2023年8月19日土曜日

Robert Waldinger, Marc Schulz "The Good Life: Lessons from the World's Longest Study on Happiness" [グッドライフ:幸福に関する世界で最も長い研究からの教訓]

なんか日本語訳も売れているらしく、Amazon売り上げ何位とかTED発とか、およそ読む気のしない宣伝文句が並んでいたが、こういう本も謙虚な気持ちで読んでいくかというようなことで読んでみたが。

内容はというと「幸福な人生には人間関係が重要」ということに尽きており、この一点について手を変え品を変え色々説いているだけ。いや、本当のことを言うと手も品も大して変わっておらず、内容への賛否はともかく、かなり単調な読み物と言っていいんじゃないだろうか。

ということであんまり感心しなかったのだが、世間の圧倒的な好評の前にわたし一人の文句なんか無意味だろう。人間関係については時折色々考えることもあるが、この本から何かを得た気がしない。確かにTED Talkの視聴者層が好きそうな本だ。

Exclusively for TED listeners. I mean, it is exclusively for those who have personal likings which TED listeners tend to have.

Rider & Co (2023/1/12)
言語 : 英語
ISBN-13 :978-1846046766

2023年8月2日水曜日

Richard Bellamy "Citizenship: A Very Short Introduction" [市民性:非常に短い入門]

目次:1.市民性とは何でなぜそれが問題なのか 2.市民性の理論と歴史 3.成員資格と所属 4.権利と「権利を持つ権利」 5.参加と民主主義

まずタイトルcitizenshipは「市民権」と訳すと狭すぎるということで、権利の他にも共同体への参加や所属意識的なことも含むということで適当な訳語がない。そもそもcitizenを市民と訳したのが、明治時代の人にしては下手だったのではないかとか思う。「公民性」のほうがマシかもしれない。諦めて「シチズンシップ」で済ませるのも多いようだ。

と言うと規範的なお説教のようなニュアンスが生じるが、この本はそういうことではない。もちろん著者の「かくあるべし」というのはあるが、現実の問題を考えると簡単な話は少ない。著者の書き方が晦渋すぎるという評判もあるが、物事を丁寧に考えるとこうなるしかない気もする。ということで、「こういうことです」とこの本を簡単に紹介できないというような…。

例えば、3章成員資格のところは、ムチャクチャ大雑把に言うと「どういう人間に参政権を認めるか」というようなことで、昔からいろんな基準があった。古代ギリシアであれば「いざという時に国のために戦って死ねるか」、つまり徴兵に応えられるかが基準になっていた。国家総動員となった第一次世界大戦に女性参政権が一気に拡大したのもその伝統の上云々。他にも国内に土地や財産を持っているかとか、その国の言語や文化に通じているかとか、居住歴とか色々。いつでも国外に逃げればいいやと思っている奴に投票権なんか与えたくない気持ちも分かるし。

4章の「そもそも誰でも持っている人権」と「その共同体に所属している人間だけが持っている権利」の関係も面白いところだが、考えれば考えるほど単純に折り合いの付く話ではない。実務的には一件一件考えていくしかないんだろうけど。色々面倒くさい話だが、これを考え抜ける人でないと政治には向いていないのかなあとも思う。

Summarizing is challenging due to the profound nature of the author's thoughts. Challenging to read, but worth the effort.

Oxford Univ Pr (2008/11/30)
言語:英語
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-0192802538