2013年1月21日月曜日

Keith Devlin, Gary Lorden "The Numbers Behind NUMB3RS: Solving Crime with Mathematics"

TVシリーズ"NUMB3RS"の数学解説。わたしはNumb3rsの最初のシーズンを見ただけだが、個人的には「微妙」で、この本も「微妙」だ。時々面白い事実もあったが、肝心の数学についてヌル過ぎる。邦訳もあるが、少し見た限りでは、訳者は数学が全くできないようだ。つまり、そうでなければこの本はかなりの部分が退屈なのである。日本の中学生くらいなら数学の予備知識としては問題ない。Numb3rsを教養・学校の教材的に使うのなら、Numb3rs Math Activietiesが良さそうだ。

A must-read for numb3rs fun, though mediocre as a pop-math book.

2013年1月19日土曜日

Eric R. Scerri "The Periodic Table: A Very Short Introduction"

元素の周期表の歴史。大きく分けると、原子の構造が分かる以前は、原子量とか化学的性質で周期表を考えるのみだった。それ以降は電子配置を考慮するようになる。しかし、量子力学で元素の化学的性質が全部説明できているわけではないし、今後もできるかどうかも分からない。そして、今でも周期表は進化している。いまだに新しい元素が合成され続けているし(最新の第117元素は2010年)、今でも「より優れた」元素配置図が考案され続けている。早い話が、ランタノイドとアクチノイドを完全表示しろとか、水素とヘリウムの位置があれでいいのかとか。他にもいろいろあるようで、もちろん"triad"を重視する著者自身の提案もある。最低限の予備知識として、原子が陽子と中性子と電子からできているくらいのことを知っており、周期表がなんであるかを知っていれば、高校生くらいでも十分読める内容だ。

A brief history of periodic tables of elements. Even now new elements and new periodic tables are under construction. For me periodic tables are just for convenience, but there are people who love and are searching for the ideal table....

2013年1月9日水曜日

Lawrence Shapiro "Embodied Cognition" (New Problems of Philosophy)

これはembodied cognitionの標準テキストと思われるが、embodied cognitionの日本語訳すら定かではない。Webでも日本語の解説が見当たらないところを見ると、あまり日本では流行っていないのか。

色々なセクトがあるようで一言でまとめるのは難しいが、要は、心理学の中でも特に身体を重視する方向の派閥である。逆の極端を考えると分かりやすい。つまり、脳を単なる記号演算装置と考える派閥なら、身体は単なる入出力装置であり、とりあえず入出力装置と別に演算装置を考察することができる。これはデジタルコンピュータの比喩であり、周辺装置と演算装置は分離できるし、ハードウェアとソフトウェアは分離できる。人間の知能がソフトウェアであるならば、人間の知能と人間の脳を分離して、人間の脳とは別のハードウェアに人間の知能を「移植」することもできる。つまり人工知能である。ここまで極端な考え方をする人は今は少ないかも知れないが、この本の言う"standard cognitive science"は、戯画化すればそんなところだろう。要するに身体を軽視というか無視しているのである。

これに対抗する側として、この本では主に三つの派閥が挙げられている。分かりにくいわけではないが、哲学的な理屈が大量にあるので、要点と思われる点をまとめると: 第一の"Conceptualization"とは、どんな抽象概念も、結局は特定の身体構造と切り離しては理解できないということを言っている。第二の"Replacement"とは、脳のやっていることは記号演算というより環境との機械的な相互作用であるとする。第三の"Constitution"とは、認知過程は脳だけでなく、感覚器官や外界も含めて一連のすべてを考慮しなければ説明できないと言っている。共通点としては、認知心理学を脳の研究に限定するのに抵抗している。

それぞれについて、書いているだけでも、嫌になるほど形而上学的問題がどんどん思い浮かぶが、この本は、それを一々議論している。根にあるのは西洋哲学の昔からの問題で、心身問題とか、表象って何とか、意識って何とかそういうことで、日本でイマイチ流行らないのも分かるような気がする。こういう問題が好きな人なら、読んでいて退屈はしないだろう。

According to allegedly standard science, brain can be studied fairly independently from peripheral neural systems (input/output devices) and mind can be studied fairly independently from brain (hardware) so that mind (software) can be exported to devices other than human brains....

Embodied cognition opposes this kind of views. There are many versions of embodied cognition, but all emphasizes the importance of body in cognitive science. A standard textbook including lots of metaphysical thinking.

2013年1月8日火曜日

Theodore Gray, Nick Mann "The Elements: A Visual Exploration of Every Known Atom in the Universe"

元素の一つ一つを写真入りで簡単に解説したもの。せいぜいが男子中高生の錬金術萌えを満たす図鑑といったところで、特に実際の化学の勉強になるわけではない。はたしてこれが「世界で一番美しい」のかどうか謎だし、類書がないのが不思議だが、学校の図書館には必須には違いない。

A picture book for children.

2013年1月7日月曜日

Madoka Kitao, Tomohide Kawasaki "Joski at a Glance (Glance Shogi Series)

ISBN 9784905225010

英語の将棋の本は珍しいので買ってしまったが、「将棋・ひと目の定跡」の英訳らしい。なぜ日英で著者表示が違うのか謎だが・・・。まあルールを把握している初心者向け。クイズ形式で200問、一応ほぼすべての戦型から出ている。

A brief overview of shogi openings. At least you must be familiar with basic shogi rules. To my knowledge this is the best book on shogi openings available in English.

2013年1月6日日曜日

Walter Hoving, Joe Eula, John Hoving "Tiffany's Table Manners for Teenagers"

今さら何でこんな本かというと、わたしが知っているテーブルマナーはこの本が全てだというだけのことであった。特に深い意味はない。高校生が読めばいいだろう。

All I know about table manners is from this book.

Peter F. Drucker "The Daily Drucker"

これは「ドラッカー365の金言」という日本語訳もあるけど多分良くない。参考までに本文の冒頭を対照して見よう。

(原文)The proof of the sincerity and seriousness of a management is uncompromising emphasis on integrity of character. This, above all, has to be symbolized in management's "people" decisions.
(訳文)真摯さを絶対視して、はじめてマネジメントの真剣さが示される。それはまず人事に表れる。

この訳文で意味が分かる人がいるとは信じられない。しかし、実際には日本語訳を読んで感動している人もいるので勝手にすればいいと思うが・・・。

内容はというと、ドラッカーの名言集みたいなことで、ドラッカーの著作からの抜粋が、一日一つ、一年分収録されている。出版年も新しいし、多分、ドラッカーの言い分の概要を把握するには最善だろう。ドラッカーは特に日本で流行しており、従ってその有用性は非常に疑わしいが、翻訳のせいかもしれないし、何より流行っているのだから、一応この本くらい読んでおくのは悪い考えではない。毎日、リード文・抜粋・"Action point"の三部構成であり、言っていることは普通にそこらの経営者の言いそうなことばかりだが、それだけドラッカーが普及しているということかもしれない。

実際には、たいていの名言集がそうであるように、これも経営者が自分の考えをバックアップする名言を調達するのに使われているのだろう。だから、翻訳が上記のようなことでも構わないというか、曖昧なほど良いのかも知れない。そして、やはりたいていの名言集がそうであるように、互いに矛盾するようなこともあるから、ドラッカーを引用する奴に対してドラッカーで反撃することも可能だろう。まあこれだけ流行っているのだから、一冊この本くらい読んでも損ではなかったというような。

Drucker is very popular among people in management of Japanese companies, which casts a serious doubt over the usefulness of his writings. But at least he is very popular in Japan and I felt obliged to read at least one of his books and this book is it. I assume this book is a fairly good summary of his writings which are too voluminous to read all.

2013年1月3日木曜日

Guido Caldarelli, Michele Catanzaro "Networks: A Very Short Introduction"

これもタイトルがシンプル過ぎて意味が分からないが、数学でいうグラフ理論の応用分野を解説したものである。数式は全く出てこないので、数学の勉強には全くならないが、基本的なアイデアだけ簡単に解説して、応用例の解説がメインになる。出てくる例は、インターネット、食物連鎖、遺伝子とかタンパク質とか、電力網、航空路線、人間関係、企業取引、疫病、etc.。数学的解説が薄いのは別としても、解説が丁寧で、やや丁寧過ぎて人によっては面倒くさいかもしれない。

It gives just a simple idea about graph theory and explains a wide range of area of application including power grids, the internet, ecological systems, infectious diseases, air lines, social relationships, etc. A good overview.