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2026年1月14日水曜日

Spencer Johnson "Who Moved My Cheese ?" [チーズはどこへ消えた?]

Who Moved My Cheese ? (Amazon.co.jp)

チーズはどこへ消えた? (Amazon.co.jp)

20年前に日本で異様に流行った本だが、もちろん無視していた。世界中で売れているが、日本であまりに売れるので著者自ら日本語を習得して、最近でも経営コンサルとして日本をウロウロしているらしい。たまたまそれを聞きつけたのが読むきっかけになった。

本自体は短くてすぐに読み終わるから要約する意味がないが、要するに「変化せよ」ということである。時はちょうどバブル崩壊で「リストラ」という言葉が流行っていた。「自己責任」という言葉が流行り始めたのも同時期で、この本も本質は自己責任論である。変化しない奴は自己責任において滅びるしかない、という考え方だ。つまり企業の人事担当からすれば、非常に都合のいい本だったわけだ。変化(新規事業開拓とか部署移動とか解雇とか)を嫌がる社員は、この本の登場人物の"Hem"という扱いになり、嘲笑されていたのだろう。ついでに翻訳自己啓発書ブームもこの時期に始まったらしい。「七つの習慣」とかそんな流れだ。

シニカルに考えるとそんなところだが、当時の空気を思い出してみる。「会社に頼るな」とか「自己責任」とか「自分の市場価値を高めろ」とか宣伝されていて、小泉=竹中政権はそれを中核的な価値観としていた。その後デフレの長期化がはっきりし、リストラの終了した日本企業は守勢に入り、新入社員には「とにかく会社にしがみつけ」みたいな世界観が浸透した。

そして今、デフレ時代は終わり、インフレ時代となった。一般論としては最早会社にしがみつく必要はなく、転職すればするほど賃金が上がる世の中になっている。まだみんなデフレ時代の恐怖感から立ち直っていないが、バブル時代に成立していた「フリーター」という生活様式も復活しつつある。中国からデフレが輸出されてまた同じこと…という懸念もあるが、昔と違って労働人口の減少ははっきりしている。ダメ会社に勤続しているより、新しいチーズでも探しに行ったほうが良い感じになってきている。未来は分からないが。

その意味でまたこの本が復活するかもしれない。この本は最初は人事担当に訴えていたが、この間、宣伝文句は私生活の幸福という方面での売り込みに変化した。個人的には以上のようなことを考えた以上のことはない。こういう本はかならず名言が一つくらいあるものだが、一つ挙げると"What would you do if you weren't afraid?"だろうか。わたしにはさして響かないが。

最後にどうでもいい文句だが、書名の疑問文に対する答は一切ない。酷い本だ。

Vermilion (1999/3/4)
言語 ‏ : ‎ 英語
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-0091816971

2025年12月18日木曜日

Morgan Housel "The Art of Spending Money" [金を使う技術]

 The Art of Spending Money (Amazon.co.jp)

アート・オブ・スペンディングマネー (Amazon.co.jp)

"The Psychology of Money"の続編ということだが、内容の大半は「見栄を張るな」にほぼ尽きている。自分はそんなのは大丈夫と思っていても、人は意外に他人に影響されているもので、自分だけは例外とは思わず、謙虚に読んでいいのではなかろうか。色々面白い話はある。

と言っても、やはりわたし個人については例外らしい。虚栄心がどうこう以前に、第一にわたしには見栄を張って得をする状況がほとんどない。自分が出世の見込みのある勤め人だったり、自営業だったら、見栄を張るほうが得というか見栄を張らないといけない局面もあるだろう。異性にモテたいと思う場合もそうかもしれないが、わたしの人生にそんな局面がない。第二にそもそも見栄を張る相手がいない。

わたし個人の話はさておき、誇示的消費で愛情や尊敬はある程度買えるが、著しく非効率な最後の手段と考えるべきで、愛情や尊敬はまずは別の入手方法を考えたほうがいい云々。誇示的消費自体のリスクもある。もともとあまり期待して読み始めていないが、いくつか面白い話もあることはあった。

最後に、結局こういう本は「こういうのが幸せでしょ」という前提が明示的にか暗示的にか存在し、そこに同意できるかどうかが決め手になる。この本も例外でなく、同意しかねる前提が凄まじく多い。明示的な話で言えば、「後悔を最小にする」とか「人生の目的は思い出作り」みたいな話には付き合いかねる。まあそれはそれとして、という余裕を持って読める人にしかお勧めできない。

出版社 ‏ : ‎ Harriman House Publishing; Main Market版 (2025/10/7)
言語 ‏ : ‎ 英語
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-1804091890

2024年4月4日木曜日

Nick Maggiulli "Just Keep Buying: Proven ways to save money and build your wealth" [ただ買い続けろ:節約して富を築く方法]

Just Keep Buying (Amazon.co.jp)

普通の個人向け資産構築ガイド本で、似たような本は米国にも日本にも山のようにある。数値例がやたら多いのが特徴だが、要はS&P500をひたすら買ってろというようなことで、近頃はそんな話ばかりだし、今更新情報はない。普通に山崎元さんの本でも読んでいれば、実用的にはそっちのほうが上位互換なのではなかろうか。そっちは読んでないから知らんけど。

ただいくつか考えることはある。一つはFIREに対する考え方で、「退職=世界にとって自分がどうでもいい存在であることを認めること=結構な精神的打撃」というクダリだ。そうかもなあと思う。しかし、冷静に考えると、社会に何も貢献していないという意味ではわたしは既に退職しているようなものだ。ではわたしには関係ない気もする。人間の脳というのはある程度ストレスとか嫌なことがある前提で進化してきているので、出勤とかいう概念もなく完全に平和に暮らすのは不健康なのかもしれないとかも考える。

幸福のバスタブ曲線の話。世界のどこのどんな状況のどんな文化でも、幸福度は20代半ばから50代までが最低という有名な話で。本書は情緒的に説明しているし、他にも色々な説を読んだことがあるが、わたしとしては単なる生理現象ではないかと思っている。単に加齢に伴うホルモンの変化のせいでは…。ともかく、理想と現実にギャップを感じて人は不幸になるし、成長もするし、社会を変えようとするんだろう。幸せになったら成長は終わりですよ。

金持ちが自分が金持ちということを感じていないという話。これは著者の体験談にリアリティを感じるというのは、わたしも似たような経験があるからだ。ただわたしの場合は社会性がないので周囲と比較する習慣がないし、その代わりに頻繁に統計データを見ているから、客観的な状況を見誤りにくい。

などと考えることはあったが、そんなに新情報も新考察もなく、上位互換みたいな本もほかにあるだろう。一応読んだから記録まで。

Harriman House Pub (2022/4/12)
言語 : 英語
ISBN-13 : 978-0857199713

2024年3月27日水曜日

Steven Saunders, Matt Tweed "Mind Tricks: Ancient and Modern" [心理術:古代と現代]

Mind Tricks (Amazon.co.jp)

何の本なのか説明が難しいが、今風に言えば「マインド・ハック」みたいなタイトルをつけるべきなんだろう。例えば記憶術とかクレーマー対処法とか人と仲良くなる方法とかリラックスする方法とか、結局、自己啓発本の棚にあるような話は何でもかんでもという感じ。技術自体は古今東西の文明からフロイトがどうとかもあるし、タロットがどうとか単なるおまじないみたいなのもある。この類の本の通例で"In Japan..."とかいう文章に、なかなかの出鱈目が書いてある。中学生向けのお遊びと言ってしまえばそれまでだが、結局、ビジネス書の棚にある自己啓発本も本質は変わらないような気はする。名言カレンダーみたいなもので、誰でも何かしら引っかかるところがあるかもしれない。

A lovely little book.

Walker & Co (2008/10/28)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0802716804

2024年2月28日水曜日

Ethan Kross "Chatter: The Voice in Our Head, Why It Matters, and How to Harness It" [おしゃべり:わたしたちの頭の中の声、なぜそれが問題なのか、どう制御するか]

Chatter (Amazon.co.jp)

まず、著者の言うchatterの定義が分かりにくいが、要するにネガティブな言語的な反復思考という感じだろうか。ネガティブとも限らないようだが…。実はこの点が最後まではっきりしないのがこの本の致命的な欠点だ。具体例としてムダな心配とかトラウマの反復思考とか共同反芻とか他にも色々あるんだが、共通する要素が良く分からない。科学的に何かあるのかもしれないが。

で、対策として儀式とか自然を見るとか偽薬とか、一体何の話なのか…。一つ一つの項目も大した話がないし、とにかく話がバラバラに思える。こういう自己啓発本はもともと当たり率が低い。ハズレでした。

Crown (2021/1/26)
言語 ‏ : ‎ 英語
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-0525575238

2024年2月7日水曜日

Charles Duhigg "The Power of Habit: Why We Do What We Do in Life and Business" [習慣の力:なぜ我々は生活と職業で我々がしていることをしているのか]

The Power of Habit (Amazon.co.jp)

習慣の力 (Amazon.co.jp)

目次:1.習慣のループ 2.欲望する脳 3.習慣を変える黄金の規則 4.要石の習慣またはポールオニールのバラード 5.スターバックスと成功の習慣 6.危機の力 7.あなたより先にターゲットがあなたの望みを知る方法 8.サドルバック教会とモンゴメリーのバスボイコット 9.自由意志の神経学

評判のいい本だが…。半分くらいは商売系でラウリル硫酸塩で物が売れるとか、組織の習慣で不祥事とかいう、あまり感心しない話。なんかエピソードが弱いのと、個人的に組織に関心がない。残りの半分は悪い習慣を断ち切る話で、アルコールとかギャンブルとかがメイン。こっちもこっちでわたしは弱いと思うが、人によるのだろう。わたしの中にどうにかしたい習慣がない。酒もタバコも好きだが健康に良くないので両方しない、と言って済む性格だ。話の前提として、習慣を断ち切りたいと思わないと何も変わらないと本書も言っているが、個人的に別にない。

じゃあなんでこんな本を買ったのかということだが、わたしの場合、習慣というよりASD的な意味でのルーティンへの固執が強いところがあり、おかげで勉強もできているしジムも通い続けられているわけで、そっち方向からの関心だった。ただ本書はそういうことではない。特にエピソードも弱いが、科学面も弱い。それでも名著とされているのは、実践的だからだと思うが、実践する用事がなければ別にという。

Random House (2012/2/28)
言語 : 英語
ISBN-13: 978-1400069286

2023年11月10日金曜日

Les Giblin "How to Have Confidence and Power in Dealing with People"[自信と力を持って人を扱う方法]

原著1956年刊の自己啓発書。内容はタイトル通りで、要は「相手の話を聞け(論破するな)」とか「相手を褒めろ」とかなんかそんなことで、はっきり言えばMachiavellian manipulationと言ったら言い過ぎかもしれない。わたしみたいに人づきあいが極端に少ない人間でも、まあそうだよねと思うところもあるし。それで思い出したが、Erving Goffmanというあまり面白くないカナダの社会学者がいたが、時代的にもそういうことだったのかなあとも思う。自己啓発の系譜として学校歴史でも習うような「自助論」(西国立志編)みたいな頃からは相当時代が進んでいて、Dale Carnegieよりも後だし、それよりは全然今時の本に近い。

A nice little reading.

Les Giblin Books(1956/1/1)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0988727533

2023年8月19日土曜日

Robert Waldinger, Marc Schulz "The Good Life: Lessons from the World's Longest Study on Happiness" [グッドライフ:幸福に関する世界で最も長い研究からの教訓]

なんか日本語訳も売れているらしく、Amazon売り上げ何位とかTED発とか、およそ読む気のしない宣伝文句が並んでいたが、こういう本も謙虚な気持ちで読んでいくかというようなことで読んでみたが。

内容はというと「幸福な人生には人間関係が重要」ということに尽きており、この一点について手を変え品を変え色々説いているだけ。いや、本当のことを言うと手も品も大して変わっておらず、内容への賛否はともかく、かなり単調な読み物と言っていいんじゃないだろうか。

ということであんまり感心しなかったのだが、世間の圧倒的な好評の前にわたし一人の文句なんか無意味だろう。人間関係については時折色々考えることもあるが、この本から何かを得た気がしない。確かにTED Talkの視聴者層が好きそうな本だ。

Exclusively for TED listeners. I mean, it is exclusively for those who have personal likings which TED listeners tend to have.

Rider & Co (2023/1/12)
言語 : 英語
ISBN-13 :978-1846046766

2023年5月25日木曜日

George S. Clason "The Richest Man in Babylon" [バビロンの大富豪]

あまりこういう蓄財本は読まないし、読んでもあまりここに書いたりはしないのだが、たまたまタダで読めた。有名な本は有名というだけの理由で読んで損はない。大雑把に言うと、例えば収入の1/10を貯蓄せよとか、賢明に投資せよとかいう教訓を古代バビロンを舞台にした寓話で教えるような本。書いてあるのは一般的な教訓で、具体的な投資手法が書いてあったりするわけではない。そもそもの原本が1926年刊とかで、今に至るまでずっと売れ続けてきた本かどうか知らないが、最近書店で日本語訳が平積みになっていたりする。確かに読みやすいが、こういう本が読まれるのはいろいろ考えさせられる。

この話の舞台になるバビロンは、自由人と奴隷がいるようなとんでもない格差社会で、かなりの部分が奴隷がいかにして自由人に成り上がるかという作戦に充てられている。奴隷と言っても昔のアメリカの黒人奴隷とは違い、財産を持っても良いし、自由人が奴隷になったり逆もあり得るというような設定で、要するに現代社会で言えば労働者と資本家ということになるのだろう。だから、この本はいかにして労働者が成り上がって資本家側になる方法として読まれている。勤勉・倹約・投資…。ちゃんとした家を持てというのはいかにもアメリカか。

現代社会で自分=労働者=奴隷と定義した上で、自分も自由人=資本家(投資家)になりたい/なれるという世界観の人がどれくらいいるのか分からないが、こういう本が売れる以上は、それなりにいるんだろう。こういう本がそういう世界観を広めている面もありそうだ。そもそもの話として、労働が好きで、その労働が十分な生活費を出してくれるなら、こんな世界観になるわけがない。しかし現実には多くの人が労働が嫌いか、または好きな労働をするための資金がない。高齢その他で働けなくなる可能性もある。

多くの人はFPがどうとかいうレベルではなく、全く基本的なことも知らない。単純な話で、収入-支出=貯蓄ということも良くわかっていない人がたくさんいる。こういう本はある意味ボーダーラインの人たちに有効かもしれないが、しかしどうなんだろう。たいてい詐欺師に騙されるだけのような気もするが…。現に株をやる個人の大半は損をする。

In reality, building a solid financial foundation takes time and dicipline...and enough intelligence....

(2023/4/5)
言語: ‎ 英語
ISBN-13 ‏ : ‎ 979-8386374105

2022年4月27日水曜日

Housel Morgan "The Psychology of Money: Timeless Lessons on Wealth, Greed, and Happiness" [マネーの心理学:富と貪欲と幸福についての永遠の教訓]

日本語訳もまあまあ売れているのだろうか。近頃は本屋に行くとFIREとかが流行ったりして見分けのつかない投資本が大量に平積みされていて、この本もその中に埋もれている。そうやって平積みされている本にはギャンブル本も多いが、中には真面目な本もあり、バカの一つ覚えみたいにインデックスファンドと言っているが、この本はどちらからも距離を取っている。と言っても結局著者もインデックスファンドなんだけど、個人の状況も違うし過去と未来は違うしみたいなレベルの話もしている。

例えば、バブルが生じるのは参加者が不合理だからではなく、短期投資者が増えるからであって、短期投資者にしてみればバブルに乗るのは全く不合理ではないと。ただ、これに長期投資者が巻き込まれると長期投資者が割りを食うみたいな話でしかないらしい。あまり他の本で読まない話だ。

ただ、本書の大半は倹約しろとか誇示的消費は無意味とか足るを知れとか複利の力とか黙って待てとか、まあ、普通の話と言っていいだろうか。タイトルは心理学と言っているが、例えばカーネマンやタレブみたいな常識を超えることは書いていない。実用性で言えば、別にわたしには特に足しにならないが、ある程度まともなFPみたいな本に退屈している人にはいいだろう。エピソードとしては面白い話はいっぱいあるので、クビになるかどうかの面談を待つヒマつぶしにはちょうど良かった。

For those who are bored by sane financial advisers but not insane enough to go into gambling....

Harriman House Pub (2020/9/8)
言語: 英語
ISBN-13:978-0857197689

2021年7月26日月曜日

Bertrand Russell "The Conquest of Happiness" [幸福の獲得]

いわゆる幸福論。数理論理学者でありノーベル文学賞受賞者でもあるラッセルの大量の著作の中で最も読まれているものだろう。中心的な主張は「自分のことを考えれば考えるほど不幸になる」というところだと思う。実践的なアドバイスもあるが、概ね良識的で変に極端な思想はない。そこが詰まらないというのも分かるが、本人も言っている通り、真実は斬新であるとは限らない。書かれた時代の制約もあるし、ラッセル自身の偏見もあるが、そんなことも考えながら読んで損はないだろう。そもそもが常識的な処方箋が展開されているだけで、衝撃を受けるような著作ではない。わたしも別にラッセルを崇拝しているわけではないが、退屈はしなかった。

内容はそんなこととして、ラッセルの文章はある程度以上の高校生なら大学入試対策の英文解釈という枠で今でも結構読まされていると思う。模範的な英文で読みにくくもない。当時でも易しい文章を書く人だと思っていて自主的に大量に読んでいた。そういうノスタルジーも含めて読む人も多そうだ。

Writings of Russell are treated as examplary English and often utilized for educational purposes, particulary in higher educations. Very practical, isn't it?

Routledge(2015/8/27)
言語:英語 ISBN-13:978-1138127227

2019年1月7日月曜日

Richard Carlson "Don't Sweat the Small Stuff: And It's All Small Stuff" [細かいことにこだわるな:そして全部細かいことだ]

随分昔に読んだ本で、未だに本屋に置いてあるところを見ると、良い本なのだろう。最近は洋書をあまりリアル店舗で買わないが、神保町の三省堂で買った記憶がある。一項目ずつが短く、英語も易しいので英語学習には良いだろう。今見ると別にいいやと思うが、鬱が酷い人には気分転換に良いかも知れない。中身はHow to Stop Worrying and Start Livingとさして変わらないが、こっちのほうがはるかに読みやすい。なんかこの類の本は卒業してしまった感じもあり、どっちかというと若者向けだろうか。当時「車の運転はそんなイライラスするものなのか」と思った記憶がある。わたしは車を運転しないので分からない。通勤電車も今は随分空いている電車に乗っているし…。日本語訳も売れているようで、「小さなことにくよくよするな」のほうが良い翻訳タイトルだろう。中身的には「くよくよ」よりは「イライラ」のほうが多かった気がするが、"worry"と同様にアメリカ人はこの二つを区別しないのかもしれない。サンマーク出版ということもあるし、長距離鉄道に乗る時なんかにちょうどいいかもしれない。

Hodder Paperback (1998/2/5)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0340708019

2017年9月24日日曜日

Jon Kabat-Zinn "Mindfulness for Beginners: Reclaiming the Present Moment―and Your Life" [初心者のためのマインドフルネス:今の瞬間‐とあなたの人生を取り戻す]

初心者のためと書いてあるが、本当のマインドフルネスの初心者のためには、むしろ最初の著作である"Full Catastrophe Living"のが良いかと思う。書いてあることに体系性が感じられず、警句集みたいに勝手に文脈を想像して納得できる人はいいが、そうでなければ何のことか分からない人のほうが多い気がする。付属CDは確かに初心者向けのようだが。

個人的にヨガとか気功とかシステマとかその他呼吸法的なものは色々やってきたけど、マインドフルネスも含めて、結局、手段は個人の好みの問題でしかないと思っている。わたしとしては、一々些細なことに動揺するのを止めたいというのが第一なのだが、どれも決定打になっていない。「動揺する時は動揺するのがよろしい」ということで諦めている。不便な生理だが。ただ、呼吸に集中するというのは、一般的に精神衛生に良い事なのだろう。

そして、マインドフルネスは仏教に源流みたいなことを言うが、そういうことなら、手段を取ったら取っただけムダと思っている。

I do not think that this book is for beginners. Like aphorisms, much is left to readers' imagination.

Sounds True; Pap/Com Re版 (2016/07)
言語: 英語
ISBN-13: 978-1622036677

2017年7月9日日曜日

Jon Kabat-Zinn "Full Catastrophe Living" [惨劇に満ちた人生]

近頃流行りのマインドフルネスの原典というべき本。「マインドフルネスストレス低減法」ということで出ている翻訳は初版のものだと思われる。多分、本質に大差ない。やたら分厚いが、哲学とかその他の背景の説明も多く、実際にマインドフルネスの訓練を始めたいということなら、もっと効率的な本は日本語でもいくらでもありそうだ。訓練中はほかのことは考えるな、変化は勝手にやってくるから、訓練中は何も期待するな、ただ八週間はやってろ、ということだから、思想とか能書きは不要なはずだが、ただ、理屈がないと納得できないというような人のほうが多いだろうから、説得材料で膨らむのはやむを得ない。「今、ここ」に注意を払うことがマインドフルネスの主旨だと思うが、具体的には自分の呼吸と体の各部に注意を集中することでほぼすべてと言っていいと思う。

わたしとしては、座禅会に通っていたり、気功やらヨガやらも多少は経験があるので、色々比較したりもできるが、この本については、そんなことは忘れて、先入観抜きにこれだけで受け止めるほうが良いだろう。近頃はマインドフルネスとタイトルにつく本は、本屋のスピリチュアルの棚に溢れているが、妙な劣化版を読むくらいなら、この原典を読んだほうがいいかもしれない。禅僧もこの流れに乗ってきて、どうも商売色の強さにうんざりする感じもあるが、本質は退屈なほど単純で健全なものだ。それでも座禅よりはかなり色がある。

この本に書いてあるような考え方などは、わたしとしてはむしろ陳腐に思えるくらいに聞き飽きているが、最近、実際に自分が体調に悪くなって初めて真剣に聞く気になるということがあり…。その意味では、読んで良かったし、こういう考え方に馴染みのない人には是非読んでみてほしいものだ。ただ、この類は、実際に健康不安とかがない人は、なかなか読まないし、読んでもピンとこないかもしれない。

To reduce everyday stress, this book is your first choice.

Bantam; Rev Upd版 (2013/9/24)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0345536938

2017年4月3日月曜日

Elizabeth Blackburn, Elissa Epel "The Telomere Effect: A Revolutionary Approach to Living Younger, Healthier, Longer" [テロメア効果:もっと若く健康的に長く生きるための革新的な方法]

目次:1.早く老いる細胞がどのようにあなたを老けて見せ、感じさせ、行動させるか 2.長いテロメアの力 3.テロメラーゼ:テロメアを補充する酵素 4.ほころび:ストレスはどのように細胞に入り込むか 5.自分のテロメアを気にしろ:否定的な考えと弾力的な考え 6.青色が灰色に変わる時:鬱と不安 7.テロメアを鍛える事:どの程度の運動が十分か 8.疲れたテロメア:疲弊から復活へ 9.テロメアは重い:健康な代謝 10.食事とテロメア:細胞の健康に最適な食事 11.テロメアを支援する場所と顔 12.妊娠:細胞の老化は子宮から始まる 13.子どもの頃は一生影響する:幼児期がどのようにテロメアに影響するか

テロメアという言葉がどれくらい一般に知られているか分からないが、要するに生物の老化を決定する細胞内の構造である。若ければ若いほど長く、歳を取ると短くなる。ただ、人によって、つまり、遺伝的・環境的な様々な原因によって、実年齢より長かったり短かったりする。というか、どちらかというとテロメアの長さこそが実年齢というべきで、これと暦年齢との差が本書の主題である。

だいたい二つの部分があり、テロメアとテロメア―ゼ(テロメアを回復させる酵素)についての判明している科学的知見と、テロメアに良い生活習慣などの説明が交互に来る。読者のかなりの部分が、後者にしか興味がないと思われるが、その件に関しては、率直に言って、特に斬新な知見もなく、"LOHAS"の一言で済むようなことだった。つまり、ストレスを管理し、たばこは吸わず、酒を控え、適度に運動し、瞑想をし、有機野菜を食べ、肉食を避け、オメガ3脂肪酸を取り、愛情のある生活をし、質の良い睡眠をとり、近所の人と仲良くし…。要するに世間で言われているようなとても意識の高い生活を推奨しているだけだが、背後にテロメアに関する疫学的な知見と、ノーベル生理学賞という説得材料が後に控えている点がこの本の売りなんだろう。

強いて世間の常識と少しずれていると思われるのは、体重自体をあまり問題にしていない点だ。体重自体より代謝とかダイエットのストレスのほうが問題であるとかいう言い分で、体重増加が代謝に関する重要な情報であることを強く言わない。もう一つ目立ったのは、特に前半でマインドフルネスを非常に重用している点で、これはDepression: A very Short Introduction"でもそうだったが、流行りなんだろう。

個人的には最後のほうのテロメアの遺伝とか胎児期~幼児期のストレスでのテロメアの損傷に関する知見がこの本の最大の収穫で、暗澹たる気持ちになったが、社会運動を別にすれば、個人が自分ではどうしようもないことである。格差社会はテロメアに及んで文字通り遺伝すらしている。世界的に売れている本らしく、日本でも「テロメア・エフェクト」という分かりにくいタイトルで訳されている。意識の高い生活をしたいが意志力が足りない人は、この本を読めば自分を説得する材料が増えるかもしれない。

All doctors recommend almost same style of life and this book is not an exception. In a word, "LOHAS". One outstanding feature of this book is a strong recommendation of "mindfulness" to control stress.

Grand Central Publishing (2017/1/3)
言語: 英語
ISBN-13: 978-1455587971

2016年9月29日木曜日

Michael Puett, Christine Gross-Loh "The Path: What Chinese Philosophers Can Teach Us About the Good Life" [道:中国の哲学者が良い人生についてわたしたちに教えられること]

目次:1.自己満足の時代 2.哲学の時代 3.人間関係について:孔子と「かのような」儀礼 4.決断について:孟子と気まぐれな世界 5.影響力について:老子と世界の生成 6.活力について:内業と精霊のような存在 7.自発性について:荘子と変化の世界 8.人間性について:荀子と世界に型をつけること 9.可能性の時代
これは「ハーバードの人生が変わる東洋哲学」ということで和訳も出ていて売れているようだが、賛否両論の本である。それも無理もない話だ。
まず、この本は、東洋哲学(というか中国哲学)の入門書ではない。もしかするとアメリカ人はこんな本で中国古典に入門するかもしれないが、その意味では、まともな日本人にとっては易し過ぎるというか、義務教育レベルだろう。この本はあくまで自己啓発本と思ったほうが良い。
著者によると、巷に溢れている自己啓発書は、全部元を辿るとプロテスタンティズムに起源を持つ。もちろん、アメリカにも禅だのヨガだのは輸入されているが、すべて、このプロテスタンティズムのレンズによって歪められ、場合によっては全くの反対物にされている。この本は、そういう状況を、中国哲学の古典に依拠して批判し、代替案を提示する。たとえば、多くの自己啓発書は「本当の自分を見つけろ」と言っているが、本当の自分はこんなものだと自分で自分にレッテルを貼って自分を制限するのは得策ではない云々。というように、各章ごとに、自己啓発書にありがちな一つの固定観念を、中国古典の一つを援用しつつ打破していく。
ほとんどの自己啓発書がプロテスタンティズムの延長であるという説は、わたしも全く同意見で、特に社会学をやっていた人にはヴェーバーのプロ倫を思い出すだろう。各論では自己啓発の諸観念を批判していくが、わたしとしては、それでもまだアメリカン自己啓発の臭いがキツい。というのは、この本は、自己啓発自体は決して否定していないし、結局は社会的成功を目指しているからだ。しかし、わたしの理解では孔子は確かに出世しようとしていたかもしれないが、少なくとも荘子にはそんな概念はない。その点が、この本は自己啓発書としてはそこそこ成功しているかもしれないが、東洋哲学の案内としては致命的に視野が狭い。
ただ、ある程度、自己啓発書の概念と中国哲学の概念に通じている人が読めば、「そんな解釈もあるかなあ」という程度には楽しめるところで、pop Chinese philosophiesがこんなものという勉強にはなるだろう。
I have a good command of old chinese language and have read almost all of the classics this book summarizes. What makes this book unique among other self-enlightenment books is the fact that while almost all the self-help books have their origins in the early protestantism ethics, this book is based on chinese philosophies and attacks hidden assumptions of protestantism. That said, this book is too limited in scope. I guess, for example, Zhuangzi is totally misinterpreted.

2013年6月28日金曜日

Jessica Hagy "How to Be Interesting: (In 10 Simple Steps)"

この本が和訳されることはないと思うが、タイトルは訳しにくい。わたしのようにboringな人がinterestingな人になるための方法を簡単なベン図とグラフだけで説明しまくった本。内容的には変わったことをしろとか知らない人に話しかけろとかそういうのがてんこ盛りということだが、この本が売れているのは言い方というか表現方法が優れているということで、これはどうにも言葉では説明しにくい。あんまりこういうself-help本には近づかないのだが、まあ、色々考えることもあるのう。考えているヒマがあれば行動しろというようなことだが・・・。

For those who are boring or bored. For a wet blanket like me.

Workman Pub Co (2013/3/19)
ISBN-13: 978-0761174707

2013年6月8日土曜日

G.Kingsley Ward "Letters of a Businessman to His Son"

ビジネスマンの父より息子への30通の手紙ということで、「まだこの本売れてるのか」というところだ。学生時代に読んでゾッとした記憶がある。工場労働者を指して、「あんな厳しい生活をしたくなければ・・・」みたいな説教が始まるところが特に印象的だ。この本を名著だという人とは友達になれない。まあ、世間を知る勉強にはなったけど。

A horror.

2013年1月6日日曜日

Walter Hoving, Joe Eula, John Hoving "Tiffany's Table Manners for Teenagers"

今さら何でこんな本かというと、わたしが知っているテーブルマナーはこの本が全てだというだけのことであった。特に深い意味はない。高校生が読めばいいだろう。

All I know about table manners is from this book.

2011年5月21日土曜日

SelfMadeEasy.com "Assertiveness: Stand Up, Speak Out, and Still Garner Others' Respect"

Seizing this opportunity, I would like to announce to all shy and modest people around the world that Japan is the country for you. Japanese culture respects modesty. If you are an American and suffer from you timidity, you are most welcome in Japan. You can not imagine how charming and attractive being an American and modest at the same time is to Japanese people. President Obama was criticized in the United States because he bowed too low before the emperor of Japan. One thing they do not know is how this presidential act made Japanese people respect Mr. Obama. I am not a serious supporter of the emperor system, but bowing foreigners are always highly respected in Japan. In this regard, there is a huge gap between the two cultures. Well, politeness and timidity are two different things, but I wish you never lose your charm in the course of adopting assertive attitude. By the way, this book is, well not bad. Sometimes it is a good thing to become self-reflective about your outer attitude.

残念ながらこれはKindle Editionのみらしい。まあ似たような本はいくらでもあるんで、適当に売れてたり安いのを読めばコンセプトは同じだろう。日本でもしばらく前に「断る力」だとか「怒る技術」だとか、単純に「アサーティブネス」とかいうタイトルの本が結構流行ったと思う。自己啓発はたいてい米国発で、適当な日本人が翻訳したりパクったりして日本でも少し遅れて流行る。大人しくて損をしているとか自己主張が苦手な人向けの本だけど、この本の基準だと、半分以上の日本人が該当してしまう気がする。文化差が大きく、この本を読んで日本で役立つ気がしないけど、アメリカ人風の考え方や言い方を学習するのに役立った気がする。たまには、こういうのを敢えて考えてみるのも悪くないことだろうし。