2019年7月5日金曜日

Sarah Harper "Demography: A Very Short Introduction" [人口学:非常に短い入門]

目次:1.人口学は宿命…か否か 2.55000人から70億人へ 3.人口学思想の先人 4.統計と数理モデルの導入 5.動因 6.人口転換―人口学の中心 7.人口学者の道具箱 8.人口ピラミッドと予測 9.下位分野の登場 10.人口政策と将来の課題

あまり面白そうな学問とも思えず、とは言え、現に日本社会の現在の最大の論点を直撃している学問なので読んでみたが、特に認識は変わらなかった。この本はVSIの標準的な書き方で、大学生向けに業界の歴史、方法論、現状と今後の課題を概説しているが、本当の初学者向けかなと思う。普通に社会科学を勉強していれば、自然に人口学の知識も入ってきているはずで、そういう人たちが一度整理しようと読むにしても特に推奨はできない…。この本は人口学の方法論と業界事情の記述がメインで、しかも、ほとんど常識的だ。例えば9章の下位分野の紹介は、おそらくアルファベット順でしかない。なにより人口学の研究の具体的な成果の記述がほとんどない。日本に言及されているのが、記憶の中では一か所しかなかったが、日本とは言わなくても、せめてイギリスの人口動態について一章くらい当ててくれれば人口学の意義がもっとわかりそうなものだ。

唯一最後のほうの各国の政策の具体例とその結果(中国の一人っ子政策やルーマニアの反避妊政策やオーストラリアの移民政策など)の記述はものすごく面白く、こういう話をもっとしてほしいが、VSIはそういう趣旨じゃないということだろうか。あくまで業界入りを考える学生のための本で、一般人向き啓蒙書、日本で言う新書みたいなことではない。

Not for everybody. It comprises of descriptions of the academic world, few concrete examples of each countries.

Oxford Univ Pr (2018/7/24)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0198725732