2016年2月26日金曜日

William Bynum "The History of Medicine: A Very Short Introduction" [医学史:非常に短い入門]

目次:1.臨床の医学 2.図書館の医学 3.病院の医学 4.共同体の医学 5.実験室の医学 6.現代世界の医学

どういうわけかわたしは医学史に詳しいが、多分、社会史とか一般科学史みたいな本をよく読んでいるから、そっちから知識が入っているのだろう。そういうわたしから見ても良い意味で標準的な歴史書かなと思う。"Very Short"と言いながら、なかなか盛りだくさんで壮大な印象が強い。ありがちな科学的な側面に話を絞っておらず、最近発達した社会史的な面もきっちり入っているのも高評価だ。話は基本的に西欧限定だが、これで東洋版を出してもあまり流行らないのだろうか。たとえば"Yoga: A Very Short Introduction"みたいな類の本を作ったら、(欧米の)大学生受けはすると思うんだがな。なんにしろ、医学史を学ぶんなら(そんな人は少ないと思うが)、これが最初の一冊かもしれない。

Very good as the first book for beginners.

Oxford Univ Pr (2008/8/24)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0199215430

2016年2月23日火曜日

Jacob K. Olupona "African Religions: A Very Short Introduction" [アフリカの宗教:非常に短い入門]

目次:1.世界観と宇宙論と創造神話 2.神々と祖先と精霊 3.神聖な権威:神聖王政と僧侶と占い師 4.儀式と祭りと儀礼 5.神聖な芸術と儀礼の実行 6.アフリカのキリスト教とイスラム教 7.今日のアフリカの宗教

もともと広大なアフリカをどの程度この本がカバーしているか疑問だが、とにかく、アフリカの宗教の概説。特段に複雑な教義体系が紹介されたりしないので、宗教というより各地の習俗という風に考えても良い。美術や音楽が宗教がらみ勝ちなのは世界中どこでも同じだ。人類学とか民俗好きの人は読んでいて楽しいだろう。わたしとしては、アフリカの宗教と言うと、サッカーの試合で魔術を使うとかそんな程度のイメージしかなく、別にこの本を読んでもそれほどイメージは変わらない。著者は最初から西欧のアフリカに対する偏見を糾弾しているが、正直なところ、哲学的な考察は薄い。

An overview of African folkways.

Oxford Univ Pr (2014/3/14)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0199790586

2016年2月22日月曜日

Richard Toye "Rhetoric: A Very Short Introduction" [修辞学:非常に短い入門]

目次:1.ギリシア人からグラッドストーンへ 2.修辞学の足場 3.修辞学へのアプローチ 4.現代世界の修辞学

「修辞学」と訳したものの、実際は「弁論術」と言うほうが適切。前半は古典時代からtrivium三学科の一つに数えられている「修辞学」の歴史だが、真ん中あたりでオースティンやら現代文学理論が入って来たところで様子が変わる。この辺り、わたしにはとても懐かしいところだった。特に後半は基本的に政治における弁論術の話。メディアの弁論術に与える影響も語られる。と言っても、基本的にはアメリカの大統領とかイギリス議会とか英米圏の話に限定されている。分析法なども概説があるけど、基本的にこれを読んでも弁論が得意になったりはしない。日本で言えば、政治学とか言語学とか社会学/記号論などで処理されるような話だ。

ただ、この本、VSIでは初めて見たけど、ところどころclassroom用のactivityが差し込まれている。VSIのこういう入門書は、たいてい開講前に読んでおくような本が多いが、この本は修辞学の一年目(半年?)くらいに授業で使う想定になっている。もしかすると著者のクラスを取ると弁論に長けるようになるのかもしれない。まあ、英米圏は元々小学校レベルから弁論を仕込まれているいるし、ここでは改めて歴史から振り返ってみて、後半は現代世界・マスコミの弁論術(論法)を分析してみようということだろう。特にマスコミの世論誘導などに興味があるムキは、こういう分析もあるということを知るだけでも価値があるかもしれない。

Pretty informative.

Oxford Univ Pr(2013/5/8)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0199651368

2016年2月14日日曜日

Pénélope Bagieu "Joséphine tome 2 : Même pas mal" [ジョゼフィーヌ2:まあ悪くない]

前作と基本的に同じ路線で30代独身女の日常をコミカルに描くというところだが、内容自体はえげつない。別の女が出てきたらどうしようと思いながら恋人の部屋を訪問したら子供が出て来たり、奥さんと別れてくれると妄想したり、若くて美しくて性格の良い人事部長が元彼と結婚して結婚式に呼ばれたりしている。もちろん、日本でもこんなマンガはあるだろうけど、もっとドロドロなレディコミみたいになるか、もっとアホみたいな「本当にあった話」みたいになるはずで、こんな爽やかにお洒落に描いている場合ではないと思う。根本的にある意味、彼の国では男女関係が高度に発達しているのだろう。

あと、日本のこの類のマンガは、主人公が可愛げのある子で周りが性格悪いみたいな描き方が多い気がするが、このマンガは主人公がどうも軽薄で自分勝手で、周りの特に親友のRoseとCyrilが良い奴というようなのも素晴らしい。自分(=主人公)の性悪さを笑いにできるというのは、ギャグマンガ家としては、一段上の気がする。

Vraiment drôle!

Le Livre de Poche (2 mars 2011)
Langue : Français
ISBN-13: 978-2253131700

2016年2月9日火曜日

H. G. Wells "The War of the Worlds" [宇宙戦争]

SFの古典中の古典、タコみたいな火星人が地球に襲来する名作。有名だし、読んで損はないところ。基本的には人類の反撃はほとんど無効で、語り手は単なる一般市民で、火星人から逃げ回っているだけだ。侵略者たちは熱線と毒ガスで躊躇なく人間を駆除していくが、人類の側は最高で戦艦による砲撃しかない。戦争というよりは一方的な虐殺である。そんなわけで、最初のうちはそれほど面白いと思わなかったが、主人公が間近で火星人を目撃してからはなかなかの展開だ。SFというよりは、怪奇小説と思ったほうが良いかもしれない。別にわたしはSFに詳しいわけでもないので、あまり解説はできないが、SFに興味がなくても面白い。

Classic and fascinating even for those who are not interested in sci-fi in general.

Penguin Classics (2005/5/4)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0141441030