2024年3月29日金曜日

Gordon Strong "Stanton Drew: and Its Ancient Stone Circles" [スタントン・ドリュー:古代の環状列石]

Stanton Drew (Amazon.co.jp)

Stanton Drewというのは新石器時代の遺跡でまあまあの観光地らしく、ネットでいくらでも写真が出てくる。この本も基本的にガイドブックとして読まれるだろう。イギリスの遺跡はやたら巨石構造物が多く、だいたい天文現象との関係がどうこうと言われるが、どの程度信用していいのか不明。伝説や復元想像図も色々ある。

あまり関係ない話だが、日本でも毎年一万件近くの遺跡発掘があり、その数だけ○○教育委員会発行××遺跡発掘報告書(△△年)みたいなのが出る。大半は縄文遺跡だった。というのはわたしは昔仕事で無意味にそんなのばかり見ていた時期があった。たいては柱の跡とか排水溝の跡とか囲炉裏の跡とかそんなのばっかりで、測量データばかりで、どうも盛り上がらない。その点イギリスは巨石そのものでも石の跡でも適当に線を引いて石の配置と暦がどうとか、環状列石は輪になって踊っていた人たちが石化したものだとか、消費者用コンテンツが多い。

Wooden Books (2008/3/20)
言語: 英語
ISBN-13: 978-1904263739

2024年3月28日木曜日

Gerald Ponting "British Wild Flowers: Their Naming and Folklore" [イギリスの野生の花:名前と伝説]

British Wild Flowers (Amazon.co.jp)

わたしは野草というか道端に生えている草がかなり好きで、特にこれから春の季節は歩いているのが楽しい。ということで雑草に関する図鑑の類は結構持っているが、洋書はほとんど読んでいない。というのも、日本と外国では植生が違うから…。この本でも、だいたい日本でも同じような草があるとは思うが、実際にはイギリスで散歩してみないと分からない。別の話として、ヨーロッパの古書マニアの世界には植物図鑑の伝統があり、この本にはそういう図版も収録されている。マニアならコレクションの端に持っておくべきものだろう。写真ではなくイラストだが、日本でもよくある「身近な雑草図鑑」の類。この本がどうかはさておき、雑草ファンは世界中にいるようだ。

A beautiful book on lovely weeds.

Wooden Books (2022/11/1)
言語 : 英語
ISBN-13 : 978-1907155420

2024年3月27日水曜日

Steven Saunders, Matt Tweed "Mind Tricks: Ancient and Modern" [心理術:古代と現代]

Mind Tricks (Amazon.co.jp)

何の本なのか説明が難しいが、今風に言えば「マインド・ハック」みたいなタイトルをつけるべきなんだろう。例えば記憶術とかクレーマー対処法とか人と仲良くなる方法とかリラックスする方法とか、結局、自己啓発本の棚にあるような話は何でもかんでもという感じ。技術自体は古今東西の文明からフロイトがどうとかもあるし、タロットがどうとか単なるおまじないみたいなのもある。この類の本の通例で"In Japan..."とかいう文章に、なかなかの出鱈目が書いてある。中学生向けのお遊びと言ってしまえばそれまでだが、結局、ビジネス書の棚にある自己啓発本も本質は変わらないような気はする。名言カレンダーみたいなもので、誰でも何かしら引っかかるところがあるかもしれない。

A lovely little book.

Walker & Co (2008/10/28)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0802716804

2024年3月26日火曜日

Gerald Ponting "Ancient Earthworks of Wessex" [ウェセックスの古代土塁]

Ancient Earthworks of Wessex (Amazon.co.jp)

これも日本であまり聞かない文化だし、Wooden Booksじゃないと意図的には出会わない話だが。日本で言えば縄文遺跡くらいの気分だろうか。たまに日本でも弥生時代の環濠集落みたいな話はあるが、もしかすると、この本みたいな体裁で紹介したら面白いのかもしれない。基本はイラスト。多くは国立公園的なものになっているようだ。もちろん環状列石や迷路もあり。特に考古学に興味のない日本人でもイギリスの観光地を行きつくしたら、もうこういうことになるのかもしれない。

A small beautiful guidebook.

Wooden Books (2019/5/1)
言語 : 英語
ISBN-13 : 978-1904263975

2024年3月22日金曜日

Philippa Lewis "Pantheon: Gods and Goddesses of the Greco-Roman World" [パンテオン:ギリシア・ローマ世界の神々]

Panthon (Amazon.co.jp)

有名なギリシア神話・ローマ神話の神々の紹介。似たような本はいくらでもあると思うが、白黒とはいえ歴史的な図版が多いのは素晴らしい。西洋美術を鑑賞する際には必須の知識である…。縁のない人にも楽しく読めるのではなかろうか。

ただし。わたしはこの件に関してはマニアックなので、その点からすると許せないことがいくつかある。まずラテン語も古代ギリシア語も日本語と同じく母音の長短を区別する言語だが、この本ではその区別が失われている。英語民は長短の区別ができないし、どうせ正しいラテン語表記も正しく読めないからどうでもいいのかもしれない。その点については大した問題ではないとしても、一応ギリシア語名と比定されるラテン語名が対で書いてあるが、ギリシア語側の音写がラテン語化していたりする。何を言っているのかわからないかもしれないが、要は古典語を勉強した人にはひっかかる点が多いということだ。もちろん、こういうのに引っかからない本というのもほとんどないのも事実だ。

A nice introduction, for those who do not care for the original Greek classical spellings.

Wooden Books (2023/9/15)
言語: 英語
ISBN-13 :978-1907155499

2024年3月19日火曜日

Hugh Newman "Stone Circles" [環状列石]

Stone Circles (Amazon.co.jp)

主にイギリス各地にある石器時代の環状列石の案内。わたしとしてはStonehengeくらいしか知らないし、謎の世界だと思っていたが、最後になってOshoroって何と思って調べたら、どうも日本にも色々あるらしい。今のところわたしの中に観光という文化がほとんどないので聞いたこともなかったが、これからどんどん旅行をしていくことになるとすると、一つのテーマになるかもしれないが、実際には何もないところにただ石が並んでいるだけで謎すぎる。まあ作成当時からそういう謎観光スポットだったのかもしれない…。

A tourist guide, possibly also for Neolithic people.

Bloomsbury Pub Plc USA (2018/10/9)
言語 : 英語
ISBN-13 : 978-1635573046

2024年3月18日月曜日

Simon Lilly "Ancient Celtic Coin Art" [古代ケルトの硬貨芸術]

Ancient Celtic Coin Art (Amazon.cojp)

鉄器時代のイギリスと言っているが、要するにキリスト教以前のイギリスのコインの文様の主題ごとの図鑑。我々としては眺めているくらいだが、コイン収集家にとっては資料としても有用なようだ。どうもイギリス人にはローマ帝国とかキリスト教の侵略の以前・以後で文化が全然違ってしまっているという意識があるらしく、日本人が縄文がとかアイヌがとか言っているのとレベルの違う人工的な郷愁があるようだ。

Maybe of reference value. For us it is a lovely small book.

Wooden Books (2008/3/20)
言語 : 英語
ISBN-13 : 978-1904263654

Chris Mansell "Ancient British Rock Art" [古代イギリスの岩芸術]

Ancient British Rock Art (Amazon.co.jp)

ある時から急にケルトが流行り出した時期があり、以来、なんかケルトにロマンティックなイメージがついて、その流れの本だと思われる。artというが、実際には岩に刻まれた渦巻模様とか謎の線とかで、具体的に何を表しているのか全く分からない。世には古代文明の芸術も色々あり、エジプトだのアステカだのそれぞれ現代人の感覚と相当違うなと思うが、この本の図版とかを見ていると、そもそも現生人類と関係があるのかどうかすら疑うレベルだ。全く知らない世界過ぎて何とも言いようがないが、Wooden Booksは謎の遺跡系の本も多い。

Mysterious.

Wooden Books (2007/10/16)
言語 : 英語
ISBN-13 : 978-1904263562

2024年3月14日木曜日

Hugh Newman "Earth Grids: The Secret Patterns of Gaia's Sacred Sites" [地球格子:ガイアの神聖な地点の隠されたパターン]

Earth Grids (Amazon.co.jp)

最初は投影法の話か風水の話でもしているのだろうかと思ったら、地球に正多面体を内接させると古代文明か黄金比がどうとかいう話になり、事故の多い謎の三角地帯が等間隔にあるとかエネルギーの流れがどうとか、なかなか良い。子供の頃はこんな本を楽しく読んでいた気がするが、今時はこういう本は迫害されるせいか、本屋でもあまり目立たない。いいと思うけどなあ…。

I love this kind of imagination.... People call it pseudoscience.... Who cares?

Bloomsbury Pub Plc USA (2018/10/9)
言語 : 英語
ISBN-13 : 978-1635573053

2024年3月13日水曜日

Andrew Preston "American Foreign Relations: A Very Short Introduction" [アメリカの対外関係:非常に短い入門]

American Foreign Relations (Amazon.co.jp)

目次:1. 最初の原則 2. 拡張主義 3. グローバルなアメリカ 4. アメリカの世紀? 5. 超大国 6. 超超大国とその不満

建国前後からのアメリカの対外関係の通史。わたしが読んだ限りでは標準的と言える記述で、時々復習のためにこういう本も読まないとというところ。もうこれまでこの類の知識もVSI等で随分積んできたので、知識を得るというよりは、語り方に注意が向く。わたしとしては特にひっかかるところもなかった。別にこの本を読んだからと言って、これからのアメリカの外交政策が読めるようになるわけではないと思うが、基礎教養というところ。

A standard overview.

Oxford Univ Pr (2019/5/1)
言語 : 英語
ISBN-13 : 978-0199899395

Oliver P. Richmond "Peace: A Very Short Introduction" [平和:非常に短い入門]

Peace (Amazon.co.jp)

目次: 1. 平和の複数の次元 2. 平和を定義する 3. 歴史の中の勝者の平和 4. 歴史の中の平和:啓蒙時代へ 5. 現代の平和:立憲的平和 6. 次の段階:制度的平和 7. 革新的な段階:市民的平和と社会運動 8. 国際平和機関の発展 9. 平和維持・平和構築・国家構築 10. 平和・平和形成・対抗平和の混合形式

この本の言う「平和」とは主に政治的な意味で、国家間や武装勢力間の戦争・紛争がない状態を指す。日本国憲法的な意味での平和だ。ということで本書の半分くらいは世界史の復習みたいなことで、残りは現代の平和構築の色々な例という感じ。単なる哲学的思索というよりはリアルだが、現場というほどリアルではない。大学の授業とか国会の前で平和デモをしている団体くらいのリアルというか…。こんな感想になるのは、一つには戦争が起こる理由の説明がなさすぎるからだと思われる。おかげで話は難しくなく、読みやすい本ではあった。

Peaceful reading. Provides you with a necessary vocabulary.

Oxford Univ Pr (2023/6/28)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0192857026

Nicholas Cook "Music: A Very Short Introduction" [音楽:非常に短い入門]

Music (Amazon.co.jp)

目次: 1. 瞬間の音楽 2. 音楽で考える 3. 過去の現前 4. 音楽2.0 5.国際社会の中の音楽

VSIの一つの典型「大家の雑談」だと思う。こういう一般的過ぎるタイトルにはありがちだ。音楽理論とか中身の話というよりは、どっちかというと社会学とか経済学に分類されるようなよもやま話という感じか。

わたし自身音楽をほぼ聴かないが、言っていることで分からないことはほとんどない。出てくる個別例についてはたまに面白い。例えば、わたしは楽譜を正確になぞって演奏する行為の何が面白いのか全く理解しないが、どうも著者もそっち側のタイプらしい。覚えきれない長さでなければ楽譜なんかいらないのではと思っているが、ピアノ奏者とオーボエ奏者では音の理解が違うらしい。音楽で世界が一つにとか言っているが、音楽で世界を分断しているほうが多い。とか、読んでて退屈なわけではないが、別にどこにも行かない…というのは、多分、わたしが音楽に興味がなさすぎるからだろう。

Casual chatter of one of the authorities in the field, I guess....

Oxford Univ Pr (2021/5/3)
言語 : 英語
ISBN-13 : 978-0198726043

2024年3月12日火曜日

Michelle Baddeley "Behavioural Economics: A Very Short Introduction" [行動経済学:非常に短い入門]

Behavioural Economics (Amazon.co.jp)

行動経済学についてはこれまでここでも色々読んできたが、正直なところ、この本で特に新しい情報はない。短いという良さはあるが、この件については何をおいても御大のThinking, Fast & Slowを読むべきで、日本語訳もよく本屋に積んである。他に色々読んでもあまり追加情報がないのが実態だ。あるとしたらThaler先生くらいかなあ…。本の分厚さにビビるタイプの人にはいいかもしれない。確かに日本語で変なビジネス書を読むよりはいいと思う…。

Oxford Univ Pr (2017/5/1)
言語 : 英語
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-0198754992

2024年3月11日月曜日

Antoine de Saint-Exupéry "Le Petit Prince" [小さな王子]

Le Petit Prince (Amazon.co.jp)

これはフランス語学習者はたいてい読むことになっているが、どうも読む気にならず放置していた。読んだことのない人でも、ヘビが象を呑み込んだ絵とか、そんなことは何となく聞いたことがあるのではなかろうか。表紙からして読む気にならない。しかしフランス語学習者として無視し続けるのもどうかと思う。しばらくフランス語の本も読んでいなかったので、この際、「子供は大人と違って純真」とかいう世界観とか、面白くない社会風刺とかは時代の制約ということで呑み込んで一応全部読んだ。

内容はたいていの人がだいたい知っているので、感想としては、予想通り感傷的過ぎて読んでいるのもしんどい。もちろんこれはわたしの趣味に過ぎず、一般的には名作ということになっているので、読んで損をするものではない。フランス語学習という観点では、こういう昔の小説は普通に単純過去で語られるが、B2くらいでも単純過去を習得していない人も多いだろう。ただ、それでもB2なら読めるかなと思う。B1ではちょっと無理ではなかろうか。

Independently published (2017/4/9)
言語: フランス語
ISBN-13: 978-1521030141

Lisa Delong "Curves: Flowers, Foliates & Flourishes in the Formal Decorative Arts" [曲線:形式的装飾芸術における花と葉と飾り]

Curves (Amazon.co.jp)

タイトルをどう訳すのか分からないが、基本的には平面充填系の模様の図鑑。ウイリアム・モリスを想像すれば大体間違いない。もちろん背景には幾何学があるが、そこに重点があるわけではなく、あくまで装飾の本。

個人的にはこういう模様自体は好きだし、この本も楽しいが、実際にウイリアムモリスのブックカバーとか使っていると、なんかしんどい感じがある。リバティとかも同じで。Arts and Crafts運動の趣旨からすれば、日用品にこそこういう模様を使うべきということになるが、こんな日常は病的なのではないか。関係ないが、日本のいわゆる民藝運動も、趣旨は分かるがこんな日常はイヤだと思うわけです。この本自体は数学みたいに形式的な解説しかしていないが、そういう時代を感じさせる本だった。

Bloomsbury Pub Plc USA (2013/12/17)
言語 :英語
ISBN-13: 978-1620402580