2014年8月11日月曜日

Hugh Bowden "Alexander the Great: A Very Short Introduction"

基本的にはアレクサンダー大王の伝記。範囲はマケドニアからエジプト・トルコ・アフガニスタン・パキスタン・インド洋まで広いが、王位にあったのは8年だし、32歳で死んでいるので期間は短い。その間、ほとんど行軍しているが、軍事行動自体の記述は少ない。その点はちょっと残念が気がするが、実際のところ、信頼するに足る史料が少ないのだろう。俗説を訂正しながら、大体アレクサンダーの行軍の過程を追う。というと面倒くさい本のような印象を与えかねないが、実際には一気に読んでしまう。アレクサンダーの行動自体面白いが、俗説のほうもそこそこ面白いからだ。

こういう本が出てくる状況を説明すると、西洋ではアレクサンダー大王伝説(Alexander romance)が大量に作られており、そうでない真剣な伝記の試みも過去二千年以上に渡って膨大な蓄積がある。できるだけ事実に近いアレクサンダー大王像を取り出そうとすると、同時代人による記録を参照することになるが、それも鵜呑みにはできないようなことだ。特にローマ人が語る場合は、ローマの政治状況なども影響したり、時の皇帝の教訓に資するように書いたりするから難しい。たとえばWikipediaのアレクサンダー大王の項にはもっともらしいことが大量に書いてあるが、その前にこの本を読むべきだろう。とにかく、予備知識なしでも、面白く読める。これも翻訳してほしいところだが、アレクサンダー大王という名に感じる熱量が、西洋人と日本人じゃちょっと違うかね。

Fascinating presentation of Alexander III. We can find a lot of information on Alexander the Great, for example, in Wikipedia. However, you should read this book first, if what you want is a historically real Alexandros.

Oxford Univ Pr(2014/09)
ISBN-13: 978-0198706151

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