2014年9月24日水曜日

Lawrence M. Principe "The Scientific Revolution: A Very Short Introduction"

15世紀前後に起こった科学革命の歴史的な記述。つまり、科学革命の理論とかを提示するというよりは、近代科学の始まりの叙述である。キリスト教が科学を抑圧したとかいうような俗説は排除しているので、安心して読める。わたし個人としては、知識として特に新しい話はなかったが、この分野は初めてという人にはお勧めできる。

A basic description of the scientific revolution. Free from prevalent beliefs. Recommendable for novices in this area.

Oxford University Press (2011/5/19)
978-0199567416

2014年9月12日金曜日

Randall Munroe "What If: Serious Scientific Answers to Absurd Hypothetical Questions"

予約買いで期待を裏切られず、一気読みした一冊。まだAmazon.co.jpではあまり売れていないようだが、.comのほうでは既に大絶賛されている。コアなファンのせいで過大評価されている気がしなくもないが、わたしも相当なファンなので判定できない。著者のサイトによれば、日本語訳は早川書房から出るらしい。余程下手を打たない限り日本語訳でも売れると思うが、出版時期が不明なようだ。普段からxkcdを読んでいるファンであれば、"xkcd volume0"は買わなくても、この本は買って損はない。
xkcdを知らない人は単にサイトを見てもらったほうが早いが、元NASAのロボット技師が週に数本短いマンガを描いているもので、タダで読めるから、数本読めばテイストが分かるだろう。かなり理系度が高めではある。
この本にも結構な頻度でマンガが挟まれるが、基本的には文字の本で、読者から寄せられたムチャな仮定上の質問にバカ正直に科学的に考えて答えていく形をとっている。中には面白いものやそれほどでもないものが含まれるが、退屈はしない。たとえば:
  • 野球の投手が光速の90%で投球すると何が起こるか。
  • 中性子星の密度の弾丸が地球上にあったら何が起こるか。
  • 大英帝国にはいつから日が沈んでいないのか。
  • 紙のWikipediaを維持するには何台プリンタが必要か。
  • 雨が雨粒ではなく一滴で全部降ってきたら何が起こるか。

あらためて見ると普通の質問も混ざっているが、一々真剣に科学的に答えていく。"The Physics of Superheroes"みたいに教育目的で書かれているわけではなく、一般に売るにはやや専門的過ぎる感じもあるので、日本語訳にはかなり訳注が付くのかもしれない。早川書房というのは妥当な線だろう・・・。ただ、SFファンにこれを限定するのは惜しい。現にわたしもSFファンじゃないし。迷ったら買いの本だと思う。続編が出るなら当然予約するつもり。
At the time of writing this article, this book has already gained huge lauds around the world. I have nothing to say, except for that I would like to pre-order a Book II.
John Murray Publishers Ltd (2014/9/4)
ISBN-13: 978-1848549579

2014年9月2日火曜日

Martin Luck "Hormones: A Very Short Introduction"

日本語で言うと「内分泌学」とか言うのだろうか。最初に概要と歴史、最後に今後の展開がある以外は、各系統のケーススタディ。生殖・血圧尿関係・骨カルシウムの代謝・脂肪食欲関係・甲状腺ホルモンの作用・サーカディアンリズム関係。わりと淡々と説明している感じだが、非常に面白い。というのも、普通の人が考えているよりホルモンの生成・作用が遥かに複雑だからだ。いわゆる「心」というものは神経によって構成される電気回路を中心に考える傾向があるが、実際には神経と密接な関係のある化学物質によって気分感情が影響を受けるというか、むしろそっちのほうが心と考えるべきなのかもしれない。全身の細胞は神経によって作用に影響を受ける部分もあるけど、ホルモンの影響のほうが遥かに大きくて複雑なのであり、感銘を受ける。

それはそれとして、特にOxford Very Short Introductionsを読んでいると、つくづく日本の新書は知的レベルが落ちたなと感じる・・・。まあ、数も増えたが・・・。特にこういう医学関係だと、ここまで高水準な本は新書ではまずないどころか、あからさまな疑似科学本を結構な出版社が出している有様で、むしろ単にこういう本を翻訳したほうが良いと思う。売れないのかもしれないが・・・。

A great introduction. Chiefly comprised of several areas(axis) of hormonal mechanisms. Impressive.

Oxford Univ Pr (2014/09)
ISBN-13: 978-0199672875