2016年10月31日月曜日

Chris Cooper "Blood: A Very Short Introduction" [血:非常に短い入門]

目次:1.血の歴史 2.血とは何か 3.病との戦い 4.ヘモグロビン 5.血圧と血流 6.輸血 7.エピローグ:血の未来

血に関する医学的・生理学的よもやま解説。VSIの常で研究史もふんだんに織り込まれている。そこそこ難しい内容のような気もするが、理系の大学生なら読めるだろう。わたしはというと、特に血について考えることもなく、自分の血液型も最近知ったくらいだ。ちなみに自分の血液型を普通に知っているのは東アジアの一部のみらしい。血圧も低いし、健康診断で問題になったこともないが、ずっと退屈せずに楽しく読めた。個人的には、最近「はたらく細胞」を読んでいるけど、さらに詳しく知りたいムキにもお勧めだ。

It was a nice reading. By the way, I hope "Hataraku Saibou (cells on the job)" will be translated into English.

Oxford Univ Pr (2016/10)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0199581450

2016年10月5日水曜日

Marc Levinson "The Box: How the Shipping Container Made the World Smaller and the World Economy Bigger" [箱:コンテナはどのように世界を小さくして世界経済を大きくしたか]

目次:1.箱が作った世界 2.ドックの渋滞 3.トラック運転手 4.システム 5.ニューヨーク港をめぐる戦い 6.組合の解体 7.標準設定 8.離陸 9.ベトナム 10.嵐の中の港 11.好況と不況 12.巨大化と複合化 13. 荷主の逆襲 14.ジャスト・イン・タイム 15.付加価値

全然知らなかったが、日本語訳「コンテナ物語」も出てそこそこ売れていたらしい。わたしは貿易も多少関与したことがあり、貿易実務検定とかも取っていたこともあるし、運輸業界の調査をしていたこともあるけど、直接的には規格に関係するところは実務的にも参考になるかと思って読んでみた。

この本の中心的な主題は、コンテナの発明後のコンテナの規格化が各方面にどのような影響を及ぼしたかだ。直接的な規格争いもあるが、わたしが良く知っているようなIT業界のソフトウェアの規格争いとはスケールが違う。わたしがなじんでいるような業界では、規格が対立してればとりあえず両対応にしておくかで済んだりするが、コンテナはそうはいかない。まず関係者が海運のほか港湾・トラック・鉄道・飛行機・荷主等々多いし、船や港湾などの固定設備にかかる金額が全然違うし、実際、多くの都市が規格のせいで興亡している。荷役が省力化されて労働組合が戦うところも詳しく描写されていてうんざりするが、対応を間違えて衰退する港もあるし、一度失敗してハブ港になれないと、港湾設備の建設には巨費がかかる事から、ほとんど挽回できない。

取材はしっはりしているし、読みやすく物語形式で書かれているから、特に海運・港湾・貿易関係の人は、一度読んでおくと面白いと思う。別にこれを読んで仕事が捗るわけではないが、この業界の今昔も振り返れて面白い。

A great storytelling based on a great coverage of information including interviews to elderly people of this industry of transportation.

Princeton Univ Pr (2016/4/5)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0691170817

2016年10月1日土曜日

Stella Z. Theodoulou, Ravi K. Roy "Public Administration: A Very Short Introduction" [行政:非常に短い入門]

目次:1.現状の外観 2.ウェストファリアからフィラデルフィアへの旅 3.世界的な進歩主義的改革 4.現代の福祉国家の勃興 5.世界に広まる新公共経営 6.新しい行政の時代 7.グローバリゼーションとネットワーク・ガバナンスの勃興 8.行政の未来

福祉国家の勃興からケインズ経済学の繁栄、さらに新自由主義(New Public Management:NPM)の逆襲からネットワーク・ガバナンスへの思想の変遷史と未来の展望を描く。冒頭から「なんでも民営化したらええんとちゃうぞ」みたいな結構現状批判みたいなことから始まっていて、その方向で期待したが、意外に淡々と話は進み、ちょくちょく著者の意見は出ているが、終着点としては流行りのネットワーク・ガバナンスみたいなところ。

予想していたより技術的・具体的な話には入らず、基本的には経営思想というか風潮の変遷を追っている。「小さな政府」だの「官から民へ」だのというスローガンが蔓延していた時代はまだ記憶に新しいし、年寄りは未だに「民間だったら許されないぞ」とか役所の窓口でヤカラ飛ばしているようなことで、その意味では、日本でもこういう変遷は身近に感じられる。一般論が多いし、例が提示されても欧米の話ばかりで、日本の話はほぼない。アメリカの政府負債がこのままでは維持不能とか言っているが、この著者たちが日本のことをどう思っているのか不明だ。とは言え、非常に基礎的な話ではあるので、これから政治や公務員を目指すような人は、この程度の話は把握しておいてほしいところだ。英語も別に難しくないし、高級官僚を目指すならこの程度の英語力も必要だろうな…。

A good introduction to public administration, recommended for those who want to be bureaucrat or public servant, despite of despise of citizens.

Oxford Univ Pr (2016/10)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0198724230