2011年12月25日日曜日

Pascal Gauchon, Jean-Marc Huissoud "Les 100 lieux de la géopolitique"

戦略的に重要な地点と、地域紛争のある地点を挙げまくる本。日本に関しては、千島列島・竹島・尖閣諸島など。もちろん、日本列島そのものがロシアや中国の外洋展開を防いでいる意味もあり。一つ一つについては説明がそんなに詳しいわけではないけど、資料性はまあまあ。

なお、フランスの本なので、amazon.co.jpとかでは普通には買えない。amazon.frとか。

100 locations strategically important or where conflicts are going on. Descriptions for each location are not so detailed. However very concise and perfect for a reference.

2011年12月13日火曜日

Scott Adams "Dilbert: 2012 Day-to-Day Calendar"

これはわたしが毎年買って職場で愛用している日めくりカレンダーだけど、考えたら、Dilbertについて一切書いたことがなかった気がするので、この際書いてみる。


Dilbertは、平日3コマ(日曜は多少長い)という、アメリカの新聞では普通にあるパターンのマンガで、オフィス、特にIT業界の「あるある」ネタを得意とする。と言っても、こんな言い方では魅力を表現しきれない。マンガ自体は、公式サイトでいくらでもタダで読める。

http://www.dilbert.com/

さらに、著者Scott Adamsは文才もあり、文章だけでも笑わせてくれる。blogも有名だ。"Steve Jobs"にも取り上げられていたね。

http://dilbert.com/blog/

わたしが初めてDilbertに接したのは、日本でもよく売れたらしい"The Dilbert Principle"「ディルバートの法則」からだ。



残念ながら日本語訳は図書館等で探すしかないが、原書は今でも普通に入手可能だ。ついでに、ディルバート本に共通の特徴で、翻訳が素晴らしかった記憶がある。時代的には「マーフィーの法則」が流行したころだった。それに対抗してオフィス・IT業界のあるあるネタを、自分のマンガを大量に引用しつつ描写。今読んでどうなのか知らないけど、初めてDilbertの世界観に触れて衝撃だった。アメリカのIT土方が"cubicle"に住んでいるというのも、これで初めて知った気がする。なにより、笑った。

この成功に気を良くしたらしく、また翻訳がでた。"The Dilbert Future"「ディルバートの未来予測」。


これも笑った。細部は覚えていないけど、「基本的に未来は予測できないが、唯一絶対に変化しない定数は『人類の愚かさ』であり、この予測だけは間違いない」という命題はキッチリ覚えている。そして、その通りだと思う。もちろん大量のマンガの引用あり。それから"Joy of Work"。

これは残念ながら翻訳が出なかったし、原書も絶版か。いたずら"prank"集みたいな感じだった。やはり笑える。そして、次の"Dilbert and the Way of the Weasel"は笑えるのももちろんだけど、それだけにとどまらない秀作。

これは、オフィスにおける言い逃れとか、「微妙に不誠実」「ズルい」行動を大量に収集してあり、なぜ社会学学会がこの著作に賞を出さないのか、理解に苦しむ。"Weasonable doubt"という言葉が印象に残った。シンボリック相互作用論とかエスノメソドロジーとかエスノグラフィーとか労使関係とか経営とか、その辺りのことに興味がある人は読んで損にはならないと思うんだけど。

その後、Scott Adamsの文章本としては、"God's Debris"というのがあったんだけど、無視した。理由は、まあ、趣味というか・・・。Dilbert本とは毛色が違うようだ。ほかに、マンガの編纂本(compilation)は一杯出ているけど、マンガは最初に言った通り、全部Webでタダで読めるということがあり、それでも十冊以上は買ったと思うけど、最近は買っていない。

今でもDilbertはIT業界のmust-readだが、最近はxkcdもmust-readだ。

http://xkcd.com/

こっちも本が出てるけど、やはりWebで全部タダというようなことで。そう言えば、xkcdを日本語訳しているサイトを見たことがあるけど、翻訳がデタラメで酷かった。ついでに、ちょっと気に障るのは、Dilbertは自虐IT土方だが、xkcdはリア充な空気が濃厚だということ。

2011年12月6日火曜日

Micheal Mosley, John Lynch "The Story of Science: Power, Proof and Passion"

全般的な科学史だけど、わりと面白エピソードが多いのがポイントだ。ただし、ソースが全然書いていないので、もしも学校などで話そうと思っているのなら、一々自分で裏を取る必要がある。疑わしいのもあるし。ちなみに、邦訳は表紙から全部著者の綴りを間違えている。あまり信用できない気がするね。

Full of fascinating episodes from the history of science, though lacks necessary citations.


Steve Wozniak, Gina Smith "iWoz: Computer Geek to Cult Icon: How I Invented the Personal Computer, Co-founded Apple, and Had Fun Doing It"

この本を放置していたのは、昔からわりと一貫してAppleが好きでなかったのと、サブタイトルが残念な感じがしてたから。もっとも、わたしが知っているAppleというのは、最初のMacintosh以降なんで、Wozがあまり関与していない部分だ。つまり、control freakなところが嫌いだったわけで。Wozはそういう文化の人間ではない。

それはともかく、Wozが神である理由が良く分かる。天才というのはこういう人のことを言う。しかも偏屈者だったり冷たい人だったりするわけではなく、太った内気で陽気なアメリカ人だ。ただ、ある程度コンピュータというかハードウェアを勉強した人でないと分からない部分も多々あり、意味不明の書評が出回る原因になっている。というか、なんでわたしがWoz神の説明を理解できるのか、自分でも奇怪だったが、思い起こせば、わたしも元々はこんなことをしていたのだった。この本を読むべきなのはそういう人で、サブタイトルが想定しているような一般人ではない気がする。

I am not a big fun of Apple but all I know about Apple is Apple after the first Macintosh, which is not a Woz's product anymore. He is a genius and I am happy to be able to understand his explanations. There are some parts which a layman would find difficult to understand in this book.


2011年11月25日金曜日

Walter Isaacson "Steve Jobs"

わたしのIT土方生活は日立メインフレーム・Solaris・DOS/V・Macintoshくらいから始まって今に至るわけで、そういう人にとっては、業界の歴史を懐かしく読めて楽しい。BeOSとかNeXTとかiMacとか。そこから先は若い人でも馴染みのある話だと思う。Hacker文化の通例で、closedなAppleからは出来るだけ逃げてきたわたしだが、iPodだけは避け切れずに持っている。今後もApple信者になる予定はないが、少しはその美意識というか世界観も分かった気がする。Apple的美意識から枯山水を見たら、少しは面白くなってくるかもしれない。

そんなわけで面白く読んだけど、まあ特にITに詳しくなくても面白いんじゃないかな。たとえば、Pixarの件は、わたしは何も知らない部分だけど、それでも面白かったし。経営者として見れば、とても他人の参考になるような人ではないかも知れないし、変に影響を受ける奴がいたらイヤだが、遠巻きに眺めている分には面白い。音楽業界の部分はリアルに参考になった。

著者は、画期的な洞察を披露しているわけではないが、十分業界に精通しているようだ。なにより、あのSteveに伝記を任されるくらいだから、只者なはずがない。日本語訳は見ていないから出来は知らないけど、これだけ売れて特に悪い評判もないから問題ないんだろう。わたしとしては、早いうちに"iWoz"を読むつもりだ。どう考えてもわたしはあっち側だし。

You can review the history of IT industry reading this biography. That was the best aspect of this book for me. Now I'm planning to read "iWoz". Apparently my hero should be Woz, not Jobs.



2011年11月3日木曜日

Dorothy H. Crawford "Viruses: A Very Short Introduction"

この本が面白く書けているというのもあるけど、そもそもウイルスというもの自体が面白い。よく「コンピュータウイルス」とか言うけど、本物のウイルスに比べれば、人間の作ったものなんてチャチなものだ。

ウイルスにはDNAウイルスとRNAウイルスがあるが、どっちにしろ、遺伝情報という情報の世界で繁殖するもので、この点がバクテリアとはっきり違う。もちろん、その情報に基づいてタンパク質という実物が生産されて初めて価値があるわけだが、生産工場自体は宿主のを借りればいいので、ウイルス自体は情報だけ持っていればいい。この辺りの詳細な話が最初に描写されている。

本書の中心部分はウイルスによって引き起こされるさまざまな病気の記述。HIVやら肝炎やら天然痘やらエボラウイルスやらインフルエンザやら、その他凶悪な疫病がたくさんあり、なかなかホラーだ。感染メカニズムや疫学、さらには人体の免疫反応なども詳しく述べられる。分かっていることも色々あるが、分からないことは遥かに多い。

さらに、人類の側の反撃策について述べられる。といっても、ワクチンくらいしかないし、大量の資源が投入されているのに、未だにAIDS根絶は可能性も見えない。だいたい、ただの風邪ですら根絶の見込みはないのだ。一番最後には、生物兵器としての利用も語られている。ずっと読んでくると、最後の一文はかなり感動的だが、ネタバレなので各自お読みいただきたい。

Fascinating. This book is fascinating and viruses themselves are fascinating. People talk about computer viruses, but real viruses are much more sophisticated and compared to them, human-made computer viruses are cheap imitation. In the first part of this book, these replication mechanisms of viruses are described. Viruses are just a few bunch of RNAs or DNAs and they carry only information, based on which proteins are produced by using hosts' machinery.

The second part describes many examples of maladies caused by viruses. HIV, hepatitis, small pox, influenza... The third part describes the counter attack by humans, though we have only just a few vaccines.... Finally, viruses as deadly weapons are mentioned. The last sentence of this book is very impressing. You should read it yourself....

2011年10月15日土曜日

J. P. Singh "United Nations Educational, Scientific, and Cultural Organization (UNESCO): Creating Norms for a Complex World" (Global Institutions)

組織としてのUNESCOの概説書。UNESCOと言えば、気まぐれに「世界遺産」を決定しているだけの組織としか思えず、あとはいい加減な財政で米英の顰蹙を買ったとか、設立当時は東西冷戦のせいでグチャグチャになったとかいうような話しか知られていない。実際のところ、この本を読んでもそのイメージは拭えないが、ともあれUNESCOは頑張っているのであった。

この本の最後にも書かれているが、そもそもこのRoutledgeのシリーズ企画自体が、「組織としての国際機関そのもの」に焦点を合わせている点が画期的で、UNESCOに限ったことではないが、国際機関を知る上で非常に重要なシリーズになっている。この際、国際政治を研究している人には、再度強くお勧めしておきたい。

An overview of UNESCO as an organization. There are few books which focus on an international organization itself rather than its activities. Routledge's "Global Institutions" series are best of its kind.

2011年10月6日木曜日

Andrew Goudie, Heather Viles "Landscapes and Geomorphology: A Very Short Introduction"

日本語だと「地形学」となるのか・・・。もっと分かりやすく言うと、地学とか自然地理とか。VSIでこういうタイトルだと、「実際の地球の地理の概説」か「地形学という学問の概説」か、どちらなのか予想ができないが、この本については両方だ。高校で地学を選択していたわたしとしては、この本に書いてあることは、初歩的過ぎるというようなレベル。懐かしく読んだが、入門書としては、こんなものだろう。

An basic overview of geomorphology, an scholastic area for studying land. Plate tectonics, inundation, vegetation, ice ages, volcano, and so on.

2011年9月14日水曜日

Simon Glendinning "Derrida: A Very Short Introduction"

最もページが割かれているのは、グラマトロジーについてで、まあ妥当なところだろう。伝記についてはあまり詳しくないのは、著者がデリダの教えに忠実だということで。手ごろな入門書だと思うけど、デリダに関しては日本語でも良い本が沢山あるし、わざわざこれが日本語に翻訳されることはないだろうな・・・。それに、デリダのテキストが、世間で言われているほど難解な気がしない。もっとも、デリダのテキストが、多くは昔の哲学者の脱構築で、対象の哲学者についてある程度知っていないと、デリダが何と戦っているのか分からないということはある。さらに、デリダは極端に用心深いため、素人が読んでも何に対して用心しているのか分からないということもあり・・・。でもまあ、あちこちから疑わしい比喩を引っ張ってくるような現代思想家よりは、ずっと素直に読めると思うけどな。まあ、デリダは賛否両論とは言え、英米で評価された哲学者ではあるし、一度英語化されたデリダ解釈を読んでみてもいいとは思う。そうするとこの本くらいが手頃だ。

Here is a Japanese old saying: "To forgive is to forgive when you cannot." meaning "To forgive only when you can find it forgivable is not forgiveness at all." Clear enough. Derrida's "the only possible forgiveness is the impossible forgiveness." is just another mysterious way of saying the same thing. That said, philosophy is a clumsy subject, and it took a genius to reach this commonplace conclusion....

Anyway this book presents some important aspects of Derrida's thinking. But what is fascinating about Derrida is not so his thought but his way of thinking or writing. This book is a good introduction, but I think Derrida's texts are not so difficult to understand as Glendinning maintains.

2011年9月9日金曜日

Damien Kewon "Buddhist Ethics: A Very Short Introduction"

There are too many so-called Buddhism scholars which the author wants to be. While I do not look up to them as Buddhists, maybe this book represents some aspects of modern Buddhists.

正当な戦争とか安楽死とかクローン人間とかテロとか、要は現代倫理学にありがちなテーマについて、 仏教ならこう考えるだろうというこの著者の考え。はっきり言って無意味だと思うが、日本の教団についても言及もあるし、これが現代仏教の実態かもしれない。


Nicholas James "Cancer: A Very Short Introduction"

ガンに関わる基礎研究、医療、開発、政治経済の実態の概略。どうしたらガンにならないかという話はほとんどない。煙草を吸わないとか、(女子は)さっさと妊娠するとか、B型肝炎にならないとか、日光浴をするとか、(女子は)乱交しないとか、疫学的な知見は少々。治療法についても、いわゆる代替療法やらサプリメントやらはほとんど全面否定。治験で効果が否定されているんだから、科学者なら当然かと思われる。そして、イギリスの医療制度を批判。ホメオパシーに保険が利くような国だから当然か・・・。印象に残るのは、ガンに関する科学的知見よりは、医療産業の政治経済だった。読みやすいし、類書も少ないんじゃないかと思う。

The strongest points of this book are politics and economics of medical industry. The author criticizes the health system of the UK. I did not know that NHS pays for homeopathy. There are also some interesting facts from epidemiology of cancer. For example, the author recommends sunbathing to prevent cancer. But he is a rigid scientist and denies almost all the "alternative" therapy. Fascinating and recommendable especially for those who might develop cancer in the course of life....

2011年9月8日木曜日

Marco Iacobini "Mirroring People: The Science of Empathy and How We Connect With Others"

いわゆる「ミラー・ニューロン」の解説。他人の動作を見ることによって、あたかも自分が動作しているのと同じように反応するニューロンがあるとかいう話で、これが「模倣」の根底にあるとか。改めて考えると特に画期的な気がしないが、この本のインパクトは、むしろ、人間社会における模倣の重要性を強調している点だろう。要するに模倣が生物学的に自動的に起きるというような話。

The author maintains that imitation or mirroring occurs automatically due to mirror neurons. That sounds not so eye-opening, but this book is trying to explain the importance of mirroring in human culture. That is the point that makes this book outstanding.



2011年8月30日火曜日

Christpher Kelly "The Roman Empire: A Very Short Introduction"

A Roman empire's history organized by subject. The author puts highlights especially on some disturbing facts about the empire. Interesting. By the way, western people tend to distort Latin nous in their own way. That is because Latin culture is embedded in their cultures deeply. However, at least in academic books like this one, shouldn't we use proper Latin nouns?

ローマ帝国に関する主題別の通史で、特に帝国の負の側面が重視されているように思われる。どのみち短い本なので、これで帝国を概観できるわけではないが、読んで損はないところだろう。それはそれとして、西洋人はラテン語の固有名詞を勝手に改変することになっているが、その点についてわたしは反対し続けるつもりだ。その点については日本語は許されるが、今度は母音の長短を無視するのが許せない。少なくともローマ史について書いたり翻訳したりする人間は、ラテン語が当然できるのだと思うが、この件についてどう思っているのか。




2011年8月26日金曜日

Stephen Howe "Empire: A Very Short Introduction"

An overview of imperialism and colonialism, without touching on Japanese case. Once upon a time, "Imperial Japan" existed, but that was much smaller/shorter/weaker than those of European forces, and few Japanese think that Imperial Japan was a great age. And Japan was never colonized, at least officially. But most people of the world are in either one of the two sides, id est, former empires or former colonies.

ヘヴィなテーマなので、最初に色々概念を説明をしているけど、要するに帝国主義/植民地主義のいろんなトピックの解説。日本人に一番ピンとこないテーマだというのは、確かに大日本帝国とかいうのがあったけど、はっきり言ってショボかったし、しかも植民地になったこともないから。しかし、世界のほとんどの国は、帝国か植民地だったんだし、常識を養うためにでも、この本を読む価値はある。こういうテーマはなにかと重いんで、VSIくらいから読んだほうがいいと思う。




Charles Townshend "Terrorism: A Very Short Introduction"

This book falls in a category of "random essay" which is a type of VSI. I am not ironical. It sometimes works. In the case of this book, it mentions theories of terrorism which are often ignored because most of us are against terrorism and tend to think that terrorism is totally illogical and can attain nothing to ruling powers in the long run.

VSIの典型のひとつ、「ランダムなエッセイ」。良いところがあるとしたら、事例が多いのと、テロを起こす側の理論にも少し言及があることだ。一般的には、テロは体制に対する嫌がらせにしかならないように思われており、テロを行うべしという結論を導くような理論は、あまり一般には知らされていない。是非善悪はともかく、そういう理論が存在して、それに基づいて、冷静にテロを起こしている連中もいるということだ。



John Kenneth Riches "The Bible: A Very Short Introduction"

Needless to say but this book is much shorter than the bible itself. Therefore it seems to me a random collection of the author's observations on various things caused by the bible. Not an overview but just interesting articles. Not bad for such.

正典の成立過程とか、政治的な利用法とか、批判史とか、ほぼランダムな色々なエッセイ。キリスト教を研究し始めた初心者には、気晴らしの読み物になるのかもしれない。わたしとしては、支離滅裂な聖典の辻褄を合せようという努力と、支離滅裂に利用しようという努力を鑑賞するだけだ。





2011年8月20日土曜日

Nelson Goodman "Ways of Worldmaking"

How should I put it... From what I learn, there are infinite number of versions of the world. Some of them are more useful, some of them are just false and harmful, still some of them are false but useful... Some of them are convertible, some of them are nonconvertible, yet some of them have common factors... And then the author goes into details... It all seems to me totally obvious except for that there are too many prerequisites. Is it because Goodman's ideas is so dispersed among us that I cannot recognize it as such? Or Is it because I am too much into continental philosophies that I always feel an urge for deconstructing everything? I do not know but one of my friends said that this book is a must-read and I finished it.

これは知り合いが読んでいたから読んだだけなのだが・・・。世界には様々なヴァージョンがあり、制作されうる。そして、著者の主たる関心は、様々なヴァージョンの相互作用にあるらしい。確かに面白い事例は色々あるんだけど、純粋に理論的な枠組みという点からすると、特に斬新でもないし、未確認の前提条件が多過ぎるような気がするのだが・・・。 これはグッドマンの思考が世間に普及し過ぎて当たり前になったせいなのか、それとも、何でも脱構築したくなるわたしの悪趣味のせいなのか。どっちにしろ、有名な作品だし、読んで損はないんだろう。邦題「世界制作の方法」はカッコいいというか、原題よりこっちのほうが適切なくらいだ。




Dana Arnold "Art History: A Very Short Introduction"

As is often the case with VSI, this is not a book simply tells us art history. Rather, it is a book on history of study of art history. It covers wide range of topics from classical west-centered vision to Foucault's criticism.

VSIにありがちな話で、美術史というより、美術史学の歴史。絵と彫刻の話で、いわゆる正典とされるような芸術作品について、制度面とか社会学的側面とかイデオロギー的側面からの解説もある。まあ、あまり興味のある分野でもないので、良い本かどうか分からないが、読んで損したとは思わない。




2011年8月19日金曜日

Andrew Ballantyne "Architecture: A Very Short Introduction"

A historical-architectural-sociology? It seems to me a rather random walk in the world of famous buildings. It tells us repeatedly that the value of a building is relative to cultures to which we belong. I am not particularly familiar with architecture but I am certain that this is not a good introductory book. But, well, there are lots of famous buildings which I feel like to research more.

建築学の教科書というわけでもなく、建築社会史みたいな感じ。建築の価値は文化相対的であることが執拗に強調される。有名な建物をランダムに紹介している。体系性のようなものはなく、入門書というより、「さわり」みたいな感じかな。




2011年8月18日木曜日

Giovanna Borradori "Philosophy in a Time of Terror: Dialogues with Jurgen Habermas and Jacques Derrida"

In my school days, Habermas seemed to me constructive but simplistic. Derrida seemed profound but futile. Now I see they both are trying to find good neighborhood on their own ways, which are not so diverged as they appear. They both do not touch problems of the notions of "nation", "religion", etc. which I think were invented in the Europe or Christian traditions, because they both refer to Kant as a reference point. Maybe to them these points are too obvious.

流石と言うしか・・・。ハバマスは正しくカントを受け継いでおり、その世界政府像に対してキリスト教的だのパターナリスティクだの文句を言うことはできるが、ハバマスの答は簡単で、「マシな対案があるのか」ということだ。わたしとしてはあるような気がするが、ここまで話がこじれた以上は、主権国家だとか並列する諸宗教とかいう概念を前提にするしかないのかもしれない。他方、デリダのほうでは、「無条件の寛容はありえないが、それを前提にしなければ条件付きの寛容も考えられず・・・」とかいう例の論法で、固定した理想状況をあくまで拒否している。もっとも、この拒否は、永遠にゴールを目指すための前提であることを理解しないと、デリダをただのアナーキストと見誤る可能性が高い。 しかしまあ、流石だ。




2011年8月16日火曜日

Arthur Miller "Death of a Salesman"

I found this book at the end of my bookshelves. Well, I guess there was a time when this salesman's situation was considered miserable. He had the wrong dreams. That is all. He had a nice wife and nice sons. How could he have complained?

本棚を整理してきたら出てきた本で、確か筒井康隆推奨とかで買った気がする。Penguinだけど、ブックオフで売れなかったので、仕方なく読んだ。まあ、名作とされているので読んで損したとは思わない。

主人公は63歳のセールスマンで、かつては優秀だったらしく、過去の栄光の回想が多い。今は完全にロートルでリストラされる。息子は兄が34で、弟も近いところだうけど、二人ともニート。ただし、引きこもりではなく、自分探しとかで職を転々としていて実家に戻ってきたらしい。専業主婦の妻は献身的。完全に現代日本のような気もするが、偶然の一致というより、いつの時代でもこんなものかも知れない。

そして、わたしの自然な感覚では、どう考えてもこれが悲惨な話に思えない。妻がいて息子がいる時点で勝ち組だし、有力な友人が助けてくれるとまで言っている。それで何が問題かと言うと、要は"He had the wrong dreams."にすべて集約されているようだ。息子がニートなのも、似たような話で。しかし、浮気の話とか盗癖の話とか出てくると、ますます同情が減殺され、葬式だって、誰も来ないというけど、孤独死でも無縁死でもない。まあ虚栄心の死というか。文学的というより教訓的だった。




Bernard Crick "Democracy: A Very Short Introduction"

Not a typical introductory textbook. The author expresses his view on democracy rather freely. Apparently democracy is not supreme value for him. It seems that the ultimate value is something like "free society" and democracy is an indispensable element for it but democracy alone cannot do any good.

このシリーズにしてはヘヴィな読み物だ。わりと著者独自の意見が前に出ている。教条的に民主主義を絶対視しているわけでもなく、かといって全然冷たいわけでもない。むしろ粘着質なバランスのとり方だが、このテーマだとみんなこうなるんだろうか。日本語のこの手の本だと、もっと粘着質になるし。しかし、何かしらこういう本を読まないといけないのなら、この本でもいいんじゃなかろうか。



2011年8月14日日曜日

Mary Jo Hatch "Organizations: A Very Short Introduction"

In my eyes, well written but just a bunch of obvious observations chiefly on business organizations. If you are not familiar with sociology or social psychology, this book may be a good introduction. Maybe a textbook for MBA or something like that? There are a lot of famous quotes from major sociologists and psychologists. Since I knew them very well and in some cases better than the author, I am not in a position to judge this book.

組織とは何かという話なんだけど、正直なところ、わたしには当たり前のことがひたすら書いてあるようにしか思えなかった。ただし、これはわたしが社会心理学とか、特に社会学に通じているからで、そういう背景がない人が読んだら感想が違うかもしれない。有名な社会学者や心理学者の引用がいっぱいある。わたしとしては、知っている引用ばかりなんで、なんとも言えない。MBAの副読本とかそんな感じか。経営の話をする時に、気の利いた引用の一つも言えないといけないかもしれない。


2011年8月11日木曜日

Mohamed ElBaradei "The Age of Deception: Nuclear Diplomacy in Treacherous Times"

This book is a must read for all who are interested in diplomacy or nuclear disarmament/proliferation. Diplomacy should be conducted in this way. This book is fairly thick but easy to read. Fascinating. In the mean time, what were our diplomats doing?

別にエルバラダイ氏の言うことが真相のすべてとは思わないが、IAEAが政治化されてるとか、イランがどうこうとか言うのなら、少なくともこの本を読んでから言うべきで、さっさと日本語訳されることを期待する。前事務総長エルバラダイ氏が、北朝鮮・イラク・イランなどとの交渉の次第を書きつづったもの。分厚い本だが、普通に面白く、外交を追体験できる。外交・核軍縮・核不拡散などに興味があれば、絶対に読まないといけない。それにしても、ほとんど日本人が出てこない。一箇所だけ著しくマヌケな出演があるが、一体日本の外交官は何をしているのか。現事務総長の天野氏について全く言及がないのも憂鬱だ。


2011年8月9日火曜日

Jacques Derrida, Gerald Graff, Jeffrey Mehlman, Samuel Weber "Limited Inc"

If it is crystal clear to you
that you are totally right,
that your opponent is totally wrong,
that you know why your opponent misunderstood you,
that your opponent is trying to defame you some what intentionally,
that your opponent's malice justifies your counterattack,
that you have enough time and patience to do so,
and that it is a good opportunity to advertise your theory more correctly,
then this is a sort of book you would write. I read this book more than ten years ago and it still amuses me. Bad taste.

なんか急にデリダを読み返したくなるブームがわたしの中に来ている。デリダは難解だと言われていたし、今でも言われているけど、人によるんだろう。もちろん、必要な哲学的予備知識の量とか、極端に用心深くて面倒くさいとかいうことはあるけど、一旦馴染んでしまえば、デリダの真似をするのは、そんなに難しいわけでもないというか、実際そうして脱構築論文が量産されたんだろう。用心深さについて言えば、本当は、この本のような事態を避けるためということだろう。

有限責任会社abc...のファンというのは、「自分を理解する能力のないバカが勝手に誤解してバカげた非難をしてくる」という経験をしている人で、そういう人たちは「もしも自分にヒマと体力があって、そうすることによって労力に見合うだけの利益が見込めるなら、こんな本を書きたい」と思っているに違いない。実際にはそんな気力もなければ相手に恥をかかせる趣味もないので、どこかの時点で無視せざるを得ない。ところが、デリダは多分本気でムカついていて、それを徹底的にやっていて、しかもそれが行為遂行的なエクリチュールの一例でございましてとかいう、他にも色々あるけど、悪いタイミングが重なったものだ。その様を眺めて、我々が溜飲を下げるというような。




2011年8月5日金曜日

Brian Charlesworth "Evolution: A Very Short Introduction"

This book is a basic account of evolutionary biology. In Japan, there exists virtually no controversy about the evolution theory. Sometimes the author poses "evidences" for the evolution theory whose necessity most Japanese do not understand. It was more interesting than I had expected though.

進化生物学とかいう分野の基本的な概説書。特に自然選択と適応の解説が面白かった。かなりの部分が「進化論の証拠」とかいう話に当てられているが、つまり、欧米、特にアメリカでは、いまだに進化論に対する反対が多いということで、日本人にはどうでもいいことだ。この本とは関係ないけど、日本で言う「教科書問題」は、日本史の教科書がどうとかいうセコい話だが、アメリカで言う「教科書問題」は、進化論とか地球温暖化の話を言う。日本がたかだかここの百年くらいの歴史の捏造だの歪曲だの騒いでいる間に、アメリカは生命や地球の歴史自体を捏造しているのだ。このようにアメリカは何かとスケールがでかい。


2011年7月25日月曜日

Ian J. Deary "Intelligence: A Very Short Introduction"

"Intelligence" is defined in this book as narrowly as one can expect. It means the score of IQ tests. The author carefully and correctly limits his investigation to what is measurable. Still there are lots of amazing findings. No previous knowledge is required. Very fascinating.

このタイトルでは色々なことを想像できてしまう。たとえば、生物の進化の過程とか脳科学とか人工知能とか知能の構成要素とか知能テストの政治的問題とか。しかし、実際にはこの本のテーマは極端に単純で、要するに知能テストの成績に及ぼす色々な因子の解説だ。たとえば遺伝とか環境とか脳の大きさとか反射神経の良さとか年齢とか。こう言うと詰まらなく聞こえるかもしれないが、わたしが読んでいる分には、結構な数の驚きの結果があった。別にわたしはアメリカ人みたくIQの概念がそんなに人生にとって重要だとは思っていないが、たかがこれだけの数値でも、色々研究すべきことはあるものだ。


Julia Annas "Ancient Philosophy: A Very Short Introduction"

This book is chiefly on Socrates, Platon, Aristoteles, Stoicism and Epicureanism. It is not a concise overview. The author is seriously discussing some topics with those great ancient philosophers. This method is a great way to become acquainted with ancient philosophies, though in the academic world, you would be required to treat them with more indifference to their arguments, because their arguments are too rudimentary compared to those maniac modern counterparts. For me, Aristoteles's view of the world seems very attractive. It is sad that almost all the book on science history I have ever read portrayed Aristoteles as an authoritarian idiot.

主題はソークラテース・プラトン・アリストテレース・ストア派・エピクーロス派。特にプラトンとアリストテレースについては、日本語に限らず原典を見もしない偏見に満ちた解説ばかりだ。プラトーンはファシズムの祖だし、アリストテレースは科学の進歩を妨害したバカだとか。そんな中でこの本は、入門書として妥当なところだ。著者はこれらの哲学者の思考の内容に立ち入って、議論を交わしている。「古代哲学の歴史」とか「古代哲学の研究の歴史」という要素も多少解説されているけど、中心はあくまで議論にある。しかも、予備知識はほとんど必要なく、誰が読んでもそこそこ面白いと思う。


2011年7月21日木曜日

Norman Solomon "Judaism: A Very Short Introduction"

I did not know much about Judaism chiefly because there are few Jews in Japan. There are some books about world-dominating Jewish conspiracy theory at bookstores that no one would seriously believe. There are also books that say "Learn Jewish way of thinking and become rich" sort of things. Maybe some people seriously read this sort of books. My little knowledge about Judaism came chiefly from a TV series "Evangelion" in the same way I learned Catholicism and Protestantism from OVA "Hellsing". What I mean is that this book is very nice for beginners or lay persons. As an average Japanese sometimes I find it difficult to distinguish those religions and Islamic sects from each other. It is a really nice beginner's guide to Judaism.

普通にユダヤ教の歴史や文化や哲学や風俗や生活を概説している本。一冊でコンパクトに概観できていて、まさしくシリーズの趣旨に沿っている。わたしは多少はキリスト教に詳しいのでまだしもだが、普通の日本人に取っては、ユダヤ教というのは、イスラム教と大して距離感が変わらないんじゃないかと思う。多分、そんな人でも、これを読めば多少は親しみが持てるんじゃないかと思う。世界には色々な宗教や民俗がありますね、というような。


2011年7月19日火曜日

Simon Critchley "Continental Philosophy: A Very Short Introduction"

I do not know what English-speaking people think about this book, because in Japan, it is an obligation for philosophy students to study both "analytic" philosophy and "continental" philosophy. It seems that in English-speaking countries philosophy students stay away from their continental counterpart. It was really interesting for me to watch their mutual misunderstandings, but in my humble opinion, continental philosophers know about analytic philosophy much more than the other way round. This book is not for a beginner. Obviously readers are required to have a wide range of knowledge about both philosophical traditions. Maybe at least one year or two years' training in college philosophy?

これはスゴく面白かったけど、相当程度、哲学(史)の素養がないと理解不能かと思われる。少なくとも一年か二年は哲学を真剣に勉強したことがないと、何を問題にしているかすら分からないだろう。たとえば、フィヒテとかフレーゲとかも何の説明もなく引用されるし、「名前を聞いたことがある」程度では、到底読めない。

というわけで、あなたが哲学専攻で大学院進学希望という前提で話を続けると、この本は、分析哲学者の職業集団に、大陸哲学を正当に評価するように迫る本だ。この辺りの不毛な対立とか、相互無理解は、傍目には面白い。著者の考えを乱暴に要約すると、分析哲学は科学の下僕に成り下がって人生の問題から撤退しているし、大陸哲学は肝心なところで不可解な概念にうったえるばかりで問題に真剣に答えていない。この見立て自体が英米的だとも言えるけど、著者の視点に同意するかどうかは別として、この辺りの相互無理解の歴史が、色々な例示を伴って説明されるので、例示を理解できる程度の哲学的素養があれば、楽しく読むことができる。



2011年7月15日金曜日

Catherine Belsey "Poststructuralism: A Very Short Introduction"

Another book of nostalgia. Worth reading if you have no knowledge about this subject. In Japan, continental philosophies are much more widely studied than those of UK or US, in case you did not know.

わたしとしては、懐かしいのみ。全くの個人的な感想だけど、浮世離れしつつ憂鬱。基本的に喪失感とか抑圧とかから始まるから、憂鬱になる以外に道がない。訳はキモいけど、当時の流行りの文体だったかもしれない。気になる人はやはり原書のほうが平易。ここで扱われているような哲学者たちは既に文献学の対象で、あまり現代にリアルに議論するようなことでもないかもしれないけど、入門書としては悪くはないだろう。


2011年7月14日木曜日

Jonathan Culler "Literary Theory: A Very Short Introduction"

I took this book out of nostalgia. I would say that it is a collection of interesting topics in literary theory, rather that a brief overview. However literary theory is itself a collection of miscellaneous topics. So what else should we expect under this title? I think all the English (Japanese) teachers at high school should have at least this level of knowledge.

懐かしいというのが第一印象で、文学理論をこの長さで紹介しろと言われたら、こんな感じだろう。日本で言う文学部文学科は文献学を教えるところなので、そういう本ではない。どちらかと言えば、文学部哲学科で、まあ、実際にはそこでも文献学しか教えていないのかもしれないが・・・。オースティンやらデリダやらも簡単ながら紹介されるし、日本語で言えば「現代思想」というのが近いのかもしれない。書いてあることは雑駁だが、文学理論自体が雑駁なんだから仕方がない。しかし、高校の国語の先生は、これくらいの知識は持っておくべきだろうな。


2011年7月12日火曜日

John H. Arnold "History: A Very Short Introduction"

This book is a "history of history". I expect that all historians should have this degree of conscientiousness. Making up a history needs a self-analysis, if you call it describing. You must be conscious about what you are doing. And it will benefit also consumers of history books. And this book is also entertaining.

これは良い本だった。歴史記述の歴史。いきなり、一読しただけでは分かりにくい中世の殺人事件の話から始まり、先が思いやられたが、歴史記述というものが、何のためにどうやって作られるのか、様々な例を引きつつ分かりやすく考えて行く。というのも、著者自身が自分の見解を相対化しているからで、だからといって、アナーキーにならないのもバランスが取れている。ヨーロッパ中世の例が多いけど、特に予備知識は必要でない。結局、「本当はどうだったの」という疑いは、単なる歴史小説愛好家ですら常々思うところで、こういう歴史家の現場を見るのは参考にもなるし、面白くもある。


2011年7月11日月曜日

Gillian Butler, Freda McManus "Psychology: A Very Short Introduction"

An overview of psychology. Not bad, not great. VSIs with a title too general tend to be boring and this book is not an exception. It is a catalog of psychology related subjects. Those who have just started to study psychology might find it helpful.

これは日本語訳も出ているけど、わりと酷いのでお勧めしない。それはともかく、原書自体も、本当の心理学の初心者向きというところで、せいぜい大学一回生相当といったところか。だいたいVSIは、一般的過ぎるタイトルは、こういうパターンが多い。それはそれで価値があるんだけど、素人のヒマ潰しにはお勧めしない。

2011年7月5日火曜日

Uta Frith "Autism: A Very Short Introduction"

Amazingly great short book on ASD. Very informative and very easy to read. I can feel warmness of the author who is an excellent scientist and a great humanitarian at the same time. This book contains a lot of insights into not only ASD but also what we are. I was impressed with complexity of our brains. Recommended for those who are in contact with ASD people but also for those interested in brain science.

いわゆるASD、自閉症とかアスペルガー症候群とかの解説書なんだけど、これは素晴らしい。現実の自閉症がどんなものか、とてもリアルにわかりやすく書かれている。実際に自閉症の人と付き合いがあるのならmust-readだけど、純粋に脳の働きに興味がある人にとっても驚くべき情報がいっぱいあるので、特に自閉症に興味がなくても面白いだろう。個人的にびっくりした一例だけど、健常者でも脳のある部位を損傷すると、物をやたら集めるようになる。これはその部位が物集め本能を司っているからではなく、物集め本能を抑止する部位だからだという。えっ、じゃあ人間は自己抑制し続けてないと、自然に物を集めてゴミ屋敷を作ってしまうということなの? いろんなことを考えてしまう。自閉症に関する本を他に読んだことがないので知らないけど、日本語訳したいところだなあ。

2011年7月1日金曜日

Leslie Iversen "Drugs: A Very Short Introduction"

This is a very basic introduction to drugs. No scientific background is required. I have never studied much about this subject, still I found this book is too elementary. There are few books of this kind, that is, books for ordinary people outside of medical profession.

こんなテーマは、普通は、医学部か薬学部でしか勉強しないだろうし、一般人に薬学を普通に全般的に解説しようとする本は、これくらいかもしれない。特定の疾患や、特定の病気に関する薬の解説書は、素人向きでもいくらでもあるだろうけど、この本は、普通に一般薬学だったり、製薬業界の解説だ。薄い本なので、はっきり言って、わたしとしては物足りなかったけど、これ以上となると、普通に薬学のテキストを読むしかないんだろう。


2011年6月28日火曜日

Maxwell Irvine "Nuclear Power: A Very Short Introduction"

I assume most part of this book was written before the accident of Fukushima Daiichi. The author is clearly pro-nuclear energy, which is a good thing because in Japan all bookstores are repleted with anti-nuclear books. Personally I do not have a solid opinion about this matter and I do not feel I have to have one either. I am just fed up with unscientific or illogical accounts of nuclear power energy, regardless of pro or con. I do not think this book is particularly persuasive, but at least it explained me a lot of cool cutting-edge technologies of new generation nuclear power plants. Sometimes I felt as if the author was a salesman from Areva or something.

これはタイミングが良いのか悪いのか、多分悪いんだろう。多少、福島への言及があるけど、本書の大部分はそれ以前に書かれたと思われる。どのみち、福島の事故の評価が定まるまでは、まだ時間がかかるけど。この本は明らかに原発推進派の立場で書かれている。様々な原発にまつわる新技術なども沢山紹介し、まるで原発のセールスマンのようだ。日本語では、これほどちゃんと原発にまつわる新技術を解説している本はないように思う。別にわたしは推進派でも反対派でもないし、意見を決める必要にも迫られていないけど、今は日本語だと反対派ばかりというのもあるし、普通に原子力発電所の技術を学びたいというのもある。少しこういう本で、まずは冷静に技術を見て、それから意見を決めても遅くはないだろう。原発の経済分析みたいな話にはあまり説得力を感じなかったが、技術解説は単純に面白い。

2011年6月27日月曜日

Peter Salway "Roman Britain: A Very Short Introduction"

I am not particularly interested in Roman Britannia, but this book was much more fascinating than I had expected. In Japan, at high school, we learn about Roman Empire but not quite thoroughly about its provinces.

全然期待せずに読み始めたけど、なんか一気に読んでしまった。わたしはもともと歴史に弱いけど、世界史に結構詳しい人でも、ローマ帝国の属州たるブリタニアについて、そんなに詳しい人はいないんじゃないかと思う。属州と言っても、帝国の首都から見ると、ガリアのさらに遠く、ケルト人の住む神秘の島で、必ずしも支配は安定していなかったそうな。しかし、それだけに征服した時に評判の上がる土地で、中央政界の動向がこの島の歴史に一々反映される。最終的にはローマ帝国は衰退し、ブリタニアの地は元通りの野蛮な世界に逆戻りしたとか。押したり引いたりの戦争を繰り返して、結局はそんなものか。やれやれ。ブリタニアは、壮大なローマ帝国の辺境の一地域に過ぎないけど、壮大な古代の歴史も、壮大な宇宙の話と同じように、わたしを癒してくれる。



2011年6月24日金曜日

David DeGrazia "Animal Rights: A Very Short Introduction"

As far as I am concerned, total ban on farming does not pose a great problem because I do not like meat anyway. Total ban on whaling is a good idea because I hate whale. What I do not understand is why some people can oppose to whaling on moral bases while devouring farmed beef. I think it is a matter of emotion, not a logic. I know that Christians are generally more cruel to animals than Buddhists, but I find this book is the other side of the extremity. The author tries to build a logic system for animal rights. I do not think that would have any effect on specists.

権利ベースで、動物の殺害はもとより、苦痛を与える行為を全面禁止しようという本だ。こんなふうに色々突っ込まれる論理を構築するより、感情に訴えるほうがキャンペーンの趣旨にかなう気がするけど、論理は論理で大切なんだろう。西洋人はもともと東洋人に比べると動物を軽んじているが、この本なんかは逆の極端ということで参考にはなる。いずれ日本でも政策問題になる日が来るかもしれないので、予習しておいてもいいかもしれない。


2011年6月21日火曜日

Harry Sidebottom "Ancient Warfare: A Very Short Introduction"

As is often the case with VSI, this book is not a simple description of ancient warfare. Its main theme is an ideology called "the Western Way of War". Well, I have not yet seen "Gladiator" and the concept "the Western Way of War" is very foreign to me. Telling from what I learned from this book, I imagine that westerners have a idealized image of their way of conducting warfare, and the author's intention is to criticize that image. As an average Japanese I know a lot about ancient Chinese warfare which was highly civilized and therefore very brutal. I would like to recommend my western friends "Records of Three Kingdoms", which might change your image of ancient China and yourself...

VSIにありがちな話で、古代ローマ・ギリシア・マケドニア・ペルシアとかの戦闘を概説しているというよりは、それに対する解釈の変遷に重点がある。特に、この本には、"The Western Way of War"という神話を打破するという目標がある。もっとも、わたしはそんな神話を西洋人と共有していないので、何のことか分かりにくいところもあるが・・・。早い話がローマ人は規律正しくちゃんと戦争をするけど、ゲルマン人とかは凶暴で自由に戦ってくるとかいうようなことらしい。映画"Gladiator"が(批判的に)参照されるので、見た人にはもっとわかりやすいだろう。で、普通に戦史・戦術史を学びたい人は別の本を当たるべきということになるが、この本を読んだ後では、普通の本に書いてあることが普通に信じられなくなるというのも、VSIにありがちな話で・・・。個人的には学生の頃、わりと真剣に古典語を勉強していたんで、ちょっと懐かしかった。


2011年6月14日火曜日

Benoit B. Mandelbrot "The Fractal Geometry of Nature"

This book is a readable encyclopedia of fractal geometry rather than a mathematical study. Some readers might feel frustrated because there is not enough mathematical explanation. I think that feeling has something to do with something inherent to fractal geometry... But of course, I do not know.

マンデルブロ先生によるフラクタル幾何の解説。古典なので読んで/見て損はない。一応日本語訳もあって、優秀な人たちが何重にもチェックして丁寧に訳しましたみたいなことが書いてあって、その通りなんだろうけど、少し見た限りでも不自然に読みにくいように思う。敢えてお薦めしない。

数学書で翻訳が気になることは少ないけど、つまり、この本は、ガチの数学書ではない。数学的な解説よりも、フラクタル幾何の自然科学への応用が百科事典的に解説されているというような感じ。特に高度な数学の知識は必要ない。数学の知識のある人が読むと物足りない感じがするようだ。しかし、この物足りなさは、単に著者のスタイルと言うより、フラクタル幾何の本質に関係しているような気がしなくもないのだ・・・。

2011年6月12日日曜日

Daniel W. Drezner "Theories of International Politics and Zombies"

I am afraid that this book is easily buried into obscurity because there are lots of zombie books recently. I checked at bookstores many zombie manuals and I found this book is the best of its kind. It might serve as an introductory book on international politics. You can insert this book into your report on international politics at college.

最近英語圏では、やたら「ゾンビ対策マニュアル」的なゾンビ本がいっぱい出ていて、ほとんどあまり面白くないんだけど、これだけは面白い。初めのほうがあんまり面白くないし、イラストも酷いので、類書に埋もれてしまう感じがあるのが惜しい・・・。翻訳したら売れると思うけどなあ。

要はゾンビが大量発生した時に政治、特に国際政治力学に与える影響を分析している。著者は真っ当な政治学の先生だし、出版社も真っ当な大学出版局だ。いわく、こういう異常事態を想定することにより、各種の国際政治理論に対する「ストレス・テスト」になる、とか。また、ゾンビ対策計画それ自体が無意味だとしても、そういう計画を立案するプロセス自体が、想定外の非常事態が起きた時の対応能力を高めるのだ、とか。まあ多分半分くらいは本気で書いているんで、普通に国際政治学の入門書にもなりそうだ。こういう冗談本は面白さを伝えるのが難しいんだけど、短い本なんで、お薦めしたい。大学の国際政治学のレポートの参考文献に忍び込ませておくのがお薦めだ。

2011年6月10日金曜日

Fred C. Piper, Sean Murphy "Cryptography: A Very Short Introduction (Very Short Introductions)"

Very orthodox and very elementary. You don't need to know even the binary notation. Very good for the first encounter with cryptography. But if you just looking for fun, I bet there should be more amusing books on cryptography. And also if you are looking for real mathematics of cryptography or a manual for real computer security system, this book is not for you.

これは良くできた入門書という感じは受けるんだけど、中途半端な感じもある。予備知識は必要なく、二進法すら知っている必要がない。まあ情報処理技術者試験のテクニカルエンジニア(情報セキュリティ)(今は違う名前になっているのかも知れない)くらいなら、暗号に関してはこれくらい知っていれば十分だろうとは思う。数学に興味があるとか、あるいは本当に暗号システムを実装したいとかはっきりとした目的があるのなら、この本で入門するのは時間の無駄かもしれない。あるいは単に暗号に関する面白い本、というのならサイモン・シンでもブルーバックスでも色々あるだろう。


Catherine Sheldrick Ross, Kirsti Nilsen and Marie L. Radford "Conducting the Reference Interview: A How-To-Do-It Manual for Librarians, Second Edition (How to Do It Manuals for Librarians)"

I think this is a book for students who want to be a librarian. Those who have no experience of serving at the library reference desk or something like that should find this book exciting. For me this book is too elementary though I know many librarians who do not possess those skills described in this book. There are lots of professions which require the client interviews, such as policemen, nurses, doctors, business consultants, tech helps and so on. And each has similar course books like this one. All of them are interesting and make me think about helping in general.

基本的には、司書になりたい人向けのテキストブックなんだろうけど、客の相談を受けるのが仕事の人なら見知ったような状況が展開されている。そういう仕事はそれぞれ、これと似たようなテキストがあるもので、たいてい面白い。わたしが読んだ限りでは、歯科医の接客本は客を完全にクレーマー扱いしていて酷かった。この本なんかは逆に丁寧過ぎる感じがするくらいで、やたら客の「本当に聞きたいこと」に対する踏み込みが深い。つまり、「客が正しい質問をできるように援助する」というようなことで、いろんな接客業務に共通の課題だろう。事例が多いので、司書になりたい人にとっては夢の広がる本だろうし、図書館に縁がなくても理解しやすい。ちょっと前に読んだHelpingの一つの応用編と言えるだろう。まああんまり図書館でイヤな応対をされた経験はないけど、警察とか医者とか、もっとこういう訓練をするべきだろう。人の話を聞く能力がなければ、技術力があっても意味がない。

Mark Bowden "Winning Body Language: Control the Conversation, Command Attention, and Convey the Right Message without Saying a Word"

I came across this book by a mere accident. I believe not all the arguments or justifications the author made for his method, but as long as it works, why do I bother? Very helpful for me. Some of the techniques told in this book were familiar to me, but chiefly for purposes of martial arts or health. I never thought they could also be used for business presentations.

これはかなり衝撃的で、世界観が変わる。わたしにこの本の価値を十分に伝えられる気がしない。ビジネスの場でのボディーランゲージの使い方が書いてあるだけで、しかもそれが酷く簡単な話で、「そんな簡単なはずがない」と誰だって思ってしまうようなことだ。著者は舞台仕込みの人らしく、もしかすると芸能人やテレビに出るようなにとっては常識なのかもしれないけど、少なくともわたしは、こんな指導は知らない。わたしがこの本を見つけたのは偶然で、某洋書売り場で違うボディーランゲージの本を見かけて良さそうだと思ったんだけど、念のためにWebで調べたら、この本のほうが評判が良かったから買ったのだった。大差でこっちの本のほうがいい。この本は、基本的なことしか書いていないが、わたしは、この著者はもっと色々なことを知っていると思う。しかし、芝居もそうだろうけど、こういうのは自分で開拓していかないと身にならないのかもしれない。まずはこの本で開眼したので、色々やることができた。

2011年6月2日木曜日

Malise Ruthven "Fundamentalism: A Very Short Introduction" (Oxford Very short Introduction)

"Fundamentalism" is often translated into Japanese as "genri-shugi", which literally means "principle-ism". Anyone who would not converse with those who do not share his belief is deemed "genri-shugisya" or "principle-ist". So "genri-shugi" has a broader meaning than "fundamentalism". We can talk about "democracy-genri-shugi" or "open-source-genri-shugi".

Well, here "fundamentalism" is a strictly religious term, has nothing to do with above mentioned dogmatisms or technical analysis. Sects deemed "fundamentalists" exist in many religions and they are all somewhat alike. The author's approach is religious sociology, and fairly easy to follow. A lot of fascinating insights are there. This is a short book, but contains too much interesting thinking for me to summarize here.

ファンダメンタリズムというのはテクニカル分析の反対ではなくて、日本語ではたいてい「原理主義」と訳される。日本語訳がこの訳を避ける意味が分からないが、日本語の「原理主義」だと少し広すぎるのかもしれない。今ではイスラム教こそが原理主義の最たるものみたくなってるけど、基本は合衆国のプロテスタントだ。正直なところ、平均的な日本人としては「宗教は怖いなあ」くらいの感じだけど、世界的な潮流としては、原理主義は伸びているんだよな。世俗化、脱神話化が進むはずの現代社会で、なぜそんなことになるのか等の考察がこの本では繰り広げられる。鋭い社会学的考察が満載で簡単には紹介できない。


2011年5月31日火曜日

Edgar H. Schein "Helping: How to Offer, Give, and Receive Help"

Symbolic interactionism, on which this book is based, is underutilized in the business world. So it is not surprising that this book is a huge success among business people. Though symbolic interactionism is one of my strongest areas, I was greatly impressed by the author's insight. This is how SI is applied in the real world. What did I studied in the university?

This book is chiefly meant for professional helpers, such as nurses, business consultant, computer technicians etc. However, since everybody sometimes helps other people or is helped themselves, nobody is out of the scope of this book. If you are familiar with symbolic interactionism, especially works of Erving Goffman, that will be a great help, but not a prerequisite. Rather, you can get a feeling of SI thinking from this book.

I think a major constraint of this book is that it seems it only deals with helping situations between well-educated people. For example, the author assumes that a helper feels almost automatically one-up and a client feels one-down. Maybe there is a cultural gap, but at least here in Japan, when clients ask for help, sometimes they feel one-up, because they PAY. I hate this side of Japanese culture, but I imagine the same thing can happen in the US. What do you think when you are forced to call a customer service because a product you have purchased is defective? In Japan, we tend to perceive a company as a whole, and we feel one-up relative to a customer service representative though he himself is not responsible for that defective product...

As you see, this book urges me to think a lot. Great book.

これは「人を助けるとはどういうことか」という日本語タイトルで、ビジネス書としてそこそこ売れたらしいけど、訳が酷過ぎるらしい。わたしは原書しか読んでいないので翻訳は確認していないけど、文句を言っている人たちは信用できる気がする。

というわけで、原書についてだけど、これは売れるのはわかる。この本の基礎になっているシンボリック相互作用論は社会学の一分野で、ビジネスの世界でほとんど知られていない。わたしもシンボリック相互作用論は相当勉強したつもりなんだけど、こういう本を読むと、せっかく勉強したのに十分に役立ててないことに気がつくようなことで・・・。特にE. Goffmanの仕事などを知っていると、この著者の言葉遣いとかも良くわかると思うけど、社会学を全く知らなくても読める。

主たる対象読者は、看護婦・経営コンサルタント・ヘルプデスク等の「プロの支援者」だけど、誰でも他人を助けたり助けられたりするわけだから、誰が読んでも自分には無関係とは思わないはずだ。この本に書いてあることを直接意識的に現場で適用しなくても、"helping"の考え方を学ぶだけでも、人生が変わるかもしれない。ビジネス書としても読めるけど、普通の社会学書としての面もある。

一つ文句があるとしたら、helperもclientもマトモな人であることが暗黙に前提されているということだろうか。たとえば、著者は、助けを求める側が自動的に負い目を感じる(one-down)ことを鉄の前提のように書いているけど、少なくとも日本ではそんなことになっていない。「クレーマー」という言葉もあるし、助けを求める側が「クレーマーと思われるんじゃないだろうか」みたいな心配をしながら助けを求めるような気持ち悪いことにもなっているが、そんなことは完全にこの本のスコープにない。そんなことやら他にも色々考えながら、読者がそれぞれ自分に特有のことを考えていくにしても、やはりこの本は最初の基準点として、非常に有効だ。わたしとしては、純粋に社会学の理論的興味もあるけど、かなり人生に有効な本だった気がする。

2011年5月30日月曜日

Ian Shaw "Ancient Egypt: A Very Short Introduction"

This book is not an overview of the history of the ancient Egypt, but rather an overview of Egyptology. So, if you want to learn about pyramids or mummies or hieroglyphs, this book is not for you, though after reading this book, you will begin to doubt the credibility of any Egyptian history told in popular books. This book just tells you how scholars work on a wide range of subjects of Egyptology. Interesting, but it seems the author never intended to sell this book to general public. Maybe you should have certain amount of knowledge abut ancient Egypt, then this book will correct your image of ancient Egypt. It seems this is the author's aim.

これは日本語訳もあるけど、少し読みにくいようなので敢えてはお勧めしない。どのみち「古代エジプトに興味がある」くらいの人にはお勧めできない内容だし、本気で研究したい人は英語で読むほうがいいだろう。

普通はこのタイトルから、古代エジプトの歴史や社会や宗教やらが解説されるのだろうと想像するが、実際にはそんなことには全くなっていない。ほとんどが「エジプト学」の様々な分野での研究方法などについて語っている。その際にある程度古代エジプトの概要のイメージを持っていないと、何のことか分からない恐れがある。たとえば、古代エジプト人が白人だったのか黒人だったのかについての研究の歴史だとか、石版の地質学的研究の歴史だとかで、正に考古学の現場についての解説だ。「ミイラの作り方」とか「ヒエログリフの一覧表」とか「ピラミッドのひみつ」みたいな話を期待するのなら、他の本を当たったほうがいい。ただし、この本を読んだ後では、一般に売れている本に書いてあることは簡単に信じられなくはなるが・・・。



2011年5月25日水曜日

Saki "The Chronicles of Clovis"

I seldom read novels. Saki is one of my best loving storytellers. Especially I am a fun of Clovis Sangrail. In a nutshell, this book is an anthology of black humors.

「クローヴィス年代記」と訳すのかな。わたしは、あまり小説を読まないけど、サキの短編小説はお気に入りだ。特に青年貴族クローヴィス・サングレールのファンは日本にも多いんじゃないかと思う。ところが、肝心のこの本が、わたしの調べた限りでは日本語訳が出ていない。この本に含まれている一つ一つの話は、何かしらの形で日本語訳があるのかもしれないが、全部日本語訳があるかどうかは知らない。何にしろ、この形で読めるのは英語のできる人の特権だ。

サキは大英帝国の最盛期の頃の作家で、時代的にはシャーロック・ホームズやジョナサン・ジョースターとほとんど同じだ。全体的にはブラック・ユーモアというのかなあ。その中で青年貴族クローヴィス・サングレールの魅力は、原文を読んでもらうしかない。大胆不敵で愉快な策謀家とでも言うんだろうか。サキの短編集は他にもあるけど、まずはこれはお薦めできる。

2011年5月21日土曜日

SelfMadeEasy.com "Assertiveness: Stand Up, Speak Out, and Still Garner Others' Respect"

Seizing this opportunity, I would like to announce to all shy and modest people around the world that Japan is the country for you. Japanese culture respects modesty. If you are an American and suffer from you timidity, you are most welcome in Japan. You can not imagine how charming and attractive being an American and modest at the same time is to Japanese people. President Obama was criticized in the United States because he bowed too low before the emperor of Japan. One thing they do not know is how this presidential act made Japanese people respect Mr. Obama. I am not a serious supporter of the emperor system, but bowing foreigners are always highly respected in Japan. In this regard, there is a huge gap between the two cultures. Well, politeness and timidity are two different things, but I wish you never lose your charm in the course of adopting assertive attitude. By the way, this book is, well not bad. Sometimes it is a good thing to become self-reflective about your outer attitude.

残念ながらこれはKindle Editionのみらしい。まあ似たような本はいくらでもあるんで、適当に売れてたり安いのを読めばコンセプトは同じだろう。日本でもしばらく前に「断る力」だとか「怒る技術」だとか、単純に「アサーティブネス」とかいうタイトルの本が結構流行ったと思う。自己啓発はたいてい米国発で、適当な日本人が翻訳したりパクったりして日本でも少し遅れて流行る。大人しくて損をしているとか自己主張が苦手な人向けの本だけど、この本の基準だと、半分以上の日本人が該当してしまう気がする。文化差が大きく、この本を読んで日本で役立つ気がしないけど、アメリカ人風の考え方や言い方を学習するのに役立った気がする。たまには、こういうのを敢えて考えてみるのも悪くないことだろうし。

Partha Dasgupta "Economics: A Very Short Introduction" (Very Short Introductions)

This book is an introduction for economics students and not a summary of the subject. Economics is a well-established subject and there are a lot of great text books. This book focuses on some crucial basic facts which are often omitted from popular economics textbooks. For example, a sound and trustworthy government is a prerequisite for sustainable economic growth. Well, people in the UK may not trust their government, but not to the extent of people in many underdeveloped countries.

日本語訳が「1冊でわかる」となっているから余計に誤解が増すけど、この本は経済学の要約ではなく、あくまで「導入」だ。普通の経済学の教科書ではあまり触れられないようなトピック、たとえば、「経済活動には国民の中に『契約は守られる』という信頼関係があることが前提」というようなことが重点的に触れられている。「これくらいは知っておいてもらわないと困る」ということばかりだけど、改めて考えると、メジャーな経済学の教科書は、こういうことは無視しないまでも、割と素っ飛ばしている気がする。もちろん、教科書の大半が先進国で書かれているせいだが・・・。この本を読んだからといって、たとえば経済ニュースが分かるようになるわけではない。また、本当の初心者が読んで分かりやすいわけでもないようだ。経済学部一回生の副読本くらいの感じかなあ。



2011年5月14日土曜日

T. E. Klemm "100 Chess Problems for the Rest of Us"

This book is for Kindle only. Fairly elementary problems. It is neither for very advanced players nor for novice players. The author says "the rest of us" accounts for 80% of all the chess players. It uses a lot of diagrams of chess board and explains almost move by move.

I have not played chess more than 100 times in my life, so this book would not be for me if I were not a very experienced shogi (Japanese chess) player. I usually enjoy more-than-five-movers of shogi. And I solved half of the problems here in first 30 seconds. Very interesting and it helped me getting accustomed to movements of the chess pieces.

By the way, Problem 67 looks funny for me. The author proposes skewering the opponent's king and queen, but the situation seems to me just a simple two move mate. I wonder if there is a rule that prevents this obvious checkmate.

残念ながらこれはKindle Editionしかない。将棋で言うところの「次の一手」で、正直なところ、わたしには易し過ぎるけど、チェスの動きに慣れるという意味では良かった。半分以上が一目で解ける。まあ、将棋の経験がなくても、チェス入門書の傑作"Bobby Fischer Teaches Chess"を読み終わったら、直ぐにこれを読めるだろう。もちろん、わたしのように、「将棋の経験はあるけどチェスはルールくらいしか知らない」、という人も楽しめる。

余談だけど、これからチェスを学ぼうとする人には"Bobby Fischer Teaches Chess"が一番いいと思う。日本語訳も出ているんだろうけど、所詮チェスの話なんで、英語も易しい。というか、チェスに強くなりたければ英語は避けられない。あるいは、チェスを通じて英語を学ぶという考え方もアリだ。

2011年5月7日土曜日

Kakuzo Okakura "The Book of Tea"

This book is first published in 1906, and they say this it is still the best introductory book to chado or tea ceremony for westerners. To those of philosophical mind, this may be true. It does not explain how to make or drink tea, but the philosophy of tea. As an average Japanese, I found it rather vulgar. No offense, but it is just a cultural difference. This book may be a good start for non-Japanese, though I would not recommend it to my compatriots. The theme of this book is too obvious for them. On the bottom line, I leaned from this book how to explain teaism to westerners.

「茶の本」ということで、岡倉覚三の有名な本ではあるけど、普通の日本人にとっては常識的なことしか書いていない気もする。時代も時代だし、日本人が英語で堂々と自国文化の優秀性を説いている点がウけているのかも知れない。読んでて茶を飲みたくなったけど、この著者が書いたら、どんな飲み物でも飲みたくなる気がする。英文は、そこそこ難しいというか、ムダに難しい気もするけど、これも時代だろうか。普通の大学生では読めない気がする。日本語訳は見ていないので知らないけど、バイリンガル版を買うくらいなら、洋書と和書を別々に買ったほうが安いかもしれない。


2011年4月30日土曜日

Julia Annas "Plato: A Very Short Introduction" (Very Short Introductions)

People may expect a concise introduction to Plato's ideas, but the author doubts if we should reconstruct Plato's ideas from his dialogical treatises. I do not know if this is an ordinary way of learning Plato. There is a heavy tradition of "Platonism", which has restricted our understandings of Plato. From the tradition, we know some famous quotations of Plato and we have formed some notion of what Plato was thinking about. But it seems that modern philologists might not follow this line. So, if you would like to learn Platonism, this book would surely disappoint you.

この本は誤解されやすい。というのも、多分、わたしたちは何らかの形で、「プラトンの哲学」というものに既に触れている。たとえば、「国家」からの有名な引用だとか、「イデア」に関する議論だとかで、それによって、プラトンの考えが多少分かっている気になっている。しかし、この著者によると、それは「プラトン主義」という後世の構成で、もともとは、プラトンは対話形式で「相手の議論に載る形で」書いているわけだから、そこから「プラトンの考え」を構成し過ぎるのはまずいとか。というわけで、「プラトン主義」を学ぶぼうとしてこの本を読むとがっかりする。まあでも、「これが現代的な考え方だなあ」という意味では読んで損をしたということはない・・・。



2011年4月26日火曜日

M. A. Cook "The Koran: A Very Short Introduction" (Very Short Introductions)

I assume this book is very famous in English-speaking world. It is a very concise introduction to the Koran. All I am obliged to say is that this book is not for those who want to learn the ideas of the Koran. Rather, this book is a work of philology and comparative religion. Some degree of knowledge of Christianity might be prerequisite of this book. I mean, that an average Japanese might find this book a little too foreign....

実のところわたしはキリスト教には多少詳しいが、コーランについては全く無知で、VSIでそこそこ評判がいいし、"Islam"も面白かったから読んでみただけ。結論としてはさすがに日本語訳されるだけのことはあって、しみじみ良質に面白いけど、注意点もある。この本はコーランの教えを学びたい人のためには直接役に立たない。基本的にはコーランの形成史と比較宗教学だ。そんなわけで、多少キリスト教とかユダヤ教の知識がないと分からないところがあるかも知れない。教義を学びたい場合は別の本を探したほうがよい。



2011年4月24日日曜日

John Medina "Brain Rules: 12 Principles for Surviving and Thriving at Work, Home, and School"

This book is a mixture of brain science and how-to. That said, It is quite natural if you get extremely wary and do not feel like even touching this book. However, the author is an authentic scientist and this book is not a pseudo-science. You may be still weary, but you have my word. Very fascinating book. There might be too much sugarcoating. Still, this book talk about too important facts about our brain to just ignore.

さっき気が付いたけど、日本語訳も出ている。中身は見ていないので訳の出来は知らない。ただ一つ言えるのは、あの表紙と「ブレイン・ルール」という魅力のないカタカナタイトル(英語ならいいんだけど)に先に接触していたら、手に取らなかったかもしれない。ただ、これはスゴク良い本で、脳科学とHow-toの融合だ。・・・というと、今までにも散々疑似脳科学本が出てきているというか、ほとんど全部インチキなので、警戒するのは正しいし、手に取る気がしないのも正しい。しかし、この著者はマトモな科学者だから、マトモな科学的研究で確定したこと以上に想像を追加することには、非常に警戒している。著者はサービス精神旺盛な人だから、余計な挿話が多過ぎるという批判も有り得るが、だからって言っている内容が重要であることには変わりない。DVDは、まあ、筆者の主張するところのマルチモーダルの実践で、別にわたしは本だけでも問題ない。英語で良ければ、Webで全部見れる。


2011年4月22日金曜日

R. A. Hope "Medical Ethics: A Very Short Introduction" (Very Short Introductions)

This book poses some of most controversial ethical problems of the medical professions, about which the author freely expresses his opinions. Though they are most important questions of medical ethics, this is not an overview of this area. I assume the author's intention is to stimulate readers' own thinking.

医療の現場で、よく話題になる倫理問題のいくつかについて、筆者の見解を述べたもの。たとえば、安楽死とか、精神病者の拘禁とか。素人にも理解しやすい具体的な話で、非常に初歩的だ。医療関係者や法曹関係者が、実際に職業についてからこの本を読んで感心しているのは、それ自体倫理に悖る気がするけど、読まないよりはマシだろう。ただ、欧米に比べて日本で、イマイチこういう話が盛り上がっていないのは確かだ。議論もロクにないまま、一体、日本の病院では実際にどう処理されているのか、そっちのほうが気になる。

2011年4月21日木曜日

Steve Hughes and Nigel Haworth "International Labour Organization (ILO): Coming in from the Cold" (Global Institutions)

This book is about a history of ILO, not a history of labor economics. It focuses on how they have survived since the inception of the League of Nations. In Japan, their influences are hardly sensed, except for an anti-communist institution and except when trade unions argues their rights citing ILO conventions. Maybe they work better in other countries, but it is not apparent from this book. This book focuses on the ILO itself and its survival strategies. That makes me think about the concept of "inter-governmental organization" in general. Inter-governmental organizations have their respective special areas, but it appears they all behave in the same way.... Anyway, this is a nice and concise introduction to ILO.

ILOの簡潔な歴史。ILOは国際連盟の時からの生き残りで、現存する国連専門機関の中では、最古の部類だが、その時々の情勢に合わせてスタンスを変えることにより、生き残りを図ってきた。日本では反共組織として認知されているか、時々労働組合がILO条約を引き合いに出して議論するくらいのプレゼンスしかない。発展途上国ではインパクトがあるのかも知れないが、そういう話はこの本からは明らかではない。この本はILOの生き残り戦略を重点的に描いている。わたしもラウトレッジのこのシリーズを随分読んでいるので、国際機関の振る舞いが大体読めてきた。とはいえ、ILOに興味がある人や、仕事で関わりあいのある人には、いい入門書だろう。

2011年4月20日水曜日

Samir Okasha "Philosophy of Science: A Very Short Introduction" (Oxford Very Short Introductions)

I was once a big fan of the "strong program" chiefly because it is extreme and absurd. Actually, I do not think that philosophy of science is useful for scientists. However, I am a little interested in controversies between idealism and realism. And besides, wars between scientists and philosophers or sociologist are highly emotionally charged and very amusing for us by-standers. This book is an elementary introduction to these entertaining battles. I also recommend David Bloor's "Knowledge and Social Imagery", which poses the most furious attack on the scientist pride.

一時期、ブルアのいわゆる「ストロング・プログラム」にハマっていたことがあった。だいたい、理系の科学者だちは自分たちが絶対の真実を探求していると主張し、相対的な真実しか追究していない文系をバカにしているから、哲学者や社会学者が自然科学を相対化しようとすると、ムダに感情的な争いになって、傍観者的にはなかなか面白い分野だ。それはそれとして、この分野は観念論vs実在論の一つの舞台でもあり、そういう方面の興味もある。この本は、特に論争主導での入門書なんで、理屈が好きな人にはお薦めだ。しかし、もっと過激派の見解を学んで衝撃を受けたいというようなムキには、やはりBloorの"Knowledge and Social Imagery"を推奨したい。


2011年4月14日木曜日

Michael Eliot Howard "The First World War: A Very Short Introduction" (Oxford Very Short Introductions)

This is a very good introduction to all aspects of the first World War. It traces many battles of the war, and you may be getting to want to know more and more. In this book, people die and die and die. I think this book is the worst killer in VSIs. I was brought up in the pacifist Japan and naturally abhor wars. Japan has no borders and it is hard for me to imagine what being a French or a German feels like... I will never understand why such a terrible war was necessary, but, well, maybe the European Union is a triumph of humanity.

第一次世界大戦の入門書としては、もともと評判がよくて、わたしも一気に読んでしまった。とにかくこの本は人が死ぬ。いまだかつてOxford Very Short Introductionで、こんな人が死ぬ本はなかっただろう。第一次世界大戦の様々な戦闘を、大きな流れが分かるように、良い感じに要約して説明してくれるんだけど、戦闘のたびに平気で何十万人も死ぬ。Appendixによれば、オーストリアハンガリーの死者が120万、ドイツが180万、フランスが140万、イギリスが74万、ロシアが170万で、他の国もある。まあ確かに、この本で死んだ数を全部足したらこんな感じか・・・。一言で「狂気」としか言いようがないけど、ちょっと離れて見れば、ミリオタの人の英語学習に最適かもしれない。政治経済社会といったあらゆる側面を解説しているけど、説明の中心は軍事だ。しかし、これで、また次の大戦をやるんだよな・・・。


2011年4月13日水曜日

Roy Porter "Madness: A Brief History"

A brief overview of history of treatments of madness. Not too philosophical. Fascinating. I once used to be into R. D. Laing and Freud. Now they are in history books. Sometimes the author seems ironic, but overall, it appears that he tries to be as neutral as possible. This book does not suggest a position you should take for this matter, but it really makes you think about it....

これは日本語訳は悪くないけど、ただタイトルに問題があり、実態は「狂気の取り扱い方の歴史」みたいな感じ。悪魔の仕業みたいに思われていた時代もあれば、狂気にロマンを感じていた時代もあり、心理学が優勢な時代もあれば、器質論が優勢な時代もあり・・・。個人的にはフロイトやらR. D. Laingやらにハマりまくっていたことがあったけど、文学的に面白いだけで、現実の治療はまた別問題なんだなぁ・・・。そしてここでも脳と精神の関係が問題になる。この本自体は、やや文学的ではあるけど、普通の歴史書と言っていいだろう。ただ、あくまで読み物で、資料性は低い。正直なところ、わたしの知らないことはあまりなかったけど、入門書としてはいいんじゃないかと思う。



2011年4月11日月曜日

A. J. Ayer "Hume: A Very Short Introduction" (Oxford Very Short Introductions)

Before reading this book, readers must have some basic knowledge about Hume and in philosophy generally. This book is not for beginners. The author himself is a philosopher, and has no intention to present Hume's work without his own comments. He is always assuming opponents to Hume's arguments and trying to defend him. Sometimes I do not see what he is fighting against. Still, it contains a variety of exciting arguments.

これはどう考えても、ある程度哲学の知識、特にカントあたりのことを知らないと読めない。著者自身によるヒュームの批判的(擁護的?)検討といったところで、単にヒュームの概説書というようなレベルの本ではない。ただ、ヒュームを読んだことがない人が読めないというわけでもないので、ある程度哲学を学んだことのある人が読む分には問題ない。わたしにとっては色々考えることもあり、かなり面白い本だった。書き出すと切りがないのでやめておこう・・・。

Malise Ruthven "Islam: A Very Short Introduction" (Oxford Very Short Introductions)

Since I am relatively new to this subject, I cannot tell if this book is a neutral and fair representation of Islam". What I can say is that this book is not very short. It is overloaded with too much information for a beginner. I imagine one reason is the fact that Islam is not just a religion. In wester Europe as well as here in far east asia, we are accustomed to the notion that religions and other areas of social structure are different matters. That is not the case in the Islamic world. We have to learn Islam as a whole. I think this is not the author's fault.

わたしは全然イスラムに詳しくないので、この本が公平な本なのかどうか判断できない。入門書として読むには、ちと難しいのかもしれないけど、シーア派とスンナ派がいるとか、ムハンマドが始めた宗教だとか、あと若干中東情勢の知識があれば、普通には読めるだろう。情報量がやたら多く、あまり"very short"な感じがしないけど、これはイスラムの性質上仕方がない。我々は、宗教と他の社会生活、たとえば、政治とか経済とか学校とかを切り離して、それだけで理解できると考えがちだけど、イスラムはそういうことになっていないので、一度に総合的に理解していく必要がある。・・・というようなことも、この本を読めば分かってくる。一部近代主義者は、イスラムもそういう方向(政教分離)に持っていきたいみたいだけど。細かいことを言い出したら切りがないはずで、よくこれだけに収まったと考えるべきなんだろう。

2011年3月30日水曜日

A. C. Grayling "Wittgenstein: A Very Short Introduction" (Oxford Very Short Introductions)

This is not a very interesting introduction to Wittgenstein's philosophy, but I think this is a must read for his fans. Wittgenstein has some peculiar attractiveness for dilettantes, and I used to be his big fan. I went so far as to study his bios. I think I was attracted by his eccentricity. The author seems to have followed the same line. His estimates of Wittgenstein is quite low, and I think with good reason. So I do not recommend this book to those who seek for excitement. I recommend it to those who are already fascinated by Wittgenstein's philosophy.

ヴィトゲンシュタインは、どうも素人を惹きつけるところがあり、わたしも一時期は結構ハマって、かなりの量の伝記を読んだりしていた。日本語だと、新書でも入門書がある。そういう本は、だいたいが独我論とか「クオリア」とか、そういう方向で話をするので、子どもが読んだとしても面白いかもしれない。面白さを求める人はそういうのを読めばいいんで、この本は、そういう意味では、あまり面白くない。この本は、わりと普通に前期・後期のヴィトゲンシュタインの哲学の概要を紹介し、批判している。この著者も、一時はハマったけど、冷静に考えたらヴィトゲンシュタインは大したことを言っていないという考えだ。批判が大雑把過ぎるというのは、信者にとっては気に障るところだろうけど、わたしもほぼ著者に同意だ。

2011年3月24日木曜日

Oystein Ore "Number Theory and Its History (Dover Classics of Science and Mathematics)"

An introduction to number theory mixed with its history. This book was first published in 1948. So some people may think it is dated. But this is an elementary book and basic mathematical concepts have not been changed since then, so I think most people find that no drawback. Recent books on this subject tend to rest on group theory which is really abstract and expain its applications such as RSA public key encryption. They are also interesting, but old books have their own charm, too.

歴史を混ぜた初等的整数論の入門書。しかも、わりと万民向き。日本でいえば、高校生なら予備知識が足りないということはない。高校生が読めば、整数論関係の大学入試問題が得意になるかもしれない。この本のポイントは1948年刊という古さにある。こんな初歩的な数学書では、この程度の古さは問題にならないというか、却って偉大さの証拠だが、今の本とかなり違う点もある。まず、当時はコンピュータが今みたいに簡単に使われていない。今の本なら数論の工学的応用も説明するかもしれないが、当時は公開鍵暗号系の影も形もない。そして、何より、今時は、こういう話は群論の非常に抽象的な話の一部にされてしまう。その点、この本には、まだ数学がパズルだった頃の空気が漂っている。もちろん、少しでも群論の知識がある人なら、その知識を参照しながら読めるわけで、それはそれで楽しい。

2011年3月23日水曜日

Susan Blackmore "Consciousness: A Very Short Introduction" (Oxford Very Short Introductions)

An easy introduction to "consciousness" or "sense of self". Well, I am a Zen Buddhist practicing Zen meditation myself so my opinion on this book may sound a bit bizzare and useless for ordinary people. I do not think the questions raised by this book are so important. I imagine that "consciousness" are comprised of many functions and organs. Therefor it is not surprising there be many ways to break down their associations or cordinations, which are of course very interesting. Maybe the most important question for the author is that of "free will", which I am not so curious about. I never understand for whom "free will" is free. By the way, I am thinking about reading Hume, hoping he is on my side.

「意識」と呼ばれる現象が何を指しているのかというような本。あいにくとわたしは仏教徒なので、普通の人ほどこの問題を深刻に考えない。意識という言葉が何を指しているかはともかく、色々な機構が脳内にあるだろうし、そいつらの連携を断ち切るような方法があって当然だし、面白い。「自我意識」とか「自由意思」という問題も取り上げられているけど、まあ筆者が言うように錯覚というか、単なる言葉と、考えていいように思う。


2011年3月8日火曜日

Y. E. O. Adrian "Pleasures of Pi,e and Other Interesting Numbers"

I don't understand why they gave this title to this nice book. This is a book on beauty of infinite series. The second half of this book is dedicated to prove convergences of series presented in the first half. Calculus is often used to prove convergence. It is OK with me, though some would insist that original proofs by the inventors of these series should be presented. It would make a wholly different book. The first half is devided into three parts: series concerning pi, series concerning e, and miscellaneous series. I think therefore a more appropriate title would be something like "An exposition of infinite series".

このタイトルの付け方は酷い。実際には、無限級数の展覧会で、かなりの部分がπとeに関わるというだけのことで、最悪でもタイトルあるいはサブタイトルに"infinite series"という言葉は必要だった。一般にウけようとした編集の判断だろうか。前半は、π関係の級数、e関係の級数、その他の級数の展示と簡単な説明。後半は証明なんで読みたくなければ読まなくてもいいけど、簡単だ。ただし、級数が発明された当時の証明ではなく、普通に微積分を使っている。個人的には解析の基本書を読んでいるところなので、ついでに読んだだけだけど、高校の教育用なんかには面白いんじゃないかなあ。日本語訳では、原書の間違いをノーコメントで訂正している箇所を一箇所発見。



2011年3月4日金曜日

William Dunham "The Calculus Gallery: Masterpieces from Newton to Lebesgue"

An history of the calculus. It appears like a popular math book, but it's not. The most beautiful parts of this book are written in math equations. You don't need to get a pen and notepad to go through this book, though you have to follow mathematical expressions. My main motif to read this book was Leibnitz. In that regard, I sensed a little weakness in the author's philosophical backgound. But, well, who cares. This is a math book, not a philosophy book. The best part starts after Cauchy, and I find it really fascinating.

解析の歴史。一見アメリカにありがちな"popular math"風だけど、実際には教養程度の解析とか集合論の知識は必要だろうな・・・。手を動かさなくてもいいけど、基本は数式を追う本だ。高校生では多分しんどい。もっとも、わたしも大して数学に強いわけではないんで、つまり、それくらいのレベルというような・・・。

とにかく、公式的な数学のテキストは、どこに向かっているのかが分かりにくくてよくない。こういう経緯を説明する本は必ず必要だと思う。他に類書をあまり読んだことがないけど、ちと視野を広げてみる気になった。

実は、わたしの主たる目的は、特にライプニッツとかオイラーの辺りだったんだけど、そういう意味では哲学的にはイマイチかもしれない。しかし、本書が最も輝いているのは、コーシー以降で、多分、ほとんどの読者の趣味もそのあたりだろう。訳書も発見した。要は数学書なんで、原書と差はないだろう。



2011年2月22日火曜日

Joseph M. Siracusa "Diplomacy: A Very Short Introduction"

The first chapter describes a very brief history of deplomacy. Then next four chapters describe four diplomatical events: the American Revolution, WWI, Churchill and Stalin at the end of WWII, and the ANZUS treaty. They are meant to be case studies, though, from which the author draw no generalization nor moral. The last chapter describes current trends in world politics.

This book does not give you an overview of diplomacy. It does not explain, for example, techniques of diplomacy. It is just an history book, though it is worth reading especially for those who are interested in "high politics" and those events.

外交の一般論らしきものが最初と最後にあるけど、本体は四つの外交的事件の叙述だ。つまり、アメリカ独立・第一次世界大戦・第二次世界大戦末期のチャーチルの立ち回り・ANZUS条約の締結。ケーススタディということなんだろうけど、そこから一般論や教訓が引き出されるわけではない。ただ外交上のやりとりを叙述してあるだけで、どちらかというと歴史書に近い。

そういうわけで、たとえば外交官の生活とか、外交のテクニックみたいなことに興味があるのなら、この本を読むのは見当違いということになる。この本はむしろ、「外交がどれだけ歴史を変えたか」という点に関心がある。ANZUSが大して歴史を変えた気がしないけど、著者は長らくオーストラリアに住んでいたので、もしかするとオーストラリアにとっては歴史的な外交的勝利だったのかもしれない。などと考えながら、物語として楽しむのが正しい読み方と言えよう。

2011年2月15日火曜日

Keith Cuninghame "Guidelines for Legislative Libraries (Ifla Publications)"

I find this book almost amusing. Very readable even for a layman. Everyone who access a congressional or parliamentary library on a regular basis would understand a tension between librarians and parliamentary researchers. Though I don't know what a professional librarian would think about all these things, I assume it holds some truths.

議会図書館の一般論を書いた本。ここでいう議会とは、基本的には世界各国の国会だが、地方自治体でも大して事情は変わらないだろう。つまり、議会・議員へのレファレンス・サービスが主眼となっている図書館と言う意味で、日本で言えば、市役所の建物の中や近所にあるような図書館を含む。素人が読んでも読みやすいし面白い。一般論なのに妙にリアルなのは、多分、記述対象が十分に狭いからだろう。薄いので直ぐに読み終わる。しかし、図書館をめぐる環境は激変しているし、どんどん改訂していくのかな。

2011年2月11日金曜日

Keith Grint "Leadership: A Very Short Introduction" (Oxford Very Short Introductions)

This is not a "how-to" or "self-help" type of book, and not so an academic book, either. There are some interesting observations in this book, among which I appreciate best diagrams explaining the history of management theories. Overall, however, the way the author tells the story seems pretty random to me. It comprises of random citations from psychology, sociology, anthropology, philosophy, business management, politics, and so on. I don't understand what the author is trying to explain. I read this book only because I am forced to discuss leadership with westerners. Honestly, I would say, "Yeah, I know these topics are fervently discussed by western elite businessmen, which I am not." Well, I would not say this book is a waste of money especially if you have to talk about leadership thing with westerners.

これなあ・・・。英語でこんな話をしないといけないというので、一応全部読んだけど。もちろんビジネスマン向きの自己啓発書ではないけど、大して学術的でもない。一応、社会学・心理学・哲学・歴史・政治学・経営学とかから、ランダムな引用は大量にあるけど。正直なところ、著者が何を説明したいのかよく分からなかった。議論がどこに向かっているのか不明で、思いつきの寄せ集めという印象を受ける。個々の議論は、時々面白いけど。ただ、経営理論の歴史の解説だけは楽しかったな。権限集中と権限分散の繰り返し、科学的管理と情緒重視の繰り返し、それぞれの時代背景。まあ、アングロサクソンのビジネスマンと話をするには、こんな話にも付き合わないといけないというようなことで。

2011年2月10日木曜日

George Anderson "Federalism: An Introduction"

An overview of federalisms around the world. It describes practices and principles of 28 federal countries. However it is arranged by subjects such as original formation of federal system, election systems, taxing systems, etc. The writing is plain and readable though it can be used as a easy reference book.

人口の多い先進国ではほとんど採用されているという連邦制。具体的には28ヶ国だけど、トピック毎にカナダはどうだとかスイスはどうだとか述べていく。かなり面白いのは、単に世界の制度比較が面白いのもあるけど、「日本に導入する時にどうなるのか」と考えるからだ。一番問題になるのは税制だろうけど、他にも警察だとか、連邦直轄領とか、連邦議会とか。一々考えていると、なかなか楽しい。読みやすいけど、レファレンスブックとしても使えそうだ。日本語訳はとても優秀らしいので、どっちで読んでもよさそう。


2011年1月26日水曜日

Peter Morville, Jeffrey Callender "Search Patterns: Design for Discovery"

This book is a must read for a librarian, researcher, web designer, website developer and anyone who concerns about the web search. Personally, I tend to prefer a more deductive and systematic approach and at a first glance this book looks quite messy. However, the world wide web itself is messy and I think the authors' approach is quite suitable for this subject. It talks about simple search windows, portals, faceted searches and other variations. It's a source of a lot of ideas for me.

これはオライリーから出ているし、日本語訳もあるので、関心のある人なら見落とす可能性は低いが・・・。特に「サイト内検索」に関する今、最高の本だ。ポータル(トップページからニ・三階まで)とFaceted Searchの二本建てが基本で、あとはいろんな実例やアイデアが豊富に載っている。読んでいるうちに、色々妙なアイデアがどんどん湧いて来て、大いに刺激になった。いずれwebsiteの企画会議があったら、好き勝手なことを言い散らかそうと思う。

問題があるとすれば、砕けているのか気取っているのか微妙な文章が馴染みにくいという人がいるかもしれない。これは原文がそうなんで、多分、日本語訳の責任ではない。もっとも、日本語は少し見ただけだけど、少し首をかしげるような箇所もあったのは事実だ。でも大勢に影響はないだろう。そんなことを気にして手に取るのが遅れたのが、少し悔しい。



Daniel Fleisch "A Student's Guide to Maxwell's Equations"

This is the best physics book that I have ever read. English-speaking people can easily find this book out of the sea of physics textbooks because it is so famous that I feel hardly it is necessary to add another book review. I just want to point out that it is translated into Japanese.

これは今までに読んだ物理学のテキストの中で最善だった。四つのマクスウェル方程式のそれぞれの微分形・積分形を完全解説。日本の高校程度の物理・数学の知識があれば、他に必要なのは偏微分の知識くらいで、ググればすぐわかる程度のことだ。ベクトル解析はこの本の中で解説されるので、知っている必要はない。∇とか、その他怪しい記号も全部解説されるので、むしろ、この本によってベクトル解析に入門できる。

日本語訳もあるけど、個人的には原書のほうが好きだ。理由として一番大きいのは、ベクトルの表記で、原書の矢印表記が、日本語訳では太字表記になっていて、わたしは馴染みにくい。日本語訳は訳注が充実しているけど、もともとが易しい本なので、逆に混乱する虞がないとは言えない。

原書はWebsiteと連動していて、podcastもいいけど、演習問題の解答がすばらしい。一気に答を見る必要はなく、何段階にもわたってヒントを順番に見ることができる。わかった時点で答えればいい。日本人の感覚では学生を甘やかし過ぎなのかもしれないけど、独学者には有り難い仕掛けだ。日本語訳は、巻末に答がついているけど、最悪そこだけでもWebsiteを使わないと、この本の価値は三割減くらいになる気がする。まあ、三割減くらいでは、この本がマクスウェル方程式に関する最高の入門書であることを、全く傷つけないが・・・。


2011年1月20日木曜日

David A. Rothery "Planets" (Oxford Very Short Introductions)

太陽系の惑星・衛星その他の化学組成・地質・気候などをひたすら解説。特に前半部の惑星の解説は、かなり単調で、たいていの人が退屈するんじゃないかと思う。わたしとしては実に心が和む風景で全然結構だが。特に木星の衛星の解説の辺りから急にエキサイティングになるのは、多分、著者の関心がそこにあるからだろう。わたしが子どもの頃に聞いたのとは違って、惑星にも衛星にも水なんかいくらでもあるし、有機物もどこにでもあるし、太陽系外まで広げれば、生命のいる星なんかいくらでもあるように思える。筆者の主張では、現在の地球程度の技術でも、一千万年もあれば全銀河系に植民できるはずだとか。

This book describes chemical compositions, geological information, weather etc. of the planets, their satellites, asteroids etc. I must say especially the first half of the book is highly monotonous, though it is OK for me since I enjoyed the sense of peace out of this monotonous astronomy. When it comes to describing the situations of satellites, it suddenly turned very exciting because, I guess, this is the author's chief concern. When I was a kid, they say liquid water is very rare in the solar system but there is a lot of water there as well as organic molecules to support life. The pinnacle of this book is the last part, but I do not reproduce it here.