2022年2月7日月曜日

Jeff Kinney "Diary of a Wimpy Kid#16: Big Shot" [軟弱な子どもの日記#16: 大物]

今回はGregがやりたくもないバスケットボールに巻き込まれる話で、例によってタイトルには二重の意味がある。このシリーズ、あまりに暴力が過ぎたり犯罪が過ぎたりで笑えないこともたまにあるが、この巻については悲し過ぎて笑えないところがある。当然Gregに運動神経があるはずもないし、基本的に何の活躍もしないどころかできるだけ目立たないようにしている。救いがあるとしたら、同様に酷い子どもが集められてチームになっていることくらいか。RowleyとかRodrickなどの定番キャラは出てこない。Greg本人は例によって特に陰鬱になることもなく、全力で事態をやり過ごそうとしているが、そのせいでMomを含めて周りの大人の酷さも際立つ。最初のうちは一応普通のトーナメントだったはずが、Momのせいで途中から州の最弱チーム決定戦が開催され、勝ったチームから帰れるという…。Gregにしたらバスケをやらされるだけでも十分うんざりなのに、こんな母親は最悪だ。

というわけで、結構悲しい思いをしながら読んでいたのだが、最後の最後で衝撃の展開が待っていた。電車の中で読んでいたが、乗り過ごすところだった。Amazonのレビューでも世界的な評判だが、この最後の感動だけで、このシリーズの最高傑作と言って良いかもしれない。確かに映画化するべきだろう。それまでが悲しかっただけに最高に痛快だ。

残念ながらもう日本語訳「グレッグのダメ日記」はもう出ていないようだが(多分ポプラ社に抗議が来るんだろう・知らんけど)、読まないといけないのはこの巻であり、実際これで救われる子どもはいっぱいいると思う。翻訳が出ないのなら中学校の英語の時間にでも一年かけてでも読んでいい。

The best book from this series ever. Most part is sad. The very mom of Greg betrayed him, but the dazzling glory is waiting for him!

2022年2月4日金曜日

Claire Belton "The Many Lives Of Pusheen the Cat" [Pusheen猫の色々な人生]

まあただ可愛いだけの他愛もない本ではある。こういうのって意外とネタが尽きるのが早い感じはあり。Pusheenが好きなら書籍としては他に塗り絵とかもある。

Kawaii.

Simon & Schuster Ltd (2021/3/18)
言語:英語
ISBN-13: 978-1398506473

2022年2月3日木曜日

Daniel Kahneman et al. "Noise" [ノイズ]

目次:1.ノイズを発見する 2.知性は測定器である 3.予測的判断におけるノイズ 4.なぜノイズが発生するか 5.判断を最適化する 6.最適なノイズ

相当面白く、経営や社会科学全般にmust-readと言っていい本だが、まずタイトルが分かりにくい。簡単に言うと、人間のする判断のバラツキを指摘してその解決策を提案する本。

あの"Thinking, Fast and Slow"のKahnemanが著者だというのにあまり評判になっていないのは、一つには前半部の話が単純に難しいのと、二つには後半部の人間の直感を排除する提案が反感を買うからだろう。

根底にある統計学については、ほとんど数式を使っていないが、最小二乗法くらいは勉強していないと何を言っているのか分からないのではないかと思う。多くの計測値と真値が与えられれば、誤差=バイアス+ノイズとなる。バイアスとは計測値の平均値と真値のズレで、タイトルにもあるノイズはこの右辺第二項を指している。

さらに基本的な統計学で平均二乗誤差=バイアスの二乗+ノイズの二乗と分解できる。全誤差(平均二乗誤差,MSE)を最小化するためには、バイアスを小さくすることも大事だが、ほとんどの場合ノイズが軽視され過ぎているというのが本書の基礎となる主張だ。

多くの場合、例えば裁判官が犯罪者の量刑を決める時には真値は分からない。従ってバイアスも差し当たり分からないが、多くの裁判官をテストすれば平均値を真値と推定してノイズ自体の計算はできる。本書の中心的な主題はバイアスではなくノイズなので、この点はあまり問題にならない。本書の主な問題は同じ案件なのに裁判官やその日の天気などによって量刑が変わってしまうことだ。良く問題になる犯罪者の人種や性別などによるバイアスは本書の主題ではない。

二乗という操作が入るが、とにかく全誤差はバイアスとノイズ(システムノイズと呼ぶ)に分解される。似たような操作でシステムノイズはレベルノイズとパターンノイズに分解される。裁判の例では、レベルノイズとは、そもそも平均的に量刑を重く出す裁判官と軽く出す裁判官がいることに当たる。

パターンノイズは裁判官と状況との交互作用によるものだが、パターンノイズは安定したパターンノイズと機会ノイズに分解される。安定したパターンノイズとは、裁判官によって事例のどの要素(被告の生い立ちとか被害者の年齢とか)を重視するかが違うことによる。筆者たちの研究ではこの要素がシステムノイズの中で最大だという。機会ノイズはさらにその残りで良く分からない。その日の天気とか前の日に地元のスポーツチームが勝ったとかそんなんだろう。

射撃チームが一つの的を狙ったとする。全員の着弾点の平均が的からズレていたら、このチームには全体にバイアスがあることになる。着弾点が散らかっていたらシステムノイズが大きい。右にずれやすい人と左にずれやすい人がいたらレベルノイズということになる。的の状況が個人に安定して別々の影響を与えるなら安定したパターンノイズということなる。それらを全部除いてもそもそも射撃は100%正確になるはずかないというのが機会ノイズ、あるいは本書でも使われる用語では客観的無知ということになる。

この本に文句を言っている人の多くはここまでの基本概念が頭に入っていないのだろうと思う。本書の主張は色々な事例(難民申請の許可や人事評価や保険の査定や指紋の鑑定など)を大量に引用しつつ、人々が思っているよりノイズが大きくて社会正義や経営判断をムチャクチャにしているということだ。そしてノイズを減らすための方策としてガイドラインの導入やアルゴリズム、あるいは単純な数式の導入を推奨する。このあたりの考え方は"Thinking, Fast and Slow"と基本的に同じで、反感を買いやすいのは分かる。ただ文句を言っている人の大半はここまでの議論をきちんと理解していないのではないかと思う。わたしとしては「アルゴリズムは透明性が高い」みたいなところに引っかかったりしたが(普通AIが何を考えているかは分からない)、かなり面白かった。ただ、わたしはここで問題になるような判断ごとを他人事みたいに思っているから単純に面白がっていられるが、経営者とか行政とかは真剣に読むべきだろう。しかしやはり難しいかもしれない。結局、ノイズよりバイアスのほうが分かりやすいし、バイアスを退治すれば英雄だが、ノイズ対策をしても効果は同じくらい大きくてもそこまで目立たない。

経営学の分野でもこの本は紹介されることが多いが、実際に読んでいる人は少ない印象だ。翻訳も出ているし、この文章をここまで読んだ人がこの本を理解できないことは考えにくい。色々面白い事例も載っているし、実務で問題になる人だけでなく、単に面白がりたいだけの人も読んで損はしない。良い本だった。

A must-read for us looking for new intellectual excitement.

William Collins (2021/5/18)
言語:英語
ISBN-13:978-0008309008

2022年2月1日火曜日

Claire Belton "I Am Pusheen the Cat" [わたしはPusheen猫]

Pusheenと言われて分からない人は公式サイトを見るのが早い。要するにすみっコぐらしとかLiz Climo相当と思えばそう間違いではない。ギャグとkawaiiの比重がもう少しkawaii寄りくらい。イラストというほどでもない…。英語は中学生レベルか。わたしは店頭で見て買ったのでWebはあまり見ていないが、書籍の内容はほぼWebと同じらしい。ただ印刷もきれいだ。

Kawaii.

Touchstone (2013/10/29)
言語:英語
ISBN-13:978-1476747019