2015年3月17日火曜日

David C. Catling "Astrobiology: A Very Short Introduction"

タイトルを日本語にすると「宇宙生物学」ということになるのか・・・。と言っても地球以外で生物が確認された試しがないので、本質は、地球外生命体について色々な観測データから想像を巡らせることのようだ。話の半分くらいは太陽系と地球と地球上の生物の歴史。ひとまず地球でしか生命の発生が確認されていないのだからこれは仕方がない。この時点で未確認の憶測が多い。その後で太陽系内の天体、太陽系外の天体について生物の可能性を考えていく。

最初は「生命の定義」みたいな話から始まって、あまり面白くなさそうな気がしたが、ちょっとずつ面白くなっていく。様々な知見が紹介されてその辺りは面白い。基本的には化学の話が主になる。わたしが子供の頃は宇宙には水なんかないように教わっていた気がするが、最近では、水も有機化合物も宇宙のどこにでもいくらでもあるらしい。あとは、それが液体の形で存在するかとか、循環のためのプレートテクトニクスがあるかとか、色々な話が出てくる。個人的な思いとしては、少なくともどこか別の惑星のテレビ放送を見れるくらいでないと、木星の衛星のどこかに微生物がいてもあまり感動しないが、とにかく、宇宙の本は読んでいて心が安らぐ。

On Amazon.com this book enjoys very good reputation. Well, it did not surpass my expectation but thinking about other planets always make me feel calm.

Oxford Univ Pr (2014/1/1)
ISBN-13: 978-0199586455

Bill McGuire "Global Catastrophes: A Very Short Introduction"

地学的な意味での地球滅亡のシナリオをいくつか集めた本。具体的には、地球温暖化・寒冷化・地震火山津波・隕石。非常に読みやすく、素人向けで、ジャーナリスティックというのは言い過ぎにしても、特段の前提知識は必要ないが、科学的には確かなことしか書いていないと思う。特に地震の辺りは日本に重点があるが、何分にも短い本なので、普通の日本人が知らないことはほとんど書いていない程度。上の四つの方面について基礎知識がない人には、とても読みやすい入門書だと思う。

A collection of dooms-day scenarios including global warming, return of the ice age, seismic events and meteor strikes. Very basic and easy to read.

Oxford Univ Pr (2014/09)
ISBN-13: 978-0198715931

2015年3月7日土曜日

Gerhard L. Weinberg "World War II: A Very Short Introduction"

この短い本にどうやって第二次世界大戦を詰め込むのかと思ったが、話はドイツと日本、かつ、各戦闘を追っていくことに集中している。この点に関しては、いい感じの要約と言えるだろう。戦争ゲーム感覚になる。忙しい時なのに、わりと一気読みした。

政治的背景や戦争犯罪なども多少は触れられていて、ネトウヨを激怒させるには十分だが、第一次大戦の敗者による復讐とかそんな程度の話で、わたしの興味のある(そして重要だと考える)経済的動機については全く触れられない。イデオロギー重視で、Wikipediaでこの著者を調べると、まあ、こんな感じの本になるかと納得した。

A good summary of battles fought in WWII. Other than the descriptions about battles, the author attributes the motives of the German and the Japanese offensives chiefly to ideologies, which is rather new to me.

Oxford Univ Pr (2014/12/1)
ISBN-13: 978-0199688777

2015年3月4日水曜日

Adam Tetlow "Celtic Pattern: Visual Rhythms of the Ancient Mind (Wooden Books)"

いわゆるケルトの模様の作成法が中心。と言っても、格子と円を中心にしてケルトの模様のパターンを解析するのが主で、この手の話が好きな人には良い。わたしも普段方眼紙で模様を作成するのが好きなので、参考になった。また、近頃はZentangleとかいうのが上陸していて、わたしはあまり好きではないが、その参考にもなるんじゃないか。

A good book for a doodler like me, with many nice ideas.

Toby F. Sonneman "Lemon: A Global History (Edible)"

レモンの歴史の簡単な概説。著者は特に専門家ではなく、ただのジャーナリストらしい。ので、一般的なレモンの栽培法や利用法の歴史をひたすら描写している。アメリカでレモネードが普通になったのはイタリア系の移民のせいだとか、その類のまめちしきは身に付くが、この本の最大のメリットは、読んでいる間中、ずっとレモンのことを考えていられるということだろう。本物の歴史家や農学者ならまた深いところまで探究してくれそうだが、レモン好きとしては必読書と言える。翻訳も良さげだ。

まったく個人的な事情として、わたしはいわゆる「薬味マニア」である。わさび、生姜、茗荷、紫蘇、梅、胡椒、辛子、山椒などをフィーチャーする食品はとりあえず買ってしまうし、柑橘類で言えば、柚子とか酢橘とかレモンとかいう表示にかなり弱い。この本も面白かったが、この方面の読書も広げていこうかと思っている。

I love lemon, and while reading this book, I can always be thinking of them, which rendered me very happy. A must-read for all lemon-lovers.

Aiden O'donnell "Anaesthesia: A Very Short Introduction"

麻酔の一般的な概説書。わたしのような素人の好奇心から、医療系の学生の入門にまで使えるようだ。哲学的な問題(「実際には痛いのにその記憶が残っていないだけではないか」)とか、なかなか面白いところから始まり、歴史の概説も面白いし、化学・生理学・作用機序、道具類、一般的に麻酔に関わるリスクから将来の展望まで、一通り解説されていて、一般人としては十分満足できる読み物だった。

この本を読もうという一般人は大半そうだと思うが、わたしも麻酔科のお世話になる予定になっている。前に読んだTeethと同じ流れで・・・。まずは嘔吐反射が強すぎるというので歯科で鎮静剤、次に口腔外科で全身麻酔。全身麻酔は口腔の手術なんだからガスではなく静脈から点滴なんだろうか。そういう個別の話は医者から直接聞くとして、それ以前に一般的な麻酔の知識をつけるのには最適な本だ。麻酔のリスクなんて、本題の手術自体のリスクに比べれば極めて小さく、普通の人間が特に気にするようなことではないが、麻酔科の世話になる予定があるのなら、興味本位で読むには最適だ。

Like most readers of this book, I am just a layman who are going to have a few surgical operations under general anaesthesia, one of which is just using sedative agent and the other is using general anaesthesia technic. I also have a minor nerve problem for which anaesthesia might be effective. This book is easy to read, provides sufficient information for me, and above all, is interesting and fascinating.