustine: A Very Short Introduction"

アウグスティヌスの伝記と思想。他に類書を知らないけど、多分、コンパクトで最善の部類だろう。哲学史を勉強していると、西洋哲学はほとんどがアウグスティヌスへ何らかの形で言及していて、なんとなくイメージを持っているという人が大半だと思う。とりあえず、このあたりを読んでおくと、少し理解が変わってくるかもしれない。まあ、個人的には、あまり共感できない人ではある。

A good (or the only) intro to Augustine.

Oxford Univ Pr(2001/6/7)
ISBN-13: 978-0192854520

2014年6月18日水曜日

Robert Wokler "Rousseau: A Very Short Introduction"

正直なところ、わたしはデリダにネタにされているルソーしか知らないが、おそらくルソーがデリダの議論を理解してもほとんど反論しなかったと思う。ルソーと言えば、堕落した文明状態に高貴な自然状態を対置したようなことだが、別に彼はこれを事実として主張したわけではないからだ。しかし、まあ、彼の言う自然状態が恣意的なものでないという保証もないわけで、一種の文明批評と理解するくらいだろうか。

A good intro to Rousseau.

Oxford Univ Pr (2001/12/6)
ISBN-13: 978-0192801982

Simon Blackburn "Ethics: A Very Short Introduction"

倫理学入門ということだが、まあ基本的な理論と問題点の指摘を軸に話をしていて、最近ありがちな、極端な例を持ち出して「君たちならどうする」みたいなスタンスではない。穏当なところで、類書の中でもお勧めの部類だろう。カントとかハバマスの企てには敬意を払うが、実際のところ、単一の原理から出発して全ての倫理問題に対する判断を自動化しようというようなのも流行らないというか、無理なことはわかっている。なんならキリスト教の唯一神を前提にしても無理だろう。真面目な人は神が死んだ→善悪なんか存在しないから何でもできると考えて、それを実践しようとするが、それが無理なのもよく分かっている。別にそれはキリスト教の残滓のせいとかではなく、そもそも人間はそんな概念では存在していないので、完全な利己主義も内部矛盾を起こして崩壊する。ドストエフスキーはそういうことだとわたしは理解している。読んでいて思ったのは、倫理に対する科学的なアプローチ、つまり、無あるいは勝手な第一原理から倫理を構築しようとするのではなく、既に存在する倫理から共通する法則などを探っていく人類学というか文法学みたいなアプローチのほうが先がある気がする。倫理はとりとめのない世界で、これくらいとりとめのない本が適切だろう。

A good intro to ethics, among many other similar books abundant.

Oxford Univ Pr (T) (2009/9/14)
ISBN-13: 978-0192804426

2014年6月17日火曜日

Quentin Skinner "Machiavelli: A Very Short Introduction"

伝記と君主論の解釈部分、さらに哲学者としての面と歴史学者としての仕事を概観。マキャベルリと言えば、偽善を臆面もなく痛快に主張したことで他の人文主義者と一線を画す印象だが、この本を読んでもその通りだ。ただ、君主の徳を統治の基本に置いているのは人文主義一般と共通で、ただ徳の解釈がちょっと違うというところだろう。別に我々は人文主義者ではないので、一々彼の所説に衝撃を受けたりしないが、なかなか過酷な人生で読んでいて退屈はしなかった。

A good overview on Machiavelli's works.

Oxford Univ Pr(2001/1/18)
ISBN-13: 978-0192854070

Richard Tuck "Hobbes: A Very Short Introduction"

ホッブズの入門書。他に似たような本を読んだことがない(存在しないのかも)けど、意外に面白い。最大の理由は、わたしが人文主義者をあまり知らないからで、時代の空気を読めたからだが、やはり大きな理由として、そもそもホッブズの考え方が、現代人にわりと近いからだろう。ルネサンスの懐疑論が政治に応用されたらこういうことにならざるを得ない。万人の万人に対する闘争とという状況はわりと誰にでもわかりやすいし、ゲーム理論は故意なのか偶然なのか、ほぼそういう前提に組み立てられていて、この本でも後半で言及される。

The best sole intro to Hobbes.

Oxford Univ Pr (T) (2002/8/29)
ISBN-13: 978-0192802552

2014年6月16日月曜日

E. P. Sanders "Paul: A Very Short Introduction"

使徒パウロの思想というか神学の読解。もちろん多少キリスト教の知識は必要だが、別にわたしのような異教徒でも普通に感心して読める。キリスト教には明らかに説明の必要な矛盾、たとえば旧約聖書と新約聖書で神が言っていることが違うとか、なんで全知全能の神の作った世界が悪に満ちているのとか、いくつもあり、辻褄を合わせるために神学というか哲学が発展していく。この本でのパウロ読解は、わりとそういう側面からパウロがどう考えていたかを考えていく。著者はユダヤ教研究の大家だそうで、パウロの思考を当時の想定で読むのには最適任者のようだ。

Fascinating and logical even for a pagan like me.

Oxford Univ Pr (T); New Ed版 (2001/6/7)
ISBN-13: 978-0192854513

Peter Singer "Hegel: A Very Short Introduction"

ヘーゲルの入門書はほかにいくらでもあるが、これは割と身近な問題と関係づけて話してくれるので、最も親しみやすい部類だろう。西洋哲学が分かりにくいのは、主にキリスト教由来の未確認の前提が多すぎるせいだが、たいていが元はヘーゲルに戻れる。そのヘーゲルも未確認の勝手な前提の中で理屈をこね回しているような印象が強いが、それでもカントに比べれば前提を破壊して進んでいる。わたしの考えでは、西洋哲学は未確認の前提を破壊する歴史だが、最初からそんな前提を共有していないと、何と戦っているのか分からないというような・・・。ともあれ、ヘーゲル入門としては良い。

A good introduction to Hegel. Readable enough.

Oxford Univ Pr (2001/12/6)
ISBN-13: 978-0192801975

Patrick Gardiner "Kierkegaard: A Very Short Introduction"

キルケゴールの若干の伝記と思想の要約。キルケゴールについては、日本で最も読まれている「死に至る病」「不安の概念」「誘惑者の日記」しか読んでいないが、それぞれ特に難解なわけでもないし、この本より読みやすいかもしれない。伝記部分については、これらの著書から予想されるような人柄で、全く予想とはずれない。だいたい、クソ真面目な自意識過剰な人がキリスト教、特に偽善の問題に真剣に取り組むと、「死に至る病」みたいなことにならざるを得ないのは自明に思われる。そして、その心理分析は苛烈に鋭いが、にしても勝手・独善的過ぎるというのは、多分、カフカも同じことを感じたのだろう。人を偽善者呼ばわりして傷つける論法の豊富さは、いわゆる実存主義に分類される哲学者に共通だ。唯一絶対神とイエスという実在の歴史上の人物を和解させるだけでも大変なのに、「理性」だの「倫理」だのに加えて「自分」という新たな神を導入すれば、「自分」が酷い目に遭うのは当然だ。ひとまず、この本を読む前に、上の三冊は読んでおいたほうが良いと思うし、できればキリスト教にある程度理解があったほうがいいだろう。

A good introduction, but I recommend that one should read Kierkegaard's several famous books first.

Oxford Univ Pr(2002/5/16)
ISBN-13: 978-0192802569

2014年6月13日金曜日

Jerry Brotton "The Renaissance: A Very Short Introduction"

ルネッサンスを一望するガイド。なぜルネッサンスとかいう現象が発生したのか明らかにならないまま、文芸・芸術に限らず、科学、航海、商業、宗教などほぼ全分野の現象を解説。てんこ盛り過ぎて評判があまり良くないようだが、面白いと思うけどな。個人的には特に人文主義の勃興が面白かったが、やはり、なんでそんなものが勃興したのかはよく分からない。まあ、分かっているみたいに解説されるより良いだろう。そもそもルネッサンスという概念自体が19世紀のナショナリズムの時代に発明されたそうで、事実を過剰に単純化しているのは間違いない。暗黒の中世が唐突に終わって明るいヨーロッパになったようなイメージだが、どうなんかね。関係のない日本人からすると、別にそんなに変わった気もしないが。

A good overview on the "renaissance".

John Heskett "Design: A Very Short Introduction"

タイトルから予想されるように、工業デザインを中心とした、わりとランダムな考察で、特に深みとか体系とかはない。いや、著者の中にはあるのかもしれないが・・・・。日本への言及も多いが、日本でシャワートイレが普及したのは、ビデを別に置くためには住居が狭すぎるからとか。いやまあ確かにそうかもしれないが・・・。

A random treatment on design.

Oxford Univ Pr (2005/9/22)
ISBN-13: 978-0192854469

Robert Skidelsky "Keynes: A Very Short Introduction"

ケインズの伝記少しと思想の変遷を追った本。本書の大部分は90年代、ケインズ経済学が終わったことになっていた頃に書かれているので、「終わったケインズ経済学の総括」みたいなスタンスになっている。今となっては話が違うのはエピローグにある通りで。ケインズというと、人格円満で聡明な活動家みたいなイメージしかなかったが、まあ、そんな完璧な人もいないということらしい。全然経済学の知識がない人が読むのは厳しいが、多少ともケインズに興味があれば、読んで損はないだろう。

An overview of Keynes's economic theories written when everybody thought "Keynensian economics is now dead".

Oxford Univ Pr (2010/11/23)
ISBN-13: 978-0199591640

Ray Monk "Wittgenstein: Duty"

これも読んだのは随分前だが、とにかくヴィトゲンシュタインの伝記の定番で、日本でもそこそこ読まれているらしい。生涯自体面白いし、そもそも時代背景が面白い。あいにくとわたしはヴィトゲンシュタインの哲学がそんなに面白い気がしていないが、ファンなら当然読むべきだろう。

A standard biography of Wittgenstein. Fascinating.

Vintage Books; New Ed版 (1992/10/27)
ISBN-13: 978-0099883708

2014年6月12日木曜日

Gil Troy "The Reagan Revolution: A Very Short Introduction"

レーガンの伝記込の、レーガンの政策の評価。well-balancedとか言われているが、レーガン政権に好意的なのはタイトルからも明らかだ。だいたいが、ベトナム戦争とかでグダグダになったアメリカに愛国心と自信を取り戻した保守派大統領といったところで、この本を読んでも大枠その印象は変わらない。一つ意外だったのは、レーガンにそんなに「バカ」の印象があるのかということだったが、G.W.ブッシュのせいで掻き消されているだけらしい。実際には、そんな極端な保守派でもないし、バカでもなかったということだが、まだ評価するのは早すぎる気もする。

A well-balanced or rather a positive account of Reagan presidency.

Oxford Univ Pr (T) (2009/7/30)
ISBN-13: 978-0195317107

Philip Ball "Molecules: A Very Short Introduction"

タイトルからして謎だが、要は生物化学とか分子生物学とかいう話が中心のポピュラーサイエンス読み物である。従って、学問としての化学の入門書でもないし、工業化学の入門書でもない。ただ、面白い様々な分子が紹介されていくだけの気楽な読み物だ。やたら文芸作品からの引用が多い。個人的には化学という分野は詰んでいるような印象を持っていたが、こうして見ると、いくらでも創意工夫の余地もあるし、生物化学はまだ解明されていない謎が無限にある。

Good reading for a pop science.

Oxford Univ Pr (T) (2003/09)
ISBN-13: 978-0192854308

Richard Bauckham "Jesus: A Very Short Introduction"

これは・・・かなり評判が良いようだが、どう考えても信者向けだろう・・・。筆者の立場ははっきりしていて、もちろん、一応歴史的な人物として四福音書を基本としてイエスを描写するという建前だが、歴史は単なる事実ではなく解釈であると言い切ってから始まっている。もちろん解釈を離れた歴史的事実なんかあるわけないが、わたしのような非信者からすると、やはり解釈に入りすぎている。ひとまず、イエスが行ったとかいう奇蹟とかを字義通り信じていないと、かなり引っかかりながら読むことになるのは間違いない。読みやすいのは事実だが。

I bet this book is for Christians.

Oxford Univ Pr (2011/8/11)
ISBN-13: 978-0199575275

Kenneth Minogue "Politics: A Very Short Introduction"

これも一つのVSIの典型で「自分が自分の分野について普段考えているわりと壮大な色々なこと」を初心者向けと称してつらつら書いたもの。つまり、論文として傍証を固めて提示しようとすると巨大な著書になってしまうが、まあ、ラフに語る分には初心者にも面白いだろうというような。つまり、あまり教科書のように体系だったものではないが、個々の考察については、研究書ではお目にかかれない断言に満ちており、読みやすいし記憶にも残る。たとえばこの本によると西洋は一貫して専制を嫌っていて、それはギリシアvsペルシアの頃からそうなのだそうだ。全体的には特に構造はないが、政治史というか政治体制史というか政治思想史というか。

Miscellaneous thoughts about history of politics or political thinking. Not organized still interesting.

Oxford Univ Pr New Ed版 (2000/6/15)
ISBN-13: 978-0192853882

2014年6月10日火曜日

Malcolm Gaskill "Witchcraft: A Very Short Introduction"

例によってタイトルが短すぎて意味が分からないが、著者は歴史学者で、主題は特に西洋史上の「魔女狩り」である。もちろん魔女自体は特にアフリカなんか今でもいるし、魔女=悪でもないので実際の考察の範囲はもっと広い。特に何か理論が提示されるわけでもなく、ランダムなエピソードと考察みたいな感じだが、基本的に話が上手く、非常に面白い。「魔女狩り」のイメージは人によって違うと思うが、時代と状況によって色々な様相があるようだ。たとえば、単なる異教の儀式がwitchcraftと呼ばれいるだけのこともあるし、純粋に政治上・党派上の理由で敵対者を魔女狩りしている場合もあるし、本当に人を呪い殺そうとした人が魔女狩りされている場合もある。まあ人を呪い殺そうとする人は別に現代日本にも普通にいるわけで、昔はもっといただろうし、見つかったら裁かれていた。わたしが一番興味を惹かれるのは集団ヒステリーというか、中央の権力が弱まった時の社会心理学的メカニズムだが、特に理論は提示されないものの、そういう例もことかかない。というか、わたしとしては、魔女狩りにかこつけた変なポストモダンなヨーロッパ近代論とかを読まされるより、これくらいの冷静なよもやま話のほうが学ぶことが多い気がする。これは翻訳したら売れると思う。

Miscellaneous talks about witchcraft or witch-hunting. It does not a unified grand theory, but fascinating. Honestly, I hate those profound theories like "to understand witchcraft is to understand modern Europe". I love Gaskill's candid way of presenting historical facts and brief overview of wide range of thinking.

Oxford Univ Pr (T) (2010/5/20)
ISBN-13: 978-0199236954

Andy Thompson "Native British Trees"

Elmやらashやらhazelやら、日本で言えば銀杏とか松とか杉とか、普通の木の図鑑。図鑑と言ってもwooden booksなので全部イラストだ。内容的に特に科学的でも文学的でもない。博物学的興味というか。

Descriptions and illustrations.

Wooden Books (2005/2/15)
978-1904263326

2014年6月8日日曜日

Christopher Nobes "Accounting a Very Short Introduction: A Very Short Introduction"

会計(学)の初歩の初歩。こう言っているわたしが日商簿記2級とBATIC Accountant Levelを所持していることを考慮しても、まあ、高校生でも読める程度だ。範囲としては、商業簿記・工業簿記の説明も浅くあるが、他にも財務諸表の見方とか監査の仕事とか歴史的転回とか国際的な基準(IFRSとか)をまんべんなく薄く解説。日本で言えば、「社長のための経理の本」みたいなのよりはやや学問的だが、レベル的には大して変わらない。個人的には、中途半端な解説書を読むより、単に日商簿記を取るほうが余程良いと思うが、まあ会計学をこれから学ぶと言う人は、こういう本も一冊くらい読んでおいて損はないかもしれない。

A general introductory guidebook for newbies of accounting.

Oxford Univ Pr (T) (2014/5/27)
978-0199684311