2012年6月25日月曜日

Morris L. Cohen, Kent C. Olson "Legal Research in a Nutshell"

アメリカ(連邦・州・外国)の法情報調査のガイドブック。版を重ねているだけあって、この類の本としては、今まで見た中で最善だと思う。

どうでもいい点から褒めると、まず装丁がいい。ペーパーバックながら手触りの良いしっかりした紙、小さめの版形に、美しい厚さ。印刷がきれいで読みやすい。英文も素晴らしく易しく、カビ臭い法律書や重いデータベースにうんざりしている時に、実に心が安らぐ。版を重ねているので、わりと最新の情報を反映しているし、間違いもほとんどないことが予測される。

内容としては大体一般的で、調査一般論、成文法の調査、判例の調査(sheparding)、行政機関による規則等、外国法、国際法・・・etc. わたし的には"Legislative Information"(Legislative histories)の章が貴重だった。類書では手薄になるところだ。オンライン資料の紹介も、政府サイトのほか、West、LexisNexis、HeinOnlineその他商用サイトを偏りなく紹介。ロースクールみたいな環境なら問題ないし、無料サイトだけでも相当なところまで調べられる。参考文献の指示も充実している。

英米法について全くの初心者がこれを読んでも厳しいと思うが、多少知識がある人から専門家まで、広い範囲の人が手元に置いて使っている。初心者には、Noloの"Legal Research"が演習形式で独習できて良いと思うが、既にアメリカ法の基本は分かっているというのなら、いきなりこの本を片手に調査しても良さそうだ。

A simple & beautiful book especially when you are fed up with legal materials. Above all I love chapter 5 "Legislative Information" since other similar books tend to scamp this part. This book is from West, but it treats West, Lexis, Heins equally.

2012年6月18日月曜日

George F. Ritzer "The McDonaldization of Society: 20th Anniversary Edition"

この本は「マクドナルド化する社会」ということで、当初はそこそこ日本でも売れて、その後、版を重ねている。社会学を勉強しているなら、必読書ではあるが・・・。酷い言い方をすれば、「世の中何でも便利になって画一化されて苦労しなく済むようになって、それで失われたものもあるんじゃないの」みたいなボヤきで終わってしまう。その象徴がマクドナルドというだけの話で。

しかし、重要なのは、もう一歩先にあるんだろう。この社会が何を組織的に破壊しているのか。ハバマスによれば、近代化はまだ未完で進行中らしいが、マクドナルド化もその一過程なんだろう。日本人の感覚で言えば、「コンビニ化する社会」のほうがリアルかつ先を行っている気がする。

それはそれで、ある種陳腐な話だが、それと別に、もう一つ別の重要な指摘もある。つまり、「客に労働させる」という思想だ。マクドナルドでは、客が料理を厨房からテーブルまで運ばなければならない。店員に名札をつけて、客に人事管理をさせる。マクドでなくても、Web2.0のビジネスモデルでは良く聞く話だ。Web2.0では、商売人は自分ではコンテンツを供給しない。客にコンテンツを供給させるのであり、商売人は場所を提供して管理しているだけというような。

というように、少し考えるだけでも、「マクドナルド化」というのは、複数のイノベーションの束だが、わたしたちはマクドナルドに何を求めているのか。単に信頼できて安くて美味しい物を求めた結果がマクドナルドだというのが最も単純な説明に思われる。この考え方では、画一的だったり、客が働かされたりするのは結果でしかない。しかし、それだけでなく、個人商店よりもマクドナルドに安らぎを感じる傾向があるのなら、少しは話が面白くなってくる。

単純な経済合理性、とわたしたちが考えるものも、一つの思想には違いない。わたしたちは、確かに伝統社会の何かを嫌っていて、それを組織的に地ならししている。その過程は今も進行中だ。しかし、ノスタルジーもあるし、何でもチェーン店化するのが唯一のビジネスモデルではないことも発見しつつある。地域コミュニティの再生とかソーシャルキャピタルとか言っているが、一方で、昔の不自由で陰鬱なムラ社会みたいなのを復活させたいとも思っていない。などと考えていると、時代はマクドナルド化の次に行っている気がするし、現実にマクドナルドは貧民のイメージがついてきている。何にしろ、この本は読んでおいた方がよろしい。

Now we understand that we live in the post-mcdonald world, meaning that franchise is not a sole possibility. Maybe mcdonaldization is just a result of economic rationality. Maybe we love McDonald on its own. At least in Japan, McDonald is deemed for the poor.

2012年6月16日土曜日

D. P. Simpson "Cassell's Latin Dictionary: Latin-English, English-Latin"

久しぶりに使う用事があって懐かしくなった。

昔、真剣に西洋古典学を志していた頃があり、ギリシア語・ラテン語ともに、二年間、わりと真剣に勉強したのだった。もうかなり忘れてしまったが、特にラテン語は今でもたまに役立つことがある。

古典語はそれなりに難しい。勉強するには何か強力な動機が必要だ。現代語の勉強にも役立つからとかいうような理由では貧弱すぎる。また、法学なんかでラテン語を使うからとかいう程度の理由でも無理だろう。もっと強力な理由、たとえばローマ帝国に異常な憧れを抱いているとか、ラテン語は神の言葉だと信じているとかでないと、ラテン語の文法を習得するだけでも難しい。今時は文学科でも、ラテン語必修ということは少ないんじゃないかなあ。

動機はなんであれ、真面目にラテン語を学ぶということになると、最初に絶対に必要になるのがこの辞書で、ほぼ選択の余地はないように思われる。それ以外の使い道としては、何かの語源を調べたくなったとか、ローマ法まで遡る必要が生じたとか、何かの建物にラテン語が刻まれていたとかそんなんだが、その程度のことなら、この学習用辞書でたいてい間にあってしまう。もしかすると、ラテン語を勉強したことの無い人でも、ある程度は使えるかもしれない。

A standard Latin-English/English-Latin dictionary for beginners.

2012年6月7日木曜日

Jean-Claude Corbeil, Ariane Archambault "Merriam-Webster's Compact 5-Language Visual Dictionary"

2600ものかなり高精度の絵があり、9500の名詞について、英西仏独伊語が併記されている。・・・という説明から想像する以上に、細かい名詞が大量に挙げられている。多分、ネイティブでも知らない単語が多数ある。たとえば、日本人が見ても、日本語でどういうのか分からないようなのも多数ある。そして、基本的に名詞しか載っていない。こんな本を喜ぶのは語学マニアくらいだと思うが、類書の中では最善である。

The best book of its kind.