2017年3月2日木曜日

Deryle Lonsdale, Yvon Le Bras "A Frequency Dictionary of French: Core Vocabulary for Learners" (Routledge Frequency Dictionaries) [フランス語頻度辞典: 学習者のための語彙]

基本的には、フランス語単語を使われている順に5000語並べ、意味と例文を付けたもの。学習用で、アルファベット索引などもあるが、基本的には先頭から順に読んでいくもので、時々コラムなども入っている。

外国語は何語でもそうだが、基本的な文法を抑えれば、結局は語彙量の問題になる。暗記力のある人はそれを最大限活用して単語カードでも何でも使ってとにかく語彙を増やすことだ。わたしは不幸にして暗記力がないが、それでも何とかしたいと思っていて、この本はちょうど良いかと思った。コーパスが適切かどうかという問題はあるとしても、とにかく頻度順なのだから、それなりにやる気が湧く。フランス語の頻度順の単語集はこれくらいしかないし、出版社がラウトレッジというのも良い。

で、わたしが一通り読んだ感じでは、だいたい納得できる単語が並んでいるような気はする。もちろん、初歩的な教科書には出てくるが、コーパスには頻度が低いような単語もあるし、その逆もある。あと、新聞なども含まれているのか、時代を感じさせる単語もあり。例文を理解する能力を考えて、多分、仏検二級くらいのレベルの時に読めばちょうどいいかもしれない。とにかく、誰かが何の基準で決めたのか分からないような単語集より、ともかくも客観的な統計に基づいて決められた単語を覚えるほうが、やる気も湧く。人によっては主題別の単語集や語源別に覚えたりするほうが良いかもしれないが、頻度順も一つの選択肢だし、わたしみたいに自分の語彙力を確認しつつ足りない語彙を補うようにも使える。

If you want a frequency dicitonary of French, you do not have too much choice.

Routledge(2009/3/26)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0415775304

2017年2月27日月曜日

Dan Roam "Draw to Win: A Crash Course on How to Lead, Sell, and Innovate With Your Visual Mind" [勝つために描く:視覚的知性によって導き、売り、革新するための特訓コース]

目次:1生活が懸かっているように描く 2最も良い絵を描く人が勝つ 3まず円を書いて名前をつけよう 4目を導けば頭はついてくる 5「誰」から始めよう 6導くためには目的地を描く 7売るためには一緒に描く 8革新するためには世界をさかさまに描く 9訓練するためには物語を描く 10分からない時は描く

要するにビジネスの場で「もっと絵を使え」という本。絵と言ってもイラストまで行かず、「図解」くらいだろうか。あくまでビジネスだから「描くことは芸術ではなく思考である」ということで通している。絵の具体的な描き方としては、棒人間の描き方が少し載っているくらいで、別にこの本を読んでも絵自体が上達することはない。というか、この本が要求する程度の絵(図)は、教えられなくて誰でも描ける。

では、この本に何が書いてあるかというと、前半に視覚の重要性を解いているほか、後半は、そこらの安いビジネス書に書いてあることと大して変わらない。ただ一点、何かと「絵(図)を描け」ということを強く訴えている点が違う。昔、「人生がときめく片づけの魔法」というベストセラーがあって、わたしも感心したけど、あの本も、具体的な片づけ方の方法という意味では他の本と大して違うことは書いていない。ただ、「片づけよう」と思わせる力がスゴかった。それと同じで、この本についても、この本が言っている絵の描き方はとても簡単なことだが、実践している人は非常に少ない。そして、スゴくやる気にさせる。

絵が多くて非常に読みやすい本でもあるし、ビジネス・仕事術・プレゼン術みたいなことに興味のある人は読んで損はないと思う。わたしとしては、普段は絵も描かないし、こんなビジネス書には手も伸ばさないが、なんか妙に魅かれるものがあって手を伸ばして、正解だった。以来、何かと絵を描くようにするようになって、まあ、それでもなかなかクリアできない問題もあるが、少し視野が開けた気もする。

After having read this book, I have been drawing diagrams everyday. I hope it help me to get out of the troublesome situation that I am now in.

Portfolio (2016/9/13)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0399562990

2017年2月19日日曜日

Madeline Y. Hsu "Asian American History: A Very Short Introduction" [アジア系アメリカ人の歴史:非常に短い入門]

目次:1.帝国と移民 2.人種とアメリカの共和制 3.周縁で生きること 4.戦争の試練 5.帝国主義と移民と資本主義

主題はタイトルの通り。特に戦前までは中国人・フィリピン人のほか日本人がほぼ主役と言って良い。特に戦前はアメリカも人種差別が酷く、日本からの移民にとってもなかなか苦難の歴史で、日本人は全員読んでいいくらいの話かもしれない。この件については、高校の歴史の教科書でも記述が足りないところだ。というのも、当時のアメリカを含む人種差別の酷さは、それが主たる原因とは言えないかもしれないが、日本が太平洋戦争を始める一つの理由にも挙げられるし、日本人が知らなくていい話ではない。

この本はトランプ政権が誕生するわずか前に出たので、それ以降のことは触れられていない。一通り騒動が収まって数年後くらいには第二版で追記されることになるのかもしれない。現状では、日本政府は、アメリカの入国規制について「国内問題である」としてコメントを控えているようなことで、それも仕方がないかもしれないが、この本を読めば、戦前の日本政府が人種差別については強く抗議していたのと比較できる。当時は有色人種の国で国際的に発言権があったのが日本くらいなので、国際連盟とかの歴史を紐解けば、そういう日本の闘いももっと明らかになるが、この件はとにかく現代日本人に知られていない。

個人的には実はUCLAに所蔵されている日本人収容所の記録文書類を調べたことがあり、その時は収容所内部の生活を見ていただけだったが、こういう広い視野から見るのはとても大切なことだ。この本で扱われているのは「アジア人」というくくりだが、実際には、日本人のほか、中国・朝鮮・インド・フィリピン・ベトナムその他で、みんなそれぞれ出身国の関係もあり、状況が異なる。ただ、アメリカ人はセンサスを始め「アジア人」としか認識していないこともあるし、日本人は、かなりの割合を占める。現状のトランプ政権の移民政策を論じるなら、こういう過去のアメリカの移民政策の歴史、そして日本政府の対応も知っておくべきだろう。少し英語が難しいところもあるので、翻訳で広く日本人に届けばいいと思うのだが。

This book put the Trump's border control policies into the perspective.

Oxford Univ Pr(2016/12/7)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0190219765

2017年2月10日金曜日

Apa Editors "Berlitz Hide This Spanish Book For Lovers" [ベルリッツ恋人のためのスペイン語の本]

早い話が恋人のためのフランス語の本のスペイン語版で、男女が知り合ってセックスしてからお付き合いするまでに必要なフレーズ集。例によって装丁からお洒落だから、特に女性はお持ちになられては如何か。バレンタインの贈り物に最適とかなんとか。

ただ、個人的な話だが、ドイツ語を勉強しているという30代女性を拙いドイツ語で飲みに誘おうとする50代男性を目撃したことを、ふと思い出した。美男美女なら成り立つんだろうが。

Not very practical for me, though it can be useful for handsome guys or sexy girls who do not need to talk much. Ideal for Valentine's gift maybe.

Hide This(2006/1/30)
言語: 英語
ISBN-13: 978-9812468482

2017年2月8日水曜日

Pénélope Bagieu "Cadavre exquis" [たえなる屍]

タイトルはシュルレアリスム用語らしいが、内容との関係が分からない。主人公は22歳の女の子で、日本で言えば、キャンペーンガールというところだろうか。なかなか大変なお仕事だ。失業者の彼と同棲しているが、毎日詰まらなそうな感じである。ある日、とあるアパートでトイレを借りたところ、住人が孤独な有名作家で、彼といい感じになって彼に乗り換えることになる。そこに元妻とかいう編集者が現れて、ここまでは普通に有り得る話だが、この作家、実はかなりのわけあり人物で…。

わたしとしては、この作者の絵が好きだし、読んでいて楽しかったが、一般論としては、まず「なんやねんこの終わり方」という読後の感想だ。こういう佐村河内的なことが実際に可能かという話は別としよう。そして道徳的にどこうみたいな野暮なことは言わないことにしよう。それにしても、最後の終わり方は、流れ的に不自然過ぎて、わたしとしては付いていけない。特に主人公が突然別人になっており、伏線はあるものの、弱すぎる。変貌するならもう少し頁数が欲しかった。ただまあ、わたしが鈍いだけでこれで成り立っていると思う人もいるのかもしれないし、少なくとも大半は面白くて一気に読んでしまったから、お勧めできないわけではない。ただ、わたしなら、この作者ならジョゼフィーヌとかのが最初に読むには良いと思う。

Juste un seul problème: je ne comprends pas les transformations des deux héroïnes. Je ne suis pas assez délicat, comme notre écrivain peut-être?

Folio (27 octobre 2011)
Langue : Français
ISBN-13: 978-2070444953

2017年2月7日火曜日

Berlitz Publishing "Hide This French Book for Lovers" [恋人のためのフランス語の本]

簡単に言うと、特にセックスとその前後のためのフランス語フレーズ集。男女は問わない。流れとしては、どっかのバーで知り合う→セックス→付き合う→結婚→妊娠→離婚みたいなことらしい。フレーズの量は大したことがないが、イラストも装丁もお洒落で、フランス人あるいは双方共フランス語を話せる恋人のベッドルームに置いておくとロマンチックかも知れない。差し当たりわたしには用のない本のようなものの、読んでいて心が和むし、これはこれで言語の一分野であり、勉強になる。

全くの余談だが、昔、フランス語の勉強をしようとしてフランス映画を見ようとしたところ、字幕付きで安く手に入るのがポルノ映画ばかりで、まあお洒落なんだろうと思って見始めたところ、確かにお洒落ではあるが、コトの性質上、ほとんど会話がなかった。性交シーンは基本的に音楽が流れているだけだし、そうでないシーンでも、よくて主人公の女の独白が少々ある程度で、ほとんど勉強にならない。考えたら当り前のことで、外国語の最高の上達法は、外国語を話す恋人を作ることだとよく言われるが、単にセックスに必要な外国語力なんか、この本程度のことかもしれない。フランス語を学び始めて数か月も経てば、この本は読めるだろう。

A cute book for the bedroom, if you both speak a little French.

Hide This (2006/11)
言語: 英語
ISBN-13: 978-9812469793

2017年1月24日火曜日

Stéphane Escafre " 1064 exercices pour bien débuter aux échecs" [チェスを始めるための1064問]

目次:1.ゲームの規則 2.チェックメイト 3.チェックメイトの方式 4.戦術兵器 5.序盤 6.終盤 7.チェックメイトの攻撃 8.訓練 9.チャンピオンのように指してください 10. 面白い九つの練習

チェスの最善の入門書は"Bobby Fischer teaches chess"だし、ルールを知らない人がこの本から始めるのはあまりお勧めしないが、二冊目くらいにちょうどいいかもしれない。最初の内はルールを説明しているが、最終的には3手メイトとかが普通になってくる。人によってはチェス盤を用意する必要が出てくるかもしれないが、わたしは全部頭の中で解けた。いくつか誤りもあったが、致命的ではない。それよりも印刷の見易さが勝っている。フランス語だが、仮にフランス語が全く読めない人が読んでも、棋譜さえ読めば、たいてい理解できそうだ。

わたしの理解では、チェスにはstructure[戦型]とcombination[読み]の二つの面があるが、この本は大半が後者の面に関するもので、これもFischer本と共通だ。そもそもどんな攻撃やチェックメイトがあるのか分からなければ危険な形も強い形も分からないし、妥当なところだろう。この点、日本語のチェスの本はやたらマニアックなオープニングの研究書ばかりのイメージがあり、強くなりたければ、あるいは楽しみたければ、洋書を読むのは避けられないだろう。日本で一向にチェスが普及しない原因はもちろんあれこれあるわけだが、一つには、こういう優れた書籍が全く翻訳されないことにある。幸いにして日本では、チェスはムダにお洒落なイメージを持たれており、潜在的な需要は大きい。この本はフランスチェス連盟推薦書であり、幾つかの誤りを訂正しつつ翻訳すれば、チェスを指さない人でも将棋ファンには受けるだろうし、学校などを考えれば短期に一万部は行くだろうし、長く売れると思うんだがなあ。本当に、翻訳したい本の一つだ。

Le meilleur livre, pour lire après le Bobby Fischer.

Olibris (2001/1/5)
言語: フランス語
ISBN-13: 978-2916340500

Bobby Fischer, Stuart Margulies, Donn Mosenfelder "Bobby Fischer Teaches Chess" [ボビー・フィッシャーがチェスを教える]

この重要な本を紹介していなかった。説明不要でチェスの最善の入門書であり、これはわたしの個人的な意見ではなく、チェス界の総意に近いだろう。これ以上説明が必要とは思えない。

THE best introductory chess book. A must read for beginners. Period.

Ishi Press (2010/2/4)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0923891602

2017年1月16日月曜日

Arvind Narayanan, Joseph Bonneau, Edward Felten, Andrew Miller, Steven Goldfeder "Bitcoin and Cryptocurrency Technologies: A Comprehensive Introduction" [ビットコインと暗号通貨技術:包括的入門]

目次:1. 暗号理論と暗号通貨の入門 2.ビットコインはどのように脱中央化を達成するか 3.ビットコインの機構 4.どのようにビットコインを保管し使うか 5.ビットコインの採掘 6.ビットコインと匿名性 7.コミュニティと政策と規制 8.代替採掘パズル 9.プラットフォームとしてのビットコイン 10.アルトコインと暗号通貨の生態系 11.脱中央化された機関‐ビットコインの未来? 結論

全くタイトル通りの本でビットコインをブロックチェーンのアルゴリズム水準から社会的な問題に至るまで包括的に解説している。ビジネスマン向けのビットコインの入門書はコアになる技術について曖昧で意味が分からないし、かといって、いきなり実際のマイニングのコードを解説されても意図が分からないというようなことがある。この本はちょうど良く、かつ包括的だ。

というわけなので、コンピュータサイエンスの素養のないただのビジネスマンには、おそらくほとんど読めないのではないかと思う。基礎的なことから解説してあるとはいえ、公開鍵暗号やハッシュ関数に馴染みのない人には、かなり読みにくいと思う。通常の電子署名を理解している人なら、恐らく問題ない。わたしとしては、特に前半はまだるっこしい所もあったが、それだけ良心的に書いてあるということだろう。日本語訳「仮想通貨の教科書」という、これもまた適切なタイトルの訳書も出ているし、ある程度の基礎知識のある人には理想的な教科書だ。もちろん、これ一冊では細部まで届かないが、参考文献もしっかり指示されているから、いくらでも深められる。

それはそれとして、この本でビットコインを学んだわたしの感想としては、とりあえずビットコインを買う気にはなれない…。ビットコインはいわゆるサイバーパンクから生まれており、非常にアナーキーな思想から出発している。この本はバランスを取るために、実世界の権力(=国家権力)の介入もある程度考察しているが、それでもまだ国家権力を過小評価しているような気がする。現時点では、ビットコインは伝統通貨と交換可能だから価値を持っているようなもので、仮に交換が禁止された時に、伝統通貨のほうが見放される事態になることは考えにくい。詳しくはこの本で学べば分かるが、現行のビットコインには、決済速度の他にも、内部的な制約もかなりあり、冷静に判断するためには、ある程度技術的な詳細も学んでおくべきだろう。

ただ、現実的な話はともかく、暗号通貨を作るという実験は、それ自体面白いのは確かだ。わたしとしては、金に物を言わせて強力なハッシュパワーを保持している匿名のマイニングプールを信用するより、ともかくも民主的に現実世界の暴力を独占している国家を信用したほうが、(現状では)マシな気がするが、もちろん、暗号コミュニティは単に現状を追認するのではなく理想を追求しているのであり、それはそれで敬意を払いたい。わたしも本質的には自由と匿名の価値を重んじるほうだ。色々考える事はあるが、その出発点として素晴らしい本だった。

This book does what the title says. It was a great experience.

2016年12月15日木曜日

Arthur Conan Doyle "A Study in Scarlet" [緋色の研究]

有名なシャーロック・ホームズとワトソンの最初の登場作品。今更紹介するような小説でもないので以下個人的感想。

とにかく退屈する部分がなかった。キャラが魅力的というだけでなく、やっぱりストーリー・テラーなんだなと思う。中盤にユタ州の話がかなりあり、モルモン教への偏見に満ちているという評判だが、それはそれとして、ここも読ませる。わたしですら、そこそこ感情的に読んだ。復讐というテーマもわたしにハマる。終わり方は犯人が救われ過ぎて気に入らないが、まあ仕方がないかと思う。英語も特に読みにくい気はしない。

内容的にホームズを初めて読むという人にお勧めかどうかは分からないが、まずこれが第一作なのだから、順に読んでいく手もあるだろう。わたしとしても、これから出版年順に少しずつ読んで行こうと思う。

This novel is really exciting and contains no boring part, which is remarkable for such an aged classic novel. This is the first novel of Sherlock Holmes series and I will continue reading all the followings.

Wisehouse Classics (2016/5/9)
言語: 英語
ISBN-13: 978-9176372432

2016年12月13日火曜日

Sarah Cooper "100 Tricks to Appear Smart In Meetings" [会議で切れ者と思われるための100の方法]

「会議でスマートに見せる100の方法」ということで翻訳も出ているそうで、実際その通りの内容だ。スマートという言葉は誤解を招くかもしれないが、「切れ者」くらいの感じ。

著者は笑かそうとして書いているんだと思うが、わたしが見た感じでは、会議における典型的なアメリカ人の振る舞いのコレクションというところで、そこまで笑えるわけではない。基本的にアメリカ人は芝居がかっているし、これくらい普通としか…。いわゆる「意識髙い系」の新人などが読めば、普通に役立つ感じがある。純粋にお笑いとして考えると、「仕事をサボろう」というよりは「上手くやって出世しよう」という軸で書かれているから、わたし的には気持ちが離れる。

While I understand the author trying to be funny, which she is, for me it is a collection of typical and stereotypical Americans' behaviors in meetings. Many Japanese hope to act like Americans, as elsewhere in the world, as we see in the theatrical TED presentations, so this book makes a great coursebook for them. I am serious.

Square Peg (2016/10/6)
言語: 英語
ISBN-13: 978-1910931189

Eleanor Nesbitt "Sikhism: A Very Short Introduction" [シク教:非常に短い入門]

目次:1.導入 2.ナナク師と最初の継承者たち 3.グラント・サヒブ師 4.ターバンとカルサと行動規範 5.現代シク教の形成 6.インドの外のシク教 7.カースト・ジェンダー・他の信仰に対する態度 8.シク教と第三千年紀

知らない人もいるかもしれないが、シク教は主としてインドのパンジャブ地方の宗教で、信者数は2000万人超というから、なかなかの勢力である。インドの多数派はヒンズー教だが、我々がインド人をイメージする時に頭にターバンを巻いているのがシク教徒ということらしい。西洋的にはイスラム教徒と見分けがつかずに無意味な差別が横行することもあるらしい。インドにはもちろん、ムスリムもいるが、日本人としては、あまり間違えないところである。

実際、本書を読んでいると、イスラム教やキリスト教よりは随分寛大な印象を受ける。まず、他人を改宗させなければならないという発想がない。宗教はそれぞれでいいんじゃないのくらいの話で、特に他宗教を差別する思想がない。もちろん、歴史的にはシク教徒に対する迫害もあり、それに対応して尖鋭化したり、母体であるヒンズー教との差異を強調しようとしたりすることもあったようだが、その割には寛大さを維持し続けている。わりと日本人にはなじみやすい考え方と思われる。そして、インド人がたいていそうであるように、教義上はカーストを否定していながら、実生活では未だにカースト意識が抜けない。困ったものだ。日本語ではあまりシク教の分かりやすい入門書もないようで、この本くらいが一番だろう。

While Japanese people seldom confuse Sikhs with Muslims, this book still provides great insights about this religion or lifestyle. I guess Westerners with little knowledge about Sikhism will gain great benefit from learning Sikhism.

Oxford Univ Pr 2nd ed. (2016/07)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0198745570

2016年12月2日金曜日

Jeff Kinney "Diary of a Wimpy Kid # 11: Double Down" [軟弱な子供の日記11: 倍賭け]

当たり外れなく面白いこのシリーズも11巻に突入し、翻訳「グレッグのダメ日記」も続いているようで、人気があるんだろう。毎度繰り返すけど、原文で読む事を強く推奨する。翻訳の質とかは見ていないので知らないけど、英語は易しいので、英語で読むに越したことはない。マンガみたいなものだし。

毎度予約で買って直ぐに一日か二日で読んでしまっている。わたしの感想としては、「自分が良い両親の元に生まれたとしてもこんなもんだったかな」というところだ。主人公の家庭は、アメリカで富裕層とまでは言わないまでも、上流と言える。まあ、そうでなければ軟弱な子供が明るく生きていくのは難しい。現代日本でも、広い自室に自分のテレビやゲームやPCが装備されている子供は、庶民とは言えないだろう。・・・などと下流の軟弱な子供だったわたしは考えるが、児童文学などというような立派なものでもなく、マンガと思ったほうがいい。わたしは「多読」とかいう英語トレーニングを蔑んでいるが、多読に向いているのかもしれない。

It was a nice reading as usual. One of my favorite series.

Harry N. Abrams (2016/11/1)
言語: 英語
ISBN-13: 978-1419723445

2016年11月22日火曜日

Matthew Reynolds "Translation: A Very Short Introduction" [翻訳:非常に短い入門]

1. 言語を渡り歩く事 2.定義 3.言葉と文脈と目的 4.形式と自己同一性と解釈 5.権力と宗教と選択 6.世界の言葉 7.翻訳文学

話は、ネイティブスピーカーのいない謎の中間言語、"kanbun-kundoku"漢文訓読から始まる。そう言われてみれば、我々はもっとこの奇妙な言語についてもっと真剣に考えるべきだった。本の主題は、翻訳者が翻訳をする時に感じている様々な方向からの制約、そして、翻訳が逆に言語や社会に与える影響。機械翻訳にも触れられるが、いずれにしても、技術的な話には深入りせずに、あくまで言語・社会と翻訳との関わりが主題だ。

個人的な事情として、わたし自身、翻訳者なので、色々「翻訳者あるある」な話や考えさせられる話があった。翻訳者や翻訳を目指す人は読んで損はない。mono-lingualな人がこの本を読んでも冴えないかもしれないが、それにしても、政治などが翻訳で決定的な影響を受けるようなことは良くある話で、ごく最近でも酷い誤訳が新聞やテレビをムダに騒がせていたりするのだから、誰でも翻訳についてこの程度の知識はあって良い。もっとも、mono-lingualがこのブログを読んでいるとも思えんが…。

さらに全く個人的な事情だが、翻訳業界では、「いかにも翻訳」な文体が軽蔑され、「日本語らしい」文体が良しとされているが、何かどうでもいい気がしてきた。昔なら、わたしが好きな宮澤賢治は翻訳でもないのに翻訳調の詩を書いて完全に成り立っている。最近なら、わたしが嫌いな村上春樹も翻訳調だ。そして何より、日本語は漢文訓読によって回復不能な影響を蒙っており、英文翻訳調を漢文訓読調に直しても何にもなっていない気もしてきた。まあ、言語感覚が繊細な人なら、また違う見解もあるのかもしれない。

It was a very good reading. I am a translator myself and I guess that my English a bit odd for native English speakers. Also, my Japanese is too affected by foreign languages and of course by kanbun-kundoku. That sounds awkward but being a walking-Babel is a source of a lot of fun.

Oxford Univ Pr (2016/09)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0198712114

2016年11月17日木曜日

Scott Adams "Dilbert 2017 Day-to-Day Calendar" [ディルバート日めくりカレンダー2017]

そろそろ今年もそんな時期で、来年も定番のディルバート日めくりカレンダーを使う予定。Dilbertを知らない人はdilbert.comを見れば直ぐにテイストが分かるし、何なら毎日最新のマンガがWebに載るが、やはりマンガは紙で読みたいところもある。下に箱裏だけ訳しておく。

次にあなた自身の髪の尖ったボス(Pointy-Haired Boss:主人公のボス)が、何か予測できない問題がないか聞いてきたら、ディルバート2017カレンダーを素早く見て、上層部の素晴らしい経営能力によってすべてがコントロールされていると堂々と保証しよう。もちろん、こんなことをしても、こんな馬鹿げた質問には何の役にも立たないが、少なくともあなたは立派に見えるし、ディルバートのマンガを見るついでができて、もっと悪い事態も有り得たことを確認できるだろう。この日めくりカレンダーは全ての頁にディルバートのマンガが載っていて、一年間あなたの責任逃れを支援し、自分の仕事はマシだと思えます。

I am a big fan of Dilbert since many years. My co-workers and bosses do not read English readily so these cartoons are my secret pleasure which everybody always see but do not understand. Very comforting.

Andrews McMeel Publishing (2016/5/24)
言語: 英語
ISBN-13: 978-1449476656