2024年4月18日木曜日

Hector McDonnell "Orkney: Megalithic Marvel of the Northern Isles" [オークニー:北部諸島の巨石遺跡]

Orkney (Amazon.co.jp)

オークニー諸島は歴史的政治的に色々ややこしいこともあったりするようだが、この本は基本的に新石器時代の墓に注力している。まあまあ有名な観光地らしいが、このシリーズにしては真面目な発掘調査報告書みたいな感じがある。ここに観光に行く時は、相当ヒマというか余裕があるというか、幸せな時だろうというような感じ。変な都会に行くよりいいかもなあ。

Wooden Books (2020/5/1)
言語 : 英語
ISBN-13 : 978-1904263289

2024年4月12日金曜日

Mark Mills "Ancient English Cathedrals" [古代イギリスの大聖堂]

Ancient English Cathedrals (Amazon.co.jp)

イギリスの観光案内シリーズの一つ。アルファベット順に並んでいる。各聖堂の中のイラストと歴史など。一々色んな歴史があるものだ。イギリスの小説なんか読んでいると、教会でなくても古い邸宅に謎の地下室とか謎の歴史伝説が設定されているが、日本ではあったとしてもどうもドラマチックでない。あと、イラストで見る限りすべて広くて異常に天井が高いが、これで「瞑想に適している」は、わたしとしては無理がある。日本で言えばららぽくらいの商業施設の吹き抜けくらいの高さなんだろう。わたしも天井が高いのは好きだが、どう考えても空調が効かない。日本にも有名な建築家が建てた「光の教会」とかいう完全コンクリの教会が絶望的に寒くて有名だが、もしかすると教会というものは本質的にそうなのかもしれない。わたしは子供の頃は教会に通っていたこともあるし、今は週一くらいで寺に通っているが、天井が高いと言っても二階分くらいで、瞑想とかいうことなら、それくらいが妥当な気がする。建物の構造が瞑想の概念に影響しているかもしれない。

Wooden Books (2006/2/15)
言語 : 英語
ISBN-13 : 978-1904263418

2024年4月11日木曜日

Michael Schneider "Proportion: In Art and Architecture" [芸術と建築の中の比率]

Proportion (Amazon.co.jp)

タイトルの通りの比率の図鑑。昔の数学の教科書に載っていたような、なんでもかんでも黄金比を当てはめている図よりは相当マシだが、本質はそういうこと。自然物ではなく設計された人工物の話なんで、説得力はある。にしても神奈川沖浪裏に線を引いているのは初めて見たが。正直わたしはあんまり感心しないが、面白いと思う人もいるんだろう。

Wooden Books (2022/11/1)
言語 : 英語
ISBN-13 :978-1907155482

2024年4月10日水曜日

Howard Crowhurst "Carnac: And Other Megalithic Sites in Southern Brittany" [カルナックと南ブルターニュの他の巨石遺跡]

Carnac(Amazon.co.jp)

Wooden Booksはたいていイギリスの遺跡を扱うが、これはフランス領らしく珍しい。しかし、内容はシリーズの他の本と同じくやはり遺跡の発掘調査報告書と謎の直線群と想像。これだけ読んでくると、だいたい全部同じに見えてくる。差が分かるほど詳しいわけでもない。この本もわたしも。

Wooden Books (2018/10/1)
言語 : 英語
ISBN-13 : 978-1904263968

Philippa Lewis, Miles Thistlethwaite "Portals: Gates, Stiles, Windows, Bridges, & Other Crossings" [ポータル:門・踏み越し段・窓・橋とその他の横断]

Portals (Amazon.co.jp)

あまり見慣れないテーマだが、想定外に面白かった。要するに、二つの領域を往来できるようにする構造の図鑑。これだけ聞いても面白そうに思えないと思うが、馴染みがなさ過ぎて魅力が説明しにくい。もしかしたら建築系の人はこんなことを考えているのかもしれないなあ…というような考察が色々。たとえば15世紀~16世紀の本のタイトル頁にはよく門が描かれていて、読者を新しい未知の世界へといざなう、みたいな話は、なかなか掴まれる。良い本だった。

A fascinating little book.

Wooden Books (2016/8/31)
言語 : 英語
ISBN-13: 978-1904263944

2024年4月9日火曜日

Gerald Ponting "Callanish and Other Megalithic Sites of the Outer Hebrides" [カラニシュとアウターヘブリディーズの巨石遺跡]

Callanish (Amazon.co.jp)

イギリスにありがちな謎のモノリス遺跡の一つ。ストーンヘンジにも劣らない迫力に思えるが、観光地として少し不便なんだろうか。まあ行ったところで風景自体は「ふうん」にしかならないと思われるが…。やはり新石器時代の遺跡でよくわからないことが多い。謎の伝説やどこまで本当かわからない天文学との関係とかleyとかはこのシリーズの定例だ。もちろん観光に行くなら先に読んでおいたほうが良い。

出版社 : Wooden Books (2000/1/1)
言語 :英語
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-1904263081

2024年4月5日金曜日

D.P. Sullivan "Leys: Secret Spirit Paths in Ancient Britain" [レイ:古代イギリスの秘密の霊的道]

Leys (Amazon.co.jp)

色々な謎が解けた一冊。Leyというのは適当な翻訳語がない。面白くない言い方をしてしまうが、疑似科学/pseudoarchaeologyの一種で、各地に散在する古代遺跡に、やたら直線を当てはめる趣味を指す。比較的近距離の単一の遺跡内の直線の場合もあれば、イギリス全土に散らばる遺跡群に直線近似みたいなことをする場合もある。最初の提唱者はそこまででもなかったようだが、幽霊だとかUFOが目撃された的な話が乗っかってきて、かなり楽しい世界が積み上がっているようだ。

というわけで、これまでWooden Booksのイギリス遺跡シリーズで出会ってきた説得力のない謎の直線にはこういう背景があったようだ。わたしもまあまあ疑似科学は好きだが、日本ではあまり聞いたことがない。開発の余地があるように思われる。地形的に直線を引きにくいのだろうか。勉強になった。

Wooden Books (2005/10/25)
言語: 英語
ISBN-13 :978-1904263388

2024年4月4日木曜日

Nick Maggiulli "Just Keep Buying: Proven ways to save money and build your wealth" [ただ買い続けろ:節約して富を築く方法]

Just Keep Buying (Amazon.co.jp)

普通の個人向け資産構築ガイド本で、似たような本は米国にも日本にも山のようにある。数値例がやたら多いのが特徴だが、要はS&P500をひたすら買ってろというようなことで、近頃はそんな話ばかりだし、今更新情報はない。普通に山崎元さんの本でも読んでいれば、実用的にはそっちのほうが上位互換なのではなかろうか。そっちは読んでないから知らんけど。

ただいくつか考えることはある。一つはFIREに対する考え方で、「退職=世界にとって自分がどうでもいい存在であることを認めること=結構な精神的打撃」というクダリだ。そうかもなあと思う。しかし、冷静に考えると、社会に何も貢献していないという意味ではわたしは既に退職しているようなものだ。ではわたしには関係ない気もする。人間の脳というのはある程度ストレスとか嫌なことがある前提で進化してきているので、出勤とかいう概念もなく完全に平和に暮らすのは不健康なのかもしれないとかも考える。

幸福のバスタブ曲線の話。世界のどこのどんな状況のどんな文化でも、幸福度は20代半ばから50代までが最低という有名な話で。本書は情緒的に説明しているし、他にも色々な説を読んだことがあるが、わたしとしては単なる生理現象ではないかと思っている。単に加齢に伴うホルモンの変化のせいでは…。ともかく、理想と現実にギャップを感じて人は不幸になるし、成長もするし、社会を変えようとするんだろう。幸せになったら成長は終わりですよ。

金持ちが自分が金持ちということを感じていないという話。これは著者の体験談にリアリティを感じるというのは、わたしも似たような経験があるからだ。ただわたしの場合は社会性がないので周囲と比較する習慣がないし、その代わりに頻繁に統計データを見ているから、客観的な状況を見誤りにくい。

などと考えることはあったが、そんなに新情報も新考察もなく、上位互換みたいな本もほかにあるだろう。一応読んだから記録まで。

Harriman House Pub (2022/4/12)
言語 : 英語
ISBN-13 : 978-0857199713

2024年4月2日火曜日

Christina Martin "Sacred Springs" [聖なる泉]

Sacred Springs (Amazon.co.jp)

イギリスの各地にある泉の観光ガイドのようなもの。この泉という文化が日本と違い過ぎて、そこが勉強になる。多分日本の泉はほとんど温泉になってしまうし、そもそも水が豊富で井戸なんかどこでもある。イギリスではそんなことではないようだ。実際、西洋のおとぎ話にはやたら泉が出てくるし、インチキ西洋中世物語の類、例えばドラクエとかでも泉はやたら重要スポットみたいに扱われる。日本人にはない発想だ。ここに紹介されているような泉は一々いい感じの伝説などがついている。日本の温泉の弘法大師がどうたらみたいな話より少女趣味で良い。Dressing、つまりRPGのダンジョンの中にある泉みたいな敷石や枠や門などによる整備も日本で見たことがない。

関係ないけど、「ダンジョン」という現実には稀な構造がRPGの世界では普通なのにははっきりとした理由があり、世界初のコンピューターアドベンチャーゲームとされるADVENTに由来する。泉は少なくともダンジョンよりは現実にもよくあるようだ。

Wooden Books (2006/2/15)
言語 : 英語
ISBN-13 : 978-1904263456

2024年3月31日日曜日

Evelyn Francis "Avebury" [エーヴベリー]

Avebury (Amazon.co.jp)

Wooden Booksの英国遺跡シリーズの一つ。世界最大の環状列石という話である。例によって基本的にイラストだが、ネットではいくらでも写真が出てくる。5000年前新石器時代。その頃にも日本にも人はいたし遺跡もあるが、どうも観光資源として弱いというのは、石と木の差なんだろう。やたら直線を引いて天文学を反映しているとか言うのも日本ではない話だ。そしてドルイドとかを無理やり復活させて今でもAveburyで謎の儀式をやっているとかいう…。

The world largest stone circle....

Wooden Books(2000/1/1)
言語 : 英語
ISBN-13 : 978-1904263159

Glennie Kindred "Herbal Healers" [薬草療法]

Herbal Healers (Amazon.co.jp)

色んな薬草の紹介。それぞれの薬草について別名・用法・効能という構成。これは読んでいてかなり楽しかった。わたしはたまたまハーブ類が好きだが、そうじゃない人でも知っているハーブが大半だと思う。カモミールとかレモンバームは茶としてよく飲むし、タイムとかセージは料理で使うし、ホップとかラベンダーは入浴剤…という感じ。

で、それぞれの薬草の効能は常識的というか医学的なところもあるが、本当に面白いのは「血を浄化する」とか「意識を高めてアストラル界へ」とかオカルトというか呪術的な説明で、どこまでが医学的に証明されている話かどこまでが錬金術か区別がつかない。類書を調べると、どうも英語圏ではwitchcraftだとかhealerだとか称してハーブを煎じたり調合したりする遊びというか趣味がまあまあポピュラーらしい。

どのみち良く知られているハーブしか紹介されていないから、特別な危険もないと思うが(妊娠中禁忌とかそんな警告はある)、実際にこの本だけで処方したり調合したりするのは無理。入口にはなるかもしれない。

A lovely introductory small book.

Wooden Books (2002/4/25)
言語 :英語
ISBN-13 : 978-1904263012

2024年3月29日金曜日

Hector McDonnell "St Patrick: His Life and Legend" [聖パトリキウス:その生涯と伝説]

St Patrick (Amazon.co.jp)

タイトル通りの内容。St Patrickはアイルランドにキリスト教を広めた聖人で、わたしとしてはSt Patrick's Dayとか言ってなんでも緑にする件でしか馴染みはない。それも実体験するのはせいぜいアイリッシュ・パブみたいな所に行った時くらい。知られていることが少ないので、多分、この本でもほぼ万全の知識なんだろう。しかしこういう本を読むと、ヨーロッパではキリスト教化=ローマ(ラテン語)化=文明化という定式が徹底的に染みついているのを実感する。それで元々のケルトだのドルイドだのへの郷愁が逆生成されているような。St Patrickの時代自体は、ローマが退却してアングロサクソンが繫栄し始める頃らしいが、イギリスでもキリスト教と文明は体感的にほぼ同義なんだろう。

出版社 : Wooden Books (2007/2/14)
言語 : 英語
ISBN-13 : 978-1904263494

Gordon Strong "Stanton Drew: and Its Ancient Stone Circles" [スタントン・ドリュー:古代の環状列石]

Stanton Drew (Amazon.co.jp)

Stanton Drewというのは新石器時代の遺跡でまあまあの観光地らしく、ネットでいくらでも写真が出てくる。この本も基本的にガイドブックとして読まれるだろう。イギリスの遺跡はやたら巨石構造物が多く、だいたい天文現象との関係がどうこうと言われるが、どの程度信用していいのか不明。伝説や復元想像図も色々ある。

あまり関係ない話だが、日本でも毎年一万件近くの遺跡発掘があり、その数だけ○○教育委員会発行××遺跡発掘報告書(△△年)みたいなのが出る。大半は縄文遺跡だった。というのはわたしは昔仕事で無意味にそんなのばかり見ていた時期があった。たいては柱の跡とか排水溝の跡とか囲炉裏の跡とかそんなのばっかりで、測量データばかりで、どうも盛り上がらない。その点イギリスは巨石そのものでも石の跡でも適当に線を引いて石の配置と暦がどうとか、環状列石は輪になって踊っていた人たちが石化したものだとか、消費者用コンテンツが多い。

Wooden Books (2008/3/20)
言語: 英語
ISBN-13: 978-1904263739

2024年3月28日木曜日

Gerald Ponting "British Wild Flowers: Their Naming and Folklore" [イギリスの野生の花:名前と伝説]

British Wild Flowers (Amazon.co.jp)

わたしは野草というか道端に生えている草がかなり好きで、特にこれから春の季節は歩いているのが楽しい。ということで雑草に関する図鑑の類は結構持っているが、洋書はほとんど読んでいない。というのも、日本と外国では植生が違うから…。この本でも、だいたい日本でも同じような草があるとは思うが、実際にはイギリスで散歩してみないと分からない。別の話として、ヨーロッパの古書マニアの世界には植物図鑑の伝統があり、この本にはそういう図版も収録されている。マニアならコレクションの端に持っておくべきものだろう。写真ではなくイラストだが、日本でもよくある「身近な雑草図鑑」の類。この本がどうかはさておき、雑草ファンは世界中にいるようだ。

A beautiful book on lovely weeds.

Wooden Books (2022/11/1)
言語 : 英語
ISBN-13 : 978-1907155420

2024年3月27日水曜日

Steven Saunders, Matt Tweed "Mind Tricks: Ancient and Modern" [心理術:古代と現代]

Mind Tricks (Amazon.co.jp)

何の本なのか説明が難しいが、今風に言えば「マインド・ハック」みたいなタイトルをつけるべきなんだろう。例えば記憶術とかクレーマー対処法とか人と仲良くなる方法とかリラックスする方法とか、結局、自己啓発本の棚にあるような話は何でもかんでもという感じ。技術自体は古今東西の文明からフロイトがどうとかもあるし、タロットがどうとか単なるおまじないみたいなのもある。この類の本の通例で"In Japan..."とかいう文章に、なかなかの出鱈目が書いてある。中学生向けのお遊びと言ってしまえばそれまでだが、結局、ビジネス書の棚にある自己啓発本も本質は変わらないような気はする。名言カレンダーみたいなもので、誰でも何かしら引っかかるところがあるかもしれない。

A lovely little book.

Walker & Co (2008/10/28)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0802716804

2024年3月26日火曜日

Gerald Ponting "Ancient Earthworks of Wessex" [ウェセックスの古代土塁]

Ancient Earthworks of Wessex (Amazon.co.jp)

これも日本であまり聞かない文化だし、Wooden Booksじゃないと意図的には出会わない話だが。日本で言えば縄文遺跡くらいの気分だろうか。たまに日本でも弥生時代の環濠集落みたいな話はあるが、もしかすると、この本みたいな体裁で紹介したら面白いのかもしれない。基本はイラスト。多くは国立公園的なものになっているようだ。もちろん環状列石や迷路もあり。特に考古学に興味のない日本人でもイギリスの観光地を行きつくしたら、もうこういうことになるのかもしれない。

A small beautiful guidebook.

Wooden Books (2019/5/1)
言語 : 英語
ISBN-13 : 978-1904263975

2024年3月22日金曜日

Philippa Lewis "Pantheon: Gods and Goddesses of the Greco-Roman World" [パンテオン:ギリシア・ローマ世界の神々]

Panthon (Amazon.co.jp)

有名なギリシア神話・ローマ神話の神々の紹介。似たような本はいくらでもあると思うが、白黒とはいえ歴史的な図版が多いのは素晴らしい。西洋美術を鑑賞する際には必須の知識である…。縁のない人にも楽しく読めるのではなかろうか。

ただし。わたしはこの件に関してはマニアックなので、その点からすると許せないことがいくつかある。まずラテン語も古代ギリシア語も日本語と同じく母音の長短を区別する言語だが、この本ではその区別が失われている。英語民は長短の区別ができないし、どうせ正しいラテン語表記も正しく読めないからどうでもいいのかもしれない。別に原典にも長音符はないからその点については大した問題ではないとしても、一応ギリシア語名と比定されるラテン語名が対で書いてあるが、ギリシア語側の音写がラテン語化していたりする。何を言っているのかわからないかもしれないが、要は古典語を勉強した人にはひっかかる点が多いということだ。もちろん、こういうのに引っかからない本というのもほとんどないのも事実だ。

A nice introduction, for those who do not care for the original Greek classical spellings.

Wooden Books (2023/9/15)
言語: 英語
ISBN-13 :978-1907155499

2024年3月19日火曜日

Hugh Newman "Stone Circles" [環状列石]

Stone Circles (Amazon.co.jp)

主にイギリス各地にある石器時代の環状列石の案内。わたしとしてはStonehengeくらいしか知らないし、謎の世界だと思っていたが、最後になってOshoroって何と思って調べたら、どうも日本にも色々あるらしい。今のところわたしの中に観光という文化がほとんどないので聞いたこともなかったが、これからどんどん旅行をしていくことになるとすると、一つのテーマになるかもしれないが、実際には何もないところにただ石が並んでいるだけで謎すぎる。まあ作成当時からそういう謎観光スポットだったのかもしれない…。

A tourist guide, possibly also for Neolithic people.

Bloomsbury Pub Plc USA (2018/10/9)
言語 : 英語
ISBN-13 : 978-1635573046

2024年3月18日月曜日

Simon Lilly "Ancient Celtic Coin Art" [古代ケルトの硬貨芸術]

Ancient Celtic Coin Art (Amazon.cojp)

鉄器時代のイギリスと言っているが、要するにキリスト教以前のイギリスのコインの文様の主題ごとの図鑑。我々としては眺めているくらいだが、コイン収集家にとっては資料としても有用なようだ。どうもイギリス人にはローマ帝国とかキリスト教の侵略の以前・以後で文化が全然違ってしまっているという意識があるらしく、日本人が縄文がとかアイヌがとか言っているのとレベルの違う人工的な郷愁があるようだ。

Maybe of reference value. For us it is a lovely small book.

Wooden Books (2008/3/20)
言語 : 英語
ISBN-13 : 978-1904263654

Chris Mansell "Ancient British Rock Art" [古代イギリスの岩芸術]

Ancient British Rock Art (Amazon.co.jp)

ある時から急にケルトが流行り出した時期があり、以来、なんかケルトにロマンティックなイメージがついて、その流れの本だと思われる。artというが、実際には岩に刻まれた渦巻模様とか謎の線とかで、具体的に何を表しているのか全く分からない。世には古代文明の芸術も色々あり、エジプトだのアステカだのそれぞれ現代人の感覚と相当違うなと思うが、この本の図版とかを見ていると、そもそも現生人類と関係があるのかどうかすら疑うレベルだ。全く知らない世界過ぎて何とも言いようがないが、Wooden Booksは謎の遺跡系の本も多い。

Mysterious.

Wooden Books (2007/10/16)
言語 : 英語
ISBN-13 : 978-1904263562

2024年3月14日木曜日

Hugh Newman "Earth Grids: The Secret Patterns of Gaia's Sacred Sites" [地球格子:ガイアの神聖な地点の隠されたパターン]

Earth Grids (Amazon.co.jp)

最初は投影法の話か風水の話でもしているのだろうかと思ったら、地球に正多面体を内接させると古代文明か黄金比がどうとかいう話になり、事故の多い謎の三角地帯が等間隔にあるとかエネルギーの流れがどうとか、なかなか良い。子供の頃はこんな本を楽しく読んでいた気がするが、今時はこういう本は迫害されるせいか、本屋でもあまり目立たない。いいと思うけどなあ…。

I love this kind of imagination.... People call it pseudoscience.... Who cares?

Bloomsbury Pub Plc USA (2018/10/9)
言語 : 英語
ISBN-13 : 978-1635573053

2024年3月13日水曜日

Andrew Preston "American Foreign Relations: A Very Short Introduction" [アメリカの対外関係:非常に短い入門]

American Foreign Relations (Amazon.co.jp)

目次:1. 最初の原則 2. 拡張主義 3. グローバルなアメリカ 4. アメリカの世紀? 5. 超大国 6. 超超大国とその不満

建国前後からのアメリカの対外関係の通史。わたしが読んだ限りでは標準的と言える記述で、時々復習のためにこういう本も読まないとというところ。もうこれまでこの類の知識もVSI等で随分積んできたので、知識を得るというよりは、語り方に注意が向く。わたしとしては特にひっかかるところもなかった。別にこの本を読んだからと言って、これからのアメリカの外交政策が読めるようになるわけではないと思うが、基礎教養というところ。

A standard overview.

Oxford Univ Pr (2019/5/1)
言語 : 英語
ISBN-13 : 978-0199899395

Oliver P. Richmond "Peace: A Very Short Introduction" [平和:非常に短い入門]

Peace (Amazon.co.jp)

目次: 1. 平和の複数の次元 2. 平和を定義する 3. 歴史の中の勝者の平和 4. 歴史の中の平和:啓蒙時代へ 5. 現代の平和:立憲的平和 6. 次の段階:制度的平和 7. 革新的な段階:市民的平和と社会運動 8. 国際平和機関の発展 9. 平和維持・平和構築・国家構築 10. 平和・平和形成・対抗平和の混合形式

この本の言う「平和」とは主に政治的な意味で、国家間や武装勢力間の戦争・紛争がない状態を指す。日本国憲法的な意味での平和だ。ということで本書の半分くらいは世界史の復習みたいなことで、残りは現代の平和構築の色々な例という感じ。単なる哲学的思索というよりはリアルだが、現場というほどリアルではない。大学の授業とか国会の前で平和デモをしている団体くらいのリアルというか…。こんな感想になるのは、一つには戦争が起こる理由の説明がなさすぎるからだと思われる。おかげで話は難しくなく、読みやすい本ではあった。

Peaceful reading. Provides you with a necessary vocabulary.

Oxford Univ Pr (2023/6/28)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0192857026

Nicholas Cook "Music: A Very Short Introduction" [音楽:非常に短い入門]

Music (Amazon.co.jp)

目次: 1. 瞬間の音楽 2. 音楽で考える 3. 過去の現前 4. 音楽2.0 5.国際社会の中の音楽

VSIの一つの典型「大家の雑談」だと思う。こういう一般的過ぎるタイトルにはありがちだ。音楽理論とか中身の話というよりは、どっちかというと社会学とか経済学に分類されるようなよもやま話という感じか。

わたし自身音楽をほぼ聴かないが、言っていることで分からないことはほとんどない。出てくる個別例についてはたまに面白い。例えば、わたしは楽譜を正確になぞって演奏する行為の何が面白いのか全く理解しないが、どうも著者もそっち側のタイプらしい。覚えきれない長さでなければ楽譜なんかいらないのではと思っているが、ピアノ奏者とオーボエ奏者では音の理解が違うらしい。音楽で世界が一つにとか言っているが、音楽で世界を分断しているほうが多い。とか、読んでて退屈なわけではないが、別にどこにも行かない…というのは、多分、わたしが音楽に興味がなさすぎるからだろう。

Casual chatter of one of the authorities in the field, I guess....

Oxford Univ Pr (2021/5/3)
言語 : 英語
ISBN-13 : 978-0198726043

2024年3月12日火曜日

Michelle Baddeley "Behavioural Economics: A Very Short Introduction" [行動経済学:非常に短い入門]

Behavioural Economics (Amazon.co.jp)

行動経済学についてはこれまでここでも色々読んできたが、正直なところ、この本で特に新しい情報はない。短いという良さはあるが、この件については何をおいても御大のThinking, Fast & Slowを読むべきで、日本語訳もよく本屋に積んである。他に色々読んでもあまり追加情報がないのが実態だ。あるとしたらThaler先生くらいかなあ…。本の分厚さにビビるタイプの人にはいいかもしれない。確かに日本語で変なビジネス書を読むよりはいいと思う…。

Oxford Univ Pr (2017/5/1)
言語 : 英語
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-0198754992

2024年3月11日月曜日

Antoine de Saint-Exupéry "Le Petit Prince" [小さな王子]

Le Petit Prince (Amazon.co.jp)

これはフランス語学習者はたいてい読むことになっているが、どうも読む気にならず放置していた。読んだことのない人でも、ヘビが象を呑み込んだ絵とか、そんなことは何となく聞いたことがあるのではなかろうか。表紙からして読む気にならない。しかしフランス語学習者として無視し続けるのもどうかと思う。しばらくフランス語の本も読んでいなかったので、この際、「子供は大人と違って純真」とかいう世界観とか、面白くない社会風刺とかは時代の制約ということで呑み込んで一応全部読んだ。

内容はたいていの人がだいたい知っているので、感想としては、予想通り感傷的過ぎて読んでいるのもしんどい。もちろんこれはわたしの趣味に過ぎず、一般的には名作ということになっているので、読んで損をするものではない。フランス語学習という観点では、こういう昔の小説は普通に単純過去で語られるが、B2くらいでも単純過去を習得していない人も多いだろう。ただ、それでもB2なら読めるかなと思う。B1ではちょっと無理ではなかろうか。

Independently published (2017/4/9)
言語: フランス語
ISBN-13: 978-1521030141

Lisa Delong "Curves: Flowers, Foliates & Flourishes in the Formal Decorative Arts" [曲線:形式的装飾芸術における花と葉と飾り]

Curves (Amazon.co.jp)

タイトルをどう訳すのか分からないが、基本的には平面充填系の模様の図鑑。ウイリアム・モリスを想像すれば大体間違いない。もちろん背景には幾何学があるが、そこに重点があるわけではなく、あくまで装飾の本。

個人的にはこういう模様自体は好きだし、この本も楽しいが、実際にウイリアムモリスのブックカバーとか使っていると、なんかしんどい感じがある。リバティとかも同じで。Arts and Crafts運動の趣旨からすれば、日用品にこそこういう模様を使うべきということになるが、こんな日常は病的なのではないか。関係ないが、日本のいわゆる民藝運動も、趣旨は分かるがこんな日常はイヤだと思うわけです。この本自体は数学みたいに形式的な解説しかしていないが、そういう時代を感じさせる本だった。

Bloomsbury Pub Plc USA (2013/12/17)
言語 :英語
ISBN-13: 978-1620402580

2024年3月9日土曜日

Michael Glickman "Crop Circles" [作物の円]

Crop Circles (Amazon.co.jp)

1980年前半から2000年代までイギリスに大量出現したミステリーサークルの図鑑。載っているのは図式と数学的な構成の簡単な説明なので、実際の光景はネットで探したりする必要がある。この件について本気で研究したいのなら他に読むべき本はあるが、これも素敵な本です。

Beautiful small book.

Wooden Books (2005/2/15)
言語 : 英語
ISBN-13 :978-1904263340

2024年3月7日木曜日

John Southcliffe Martineau "Mazes and Labyrinths In Great Britain" [イギリスの迷路と迷宮]

Mazes and Labyrinths In Great Britain (Amazon.co.jp)

日本に迷路文化がなさすぎて斬新だが、西洋では先史時代から普通に迷路という文化があり、イギリスにもかなり大量に遺跡もあるらしい。この本は迷路図式しか載っておらず、現地の実際の風景などはググるしかないが、この本に出会うまでそんな文化の存在自体知らなかった。ミノタウロスの迷宮の話は孤立した伝説ではないらしい。民間信仰や宇宙論も反映されているそうだ。

だいたいそんな古代からあるような文化は、たいていは日本にも遅くても室町時代くらいまでには伝わっている気がするが、聞いたことがない。石造りの迷路はともかく、芝生や生垣なら日本でも作りそうなものだが、どうも日本受けしないのかもしれない。調べると迷路の研究書も結構あるようだが、わたしはそんな世界は知らなかったし、普通の日本人は知らないのではないだろうか。と言っても別に実物を体験したいともそんなに思わないが、迷路文化圏に行く用事があれば行ってみるか…。

Wooden Books (2005/2/15)
言語 : 英語
ISBN-13: 978-1904263333

2024年3月6日水曜日

Matt Tweed "Elements of Chemistry: Quarks, Atoms and Molecules" [化学の元素:クオークと原子と分子]

Elements of Chemistry (Amazon.co.jp)

以前にEssential Elementsという同じ著者の本がやはりWooden Booksから出ていて、これはその大幅改訂版というか、別物に近いのかもしれない。目次がかなり変わっている。対象読者はやはり日本で言えばせいぜい中学生か高校生。内容的にはそれだけだが、個人的にイラストが好きで、前の版よりさらに線が整理されて見やすい。どうもWooden Booksは内容というより、語り方や本の作りに惹かれるので、中身はなんでもいいまである。たまに女子学生とかで、ノート作りが主眼で、ノートの内容なんかどうでもいいという人種がいるが、こういうことかなあと思う。

Wooden Books (2023/10/15)
言語 : 英語
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-1907155529

2024年3月5日火曜日

David Wade "Li: Dynamic Form in Nature" [理:自然の中の動的な形]

Li (Amazon.co.jp)

かなり面白くてすぐに読んでしまった本。まずタイトルは、英語話者でも中国語話者でも意味が分からないのは同じことかと思われる。著者がやたら中国哲学を参照するから、日本語話者のわたしが「理」なんだろうと推定しただけで、本書のどこにもこの漢字はない。内容は自然界にある様々な模様の図鑑。たとえばひび割れみたいな模様とか縞とか葉脈など。基本的には平面の模様だ。もっと色々ほしい気もするが、Wooden Booksのページ数の制約があるんだろう。

自然界にある形を数学的に考察するような本は日本語でもたまにあるが、あまり面白かったことがない。葉序がフィボナッチとか巻貝がアルキメデス螺旋でとか聞き飽きたような話で…。もちろんこの本はそんな話はすっ飛ばしている。関係ないけど、昔の数学の教科書には黄金比の図版があって、自然の写真の色んなところに無理やり黄金比を当てはめたりしていたが、あれは何だったのか。この本については、別に数学的な考察もなく、模様エッセイでしかないので、かえって視点が制約されていなくて良い。こういうのって、数学みたいな本より、デザイナー向けの本とかのほうが面白いのかもしれない。

Wooden Books (2007/4/3)
言語 : 英語
ISBN-13 : 978-1904263548

2024年3月4日月曜日

Ben Sessa "Altered States: Minds, Drugs and Culture" [変性意識:心と薬物と文化]

Altered States (Amazon.co.jp)

マインドフルネスだの催眠術だのという話もあるが、大半は要するに違法合法を問わず各種ドラッグの話。図鑑的な価値はあるかもしれないが、似たような本はいくらでもあるかもしれない。例によって対象読者はteensだと思うが、学校図書館には置いてもらえないかもしれない。確かこういうのにやたら興味を持つ人種というのがいて、向精神薬を見せびらかすメンヘラというイメージ。やたらLSDを崇めるヒッピーの孫世代みたいな感じだろうか。今の言い方からわかるように、わたし個人としてはそこまで深い興味がなく、この類の本を読んでもすぐに内容を忘れてしまう。こういう本を読んで新しい精神世界に憧れるのか、結局意識とか気分って化学物質に過ぎないよねと思うか。

Wooden Books (2023/9/15)
言語 : 英語
ISBN-13 : 978-1952178252

2024年2月28日水曜日

Ethan Kross "Chatter: The Voice in Our Head, Why It Matters, and How to Harness It" [おしゃべり:わたしたちの頭の中の声、なぜそれが問題なのか、どう制御するか]

Chatter (Amazon.co.jp)

まず、著者の言うchatterの定義が分かりにくいが、要するにネガティブな言語的な反復思考という感じだろうか。ネガティブとも限らないようだが…。実はこの点が最後まではっきりしないのがこの本の致命的な欠点だ。具体例としてムダな心配とかトラウマの反復思考とか共同反芻とか他にも色々あるんだが、共通する要素が良く分からない。科学的に何かあるのかもしれないが。

で、対策として儀式とか自然を見るとか偽薬とか、一体何の話なのか…。一つ一つの項目も大した話がないし、とにかく話がバラバラに思える。こういう自己啓発本はもともと当たり率が低い。ハズレでした。

Crown (2021/1/26)
言語 ‏ : ‎ 英語
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-0525575238

2024年2月15日木曜日

Oliver Linton "Mathematical Functions" [数学の関数]

Mathematical Functions (Amazon.co.jp)

色々な関数をグラフと共に紹介する図鑑的な本。日本なら高校生くらいが対象だろうか。ニュートン別冊というような感じもする。微積だの複素関数だのも一応出てくる。個人的に最近曲線を眺めるのが好きで、別にただそれだけだが。もちろん真面目に数学の勉強をするのならこんな話ではないが、こういうの、中~高校の図書室とかに置いておいたら引っかかる子もいるんじゃないかなあ。

Wooden Books (2023/9/15)
言語 : 英語
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-1907155444

2024年2月13日火曜日

Earl Fontainelle "Logic: The Ancient Art of Reason" [論理:古代の推論技術]

Logic (Amazon.co.jp)

論理学の入門というところだが、今時の記号論理学とかいうことではなく、古典ギリシアから近代まで普通に教えられていたいわゆる伝統論理学。別に古いからと言って使えないわけではないし、この基礎がなくて記号論理学や非古典論理とか言っても仕方がないし、正直なところ、この程度の入門書でもショーペンハウアーの議論術なんか不要になる。もっとも一般的には流行る話ではない。古典論理学は中世にほとんど完成されているし、実質が必要なら現代風の分かりやすい本なんかいくらでもある。

わたしはというと、学生時代にわりと真剣に伝統論理学をやったことがあり、ラテン語も読んでいたので、三段論法の格式(Barbara, Calarent...)とか真面目に覚えていた。ただただ懐かしい。ノスタルジーは別として、ではどういう人がこの本を読んだり、またはもっとちゃんとした伝統論理学を勉強するのか考えると、多分、カントだのヘーゲルだのを真面目に勉強しようとしてる人かと思う。本気の勉強にはもちろんこんなのでは無理だが、雰囲気を知るだけならこれで済む。現代論理学を勉強するに当たって伝統論理学も知っておきたいということなら、この本で当りをつけるのも妥当なところかもしれない。

Bloomsbury Pub Plc USA(2016/9/13)
言語: 英語
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-1632864451

2024年2月12日月曜日

Guy Ogilvy "The Alchemist's Kitchen: Extraordinary Potions & Curious Notions" [錬金術師の調理場:素晴らしいポーションと面白い概念]

The Alchemist's Kitchen (Amazon.co.jp)

"lapis philosophorum"は"philosopher's stone"ではなく"philosophers' stone"だと思うがまあそれはさておき。古い西洋絵画を見ていると大量の予備知識が要求され、ギリシア神話・ローマ神話・キリスト教・紋章学・占星術・図像学とかなんかてんこ盛りの中に錬金術というものもあるようだ。この本は別にそういう美術的方向性で書いてあるわけではなく、むしろガチ錬金術入門書という感じで、そのほうが我々は読みやすい。やたら複雑な体系性があるわりに現代人から見れば呪術でしかないが、読んでいるとハーブだのアロマだのにハマる気持ちも分からなくはない。しかし錬金術は確かに現物を扱っているから、精錬だの蒸留だのやっているうちに化学が生まれるのは分かるし、占星術も天文学が前提だ。気のせいで済む話ではない。化学と錬金術は地続きだ…。錬金術の研究書は色々あるが、多分これが一番軽い。

Bloomsbury Pub Plc USA (2006/10/17)
言語: 英語
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-0802715401

 

2024年2月7日水曜日

Charles Duhigg "The Power of Habit: Why We Do What We Do in Life and Business" [習慣の力:なぜ我々は生活と職業で我々がしていることをしているのか]

The Power of Habit (Amazon.co.jp)

習慣の力 (Amazon.co.jp)

目次:1.習慣のループ 2.欲望する脳 3.習慣を変える黄金の規則 4.要石の習慣またはポールオニールのバラード 5.スターバックスと成功の習慣 6.危機の力 7.あなたより先にターゲットがあなたの望みを知る方法 8.サドルバック教会とモンゴメリーのバスボイコット 9.自由意志の神経学

評判のいい本だが…。半分くらいは商売系でラウリル硫酸塩で物が売れるとか、組織の習慣で不祥事とかいう、あまり感心しない話。なんかエピソードが弱いのと、個人的に組織に関心がない。残りの半分は悪い習慣を断ち切る話で、アルコールとかギャンブルとかがメイン。こっちもこっちでわたしは弱いと思うが、人によるのだろう。わたしの中にどうにかしたい習慣がない。酒もタバコも好きだが健康に良くないので両方しない、と言って済む性格だ。話の前提として、習慣を断ち切りたいと思わないと何も変わらないと本書も言っているが、個人的に別にない。

じゃあなんでこんな本を買ったのかということだが、わたしの場合、習慣というよりASD的な意味でのルーティンへの固執が強いところがあり、おかげで勉強もできているしジムも通い続けられているわけで、そっち方向からの関心だった。ただ本書はそういうことではない。特にエピソードも弱いが、科学面も弱い。それでも名著とされているのは、実践的だからだと思うが、実践する用事がなければ別にという。

Random House (2012/2/28)
言語 : 英語
ISBN-13: 978-1400069286

2024年2月6日火曜日

Cecelia Watson "Semicolon: The Past, Present, and Future of a Misunderstood Mark" [セミコロン:誤解された記号の過去現在未来]

Semicolon (Amazon.co.jp)

目次:序章.愛と憎しみとセミコロン 1. 深い歴史:セミコロンの誕生 2.セミコロンの科学:アメリカ文法戦争 3.セクシーなセミコロン 4.緩い女性と禁酒法:セミコロンがボストンを混乱に陥れる 5.慈悲の詳細 6.セミコロンを石に刻む 7.セミコロンの賢者たち 8.説得と気取り:セミコロンはスノブのためのものか? 終章.規則に反して?

タイトルの通りだが、著者自身は元々「正しい英語」にやたら拘って研究していた過去があるが、ある時急にアナーキストになったようだ。たまにこういう人いるよね…。そしておそらくトレンドでもあるだろう。日本語でもやたら「正しい日本語」を強要する時代と、「文法学者のほうが現実に合わせろよ」の時代が入れ替わる。わたしとしては「なんでNHKに正しい日本語を決める権利があんねん」とか思っているほうなんで、良い時代になったと思っているが。

実はその点がこの本の主たる主張みたいなところがあり、わたしとしては、その点に関しては著者にそんなことを言われるまでもない。どっちかというと「正しい英語」派の人が読んで改心するかどうかという本だろう。個人的に面白い所としては、法律関係で「句読点の解釈で法解釈が変わる」みたいなところくらいか。こういうことがあるので国家権力が正しい日本語を決める必要もあるわけだ。他のところは、まあ一応セミコロンの歴史を辿ったり、正典文学の中でのセミコロンの使用に随想をくっつけたりしているが、基本的には要するにセミコロン随想というか、無駄口が多くて面倒くさい部分も多々あり。

全体的には軽い読み物。あとはこの著者の趣味が合うかどうか。英文を書く時の参考にする人もいるかもしれないが、わたし自身はまず使うことはない。使うチャンスがないわけではないが、要するに気取る必要がないという…。

Ecco (2019/7/30)
言語: 英語
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-0062853059

2024年2月2日金曜日

M Watkins "Useful Mathematical and Physical Formulae" [有用な数学と物理学の公式]

Useful Mathematical and Physical Fromulae (Amazon.co.jp)

タイトル通り見開き頁ごとに一つのジャンルの公式と若干の解説がある。知らない公式はないし、解説も淡々としたもので、我々が見てもほとんど無意味…。だが、まあ図鑑ということなのだろうか。評判も良いようで、ある種の子供には魅惑的なのかもしれないし、大人も結構楽しんでいるようだ。

出版社 : Wooden Books (2001/10/1)
言語 : 英語
ISBN-13 : 978-1902418339

 

Steve Marshall "Acoustics: The Art of Sound" [音響学:音の芸術]

Acoustics: The Art of Sound (Amazon.co.jp)

音波の科学から人の聴覚・録音再生技術まで一通り。わたしとしては騒音振動の公害防止管理者/計量士で勉強した範囲が半分くらい。無線・電気通信・電子回路などで勉強した範囲が1/4くらい。残りの録音した音をいじる技術などはあまり知らない感じ。Wooden booksなので、対象読者は多分中高生くらいだが、完全に理解するのは日本の普通の大学生相手でも難しすぎるように思う。dBの説明も薄いし(対数の説明からするのは不可能だが)、フーリエ級数展開は論外としても、回路図なんか普通読めないだろう。まあ雰囲気だけ分かればいいのかもしれない。もちろん、わたしが異常者なのであり、普通の大人にとっては知らないことばかり書いてあるし、相当楽しめるだろう。音楽に興味がないとしても、音に無縁の人は少ない。

わたしは耳はやたら良く、音感も正確だが、音楽に全く興味がない。つまり音をHzとdBとしか思っていない。今まで住宅騒音で二度引っ越している。「こちら側のドアが開きます」は全く理解できないが、そもそも音が何重にも反射するエレベーターの中で音の定位ができるわけがないと思っている。というくらいの音への関心だが、音楽をやる人/聞く人は読んで損はないかもしれない。すぐに読めるし、多分、この本がカバーする範囲を全部わかっている人も少ないと思う。

出版社 :Wooden Books (2022/11/1)
言語: 英語
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-1907155437

2024年2月1日木曜日

Tung Ken Lam "Origami: From Surface to Form" [折紙:面から形へ]

Origami:From Surface to Form (Amazon.co.jp)

日本の本屋で手芸とか趣味の棚にあるような折紙の本というより、数学書の棚に置いてあるたぐいの折紙幾何学とか折紙工学とか呼ばれるジャンルの入門書。色々な折り図も紹介されているので、単に折紙の本としても読めることは読める。ただ、説明がかなり不親切だったり不正確だったり誤記誤図も多くて、折りたいだけの人には勧められない。わたしはこの本に出てくる作品は一部の異様に難しいものを除いてほぼ全て自分で折ってみたが、相当苦労した。実際、ある程度数学力がないと解明できない折り図も多い。日本なら初等幾何学の好きな中学生くらいでも本気を出せば解明できるかもしれないが、普通無理だと思う…。

そんなわけで薄い本だが読み終わる(折り終る)のに二か月以上かかった。一般人にはお勧めできる本ではないし、もっと優れた折り紙の本もあると思うが、わたしにとっては人生を変えた本とまで言えるかもれしない。今まで折紙なんかまったく興味がなく、子供の頃に折った記憶もほとんどないが、今部屋に折紙の本と立体幾何学の本が積み上がり、数百枚の折紙が散らかっている。理論の説明も結構あるが、読んでいる時間より、考えたり折ったりしている時間のほうが圧倒的に長い。印象に残った具体的な作品をいくつか記録しておく。

Magazine box。なんでもない基本的な作品だが、単純な折り方で立体が構成されたのが衝撃だった。

Water bomb。要するに紙風船。これも基本的だが、今までに折った記憶がない。自分で分析して分かったが、この本も含めて、たいていの作品は一般的な指示通りに折ると誤差が大きい。多分、異様に器用な人間を想定しているのだろう。

正八角形の折り畳み。これは理解するのに少し手間取ったが、折り畳みの楽しさがある。誤差を縮める折り方を開発するのに試行錯誤した。

Icosahedron。特に正方形の紙からの正二十面体。作り方は全く説明不足だが、解明して組み上げた。そもそも20unitsも必要ない…。数学の本にはよく正二十面体の図は載っているが、こうして自分の手に取れるのは素晴らしい。この本では五つの正多面体のうち正十二面体の折り方だけ載っていないが、別途作った。正二十面体は多少固定が必要だが、正八面体は簡単に無限に作れるので暇つぶしによい。

WXYZ。これは多面体折紙の最高傑作。折り図や完成図は意味不明だが、自力で考えながら組むのは、そんなに難しくはない。実は完成品を見ても意味が分からないくらいだが、要は4つの正三角形が三次元で交差する形になる。本書には説明がないがユニットの組み方で光学異性体が存在する。だからこんな名前なのかもしれない。既にもう五個か六個作った。

A4の紙から帯を切り出して編み上げる立方体。これは本書に寸法が書いていないので、自分で計算しないといけない。ここまで本書についてこれた人なら自力で計算できるのではないだろうか。画用紙を使ったほうが良い。

Corrugation。いわゆる波形。特にwater bombを基準にしているほうは簡単で、A4の書類でも畳める。Miura-oriみたいに簡単に広げたりはできないが。折り図は意味不明だが、ここまで来た人なら折れる。

2024年1月18日木曜日

Abigail Shrier "Irreversible Damage: The Transgender Craze Seducing Our Daughters" [回復できない損害:わたしたちの娘たちを誘惑するトランスジェンダーの流行]

少し前にKADOKAWAが翻訳書を出版しようとしていたが、どっかの団体の抗議を受けて出版中止になったという本。内容は要するに十代の女の子が希望したからと言って、簡単に男性ホルモン投与だの乳房切除手術するな/勧めるなということだ。

別に万民が読むべきとも思わないが、この本を翻訳出版すべき/するなとか騒いでいる人々の99.99%は実際にこの本を読んでいないだろう。翻訳出版してもこの状況がそんなに変わる気もしない。英語圏でもそんな感じらしいし。この記事にたどり着いた人のほとんども読んでいないし読みもしないだろう。わたしは一応読み終えはしたが、内容的にもそんなに面白いわけではない。ここで内容を詳しく説明して読んだ気になられても詰まらない。

ただ、印象として、書きぶりが戦闘的過ぎてその時点で引いてしまうところがある。考え方が一々保守的なのは間違いない。わたしは常に自由の側に立つ傾向があるので、外科手術なんかして仮に後で後悔しても本人の勝手では…などと思うが、まあそれはそれで極論なんだろう。入れ墨なんかより深刻な健康問題があるようだ。しかし、親の権利がどうとか、子供をSNSから引き剝がせとか、それもなあという。自由の側に立つ傾向のあるわたしとしては、翻訳出版中止もおかしいだろと思わなくもないが、現場ではそんなことを言っている場合ではないのかもしれない。

Regnery Publishing (2020/6/30)
言語: 英語
ISBN-13: ‎ 978-1684510313

Irereversible Damage (Amazon)