2014年7月1日火曜日

Ali Rattansi "Racism: A Very Short Introduction"

これは翻訳するべきだし、日本語の似たような本より読みやすいだろう。標準的な教科書として、そこそこ売れる気がする。白黒はっきりつけるような簡単な本ではないが、世間に蔓延るいい加減な単純化を避けている本は、日本であまり見かけない気がする。日本で同じような本があるとすれば、どうせ単純な結論ありきみたいな説教本が想像され、手に取る前に読む気をなくすわけだが、そういうムキにはお勧めしたい。差別と言っても色々で複雑に絡みあっているものだが、この本の中心的な主題はあくまで人種差別で、特にユダヤ人や黒人がテーマとなる。もっとも、たとえば黒人といっても、差別する側のほうで既に定義があいまいだし、今となっては、自分が差別主義者であると考えている人なんかほとんどいない。にも関わらず社会レベルで観察すれば明白に差別は存在する。たとえば、アメリカでは黒人が白人を殺すと、白人が黒人を殺した時より15倍の確率で死刑になるらしいが。じゃあみんな偽善者として断罪するべきというのもムチャな単純化で、話が複雑になるのは避けられない。もちろん、単なる正々堂々とした人種差別主義も存在し、その論拠をすべて論破するくらいのことはこの本でも十分にやっているが、主たる論点は、もっと混沌としたものだ。

Very good overview on racism. This is not an easy topic, since there are few who think themselves as racists. Yet there are abundance of evidence of racism. Then, we all are hypocrites? This is not a all-or-nothing matter. That is why this book is sometimes described as challenging, I guess.

Oxford Univ Pr (2007/4/5)
ISBN-13: 978-0192805904

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