2016年7月22日金曜日

Jonathan Borwein "A Dictionary of Real Numbers" [実数辞典]

世の中には「奇書」と呼ばれる本が多数あり、あまり感心したことがないが、これこそ奇書ではないだろうか。個人的にはこれ以上の奇書に出会ったことがない。簡単に言うと[0, 1)までの八桁の実数の逆引きである。例として裏表紙に書いてある例だが、

  • 0.93371663 → 2log((e+π)/2)

こんな調子で大量の数値が載っているから例なんか他にいくらでもあるが

  • 0.23318249 → 8*x^2+5x-6=0の解の一つ(の小数点以下8桁)
  • 0.88869591 → 10^(4√2-3√3)(の小数点以下8桁)
  • 0.30275578 → ln(√2)÷ln(π)
  • 0.91457357 → 2e/3-π/3の3乗根の一つ

世の中には眺めているだけで楽しい数学辞典は色々あり、たとえば分厚い積分の公式集なんかは実際に役に立ったこともあるし、統計分布の辞典なんかも楽しいが、この本に関しては、わたしが実用する機会がほとんど想像できない。実際には、この本が役立つ人は世の中に結構いて、何かしらの数値解析に携わっている人は、この本によって数値から事態を把握できることがあるらしい。誰でもわたしと同じように衝撃を受けるのかどうかは謎だが、わたしとしては単に円周率を印刷しただけで奇書を気取っているようなのとは次元が違うように思う。真面目な数値解析の人にも役に立つのだろうが、例えば、株価の予測をしている人なんかは使わない手はないように思われる。ちょっと説明不能な感銘を受けた。

This is the most strange book I have ever seen. I can imagine that to some people this book is very useful and very time-saving. Still, My amazement does not part me. Very impressive and amusing.

Springer (2011/12/30)
英語
978-1461585121

2016年7月14日木曜日

A. M. Glazer "Crystallography: A Very Short Introduction" [結晶学:非常に短い入門]

目次:1.長い歴史 2.対称性 3.結晶構造 4.回折 5.原子を見る事 6.放射線源

いわゆる結晶学の概説で、日本語でも英語でも類書を見ないから、かなり貴重な本ではないかと思う。ただ、なぜ類書がないのかはこの本を読めば分かる通り、話自体がかなり難しいからなんだろう。この本、一応丁寧に初学者向きに書いてはいるものの、それでも、群論・フーリエ変換・光学・エックス線等の基礎知識がないと厳しい。おそらく、理工系の学生でも三年目くらいにならないとしんどいのではないかと思われる…。これまで200冊以上VSIを読んでいるが、その中でも最も難しいと言い切って良いだろう。

わたしとしては、たまたま光通信の勉強をする機会があったので、非常に勉強になった。光ファイバ自体の他、レーザーダイオードなどの付属機器の理解に、この本で解説されるような結晶学の知識は非常に役立つ。他にも本書で触れられる通り、結晶学の知識が必要な分野は結構多いから、ちと難し目ではあるが、翻訳したら需要もあるかもしれない…。

A very good and rare introductory book on this subject, though it might be very challenging to those who have no back ground....

Oxford Univ Pr (2016/06)
言語: 英語
978-0198717591

2016年7月13日水曜日

Thierry Debard, Serge Guinchard "Lexique des termes juridiques 2016-2017 - 24e éd."[法律用語辞典2016-2017第24版]

定番のフランス法律辞典。毎年改訂されるので、一応買い換えている。類書は他にも色々あるけど、結局、決め手になるのは、二色刷りとか活字とか装丁だ。ふと思ったが外国語の勉強に自分専門分野の辞書というのは悪くないかもしれない。Que sais-je?の100 motsも同じことだ。

J'aime la présentation de ce livre. Facile à lire.

Dalloz(22 juin 2016)
フランス語
978-2247160754