2014年1月31日金曜日

Annie Heminway "Better Reading French, 2nd Edition"

これはフランス語の読本として英語圏では絶賛されているようだ。主題・難易度が多彩な多数な文章を収録し、それぞれ内容的・文法的に気の利いた問題が付属、最後に解答例もあるので独習も可能であり、ほとんどこの種の本の完成形と言っていいのではないか。レベルはさまざまではあるが、仏検2級とかDELF B1くらいのレベル。一応一通り文法を終えたくらいなら着手できるだろう。

とはいえ、個人的にはやはりこういう読本の類は苦手で、専門書のほうが楽ではある。しかし、こういう一般的フランス語力もつけたほうがいいのかねえ。

A very good reader. Perfect.

McGraw-Hill; 2版 (2011/10/6)
ISBN-13: 978-0071770293

2014年1月30日木曜日

Ann Dix "Teeline Fast"

Teelineとは英語の速記術で、これはその入門書。フランス語のディクテで、「全部聞き取れているのに書ききれない」というフラストレーションから買ってみたが、買ってから分かったが、Teelineは基本的に英語向けである。結局、なかなか独習は難しいという結論である。まあ、これを参考に独自の速記法を開発したりしてもいいかもしれない。

A good primer to Teeline system.

Heinemann (2012/2/8)
ISBN-13: 978-0435453527

R. D. Laing "The Divided Self: An Existential Study in Sanity and Madness"

本棚から発掘した・・・。いわゆる「反精神医学」というもので、レインは実存主義哲学の精神分裂病への応用の代表と言える。結局、精神病の治療法としては全く効果がなかったようだが、わたしにとっては、後にも先にもこれほど衝撃を受けた本はない。哲学に深入りする切っ掛けになった忌むべき本である。以後、レインの書いたものは自伝に至るまでほぼ全部読んだし、ミンコフスキーだの木村敏だの読みまくったものだ。今となって思えば、レインの言っていることは誰にでもどの家庭でも多少はあることで、正気と病気の違いは、単にそこにどれだけ執着しているかだけの差でしかない。差が出る原因は遺伝なのか何なのかよく分からないが、実存的問題が精神病を起こすというわけではないようだ。まあそれはそれとして、実存哲学の入門書として悪くないだろう。実存哲学自体が既に滅亡しているんでアレだが・・・。

A good introduction to existentialism.

Penguin Books; Reprint版 (1965/8/30)
ISBN-13: 978-0140135374

2014年1月24日金曜日

Mark D. Chapman "Anglicanism: A Very Short Introduction"

このタイトルで意味が分かる人は少ないと思うが、要は英国国教会(とその仲間)の歴史である。仲間というのは、英国国教会の流れを組む教会は英国以外のアメリカやインドなどにも存在し、なんでそんなことが可能なのか理解できないが、日本にまで存在するのである。内容的にはかなりマニアックというか、内部にいる人にしかここまで深い知識は必要ないというようなくらいだ。ガチの信者でなければ、英国史の一面として読む分には面白い。英国通を目指すならこの本は必読かもしれない。

わたしはというと、わけあって、キリスト教自体にはそこそこ詳しいが、今まで英国国教会についての本は読んだことがなかった。一般的な知識としては、直接的には国王が離婚するためにローマ・カトリックから領内の教会をご都合主義的に強権で自分の支配下においた組織であり、実際この本でもその通りに記述されている。どうもこのあたりのドライさと信仰心の両立は、キリスト教についてはいつも不可解に思うところだ。

Very unique and amusing.

Oxford Univ Pr (2006/7/27)
ISBN-13: 978-0192806932

Andrew King "Stars: A Very Short Introduction"

星の一生の概説・・・というと中高生向きの科学書にありがちなテーマに思えるが、高校程度の地学と物理くらいの知識がないと分かりにくいところもあるような気がする。基本的にはH-R図に沿って解説されるが、最後のほう、コンパクト星と連星系あたりの話は、少なくともわたしは地学の時間に聞いたことがない。だいたい、高校の地学は博物学みたいなところもあり、星の進化については「そういうものだ」ということで、原理などの解説は少なかったが、ここではさらに深く解説されている。ここで必然的に物理の知識も多少は必要になる。志の高い高校生なら、わりと良さげな翻訳も出ているので読めそうだ。

Fascinating. The author explains how stars evolve and how we know that, following the "H-R diagram". Maybe a bit difficult for laymen.

Oxford Univ Pr (2012/9/7)
ISBN-13: 978-0199602926

2014年1月21日火曜日

Philip V. Bohlman "World Music: A Very Short Introduction"

CDショップの「ワールドミュージック」の棚に並んでいるような音楽に関する概説というか、音楽人類学的な雑駁な議論。要は民族音楽の話で、雑駁だが著者としては一貫して民族音楽の他者性の利用のされ方に関心があるようだ。世界音楽と言っても所詮西洋の観点からの整理に過ぎず文化帝国主義云々とか、国家主義者によって民族音楽が保護活用されて云々とか、逆に反体制派に「土着」とかいう名目で民族音楽が利用されて云々とか、まあそんなこんなで。特段画期的な考察があるわけではなく、現在の音楽流通の様子を眺めている。

個人的には、フランス語の勉強をしていると、やたらアフリカの音楽に学びとかいうミュージシャンのインタビューを聞くことが多く、もちろん旧植民地という事情があるのだが、正直なところ、ほぼ全員が同じようなことしか言っていない。それも今に始まったことではないのだろう。民族の独自性を称揚するはずの国歌が、みんな同じに聴こえるという絶望的な現実はよく考える価値がある気がする。もっと小さなレベルに行くと、どこの学校の校歌も同じに聴こえるのと同じ現象なのだろうか。このあたり、論理のメスの入りにくいところである。

It presents a wide range of phenomena of so-called "world music". Miscellaneous themes, but it seems that the author constantly is intrigued by various ways by which "ethnicity" is exploited for political causes.

Oxford Univ Pr (T) (2002/8/29)
ISBN-13: 978-0192854292

2014年1月8日水曜日

Jonathan Slack "Stem Cells: A Very Short Introduction"

幹細胞に関する概説書。最初に簡単な細胞の生物学の解説。続いて、ES細胞・iPS細胞・組織特異的幹細胞(tissue-specific stem cell)の科学技術的解説と応用例の解説。最後に幹細胞研究の将来展望と若干の政治学など。重点はあくまで科学・技術・臨床の解説にあり、倫理や扇情的な未来予測については記述は薄い。特にiPS細胞については非現実的な解説書や報道が多い中、この本はVSIの中でも名著と言える。少し難しいかもしれないが、高校程度の生物学の知識があれば読めるんじゃないかと思う。医学部生が読んでもいいのではないか。

というのも、この本でも主張されていることだが、とにかくiPS細胞の臨床応用については、大衆の期待が高いし、科学者のほうでも予算獲得のため、あまり熱狂に水を差すようなことを言わないことになっている。かくして金集めのために詐欺的な宣伝も行われるし、新聞も「世紀の誤報」をやってくれるわけだ。もちろん、この件については、日本も最先端の技術を誇っているはずであり、現に京大や山中教授の本もあるが、この淡々とした本も基礎科学の把握に有効だ。少なくとも、いい加減な新聞社やジャーナリストが書いた物に騙されなくなるだろう。

A great overview of technologies around stem cells.

Oxford Univ Pr (2012/3/24)
ISBN-13: 978-0199603381

2014年1月5日日曜日

Daniel Freeman, Jason Freeman "Anxiety: A Very Short Introduction"

タイトルが短過ぎて意味が分からないのはVSIの毎度のことだ。基本的には、恐怖症・社会恐怖症(対人恐怖症)・パニック障害・強迫神経症・PTSDなどの概説。各症状について疫学的・神経学的・遺伝的・心理的な解説がされているが、いずれにせよ現在ではCBT(Cognitive Behaviour Therapy: 認知行動療法)が目覚ましい成功を挙げているので、心理的なメカニズムの解説(と言っても仮説の域を出ないが)が中心になる。対策としてはCBTが中心だが、それほど複雑な話でもないし、悩んでいる人はさっさと医者にかかったほうがよい。まあ、医学的に診断を下されるまでいかなくても、誰しも心配・不安の類は日常的に経験することだし、心理メカニズムの解説は色々面白い。わたしとしては、自分自身もかつては結構な心配性だったことがあるし(坐禅で治った)、周囲にも絵に描いたような強迫神経症とか閉所恐怖症の人もいるので、連中が英語が読めるのなら推薦したいところだ。

A general account of phobias, PDST, panic disorder, etc. CBT is successive enough now, so psychological account is the main theme.

Oxford Univ Pr (2012/7/5)
ISBN-13: 978-0199567157