2014年1月8日水曜日

Jonathan Slack "Stem Cells: A Very Short Introduction"

幹細胞に関する概説書。最初に簡単な細胞の生物学の解説。続いて、ES細胞・iPS細胞・組織特異的幹細胞(tissue-specific stem cell)の科学技術的解説と応用例の解説。最後に幹細胞研究の将来展望と若干の政治学など。重点はあくまで科学・技術・臨床の解説にあり、倫理や扇情的な未来予測については記述は薄い。特にiPS細胞については非現実的な解説書や報道が多い中、この本はVSIの中でも名著と言える。少し難しいかもしれないが、高校程度の生物学の知識があれば読めるんじゃないかと思う。医学部生が読んでもいいのではないか。

というのも、この本でも主張されていることだが、とにかくiPS細胞の臨床応用については、大衆の期待が高いし、科学者のほうでも予算獲得のため、あまり熱狂に水を差すようなことを言わないことになっている。かくして金集めのために詐欺的な宣伝も行われるし、新聞も「世紀の誤報」をやってくれるわけだ。もちろん、この件については、日本も最先端の技術を誇っているはずであり、現に京大や山中教授の本もあるが、この淡々とした本も基礎科学の把握に有効だ。少なくとも、いい加減な新聞社やジャーナリストが書いた物に騙されなくなるだろう。

A great overview of technologies around stem cells.

Oxford Univ Pr (2012/3/24)
ISBN-13: 978-0199603381

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