2023年3月26日日曜日

Molly Bang "Picture This: How Pictures Work" [これを描け:絵はどのように機能するか]

絵の文法というか、特に絵本みたいな絵の中で形や色がどういう印象を与えるか研究したような本。実践的というか、対象読者は絵を描く気のある人ということだろう。わたし自身絵を見るのは好きだが自分では描かないし、こういう本をあまり読まないので説明できないが、とにかく面白かったのは確か。

わたしが絵を見るのが好きなのは、三次元空間の光学をどう二次元に写すかに興味があるからで、世界がどうできているかとか、最終的には人間の視覚世界がどういう構造になっているのか見たいだけなのだが、この本の主題はそういうこととは少しずれている。それよりは絵本みたいにドラマを絵で表す方法が研究されていて、あまり考えたことのない視点だった。無限に探究できる世界のほんの入り口だけ見せられたようなものだ。

Impressive even to a layman like me.

Chronicle Books (2016/8/16)
言語:英語
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-1452151991

2023年3月22日水曜日

Charles Phillips, Melanie Frances "The Sherlock Holmes Escape Book: The Adventure of the British Museum"[シャーロック・ホームズ脱出本:英国博物館の冒険]

システムは前作と同じ。ただ、パズルの量がかなり増えて、よりマニアックになっている。前作と違って、最初の2/3程度はパズルを相当間違えても結局本線に普通に戻れて問題にならない。というか本筋には影響のないパズルも多い。実際のところ全部自力で正解していける人も少ないと思われ、まあ、こういうもんかなという感じ。だいたい二作目は一作目よりマニアックになって、一作目の情緒が失われるもので、これはその典型かと思われる。好みの問題だが、しいて言えばわたしは一作目のほうが好きだ。やはり対象年齢中学生程度だと思うが、なによりパズルが英語なので翻訳するなら大仕事になるし、今時の子供はこんなのやらないかもしれない。要はノベルゲームなので、画面上ならもっと簡単にできてしまう。とはいえ、表紙の物理円盤のギミックとか、特有の魅力があるので、こういうのを一つくらい体験しないのももったいない気がする。

Great, though, I prefer the first volume of this series.

出版社 : Ammonite Pr (2021/3/1)
言語: 英語
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-1781454206

2023年3月15日水曜日

Ormond Sacker, Tobias Willa "The Sherlock Holmes Escape Book: The Adventure of the London Waterworks" [シャーロック・ホームズ脱出本:ロンドン水道の冒険]

ほぼ衝動買いみたいなことだった。

まず表紙がボール紙でしっかり強化されていて円盤が取り付けられている。このギミックにまず惹かれる。この円盤は本書内に出てくるパズルを解くために使用する。内容は一時期流行った脱出ゲームの書籍化だが、紙のノベルゲームみたいなことだ。あるいは昔からあるアドベンチャーゲームブックの形式と言ったほうが分かりやすいかもしれない。パズルの解答によって話が分岐し、例えば「答が青なら19に進む。赤なら25に進む」みたいな感じで次に読むべきページが指定される。基本的にはすべてのパズルに正解しないと最善の結末には到達せず、運の要素はない。

パズルの内容は、中学生くらいなら解ける程度の算数みたいなのも多いが、難しいのは絵からヒントを拾う問題で、目の良い人でもルーペを用意したほうがいいかもしれない。そもそも本文の活字も小さい。解けなくても巻末にヒントがあるし、それでも分からなければ答もある。最善の結末に至るための最も重要なヒントは書いていないようだが、そこはそんなに難しいわけではない。

日本語でも似たような趣旨の脱出ゲーム本はあるが、本書はそれよりはしっかりと読ませるストーリーがある。主人公(読者)がホームズということで、一応ホームズ作品(のタイトル)を知っていたほうがいいが、ググれば簡単に済むことだ。また本書のプレイ時間は「火吹き山の魔法使い」とか「ソーサリー」みたいな膨大なものでもない。あれは確か一冊に400くらい項目があったと思うが、本書は112に過ぎない。すべての分岐を読み切るのも十分可能だ。絵はいかにも昔のヨーロッパの児童書な感じがして、アドベンチャーゲームブックを思い出させる。これは実物を見たら自動的に買ってしまうよな…と思う。

まとめると対象読者は中学生男子というところか…。こんなのが教室に一冊あったら当分盛り上がりそうだ。大人が読んでも面白いと思うが、わたしみたいに脳が中学生の大人が言っても説得力がないかもしれない。ただ、日本の中学生が読めるように翻訳するとなると、パズルが基本的に英語なんで、全部作り直しになりそうだ。絵も描き直しになると思うが、この絵はもったいない。そもそも、この本、一応ペーパーバックではあるが、手に取って物理的に美しい仕上がりになっている。これはシリーズ第一巻なのでこれからどんどん読んでいく。

I love this physically beautiful book. The illustrations are nostalgic.

Ammonite Pr (2019/10/1)
言語: 英語
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-1781453483