2013年7月30日火曜日

Ian Stewart "Symmetry: A Very Short Introduction"

「対称性」というpopular scienceでさんざんこすられたテーマに、popular scienceばかり書いている著者なので油断していたが、実際には非常にまともな群論の入門書である。VSIとしては当りの部類であろう。

最初のうちは古代の模様がどうとか、ありがちな話をしているが、突然、群論の講義が始まる。もちろん深入りはしていないが、正二面体群から始まって、剰余類だの正規部分群だの巡回群だの可換群だの軌道だのといった基礎概念は一通り説明されている。数学な得意な高校生くらいではついていけないのではないか。とは言え、15パズルとかルービックキューブとか数独の話は、それ自体は、そんなに難解なわけでもない。次に自然の中の対称性とか言って生物とか雪の結晶とか、緩い話がしばらく続くが、再びリー群だとかローレンツ群だとか超対称性だとかハードな現代物理の話になり、超ひも理論やら素粒子物理に応用される群論が解説される。さらにシュバレー群だとか有限単純群の分類とか現代数学の話になり、ここまでくると、もはや、理系の大学生でも何の話か分からないかもしれない。

というわけで特に数学に興味のない人がpopular scienceのつもりで読むと、恐らく群論が始まる辺りで挫折する。というか、理系の大学生でも挫折する奴が続出しそうだ。大学で群論の講義を受けさせられて、何の意味があるのか分からずにうんざりしている理系には最適と言える。この本は群論の応用法をはっきり提示してくれているからだ。科学が好き、くらいの人にはお勧めしかねる。数学(と英語)に自信があるなら、大学一回生でも面白く読めるかもしれない。類書もあると言えばあるが、好みの問題もあるし、薄くて数学的証明の緩い本書も一つの選択肢である。

A very short introduction to group theory. Very informative, but if this is the first time you ever read on group theory, it could be a bit difficult.

Oxford Univ Pr(2013/7/12)
ISBN-13: 978-0199651986

2013年7月25日木曜日

Paul Whitehead, George Wingfield "UFO: Strange Space on Earth"

UFOの概説書。特に扇情的でもないし賢しらでもないし、読みやすい。近々和訳も出るようだ。

わたしが子どもの頃は、もっとUFOに関する情報が多くて、みんな笑いながら大らかに楽しんでいた気がするが、それも前世紀までの話だったのかな。少なくとも日本では、マジに否定したり嘲笑したりする人種が増えて、急速に詰まらなくなってしまった。UFOを否定して自分の正典的な賢さを確認したいのか、まあだいたいが権威主義的な性格で、政治的にはもちろん保守的な傾向があり・・・。

しかし、そろそろ冷静に、この本のように楽しんだり思索したりして良い頃合いなんだろう。ロズウェル事件をはじめ有名な事件の紹介や、フェルミの逆説をはじめ宇宙人に関する思索も紹介。実に心が安らぐ。

Needless to say, UFOs are always cool. When I was a child, people used to talk about UFOs more freely. Nowadays there are too many people who energetically deny UFOs. It is possible that they are all aliens. This book is not sensational, but meditates calmly.

2013年7月16日火曜日

Anthony Ashton "Harmonograph: A Visual Guide to the Mathematics of Music"

最近和訳が出たらしい。ハーモノグラフとは、振り子を二つないし三つ組み合わせて軌跡を描く装置で、要するにリサージュ図形を物理的に描く機械である。まあ、コンピュータ上なら比較的簡単にプログラムできるものなので、敢えて物理装置にこだわる必要はないかもしれない。本書については、特に数学的な説明もなく、ただ音程とハーモノグラフとの関係を説明して、あとは専ら美的に鑑賞している。小学生でも理解できるし、先生が授業の参考にすることもありそうだ。

ただ、個人的にはそんなことより、音程の説明が非常に興味深かった。というのも、昔、いわゆる楽典に異常にこだわる音楽の先生がいたのだが、結局、わたしは全音だの長三度だの純正律だの、一つも理解できなかったのである。この本の説明でようやく意味が分かった次第で、時間がある時に、真面目に楽典をやってみようかと思う。

A concise introduction to "harmonograph". A harmonograph is basically a device with two pendulums and draw physically Lissajous curves. Beautiful.

Wooden Books (2005/10/25)
ISBN-13: 978-1904263364

2013年7月11日木曜日

Brian W. Ritchie, Dennis Kernighan "C Programming Language"

Cの基本書。書棚より発掘。わたしにとって最初のプログラミング言語はCであり、例に漏れずこの本で丁寧に勉強した。今時はプログラマの裾野も広がって、Cが難しくて分からんという人も多いし、それに対応して激甘な入門書も大量にあるが、ある程度Cを書いている人にとっては、プライドの問題もあるだろうし、依然として必読書であろう。

A classic. I was a C programmer and as is often the case with old hackers, my mother language is C and leaned it by this book. Maybe this book is not a must-read now, but a must-have for C programmers.

Erich Helm, Richard Johnson, Ralph Vlissides, John Gamma "Design Patterns: Elements of Reusable Object-Oriented Software"

近頃仕事の関係で、昔のIT書を発掘することが多いが、これも名著。20年前の本だし、今となってはもっと分かりやすい本がアホほどあるが、古典として一度読んでみると、人によっては何か発見するかも知れない。温故知新。

A classic. There have been many books published on design patterns since this one and some of them are pretty good. You do not need to read this book to study design patterns, though old hackers can appreciate it.

2013年7月10日水曜日

Rachel Grenon "Grammar: The Structure of Language (Wooden Books Language)"

普通に英文法を解説した小冊子だが外国人向きではなく、ネイティブ中学生くらいが対象と思われる。日本人の場合は、この本が読める程度の英語力があれば、この本に書いてある程度の文法は知り尽くしていて、特に新たに学ぶことはない。当然、わたしも特に何も新たに学ばなかったが、それにしても、このシリーズはなにより物品として美しいし、分かり切っていることでも読んでいて癒されるというような、児童文学を読むような気持ちはこういうことなのかも知れない。非常に易しい本なので、初めて洋書を読む人にも良いかもしれない。

If you can read this book and English is not your mother language, this book will not provide you any new knowledge about English grammar. Still, because this book is so beautiful and very easy to read, you can appreciate it as if children's literature.

2013年7月9日火曜日

Joe Celko "Joe Celko's SQL for Smarties, Fourth Edition: Advanced SQL Programming"

これはSQLの名著。大部である程度網羅性があるが、章建てが細かいのと例がリアルで分かりやすいので、さらっと通読して良い復習になった。

・・・と言っても、こう言うわたしが以下のような背景を備えていることを考慮する必要がある。

  • そこそこ巨大なRDBをそこそこの期間扱っていた経験がある。
  • Oracle Master Platinum, MCDBA, 情報処理技術者試験の高度情報(データベース)他のRDB関係の資格を持っている。
  • 同じ著者による"Joe Celko's SQL Puzzles and Answers, Second Edition"の愛読者であった。

というような背景を持っている人にとっては気楽な復習書だが、初心者が読むと、やはり死ぬのかも知れない。実際、上に挙げたような資格試験に出てくる程度のSQLは楽に書ける程度でなければ、読めないと思われる。一つには、本書でも強調されているように、SQLは宣言型の言語であり、手続き型のプログラマは考え方を変える必要がある。この著者が考えている手続き型言語とはCOBOLとかFortranとかCとかperlだと思うが、JavaでもC#でも大して事情は変わらない。Prologなら話は別だが。BNF記法を難なく解読する人なら止めないが、一般的には、少しSQLの教科書でも一冊くらい読んでから取り組んだほうが良い。かなり売れている本らしいし、業務で日常的にSQLを書いているような人なら、意外と知らないことがあったり、アンチパターンにハマっていることもあるかも知れないし、必読書と言えるだろう。

One of the best books on SQL I have seen ever. Comprehensive, yet readable. Do not be intimidated by its volume. Very accessible.

Morgan Kaufmann; 4版 (2010/11/1)
ISBN-13: 978-0123820228

2013年7月5日金曜日

Irma Nicola "Serials Binding: A Simple and Complete Guidebook to Processes (Routledge Studies in Library and Information Science)"

雑誌の製本の仕方の解説書。と言っても意味の分からない人のために説明すると、図書館では長期保存する雑誌は管理上の理由から製本するのである。筆者は図書館勤務の製本職人と思われるが、全体的に手芸感が強く、クラフト好きな人が読んでも楽しい。わたしはこの本を読んで自分でもやってみようとは思えないが、そう思う人は、やれるだろう。

Exactly as the title says.

Routledge; 1版 (2010/1/19)
ISBN-13: 978-0789025043

Kenneth J. Varnum "Drupal in Libraries (The Tech Set)"

Drupalの概説書。当然図書館での利用に焦点があるが、だいたいこういうのはタイトルに書いていなくても図書館がモデルケースになるのだから、あまり気にしなくて良いだろう。あまり類書がないので貴重と言えば貴重だが、なにせ薄い上に、Drupalと関係のない業者選びとかに結構な紙幅が割かれており、これでDrupalを使えるわけではない。ただ、何となく概要が分かるようなことで、イントロとしては良いかもしれない。手でHTMLを書いて、FTPでWebサーバにファイルを置いておけば済む時代は終わったらしい。

A short overview of Drupal especially for librarians.

Neal Schuman Pub (2012/5/31)
ISBN-13: 978-1555707781

2013年7月4日木曜日

Serge Guinchard, Thierry Debard, Collectif "Lexique des termes juridiques 2014"

フランス法辞典として安心の一冊。今年も使わせて頂く。この時期に年版が変わるというのは、やはり学生向きという想定なんかね。もちろん、日本でもフランス法を学習している学生には安心してお勧めできる。マジな法律専門家にはもしかすると足りないのかもしれないが、所詮は辞典だし、common lawみたいなencyclopediaは期待すべくもないというか必要もない。何より類書より抜群に見やすいし装丁も良い。・・・憎むべきはAmazon.frが表紙を折り曲げて送ってきたところで、21世紀になってもフランス人のガサツさは一向に改善しない。文明って何かね。

Amazon.fr m'a envoyé un livre dont le plat inférieur est fortement plié. Qu'est-ce que c'est, la civilisation?

Dalloz-Sirey; Édition : 21e édition (19 juin 2013)
ISBN-13: 978-2247127399

2013年7月3日水曜日

Richard English "Modern War (Very Short Introductions)"

これもタイトルがシンプル過ぎて趣旨が分からないが、戦争の原因や結果に関するやや抽象的な一般論である。最初の章が「現代の戦争の定義」についてで、「辞書によると」という最もヤバい始まり方であり、というか、このあたりでイヤな予感がする人は、その予感は当たるので読まなくて良いだろう。ただ、これは好みの問題で、単にわたしのニーズに合わないというだけのことである。

具体的な戦争についての言及はあるが、基本的には、戦争の論理とか記憶とか経験とかについて一般論として考察する。最後に「対テロ戦争」についてはわりと具体的な話にはなり、アメリカの政策に対する論評も含まれるが、この件については我々もリアルタイムでよく知っているわけだし、わたしとしては特に斬新な見解もなかった。学生が読む分には、色々考えることもあるかもしれない。講義としては「平和教育」の参考文献とかいう感じかな。

A rather abstract account of causes, results, etc. of modern war.

Judith Hicks Stiehm "The US Military: A Basic Introduction"

米軍(陸海空海兵隊)の概説。特に深い考察や資料性があるわけではなく、特にクラスでの使用を考えて基本的な知識のみ述べられている。が、案外知らないことも多い。詳しいと自負する人でも、一通り目を通しておいても良いかもしれない。

Just a collection of facts about the US military, as the title says.

Routledge (2012/1/9)
ISBN-13: 978-0415782159

2013年7月2日火曜日

Jacquelyn Carter, Eric Redmond, Jim R. Wilson "Seven Databases in Seven Weeks: A Guide to Modern Databases and the NoSQL Movement"

PostgreSQLの他はいわゆるNOSQLな各データベースの考え方を解説したもので、日本語でも良い本はあるが、この本も悪くはない。ただ、単に概要さえ分かればいいということなら、少し冗長に感じるかもしれない。そうでなければ、実際に使ってみる感触は貴重だ。やはりある程度データベースの経験のある人にしかお勧めしない。

A good introduction to NOSQL.

Pragmatic Bookshelf (2012/5/18)
ISBN-13: 978-1934356920

Bruce A. Tate "Seven Languages in Seven Weeks: A Pragmatic Guide to Learning Programming Languages"

Ruby, Io, Prolog, Scala, Erlang, Clojure, Haskellを筆者が学んでみた記録といったところか。各言語のサワリが紹介されており、本当にこれらの言語を知らない人が読むと、結構大変というか、普通に七つ入門書を読んだほうが良い気がしなくもない。実際、この本の読者の大半と思われる言語オタクは、それくらいのことはするだろう。一冊にするのなら、もっと言語の数が欲しいところではある。というわけで中途半端な本ではあるが、まあ、言語オタクの同志が書いた本と思って読む分には、共感できる部分もある。

A semi-personal record of the author who has learned seven languages.

Pragmatic Bookshelf (2010/11/10)
ISBN-13: 978-1934356593

Matthew Frederick, Vibeke Norgaard Martin "101 Things I Learned in Law School"

誰でも予備知識なしに読める本だが、特にアメリカ法・法曹業界に興味がある人にとっては必読かもしれない。

このシリーズの定例で、イラストと文章が見開きセットで101のまめちしきがあり、非常に読みやすい。法律の勉強をしている人でなくても、全く法律に縁のない人が読んでも楽しいと思う。特に、アメリカの犯罪ドラマやら法廷ドラマに興味があれば、もう十分に読む価値がある。わたしはそれなりにアメリカ法について詳しいつもりだが、それでも結構な発見があった。一つには、法廷・法律相談の現場について、建前抜きで語ってくれるからで、日本語でこういう本は少ないように思う。

もっとも、アメリカはcommon lawの国なので、日本のようなcivil lawの国と事情が異なるところもあり、はたしてこの本が和訳されるかどうか分からない。和訳するなら、タイトルに「アメリカの」という言葉は必須であろう。それでも日本でもアメリカのTVシリーズはそこそこ見られているのだし、そういうのを見る時の参考にもなるのだから、その辺りを上手に宣伝すれば、日本でも十分売れるのではないかと思うのだ・・・。

The USA belongs to the tradition of common law system, while Japan belongs to that of civil law. However, basic principles are same and above all, American TV series are widely accepted in Japan too. It will sell in Japan if translated and properly PRed, I guess.

Grand Central Publishing (2013/5/21)
ISBN-13: 978-1455509805