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2026年5月28日木曜日

Margaret J. Snowling "Dyslexia: A Very Short Introduction" [ディスレクシア:非常に短い入門]

Dyslexia (Amazon.co.jp)

目次:1. ディスレクシアは存在するのか 2. どのように読むことを学ぶ(または学ばない)のか 3. ディスレクシアの認知的原因は何か 4. ディスレクシアの遺伝子と環境、社会階層の影響 5. ディスレクシアの脳 6. ディスレクシアには何が効くか 7. 三つのC:注意書きと併発と代償

ディスレクシア研究の現状のまとめというところだが、分からないことだらけである。仮説だらけで、色々なモデルも提案されているが、わたしの考えでは、まだ素人が理解するべきというほどの科学的レベルに達していないようだ。もちろん、英語圏の話だから英語に関する話は面白いし、支援の方法などについては学ぶべきことも多い。

わたしが、この類の原因探求にあまり期待しない理由は、ASDと同じことではと思うからだ。この本を読んでいてもそんな印象を受けるが、「ディスレクシアの原因」なんて、「野球が下手な原因」と同じくらいあるように思われる。「どうも遺伝するらしい」とか言ったところで野球の下手さだって遺伝するだろう。言語による違いと言っても、野球とサッカーだって違うし、片方が下手ならたいてい他方も下手だろう。脳画像や環境を調べたところで、同じようなことかと思われる。せめて、数パターンくらいに分類できたら、それぞれのパターンに対する支援とかも考えられると思われるが、まだ道のりは長いようだ。

だからといって、ディスレクシアを一つの集団として教育・福祉・支援の対象にすることが無意味とは思わない。そして、「野球が下手だと障害になってしまう社会」のほうにも目を向ける必要はあるだろう。特にこれからの時代、読み書きが大して重要でなくなる可能性もある。結論としては、この本を読んでも実用性はほぼないが、現状の把握という意味では関係者は読む価値があるのかもしれない。

 出版社 ‏ : ‎ Oxford Univ Pr

発売日 ‏ : ‎ 2019/7/23

言語 ‏ : ‎ 英語

ISBN-13 ‏ : ‎ 978-0198818304

2026年5月4日月曜日

Katherine Hawley "Trust: A Very Short Introduction" [信頼:非常に短い入門]

Trust (Amazon.co.jp)

 目次:導入:朝食の席での信頼と不信 1. 信頼と不信とは何か 2. 信頼と信頼性がなぜ問題になるのか 3. 信頼と協力の進化 4. 金を持って逃げる 5. 正直と不正直 6. 知識と専門性 7. インターネットでの信頼 8. 機関と陰謀と国 結語:信頼に値することの重要性

かなりの部分が"trust"という言葉の日常的な使用法に関する記述で、また一般向け英米哲学書のこのパターンか、と思う部分もあるが、この本については少し事情が違うところがある。というのは"trust"が実際に重要な局面が日常にあふれているからだ。

例えば、「囚人のジレンマ」的な実験経済学の話などはどうでもいいと思うが、現実に信頼がないと商取引が成立しない。信頼される人でないと出世しない。この本で論じられているだけでも、SNSで知り合っただけの人をどうやって信頼するか。どうやって信頼できる医者や弁護士などを選ぶのか。科学と疑似科学をどうやって見分けるか。Wikipediaは信頼できるのか。他国が侵攻して来ないと信頼できるか。等々。

それぞれの話は別に面白くないが、著者が有名になったのは、trustをcommitmentに還元したせいらしい。わたしの理解では「相手の善意に身を任せるということではなく、相手が社会規範に従っていると判定すること」らしい。いつも通りcommitmentと言う言葉が日本語に訳しにくいが、要は「責任を問われる立場に自分を置くこと」なんだろう。この説では、信頼は、一対一の関係ではなく、広範な社会規範が前提になる。

もちろん、この説では、幼児が母親を信頼しているわけでないことになるが、わたしとしては、そんな言葉の定義をいじっても面白い話は出てこないと思っている。そもそも"trust"を「信頼」ではなく「信用」と翻訳すれば、「信じて用いる」のだから、話はもっと分かりやすい。乱暴に言えば、西洋と東洋の違いかもしれない。そもそも絶対的に孤独な自我から出発して他我とか神とかをどうやって信頼するかなどという問題の立て方が…。

というような話ならもっと面白いと思うが、そういうのはフランス哲学のやることであって、英米哲学ではない。一種の自己啓発書と思えば、面白いと感じる部分もあるだろう。

出版社 ‏ : ‎ Oxford Univ Pr

発売日 ‏ : ‎ 2012/9/8

言語 ‏ : ‎ 英語

ISBN-13 ‏ : ‎ 978-0199697342

2026年5月1日金曜日

Thomas Dixon "The History of Emotions: A Very Short Introduction" [感情の歴史:非常に短い入門]

The History of Emotions (Amazon.co.jp)

1. 過去の鼓動 2. 悲しみの地図 3. 情念から絵文字へ 4. 恐怖と幸福の追求 5. すべての激昂 6. 愛を求めて

読書人のための読み物という感じだが、まずこの本を貫いているのは「過去の人や異文化の人に現代人の感情を当てはめていいとは思えない」という考えだ。かなり最近になってから流行りだした考え方で、感情が社会的構築物、教育によってインストールされるものという話の流れだ。

で、色々な最近の理論や、著者の専門である西洋の歴史からの様々なエピソードが紹介されたりする感じ。一つ一つの論評は面白いのだが、どうもわたしに刺さらないというのは、一つには結局のところ昔の人の感情を追体験するのが不可能でよくわからないからだろう。ので、個別例が積み上げられてもどうも「読み物」という感想にしかならない。あまり詳しくない人には、「この状況で持つべき感情はこう」みたいな固定観念が相対化されるかもしれない。

感情をいくつかの「基本感情」みたいなものとその混合として判別しようとする試みもあるが、多分、ホルモン的なレベルでも成功していない。極端な行動主義は研究放棄に過ぎない。ただ今のところ間違いないのは、感情が社会的構築物で、それが生理までかなり支配してしまうということくらいだろう。

個人的に、特にマンガ「キングダム」を読んでいてうんざりしたのは、現代日本の正社員みたいな価値観や思考を紀元前の中国人に投影し過ぎというだけでなく、「昔の中国人がその状況でその感情を持っただろうか」という疑問がありすぎて、あまり読む気がなくなった。

あと、わたしは感情がない人間みたいに思われがちだが、実際には感情がないわけでなく、ただ現代の常識的な日本人が想定する感情体系とかなりずれているんだろうなという気は常にしている。いろいろ思うことがあるが、この分野の進展待ちという感じ。

出版社 ‏ : ‎ Oxford Univ Pr1

発売日 ‏ : ‎ 2023/8/25

言語 ‏ : ‎ 英語

ISBN-13 ‏ : ‎ 978-0198818298

2026年4月28日火曜日

Bence Nanay "Aesthetics: A Very Short Introduction" [美学:非常に短い入門]

 Aesthetics (Amazon.co.jp)

目次:1. 美術館で迷子 2. セックスとドラッグとロックンロール 3. 経験と注意 4. 美学と自己 5. 美学と他者 6. 美学と生活 7. 世界の美学

VSIにありがちな大学で教えるような美学の概説ではなく、著者が自分の穏当な考えを書いたようなエッセイという感じを受けた。この類の本は、中心的な主張というよりは、例示される個別のエビソードのほうが面白いのが通例だ。例えば著者は一時期映画評論家だったらしいが、要はあれこれ批評文を書く前提で映画を見ると楽しくないとかで辞めたとか、まあありそうな話だ。美術館にデートに行って雑談のネタになるというくらいの話。

というようなことだが、そもそも「美とは」みたいなことについて、それほどハードな議論はされていない。もしそんなことをしていたら、英米哲学にありがちな「常識の擁護」みたいなつまらない話になるだろう。といっても大陸哲学みたいに「美は無関心でなければならない」みたいな定義にも踏み込まない。権威主義に対する警戒(成功しているかどうかはともかく)はこのジャンルの定例だ。生物学に還元する話もない。強いて言えば社会学や心理学が強い感じはあるが、そもそも何かに還元しようとする気も薄いようだ。そうするとやはり雑談エッセイ…。

出版社 ‏ : ‎ Oxford Univ Pr

発売日 ‏ : ‎ 2020/1/1

言語 ‏ : ‎ 英語

ISBN-13 ‏ : ‎ 978-0198826613

2026年3月9日月曜日

Robert Chapman, Sue Fletcher-watson "Neurodiversity: A Very Short Introduction" [神経多様性:非常に短い入門]

Neurodiversity (Amazon.co.jp)

ニュロダイバージティ(神経多様性・脳の多様性)という社会運動に関する概説。この本は、わたしが生涯に読んだ本の中でも屈指の衝撃だった。正直言うと、ちょっと戦闘的過ぎてついていけないところもあるが、大枠では賛同している。ちょっと真面目に紹介したい。

内容

かなり省略してわたしが最重要と思うことだけ簡単に紹介する。

1: 神経多様性の導入

ASDやADHDなどがそもそも医学的根拠のある「病気」あるいは「障害」なのかが疑われる。そもそも多様な人がいるのが当たり前で、特定の社会状況で「正常」とされる範囲から外れた人間が「障害者」と認定されているだけである。コミュニケーションの仕方が「普通」とされるレンジから外れている人たちをASDとして障害者認定したところで、その「障害者」たちに共通の遺伝子や脳の構造や「病因」は見つからない。これは「標準的な人間」の規格を設定したことによる政治問題であって医学の問題ではない。この点は後でわたしの言葉でわかりやすく説明したい。パラダイム転換が必要である。重要なのは規格化に対抗して多様性を肯定し、政治問題を認識することだ。

2: 民主的な理論と研究としての神経多様性

たとえば、バリアフリーが完全で車椅子でしか移動できない程度では障害認定されない社会は想像できる。障害は個人の医学的問題というより社会の問題であり、障害者は抑圧されたマイノリティである。健康であることと「標準的」であることは関係がない。現在ASDの診断は医者が独占して、ある人が「標準とされる範囲に収まるかどうか」を判定して、収まっていない人を病人または障害者扱いしている。これは民主的な状況とは言えない。

3: 神経多様性パラダイムの適用

学校や職場などでの、わたしから見ると夢のような改革が並べられる。現実になる日が来るとは信じられないが…。ここは何か所か文章を翻訳引用する。
神経多様の人々を排除または害する職業生活の一面として、多くの仕事に付随する社会的期待がある。これはサービス産業で働く人々に必要な感情労働から、休憩室での世間話、仕事終わりの飲み会や同僚の誕生日などを含む。(Applications in the workplace)

自閉症の人は感覚処理の問題からアイコンタクトを避けるが、これが不正直の兆候と誤って解釈されるかもしれない。( Neurodiversity in the criminal justice system)

 性的労働が犯罪とされるべきかは全く明らかではない。それによって性的労働者が犯罪者とされるだけでなく、彼らが労働者の権利にアクセスすることが困難になるためだ。(Neurodiversity in the criminal justice system)

4: 集団的解放としての神経多様性

一般的な人権問題のみならず、世界システムとの関係が問題になる。この類の話で必ず出て来るジェンダー問題をリンクするのは避けられないのだろう。さらに人種問題、脱植民地化、反資本主義…ちょっと戦線を拡大し過ぎではないか。

5: 現在の議論

ここはさらに小見出しを翻訳しておく。「神経多様性と学習障害」「Nerodiversity-lite(表面的な神経多様性運動の模倣)」「神経多様性と反精神医学」「アイデンティティの政治」「自認の出現」「神経多様性に配慮した変化の方法としての共同生産」ここでわたしにとって衝撃的だったのは、R. D. Laingに対して結構な言及があったことだ。もちろん、NeurodiversityとR. D. Laingに直接的な関係はないが、精神障害を個人の医学的な問題ではなく、社会的な問題であると理解した点では決定的に一致している。

たとえ話

この本を読んでいて考えたことである。50mを10秒で走れないと日常生活が著しく不便な社会を想像する。この社会では、50mを10秒で走れない人間を「鈍足障害」と診断し、様々な治療法や投薬が試みられる。実際、投薬は一定の成果を上げる。特に「鈍足障害」と併発しがちな抑うつには効くだろう。どうにもならない場合は障害者手帳が配られる。また鈍足障害者に共通の遺伝子や脳の構造やその他の病因が調査される。

この社会は二重に間違っている。第一に50mを10秒で走れないと不便な社会が間違っている。多分道路交通法や建築基準法が間違っているのだろう。走るのが遅い人間に不利な社会は正義の見地から間違っている。

第二に、走るのが遅い人間を一括して考えるのが間違っている。走るのが遅い原因は無数にあり、有意味な研究をするには原因ごとにさらに分類を細かくしなければならない。その結果、例えば「その遺伝子があっても速い人もいますが」みたいな結果しか出ない。そもそも走るのが遅いのは単一の病気ではないのだから当たり前だ。つまり、この話は科学的あるいは統計学的にも間違っている。

ASDも結局同じことではないだろうか。ASD者は医学的に単一のグループではない。分類を細かくしても同じことだ。そもそもASDと判定する基準が、医学ではなく特定の社会の要請である。もしかすると資本主義経済でなければ障害ではないのかもしれない。アメリカでは日本より遥かに簡単に障害認定されるかもしれない。

個人的な話

R. D. Laingはほぼ全著作を読んでいる。昔からわたしはこういうのが、個人の問題ではなくて個人間=社会の問題であると強く感じていたらしい。哲学方面でもわたしの一貫した傾向だ。

わたし自身はASDの強い自認がある。実は診断を受けようかと思ったこともあるが、負担も大きいし、この本を読んで今こそ受ける気がなくなった。

そして、わたしは来月から無職になる。FIREだが、要するにASDにとって最も厳しい学校・職業生活からとうとう脱出したわけだ。実のところFIREというのはASDの所業なのではないか。この本に限らず、ASD本に書いてある実体験の類には常に強い共感を持っている。

この本については、ちょっと戦闘的過ぎるところがあって引いてしまった部分もある。Basic Income導入とか、自閉症を認定したのはナチが最初だとか、戦線を拡大しすぎなのと、扇動的過ぎる部分もある。しかし、大枠においては非常識な話ではない。LGBTQの話とリンクしがちなのは昔から違和感があるが、要は多様性の尊重=標準/病気化への抵抗ということで連帯するべきというか、パラレルということなんだろう。

まだ出版されたばかりというか、発売日が未来になっているが、既にどこかで翻訳出版の準備が進んでいるだろうか。わたしで良ければやりますが…。

出版社 ‏ : ‎ Oxford Univ Pr
発売日 ‏ : ‎ 2026/5/26
言語 ‏ : ‎ 英語
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-0198876519

2025年5月27日火曜日

Penelope Gardner-Chloros "Bilingualism" [バイリンガル]

 Bilingualism (Amazon.co.jp)

目次:1. なぜバイリンガルが重要か 2. バイリンガルになること 3. バイリンガルの経験 4. バイリンガルの認知 5. バイリンガルの脳 6. バイリンガルの発話 7. 筆記におけるバイリンガル 8. バイリンガルの過去・現在・未来

著者は欧州議会のプロの通訳だったりするらしく、単なる学者ではない。また、バイリンガルに関する研究をまとめている部分もあるが、かなりの部分が著者自身の調査に基づいている。このブログで紹介しがちな特定の学問分野への入門書とはちょっと違う。

最初のうちは政治的な話。二つ以上の言語を話せるのが脳に良い/悪いという議論は、移民差別、border controlなどと密接に関わっている。Political Correctnessは別とすれば、果たしてバイリンガルは認知機能や幼児の発達に良いのかどうか。この件について著者は極力科学的なエビデンスを参照しようとしているが、結局のところ、確定的な結論を引き出すほどの研究結果がないようだ。はっきりした利点としてもちろん単純に色んな言語を使う人と話せるとか、老人性痴呆に対して明らかに抵抗性があるとかはあるが。

この本の真ん中あたりの結構な部分が、バイリンガルのリアルな経験を説明しているが、要はバイリンガルの経験する世界をモノリンガルに対して説明しているようなことで、我々としては当たり前のことしか書いていない。しかし、確かにこの類の質問はよく受ける。誰でも「頭の中は何語なんですか」という質問を食らったことがあるだろう。酷い場合は「頭の中は関西弁なんですか」みたいな質問を受けることすらある。説明に困るが、我々としては別に重要な質問とも思えない。この類の質問がある人はこの本を読んだほうがいい。そんな人がこのブログを読んでいるとは思えないが。

このあたりまでは一応、科学的というか中立的っぽい記述がされているが、最後のほうはもうはっきりpro-bilingualismである。英語至上主義に反対したりしているのは、結局、英語圏が念頭にあるからなんだろう。別にそれ自体はわたしも反対する理由がない。

結局、この本のせいではないが、バイリンガルについてはたいして科学的知見がない。そして少なくとも日本ではバイリンガルを差別する勢力は少ない。いることはいるけど、大半の人は、話せる言語は多いに越したことはないくらいに思っているのではないか。これ以上この件について調べても、政治的にはともかく、少なくとも科学的にはあまり面白い知見は出てきそうにない。

The MIT Press (2025/2/4)
言語 ‏ : ‎ 英語
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-0262549431

2025年5月6日火曜日

Fernanda Ferreira "Psycholinguistics: Very Short Introduction" [心理言語学:非常に短い入門]

Psycholinquistics (Amazon.co.jp)

目次:1. 心理学と言語学の関係 2. 言語を理解すること 3. 言語を生成すること 4. 会話と対話 5. 読むこと 6. 言語処理の個人差 7. バイリンガルであること 8. 手話と手ぶりの心理言語学 9. 次は何?

わりと最初のほうでgarden-path文の例が惹き込まれる。garden-pathというのはヨーロッパの迷路文化を前提にした専門用語だが、例えば次のような文を言う。

The horse raced past the barn fell.

これは完全に文法的に正しい英文だが、一発でまともに読める人はほぼ皆無という話だ。この類の文をめぐって様々な研究が行われているが、研究内容というよりは、こういう例自体が面白い。

しかし、結局、この本のピークはこのあたりだった。ほかにも色々な話題があるが、どれにしても「その程度のことしか分かっていないのか」「まあそうでしょうね」という感想しかない。

バイリンガルの件はちょつと面白かった。バイリンガルが老年性痴呆の抵抗因子であるということは確定しているらしいが、さらに言語以外の認知機能についてプラスかマイナスかという話がある。結論としてはよくわからないのだが、バイリンガルが認知機能にとって+/-という話と、移民差別/反差別の話がリンクしているらしい。

人によってはもっと拾うところもあるかもしれない。わたしとしてはイマイチだった。

Oxford Univ Pr (2025/4/23)
言語 ‏ : ‎ 英語
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-0192886774

2024年3月12日火曜日

Michelle Baddeley "Behavioural Economics: A Very Short Introduction" [行動経済学:非常に短い入門]

Behavioural Economics (Amazon.co.jp)

行動経済学についてはこれまでここでも色々読んできたが、正直なところ、この本で特に新しい情報はない。短いという良さはあるが、この件については何をおいても御大のThinking, Fast & Slowを読むべきで、日本語訳もよく本屋に積んである。他に色々読んでもあまり追加情報がないのが実態だ。あるとしたらThaler先生くらいかなあ…。本の分厚さにビビるタイプの人にはいいかもしれない。確かに日本語で変なビジネス書を読むよりはいいと思う…。

Oxford Univ Pr (2017/5/1)
言語 : 英語
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-0198754992

2024年2月28日水曜日

Ethan Kross "Chatter: The Voice in Our Head, Why It Matters, and How to Harness It" [おしゃべり:わたしたちの頭の中の声、なぜそれが問題なのか、どう制御するか]

Chatter (Amazon.co.jp)

まず、著者の言うchatterの定義が分かりにくいが、要するにネガティブな言語的な反復思考という感じだろうか。ネガティブとも限らないようだが…。実はこの点が最後まではっきりしないのがこの本の致命的な欠点だ。具体例としてムダな心配とかトラウマの反復思考とか共同反芻とか他にも色々あるんだが、共通する要素が良く分からない。科学的に何かあるのかもしれないが。

で、対策として儀式とか自然を見るとか偽薬とか、一体何の話なのか…。一つ一つの項目も大した話がないし、とにかく話がバラバラに思える。こういう自己啓発本はもともと当たり率が低い。ハズレでした。

Crown (2021/1/26)
言語 ‏ : ‎ 英語
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-0525575238

2024年1月18日木曜日

Abigail Shrier "Irreversible Damage: The Transgender Craze Seducing Our Daughters" [回復できない損害:わたしたちの娘たちを誘惑するトランスジェンダーの流行]

少し前にKADOKAWAが翻訳書を出版しようとしていたが、どっかの団体の抗議を受けて出版中止になったという本。内容は要するに十代の女の子が希望したからと言って、簡単に男性ホルモン投与だの乳房切除手術するな/勧めるなということだ。

別に万民が読むべきとも思わないが、この本を翻訳出版すべき/するなとか騒いでいる人々の99.99%は実際にこの本を読んでいないだろう。翻訳出版してもこの状況がそんなに変わる気もしない。英語圏でもそんな感じらしいし。この記事にたどり着いた人のほとんども読んでいないし読みもしないだろう。わたしは一応読み終えはしたが、内容的にもそんなに面白いわけではない。ここで内容を詳しく説明して読んだ気になられても詰まらない。

ただ、印象として、書きぶりが戦闘的過ぎてその時点で引いてしまうところがある。考え方が一々保守的なのは間違いない。わたしは常に自由の側に立つ傾向があるので、外科手術なんかして仮に後で後悔しても本人の勝手では…などと思うが、まあそれはそれで極論なんだろう。入れ墨なんかより深刻な健康問題があるようだ。しかし、親の権利がどうとか、子供をSNSから引き剝がせとか、それもなあという。自由の側に立つ傾向のあるわたしとしては、翻訳出版中止もおかしいだろと思わなくもないが、現場ではそんなことを言っている場合ではないのかもしれない。

Regnery Publishing (2020/6/30)
言語: 英語
ISBN-13: ‎ 978-1684510313

Irereversible Damage (Amazon)

2023年2月17日金曜日

Edward T. Hall "The Hidden Dimension" [かくれた次元]

目次: 1.コミュニケーションとしての文化 2.動物における距離調整 3.動物における混雑と社会行動 4.空間の知覚:遠距離感覚器-目と耳と鼻 5.空間の知覚:近距離感覚器-肌と筋肉 6.視覚空間 7.知覚への導きとしての芸術 8.空間の言語 9.空間の人類学:組織化モデル 10.距離は人なり 11.異文化間文脈でのproxemics-ドイツ人とイギリス人とフランス人 12.異文化間文脈でのproxemics-日本とアラブ世界 13.都市と文化 14.proxemicsと人類の未来

"proxemics"という概念が提唱された本だが、翻訳が難しい。Wikipediaでは日本語で一応「近接学」という翻訳になっているが、多分中文の「空間行為学」のほうがマシだろう。簡単には、空間の知覚には人間の全感覚器が関与しており、しかも文化の差がかなり大きく、それを記述して解明していこうと試みる学問ということになるだろうか。著者は文化人類学者で、初版1966年ということで相当古いが、今でも主に建築学科の学生が読まされているらしい。確かに昔、近接心理学とかパーソナルスペースという概念をやたら語る人がいたのは、この本のせいだったんだろう。わりと生協の本屋とかでも原書も翻訳書も常に置いてあったし、昔から目には入っていたが、建築学にも文化人類学にもあまり興味がなく、タイトル的にも惹かれないので、ずっと手にしていなかった。

最近建築家の人がこの本に触れていたので、急に気になって読んでみたが、まあ確かに読んでよかった。最初のほうの動物の話はあまり興味がないが、特に日本庭園とか絵画における距離感の描き方の分析は勉強になった。日本庭園なんて、なんか無意味に気取った錦鯉を泳がせておく金持ち趣味くらいにしか思っていなかったが、本書によると、散歩して筋肉の動きなどで空間を感じるために設計され尽くされているらしい。画家の空間の描き方なんかも、言われてみればということが色々ある。この本を読んで、その場で自分のいる周りの空間を見渡すと、見え方が変わってくる。世界観が変わると言っても言い過ぎではないかもしれない…。

建築家の人は常にこういうことを考えているんだろうし、建築学の書棚にはこういう主題の本はほかにもいろいろあるのかもしれないけど、わたしとしては斬新な考察だった。やっぱり色々興味なさそうな分野の本も読んでみるものだ、という感想。

I do not know much about this field, namely "proxemics", architecture or cultural anthoropology, but I found this book is fascinating. Nobody can escape from influencies of proxemics.

Anchor(1990/10/1)
言語 : 英語
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-0385084765

2023年1月13日金曜日

Freda McManus "Cognitive Behavioural Therapy" [認知行動療法:非常に短い入門]

目次:1.CBTの行動学的起源 2.CBTにCをつけること 3.CBTの背後にある理論 4.CBTのスタイルと構造 5.CBTの方法 6.CBTの応用 7.将来の方向性と課題

心理療法と呼ばれる治療みたいなものは色々あって、人によって思い浮かべるものが区々だと思うけど、わたしの場合はまず1960年代くらいでアメリカで流行ったような精神分析だ。だいたい患者はほとんど寝ているみたいな楽な椅子に座っていて、精神分析医はその後ろでメモを取っているみたいな…。一時期はまともな上流階級の人間は週一くらいで精神分析セッションを受けているみたいな感じだったらしい。まあ、現代日本でもメンヘルとかいうライフスタイルが存在して、それに近いのかもしれないが。

精神分析は相当色々な文献を読んだが、結局あまり流行らなくなったし、わたしも興味を失ったというのは、話としては面白いんだけど、現実に治療効果が低いのと科学的根拠が無さすぎるからで。あと、薬も発達したし、フロイトがアクセスできなかった脳科学の知見も増えてしまった。フロイトの知見が全部無意味とは思わないが、わたしとしては、未だに精神分析がどうこう言っている人たちを、未だにマルクスを読んで有益な知見を絞り出そうとしている人たちと同じような目で見ている。酷い場合は精神症状は全部幼少期の性的虐待のせいみたいな本が売れて、大量の冤罪が生み出されたとか。

それとは対極にあるというか、それに反発したように出てきたのが行動主義で、ここから本書は始まる。心理学といっても科学的でなければならないということで、まず、目に見える行動以外は非科学的なので研究しないという心理学が出てきた。当然すぐに行き詰まり、やはりCつまり認知の要素も必要ということになって少し緩和されたようなことだ。

本書で語られる対象は、主に強迫神経症のようで、多くの場合、患者は、認知というか事実の解釈が間違っているらしい。例えば「心臓がどきどきする」というのを「死ぬかもしれない」と考えてしまう間違った信念があり、この信念が間違いであることを患者に体感させるのが目標らしい。どうも話が雑過ぎるし、そんな知的な説得で群衆恐怖症とかが治るんなら楽な話に思われるが、多分実際に効果があるんだろう。鬱病におけるnegative thinkingも対象として挙げられているが、とにかく主題は「患者の持っている間違った考えを訂正すること」であり、そんな話ならそう言えばいいだけで、どうもCBTの必要性が良く分からない。患者自身が実験して確認するというのが重視されているが、それにしても別にセラピストはいらないような…。実際最後のほうでは読書療法とか言い出して、CBTの本を読むだけでも効果があるとかいう話になっている。

要するに本書を読んでも、全体的にちょっとわたしにはピンとこない話だ。ただ、これはわたしがそういう問題に縁がないからで、医療の現場では少なくとも精神分析よりは治療成績がいいんだろう。最新の療法としてマインドフルネスを使うMCBTとかいうのも出てきて、もちろんマインドフルネス自体がそもそも心理療法なんだろうけど、そう思うと、全体的に自己啓発書に書いてあることみたいな話も多かった。もちろん自己啓発書のほうがCBTから知見を引用しているのだと思うが、一応科学的という意味で自己啓発書を読むよりこの本を読んだほうが良いかもしれない。ともあれ、CBTの概説書ではあるので、これから治療を受けるとか、そんな理由でどんなものか知りたければ読んで損はない。

An overview of CBT. Maybe CBT is very effective and practical for some sorts of psychological disorder, which I do not understand much, even after reading this book....

Oxford Univ Pr (2022/7/28)
言語 : 英語
ISBN-13: 978-0198755272

2019年11月28日木曜日

Essi Viding "Psychopathy: A Very Short Introduction" [サイコパス:非常に短い入門]

目次:1.どのようにして誰かがサイコパスまたはサイコパスになる危険があると分かるのか 2.共感の無さを説明すること 3.衝動性と社会的な行動ができないことを説明すること 4.なぜサイコパスになる人がいるのか 5.サイコパスをどう扱うべきか?

サイコパスという言葉は日本ではわりと適当、またはムダにロマンチックに使われている気がするが、ここで言うサイコパスのイメージはもっと具体的で、だいたいが粗暴で、往々にして刑務所に入るが再犯を繰り返すような感じ。そもそも他人に共感する能力がないが、特に本人自身が苦痛について鈍く、必然的に他人の苦痛など配慮せず、他人を操作する目的以外で親切なことはない。同様に、罰から学習する能力も低く、犯罪を犯すにしても衝動的で、ものすごく些細な利益のために割の合わない暴力を振るい、何度も収監される。同情心のなさ、苦痛に対する鈍感は、本人は自分の才能だと思っており、他人に配慮したりする人間を見下しているので、治療法が見つかったとしても本人の協力は期待できない。

というようなわけで、世間で面白半分に言われているよりは殺伐とした話で、確かにこんな人間がいるのはみんな知っている。近頃は犯罪報道でも前科〇犯みたいなことは言われないが、この人種はいっぱいいるんだろう。でこの本だが、サイコパスについて分かっていないことが多すぎるので、この本も事象の表面をひっかいているだけというのが正直な印象だ。脳の構造とか遺伝要因とかも調べられているが、他人に共感するための脳の領域の活動が低いとか、まあその程度の話だし、処置については鋭意研究中だが、今のところ有効な手段もないようだ。著者がどういうつもりか分からないが、わたしとしては「生まれつきこういう奴」という印象で、教育とか治療とか処罰でどうにかなる問題に見えない。

他は心理学一般に言えるような一般論とか警告で、あまり読んでいて発見のある本ではなかった。ただ世の中にあふれるサイコパス診断みたいなのがバカバカしくなるのは間違いない。

There is too much yet to know about this phenomenon.

Oxford Univ Pr (2020/1/1)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0198802266

2019年6月18日火曜日

Susan Llewelyn, Katie Aafjes-van Doorn "Clinical Psychology: A Very Short Introduction" [臨床心理学:非常に短い入門]

目次:1.現場の臨床心理学者 2.揺り籠から墓場まで 3.商売道具 4.臨床心理化が使う枠組み 5.反省する科学者-実践家としてのわたしたちのアイデンティティを作ること 6.現在の合意と議論 7.臨床心理学の対象の拡張

簡単に言うと心理カウンセラー業の職業案内というところ。その手の学科に入った/入ろうとしている大学生などに良いのではなかろうか。個人的にはこの類の職業の人に感心したことがほとんどないが、必要な職業ではあるのだろう。そしてどんどん業務も拡張されているようなので、そのうち何もかもカウンセラーに相談する世の中になるかもしれない。ここでもマインドフルネスが取り上げられていて、もう完全にこの業界の定番になっているようだ。

A nice concise introduction to the field.

Oxford Univ Pr (2017/6/14)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0198753896

2019年2月21日木曜日

Elizabeth Hellmuth Margulis "The Psychology of Music: A Very Short Introduction" [音楽心理学:非常に短い入門]

目次:1.音楽心理学の技法と科学 2.音楽の生物学的起源 3.言語としての音楽 4.時間の中で聴くこと 5.音楽演奏の心理学 6.人間の音楽性 7.音楽への欲望 8.未来

音楽心理学のアウトライン。後から思うと、「まあそうでしょうね」みたいなことしか書いていなかった気もする。8章「未来」に面白そうな話がまとまっていた気がするが、つまり、これから面白くなる学問なんだろう。根本的な問題として、この学問は、音楽好きの心理学者がやるのか、微妙に挫折した音大の学生がやるのか。どっちにしろ、この本は入門書だ。これからは音楽ビッグデータを利用して、科学的にキャッチーな音楽を作れるのかもしれないとか。

全く個人的な事情だが、わたし自身は義務教育以上の音楽の教育も受けていない。しかし聴いた曲を直ちにリコーダーで再生できる程度の音感がある。別にそれほどレアな才能ではないかもしれないが、ザラにもいないだろう。しかも、音楽にほとんど興味がなく、意図的に音楽を聴くことはほぼない。携帯で音楽を聴いたりもしないし、一人の時間はだいたい無音で過ごしている。そして、わたしの知る限り、音感のない・音痴の人間のほうが音楽を良く楽しんでいる気がする。これがどういことなのか著者に聞きたいものだ。

An outline of the dicipline.

Oxford Univ Pr (2018/11/1)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0190640156

2018年12月6日木曜日

Robert Cialdini "Pre-Suasion: A Revolutionary Way to Influence and Persuade" [事前説得:影響と説得のための革命的方法]

目次:1.Pre-suasion:注意の前倒し 2.連想の役割 3.最良実施例:Pre-suasionの最適化

タイトルのpre-suasionはpersuasionのperをpreに変えた造語。効果的な説得のための戦略(下準備)をまとめたもの。何でも"Influence"という有名な前著があってそれの更新版みたいなことらしい。互酬性を利用するとか連想の力を使うとか環境に気を遣うとか、まあ、この類の話に馴染みのある人には、それほど目新しい話はない。ただ、馴染みのない人は身を守るためにも読んでおいたほうが良い。我々は常に宣伝広告営業に晒されているし、専門家はこの程度のことは当然知っている…知らなくてもこの本読むはずだ。

わたしがこの本を知ったのは、直接にはWin Biglyからだが、この本は余計な自慢話などがないから遥かに読みやすい。中核的な主張も、Win Biglyに比べれば全然控え目だが、大よそ似た線と言っていいだろう。要するに、我々は自分で考えていると思っているが、実は無意識のうちに色々な技術で操られているということだ。わたしとしては他人を操作する用事がほとんどないので、その点はどうでもいいが、自分の行動を律するためにpre-suasionの技術も使えるわけだし、そのうち何か有効な使用法を思いつくかもしれない。しかしまあ、この類の本を読むたびに、自分の力で考えていることなんてほとんどないんだなあと思う。翻訳はあまり良くないという話もあるが、読めるだろう。

A good textbook. We think almost nothing by ourselves....

Simon & Schuster (2016/9/6)
言語: 英語
ISBN-13: 978-1501109799

2018年6月19日火曜日

Yujin Nagasawa "Miracles: A Very Short Introduction" [奇跡:非常に短い入門]

目次:1.奇跡とは何か? 2.宗教的文書の中でどのような奇跡が報告されているか? 3.なぜこれほど多くの人が奇跡を信じるのか? 4.奇跡を信じることは合理的か? 5.超自然的でない奇跡はあり得るか?

基本的には宗教上、特にキリスト教の文脈での奇跡だか奇蹟だかを扱っている。奇跡の定義とか博物誌的記述を別とすれば、人間の心理バイアスとかヒュームの懐疑論など。奇跡の真偽には立ち入っていないが、著者が否定派でないことは明白に思われる。奇跡を認知しやすい人間の性向があるのだとすれば、奇跡が起こったと主張することで利益を得る性向とかもあるだろうし、こういうことなら宗教の起源とか奇跡の利用法などにも踏み込んでほしいところだが、多分、この著者には無理だろう。「ムー」とかを読むのとあまり気分は変わらない。

Many interesting cases of alleged miracles.

Oxford Univ Pr (2018/1/23)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0198747215

2018年4月26日木曜日

Pascal-Henri Keller "La dépression" [鬱病]

目次:1.メランコリーから鬱病へ 2.鬱病を説明する事 3.鬱病と治療の希望 4.精神分析モデル 5.鬱病の未来と鬱病者の未来

鬱病の歴史から原因から治療法から市場規模までに至る概説。よくある類の本とは言えるが、フランスだからなのか、文学的というか哲学的な雰囲気が強い。精神分析を重視するのはフランスだからだろう。他方、近頃流行りのマインドフルネスについては僅かしか触れられていない。わたしとしては、この件については昔から色々考えていて、何にしろ身体的原因が第一に違いなく、精神分析含め、あまり文学的に解釈しても仕方がないと思っている。脳内ホルモンの大半は小腸でも作られるし、食べ物、特にアミノ酸を調整するのがお勧めだ。例えば、トリプトファンとかフェニルアラニンは明確に気分が変わる。前者はわたしはアレルギーがあるのでダメだし、人によって合う合わないがあると思うけど。

Je vous recommende des amino-acides.

Presses Universitaires de France (20 janvier 2016)
Langue : Français
ISBN-13: 978-2130635062

2017年12月21日木曜日

Scott Adams "Win Bigly: Persuasion in a World Where Facts Don't Matter" [大きく勝つ:事実が問題でない世界での説得]

目次:1.なぜ事実が過大評価されているのか 2.どのように現実をもっと有益な方法で見るか 3.どのようにトランプ大統領は他人にできない事をするか 4.どのようにビジネスと政治で説得を使うか 5.なぜ集団に属すると強くなり盲目になるのか

アメリカでは選挙が終わるたびに「こうなると分かっていたわたしの賢さについて」という本が出てくるが、これもその一冊。普通ならこんな本は読まないが、著者はわたしのデスクの上のマンガを描いているマンガ家で、たまたま目についたので読んでみた。主たるテーマはトランプの選挙運動の優秀性について。多分、日本では誰も読まないのでわたしがまとめると、この本は主に五つの要素から成り立っている。

初歩的な心理学の説明
認知不協和だの確証バイアスだの。本人は学位を持っていないが、訓練を受けた催眠術師だと言っている。日本で言えば苫米地博士相当と思って良いんだろう。初歩的だが、言っていることは間違ってはいない。
自慢
トランプの勝利を予測したほか、自分には財産があるだのビジネスで成功しているだのフォロワーが多いだのマスコミのインタビューを受けただの。こういうのを並べると説得力が増すと思っているんだろう。このあたりも苫米地博士みたいだ。
トランプとクリントンの選挙運動の分析
自分も説得のプロなのでわかるがトランプはスゴいとか、途中からクリントン側にとんでもない軍師がついたはずとか。トランプの選挙運動を逐一追っていて、これが本来のテーマのはず。冷静に書いていれば広報や選挙運動の教科書になるはずだが、本人は学者ではないので、個人的な事情と混ぜ合わされて書かれている。
苦労話
トランプは色々スキャンダルもあったし、クリントン支持者から嫌がらせをされたとか身の危険を感じたとか。実際、カリフォルニアでトランプを支持するようなこと(元々は誤解だが)を言ってたら、ヤバいのかもしれないし、政治評論家としてやって行こうとしている本人にとっては手に汗握るレースだったんだろうけど、わたしのような外国人が読む分には哀れというか滑稽と言うか。
オカルト
ポジティブシンキングとか成功哲学みたいな話もあるが、それ以上に自分に予知能力があるとか仄めかしている。わたしはこの著者にこういう痛いところがあるのは知っているから驚かないが、初めての人が政治の本だと思って読んだら大抵引くはず。

別にこの本を推奨はしないが、アメリカでは政治評論などで多少知名度はあるみたいだし、この調子で当て続けていけば、いずれ影響力を持って日本にも名が轟いてくる可能性がなくはない。さしあたり、"Dilbert"の作者がblogやtwitterなどで政治評論をしていて、こんな本を書いていることを覚えておいても良いかも知れない。

I am not an American and my impression of the election is "much ado about nothing". But for a political pundit like this author, that was a thrilling race. Living histories are always interesting.

BTW, if you keep saying good things about a candidate, people assume you are a supporter of that candidate. It must have been obvious to you, Scott.

Portfolio (2017/10/31)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0735219717

2017年5月11日木曜日

Richard Passingham "Cognitive Neuroscience: A Very Short Introduction" [認知神経科学:非常に短い入門]

目次と各章で答えられる疑問

  1. 最近の分野
  2. 知覚
    1. 物体を操作するために認識は必要か。
    2. 腕を切断した人が腕の感覚を持ち続けるのはなぜか。
    3. 言葉を読んだり聞いたりする時に色を見る人がいるのはなぜか。
  3. 注意
    1. 脳卒中の後、左側にあるものを無視する患者がいるのはなぜか。
    2. なぜ別のことに注意を向けると痛みが和らぐのか。
    3. なぜ運転中に携帯電話を使うと危険なのか。
  4. 記憶
    1. 記憶喪失になっても学校で学ぶ知識を覚えられるのはなぜか。
    2. 50代になって人の名前を忘れ始めるのはなぜか。
    3. アルツハイマー病の人が道が分からなくなるのはなぜか。
  5. 推論
    1. 種類の違う知的能力が相関するのはなぜか。
    2. 我々は言葉で考えているのか。
    3. 人類はなぜ賢いのか。
  6. 決定
    1. ぼうっとしていて失敗する時があるのはなぜか。
    2. 長期的には有利な報酬より短期的な報酬を選ぶのはなぜか。
    3. 道徳的推論の基礎は何か。
  7. 点検
    1. 自発的な行動が自由であると言えるのはどういう意味か。
    2. 難しい作業をする時にどのように間違いから学べるのか。
    3. 人はどのように他人の意図を推論できるのか。
  8. 行動
    1. 利き手と言語を扱う大脳半球になぜ関係があるのか。
    2. どのようにしてバイオリンの演奏を学べるのか。
    3. なぜ自分自身をくすぐれないのか。
  9. 未来

タイトルから分かりにくいが、上のような疑問に、主に健常者と脳卒中の患者の脳のfMRI画像によって答えていくというシンプルな本である。脳の色んな部位の名前を覚えるのが面倒である以外は、特に難しい話ではないし、何の予備知識もいらない。脳はみんな持っているので、誰にとっても他人事ではない。しかし、例えば、色の認識と形の認識は脳の別の領域でやっていて後から合成される、などという話は、自分でいくら主観を観察しても分からないことだ。

別にそれが分かったからといって、わたしの色と形の認識が変わるわけではないが、どうもこの類の脳科学の話というのは、世界観を揺さぶられる感じがして楽しい。結局、今わたしが見ているこの世界がどうやって構成されているのかという話だ。わたしとしては、今言った「見ているわたし」にも興味があるが、この筆者はその類の質問は哲学の領域の話で、科学の知ったことではないという立場だ。それにしても、fMRIや脳の損傷からの観察は興味深いし、哲学者でも心理学者でも、知っておくべきことだろう。類書を見ないので、翻訳したら売れる気もするが、ちと書きぶりがストイック過ぎるかなあ。自己啓発的な要素は全くない。

Many questions about human cognition are answered by analysis of healthy humans' and stroke patients' brains observed by fMRI. Simple, but enlightening.

出版社: Oxford Univ Pr (2016/12)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0198786221