2012年9月29日土曜日

David A. Gerber "American Immigration: A Very Short Introduction"

ISBN-13: 978-0195331783

アメリカの移民史と現状。初期の移民からアイルランド系の問題やら、排日運動やら、最近のヒスパニックやら。標準的な教科書と言えるだろう。右か左かと言えば左だが、このレベルの基礎知識に右も左もない。個人的には北米の日系移民について調査した経験があるので、懐かしく読んだのみ。どのみち、日本人から見ればアメリカ人は全員移民なのであり、今更移民を排斥したりするのも、やや滑稽ではある。というか、国家というものは、いつから人の移動を制限できるようになったのかとか、根本的に考えたくもなる。EUなんかなくても、昔はヨーロッパもパスポートなしで移動できたのだ。

A standard concise history of American immigration. If right or left, this book is on the left side, though that does not matter at this basic descriptive history, I guess.

2012年9月14日金曜日

Mignon Fogarty "Grammar Girl's 101 Words Every High School Graduate Needs to Know" (Quick & Dirty Tips)

タイトルの通り、確かに知っていないとマズい単語が101個。英検二級くらいじゃないかな。知らんけど。と言っても"kudzu"がそんなことになっているとは知らなかったが・・・。一単語につき一ページまたは二ページで、余白も多いので気が楽。これはこの手の本では重要なポイントだと、わたしは考えている。

One or two pages per one word. Lots of blank spaces. Innocuous illustrations. I mean very good. I hate dictionary style word books.

2012年9月9日日曜日

Ian Robertson "The Winner Effect: How Power Affects Your Brain"

ISBN-13: 978-1408824733

安倍首相なんて、久しぶりに思い出した。今なら橋下市長などは、この本の読者の格好の研究対象になるだろう。日本語訳のタイトルをつけるとしたら、直訳は「勝者効果」というところだが、内容的には「権力の心理学」というところ。心理学で言えば、Kahnemanも衝撃的だったが、これもなかなかのものだ。誰か翻訳作業中かなあ。amazon.comでも一個しか書評がついていないようだが。まだ出て間もないから仕方ないけど、もっと読まれるべき。

勝ちたいと思うこと、勝つこと、社会的地位が高いこと、他人に対して影響力を持つこと、権力を持つことが、脳にどういう効果をもたらすかの解説。勝ち組である(と感じる)ことは、良い面としては、確かにある種の能力を高める。原始的な話で言えばセクシーになる。集中力が増したり、活発になったりする。負け組であると感じている人は、力を発揮できない。等々。ただしマイナス面もあり、話としてはこっちのほうが面白い。まず、自分が他人からどう見られるかを判定する能力が低下する。他人への共感力が低下する。等々。一つ一つに脳科学的な説明が続く。

考えてみれば、日本でも、ある程度は聡明なはずのワンマン経営者が、素人以下の情勢判断をして大顰蹙を買うということは良くあって、なんでそんなことになるのか不可解だったが、やっと腑に落ちた気がする。あと、いじめ問題とか、一方が他方を軽蔑している夫婦とか、ブッシュとブレアの不可解な戦争とか、差別が被差別者の脳に浸透する仕組みとか、色々勉強になって、ここには書ききれない。

シチュエーションとしては、政治や経営の話が多いが、家族・学校・病院・刑務所等々でも、要は、権力が問題になるようなところでは、誰でも身近に感じるはずのことで、いじめ問題なども取り上げられている。誰もが読むべきだが、特に権力を持つ人は読んだほうが良い。権力はドラッグと同様であり、本人が気がつかないうちに中毒を引き起こす。権力は人を幸福にも不幸にもするし、取り扱い方法を学んでおくべきだ。

というわけで、本当に誰にでもお薦めできる本ではあるが、特に書き出しが全然面白そうでないという重大な欠点があった・・・。叙述パターンとして1具体事例の描写。2脳科学的真実。3「これで全て謎が解明されたのだろうか。いやそうではない。次の例を見よう」の繰り返しになっている。読んでいるほうとしては1「いやそんな個別例を一般化されても」2「その理論は面白いけど、それでこの個別例が説明できるかどうかはまた別では」3「そりゃそうだろう」の繰り返しになり、読書中、ツッコミまくっているような感じになる。超重要かつ明日から使えるような実用的なことを言っているのだが、印象的に損をしている気がする。もう一つ言えるのは、本の中でも言っていることだけど、西洋人の権力観・個人観が、我々東洋人と若干違うということもあり、我々から見ると「少し単純過ぎるのではないか」と思うこともある。しかし、それも色々考える材料にはなる。特に最後のほうの権力感が脳に及ぼす悪影響のほうは圧巻だし、面白くなさそうと思っても読み続けて良かった。英語的にも決して難しい本ではないので、誰にでもお薦めしたい。

I recommend this book to everyone who exerts power on others, especially professionally, i.d. politicians, bosses, teachers, parents.... A major draw back is that the beginning part is a bit boring at least for me. Then it's becoming more and more interesting and the final part, which describes negative sides of winning, is just wonderful. And..., well, I am an east Asian, and I perceive great cultural differences between Westerners and us. Having power is not so simple in Japan... Still of course, we share common sociology and physiology to a great extent and this book is a must-read for both of us.

Jeffrey Brown " Darth Vader and Son" (Star Wars (Chronicle))

これなあ・・・。スターウォーズを大して知らないわたしでも十分に萌えた。

Moe/kawaii or cute.

2012年9月7日金曜日

Peggy Garvin "Government Information Management in the 21st Century"

ISBN-13: 978-1409402060

世界の色々な国での公共図書館における、政府情報の提供に関する論文集。第一部は、公共図書館に焦点を当てて、政府情報を提供する際の様々な論点・実例を提示。特に電子政府と図書館の関係が問題になる。政府がサービス窓口として図書館を使っていくという方向もあるし、市民が図書館を通して政府情報に迫っていくという方向もある。情報の保存・アクセス等の問題は、電子・紙資料それぞれにあり、どこの国の図書館も大変だ。特に東欧のようにネットが普及していないのに電子政府だけ確立しているような地域では、アクセスを保証するために図書館を使うという面もあり・・・。

第二部は、情報を提供する側(政府機関)に焦点を当てて、「開かれた政府」の実現に関する様々な論点・実例を提示している。こちらも電子署名の問題やら著作権の問題やらで、具体的には大変だが、方向性はわりと見えている気もする。この辺りは、ヨーロッパ・北米の事例からbest practiceを学ぶというようなことで。

わたしの考えでは、この本は全ての公共図書館司書が読むべきだが・・・まあ、日本では無理だろう。英語が読めないというのは別として、残念ながら、日本と欧米では、図書館員の社会的地位が違い過ぎる。アメリカには連邦政府の寄託図書館制度(FDLP)があり、全米の1200館を越える寄託図書館は連邦政府の情報を保持し提供する義務がある。つまり、少なくともその1200館には政府情報を扱う司書がいるわけだ。もちろん、背景には、政府の透明性が民主主義にとって必須で、米国民には政府情報にアクセスする権利があるとかいう理屈がある。というか、そもそも図書館の数も質も絶望的に違うわけだが。アメリカでは修士を取っていないと図書館で働くのは難しい。

他方、日本の公共図書館で政府情報や法律について尋ねても、素人以下の答しか返ってこない。市の職員ならまだしも、近頃の司書はほとんどがバイトで、まあ司書資格は持っているんだろうが、司書過程では政府情報についてロクに教えていないんだろう。酷いところではTSUTAYAが図書館を経営していて、単なる娯楽施設としか思われていないのだろう。そもそも政府刊行物や法律書を置くスペースもない有様で、民主主義も開かれた政府もあったものではない。

というわけで、この本は、中央・地方の政府の情報公開担当者が読んでくれることに期待したい。正直なところ、日本政府には情報を提供するどころか、情報を収集する能力というか予算すらロクにない気がするが、情報がなければまともな政策を立案できるわけがない。民主主義のためとかいう理屈とは別に、情報の流通が改善すれば、それだけで日本経済に与える影響は大きいと思うのだ。残念ながら、本書では、その件については、アメリカとEUについてしか分析していないが・・・。

I bet this book is already well-know in the library world, because it is published by a famous publisher, Ashgate. Having read this book, I was forced to reflect that Japanese librarians enjoy much lower social status than their colleagues in Europe or north America. Someone must translate this book into Japanese. Or, at least write a review of this book in Japanese.

2012年9月6日木曜日

Paul Krugman "End This Depression Now!"

この本については考えることが色々ある。どうでもいいことから始めると、「さっさと不況を終わらせろ」という残念なタイトルと売り文句で邦訳が出ているが、Amazon.co.jpに少し出ている訳者解説だけでも翻訳の質の想像がつく。この訳者は80年代ニューアカの生き残りか何かなのか。特に、内容が左派(とされている)であることを考えると、本書が誤解されるのが怖い。 もっとも、わたしは翻訳の中身は読んでいない。

内容は、要は、不況なんだから財政出動せよという、普通のことを言っているに過ぎない。もっとも、その普通が通らない世の中なので、わざわざこんな本が出て来るわけだが、真面目にマクロ経済を学んだ人には、特に斬新な内容はない。わたしはマンキューだったが、それでも普通に思える。スティグリッツは不平等の解消が景気回復につながるという点を強調していたが、クルーグマンの場合は本当にただ常識を述べているだけだ。唯一、ユーロ危機については、少し勉強になった気がする。

わたしは経済政策をどうこういう立場にはないが、純粋に政策的には、多分、ケインズ派が正しいのだろう。この本を手に取ったのは、別にノーベル経済学賞を信じているからでも、左派だからでもなく、単にクルーグマンへの批判がアホ過ぎるから興味を持っただけだった。実際、わたしは業務で高名なネオリベ経済学者の講演を聞いたりすることもあるが、内容がどうこう以前に、学者としての資質が疑われる。

ただ、個人的には、この本の冒頭の献辞"To the unemployed, who deserve better."から、既にうさんくささを感じる。言っていることは正しいとしても、こういう大義名分を持ち出す人間は、どうも信用できない。明らかにウけようとしているだけだし、ちょっと安さを感じる。ただ内容はごく普通のマクロ経済学なんで、初心者でも安心して勉強できるかと思う。

As a Japanese friend of yours, I can assure you that living in mild depression is not so bad after all. Deficit hawks should take a look at the situation in which Japanese government is currently placed. America is much larger and stronger than Japan. I just do not understand what Americans are afraid of. And you have great economists, which is not the case in Japan. Cheer up!


2012年9月1日土曜日

Sam Burchers, Bryan Burchers "Vocabulary Cartoons: SAT Word Power"

だいぶ前に読んだ本だが。わたしは単語暗記本は苦手で、別にごろ合わせが入ってもイラストがついても、それは変わらないが、一ページに一語だと気が楽だったというくらい。人によるようで一般には評価が高いようだ。わたしはリアルに本を読んで辞書を引いたほうが全然率がいい。
Standard books for SAT words.