2015年11月12日木曜日

Baruch Fischhoff, John Kadvany "Risk: A Very Short Introduction" [リスク:非常に短い入門]

目次 1.リスクに関わる決定 2.リスクを定義する 3.リスクを分析する 4.リスクに関わる決定をする 5.リスクの認知 6.リスクの伝達 7.リスク、文化、社会

意思決定理論のリスクに関わる部分の解説といったところ。大学で言えば経済学とか心理学で教えるような話で、わたしとしては新しい知見は少ない。このあたり、いくつかの公理を導入した整然とした理論体系もあり、現に人工知能の研究などでは使われているわけだが、現実の人間の行動に肉薄するには程遠い。まず、人間の選好を数値化するところで無理があるし、公理に縛られる人間なんかいない。というわけで、公理的体系と実際の人間の行動のズレを「逆説」とか言って論うのも面白いが、実際のところ、この辺りの話を一回りすると、特にその先何もないなあという感じは避けられない。今までこの分野に興味のなかった人、特に経済学・心理学などの学生にはこの本は入門にいいかもしれない。進んだ読書として、政策への応用としては"Nudge"みたいな本も面白いし、また、単純に面白いという意味では、この本でも言及されるカーネマンの"Thinking, Fast and Slow"を強くお勧めする。

Very informative for students for psychology or economics.

Oxford Univ Pr(2011/07)
英語
ISBN-13: 978-0199576203

2015年11月9日月曜日

Peter Sarris "Byzantium: A Very Short Introduction" [ビザンチウム:非常に短い入門]

目次 1.ビザンチウムとは何か? 2.支配都市コンスタンチノープル 3.古典時代から中世へ 4.ビザンチウムとイスラム 5.生存のための戦略 6.文書、絵、空間、精神 7.帝国の終焉

いわゆる東ローマ帝国の通史。VSIの歴史カテゴリはあまりハズレの記憶がないが、これも素晴らしい。

東ローマ帝国・ビザンチウム帝国は千年以上に渡って地理的・政治的・経済的・文化的のすべての意味で非常に重要な位置を占めていたが、わたしの記憶では学校の世界史の授業でそんなに深く教えられた記憶がない。どうもこの本の話では、完全にキリスト教帝国だったので、ルネサンスの人文主義者たちからバカにされ、"byzantine"というネガティブな形容詞にされたりで、西欧でも未だに評価されていないらしい。

また、当時はこの帝国は全世界の人が単にローマ帝国だと思っていたのだが、元のローマ帝国の西側(イタリアとかフランクとか)の連中が勝手にカトリック教会を作ったりするし、特に末期には十字軍だとかがコンスタンチノープルを蹂躙しているうちに、帝国の中の人たちが「俺たちはローマ=ラテンではない。ギリシアだ」と主張するように変化したらしい。この帝国、アラブやペルシャに対して常に軍事的に劣勢だったが、驚異的な外交力と情勢分析力で千年間生き延びた。最後はトルコ人によるジハードによって蹂躙されたのはとても悲しい話だ。

わたしの世界史の知識はかなりの部分がVSIで形成されていて、日本の教科書がどう教えているのか知らないが、ここは特にトルコとギリシアの関係や、ロシアやシリアやイランとの関係を考える上では必須の知識だと思われる。わたしが無知なだけかもしれないが、日本でもビザンツの歴史はもっと知らされるべきだし、何ならこの本を翻訳しても、結構な衝撃力があるんじゃないかと思う。

This book is a great reading. Indispensable background knowledge for understanding modern international relations around Greece, Turkey, et cetera.

Oxford Univ Pr (2015/10)
英語
ISBN-13: 978-0199236114

2015年10月6日火曜日

Emily Bronte "Wuthering Heights" [嵐が丘]

これはモームの「世界の十大小説」の一つに挙げられて定評がある上に、やたら舞台化もされている。どうも世間的には恋愛話と理解されているようだが、実際の原書は陰惨な復讐譚で、体調の悪い時に読むと気分が滅入る。構成が複雑とかいう評判だが、普通に読んでいて混乱するところはなかった。筋を追うのが苦手なわたしでも平気だったから、この点は誇張され過ぎている。有名な小説だから、読んで損はない。翻訳は見ていないが、古典だからそんなに酷いことはないだろう。粗筋はWebでいくらでも見つかるし、以下個人的な感想。
わたしとしては、"Pride and Prejudice"[高慢と偏見]の次に何を読もうかと探していたところ、「十大小説」というのもあるし、何より復讐というのが気に入ったので、この小説を選んだ。だいたい復讐譚は「金色夜叉」にしろ「モンテ・クリスト伯」にしろ外れがないと思っていた。しかし、この小説が外れというわけではないが、何にしろ復讐譚に付き物の爽快感が全くない。普通の復讐譚というのは、まず最初に気の毒な被害者がいて、その被害者に同情し、加害者を憎むところから始まるものだが、この小説では被害者=復讐者であるHeathcliffが嫌な奴で、ほとんど同情できない。加害者もどうかというような奴だし、当初の被害と関係のない子どもたちもHeathcliffの復讐の対象になるのだが、この子供たちもイヤな感じでどうしようもない。普通に児童虐待だし、監禁とか暴行とか強制結婚とか当時でも重罪のはずだが、何か弁護士も抑えられているとかで、正義も司法もあったものではない。脇役も悪党ばかりだし、主たる語り手たる家政婦も思慮の足りない感じに設定されている。作者が戦略的に読者の共感を潰して回っているとしか思えない。
さらに、これは作者がどの程度意識しているのか不明だが、19世紀のイギリスのことなので、"Pride and Prejudice"と同様に過酷な格差社会が前提になっている。もともと浮浪児の暴力的なHeathcliffが上流階級のCatherine(これもイヤな女)に失恋するところが話の始まりだが、復讐の中核をなすのが財産の分捕りと、財産に伴う教育や教養をその子どもから剥奪するというようなことで、要は格差を逆転するという陰湿な話である。
そんなわけで読んでいる間中、「なんでこんな話書くの?」と思い続けることになり、最後に正義が勝つという希望は早いうちに失われる。実際、最後は何か分けのわからない発狂的なことで終わり、読み終わった後、やはり「なんでこんな話書くの?」と言うしかない。この点について作者のエミリー・プロンテの言葉が残っていないらしく、実際聞かれても作者もよく分からなかったかもしれない。
さらに関係ないが、Kate Bush "Wuthering Heights"という歌があり、参考までに聞いてみると、原作とほとんど関係がない。実際、小説を読まずに作られた曲らしいが、原作を踏まえて聞くとなかなかの狂気である。しかし、多分、世間でいう「嵐が丘」のイメージはKate Bushのほうなんだろう。とにかく、退屈はしなかったが、これを読んでいる間は気が滅入った。次はもうちょっと明るい小説を読もうと思っている。
Very depressing, thought worth reading and not boring. I would pick a more pleasant novel next.
Penguin Classics (2002/12/31)
英語
ISBN-13: 978-0141439556

2015年10月4日日曜日

Scott Adams "Dilbert 2016 Day-to-Day Calendar"

今年もそろそろカレンダーの時期で、定番のディルバート日めくりカレンダーを確保した。近頃はIT業界でもDilbertを知らない人が増えてきた気がするが、簡単に言えばIT業界を舞台にしたマンガである。エンジニア目線で事務方や営業を皮肉る内容が多い。色々な日刊紙に掲載されているほか、Webサイトdilbert.comでも読める。従って、単にマンガを読みたいだけなら、コミックもカレンダーも買う必要がない。IT業界マンガと言えば、日本では最近「お話になりません」が気に入っているが、DilbertカレンダーでアメリカのIT業界の空気を漂わせるのも乙なものだ。来年も一年お世話になるだろう。

A classic comic calendar. My stable on the desk.

Andrews McMeel Publishing; Pag版 (2015/6/9)
英語
ISBN-13: 978-1449465148

2015年10月2日金曜日

Adam J. Silverstein "Islamic History: A Very Short Introduction" [イスラム史:非常に短い入門]

目次 1.物語 2.人々と文化 3.制度 4.源泉 5.競合するアプローチ 6.宗教的意義 7.政治的意義

イスラム教圏の世界史。前半はオーソドックスな世界史的展開を辿る。後半は現代への影響を含めて、歴史・歴史学上の色々な概念に関する説明。非常に分かりやすく、明快に書かれていて、初心者にもお勧めだ。この辺りの歴史は、イスラム教の概念も重要ではあるものの、民族(アラブ人・トルコ人・ペルシャ人・ベルベル人・・・)との関係も実際には複雑で、この本で随分整理された。特に最近は何かと騒ぎの多い地域であり、何でモメているのか・どんなレトリックが使用されているのかを把握するには、この本程度の知識は必要だろう。

全く個人的なこととしては、日本でのイスラムの専門家とされるI氏の話を聴いたところでは、イスラム教ではジハード=殺人が義務のような話だったが、実際のところどうなのか分からない。少なくともこの本はそういう解釈はしていないが・・・。もう少し調べる必要がありそうではある。

A good reading about Islam. It provides basic knowledge to understand the modern islam world, too.

OUP Oxford (2010/1/21)
英語
ISBN-13: 978-0199545728

2015年9月28日月曜日

John Parker, Richard Rathbone "African History: A Very Short Introduction" [アフリカ史:非常に短い入門]

目次:1.アフリカの概念 2.アフリカ人:多様性と統一性 3.アフリカの過去:歴史的源泉 4.世界の中のアフリカ 5.アフリカの植民地化 6.未来を想像し過去を再構築する 7.記憶と忘却:過去と現在

アフリカ史ということだが、VSIの定例でアフリカ史学の方法論みたいな話が前半にくる。この辺り、ポストコロニアリズムやら偏見への反駁やらで一々予想通り面倒くさい。しかし、奴隷貿易や植民地戦争の話などはわりと普通に歴史として読めて勉強になる。特にその辺りに興味のあるムキにはお勧めだ。

Somewhat lengthy statements around post-colonialism or imperial prejudices are necessary and we must understand it. Then clear histories on topics such as slavery or colonialism are fascinating.

2015年9月27日日曜日

Rebecca Elliott "Painless Grammar (Barron's Painless Series)" [苦痛でない文法]

目次:1.発話の部品 2.文の構築と区切り 3.一致 4.単語、単語、単語 5.ゴタついた文章をキレイにする 6.メールの書き方 7.まとめ;文書の編集

本棚から発掘して読んだ。アメリカなら中学生か高校生が読むくらいの「正しい英語」を教える本。もちろん、非ネイティブが間違えるポイントとネイティブが間違えるポイントは全然違うので、直接日本人にどれくらい役立つのかは不明だ。また、「正しい日本語」みたいな本と同じで、「別にええやん」みたいなこともあるが、全体的にそこまで高度な話でもなく、教養ある人の英文ということでは、割と最低限の規則かもしれない。英文自体簡単だし、退屈しないように工夫されているし、まあ大学一年生くらいから洋書を読む練習くらいで読んでもいいかも知れない。

Fascinating, it explains common grammatical mistakes native English speakers often make. Since we non-native speakers' weak points are quite different from those of native speakers, it is not so useful for us, but still interesting to study.

Barrons Educational Series Inc (2011/08)
英語
ISBN-13: 978-0764147128

Elleke Boehmer "Nelson Mandela: A Very Short Introduction" [ネルソンマンデラ:非常に短い入門]

目次:1.マンデラ:物語と象徴 2.人生を書く:初期 3.国家のイコンの成長:後期 4.影響と交流 5.ソフィアタウンの洗練 6.男性的演技者 7.刑務所の庭の影響 8.マンデラの倫理的遺産

マンデラの伝記で、何で買ったのか忘れたが、本棚から発掘されたので読んだ。VSIに収録されている伝記は色々読んでいるが、時代が新しい人なので、今まで読んだ中で最も情報量が多い。圧倒されるが、なにせ、生存環境がわたしに縁が無さ過ぎる上に、人物的にも違い過ぎて、リアリティが感じられない。考えて見れば、今までに読んだ伝記は学者か文学者ばかりで、大政治家は馴染みがない。大人物というのはこういうことなんだろうけど、自分の参考するには距離があり過ぎる。というわけで、わたしにはこの本を評価する資格がないが、この伝記が力作であることだけは間違いない。

A great man. Too great for me to understand.

Oxford Univ Pr (2008/08)
英語
ISBN-13: 978-0192803016

2015年9月23日水曜日

Terence Allen "Microscopy: A Very Short Introduction" [顕微鏡学:非常に短い入門]

目次:1.顕微鏡と新世界の発見 2.顕微鏡の種類 3.光学顕微鏡‐アッベから超解像度へ 4.何を見ているかを識別する 5.電子顕微鏡と原子解像度の夜明け 6.表面の電子顕微鏡 7.他の方法による拡大 8.顕微鏡の影響

顕微鏡の技術解説。光学顕微鏡と透過・走査電子顕微鏡を丁寧に解説しているが、高校程度の物理の知識では理解しきれない気がする。数式などは避けられているが、英語力を別にしても読めるのは理系の大学生以上だろう。物理学一般、特に光学と電磁気学のある程度の知識が必要だ。内容的には相当最先端で、いわゆるナノテクの領域まで踏み込む。この辺り、原子を一個ずつ操作するような最新技術の話だ。また、生物に対する顕微鏡の使用に関する解説がかなりの分量になっていて、たとえばノーベル賞受賞者下村脩先生の業績も文脈の中で理解できる。これだけでもなかなかの収穫だ。誰にでもお勧めというわけに行かないが、研究・業務で顕微鏡を使う人は、顕微鏡技術自体に興味がなくても、教養として読んでおいて損はない。類書もあまり見たことがないし。

Too difficult for high school students, but a very good reading for those who use microscopy at routine basis.

Oxford Univ Pr (2015/08)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0198701262

2015年8月30日日曜日

David Blockery "Structural Engineering: A Very Short Introduction" [構造工学:非常に短い入門]

目次
  1. すべてのものは構造を持つ
  2. 形は機能に従うか?
  3. ストーンヘンジから摩天楼まで
  4. 構造を理解する
  5. 動かすものと揺らすもの
  6. 抵抗力

構造力学の入門書という体で、実際大家なんだろう。業界の愚痴や広大な抽象論から入るのはVSIの一つの典型だ。他方で結構高度な概念に踏み込んで説明しているところもある。わたしは初歩的とは言え物理も構造力学も多少やったことがあるから言いたいことは分かるが、完全な素人には説明不足なのではないかと思う。なかなか熱い思いを感じる本ではあり、わたしとしても、再確認できることもあったが、全体的な結論としては素人にはお勧めしかねる本である。多少工学の素養がないと厳しい。
Good reading, but a bit difficult for absolute beginners.
Oxford Univ Pr (2014/11)
ISBN-13: 978-0199671939
英語

2015年8月13日木曜日

John Finney "Water: A Very Short Introduction"[水:非常に短い入門]


  1. 水、どこにでも水・・・
  2. 水分子と相互作用
  3. 氷としての水
  4. 液体―そして期待としての水
  5. 説明されるべき特異性
  6. 生体分子としての水
  7. 過去と現在のいくつかの論争

ひたすら水の構造を解説する本。氷と言っても17種類あるとかで、色々大変だ。水には他の液体にはない様々な特徴があるが、一々構造から解説していく。詳しくは読んでもらうしかないが、基本的にはH-O-Hの曲がった構造、そしてさらに細かく見ると酸素が電気的に陰性に、水素がそれぞれ陽性になるところから隣の水分子と正四面体ができ六角形ができたりしてみたいな話がずっと続く。というようなわけで、水の文化史とか気象変動とか水戦争とかそんな話は全くない。最後には水に記憶があるとかないとか(優しい言葉をかけ続けると良い水がとかいうような)そんな話にもなるが、基本的にはハードな物理化学。ただ、話が上手いので読みやすいのは確か。
Physical chemistry of water(s). Very readable.
Oxford Univ Pr (2015/11)
英語
ISBN-13: 978-0198708728

2015年7月21日火曜日

Pierre Carbone "Les bibliothèque" (Que sais-je?)[図書館(クセジュ)]

目次
  1. 現実世界の中の図書館
  2. 媒体の経済の中の図書館
  3. 組織の管理の中の図書館
  4. 資産の保存と価値付け
  5. 文化の発展
  6. 教育と訓練の支援
  7. 研究と調査
  8. 情報と資料収集
  9. 図書館間の協力
  10. デジタル図書館
  11. 電子資料と図書館コンソーシアム
  12. オンラインサービス

基本的にはフランスの図書館界隈の現状をQue sais-je?にありがちな淡々とした調子で叙述している。ここ十年くらいの図書館業界は色々な混乱があるが、基本的にはIT革命、つまりネットとデジタル化(numérisations)に巻き込まれているということで、混乱が収束するまでまだ後十年はかかるだろう。もちろん、一時期の「小さな政府」みたいなこともあって、日本なんかは民営化も進んでいるが、フランスはわりとこの波に抵抗できたようだ。著作権への対応なども日本と随分違うが、今後の日本の図書館業界には、色々参考になることもあるのではなかろうか。特に深い考察や今後の指針が示されているわけではないが、フランスの図書館事情をコンパクトにまとめた一冊である。
それはそれとして、こういう本は翻訳すれば一定数売れるに決まっているように思うのだが。フランスの図書館事情を解説している本なんてほとんど出ていないのだし、最低でも日本にある図書館は各館一冊ずつは買うだろうし、志のある図書館員や司書課程の学生と教員も買うだろう。出版業界の人間も買うだろうし、情報科学界隈でも売れそうである。簡単に一万部くらい出そうな気がするが、甘いのかな。
Une bonne introduction pour les bibliothèque en France./
PRESSES UNIVERSITAIRES DE FRANCE - PUF(14 septembre 2012)
ISBN-13: 978-2130594550
フランス語

2015年7月14日火曜日

Frank Close "Nuclear Physics: A Very Short Introduction" [核物理学:非常に短い入門]

目次
  1. 大聖堂の中の蠅
  2. 核化学
  3. 強い力
  4. 奇数と偶数と殻
  5. 核の生成と崩壊
  6. 周期表を越えて
  7. 特異原子核
  8. 応用核物理

核物理学の概説。わたしとしては分かりきっている部分もあったが(特に化学とか星の中の反応)、多分、核子以下の水準での物理学の概説書としては、なかなかこれ以上の本も少ないのではないかと思う。というのも、化学の水準ならそこまで降りる必要がないし、核物理学自体、日本でも世界でもあまり人気の学科でもない・・・。個人的には明日MRI(著者はNMRと呼びたいようだ)の検査を受けることになっているので、ムダにタイムリーである。放射線を扱う人の他、化学系の人の基礎教養にも良いのではなかろうか。VSI随一の名著"Particle Physics"の著者でもあり、安心だ。この本の最後はなかなか酷い名言で締めくくられているが、是非最後まで読んで呆れて頂きたい。
本書中にも書いてあるが、VSIには本書と"Particle Physics"のほかにも核物理学関連の本があり、いずれも面白い。
  • "Nuclear Power"・・・原子力発電の色々な技術を解説。
  • "Nuclear Weapon"・・・これはどっちかというと政治が重い。
  • "Radioactivity"・・・放射線利用の概説。

Oxford Univ Pr (2015/10)
ISBN-13: 978-0198718635

2015年6月23日火曜日

Veronika Schnorr, Martin Crellin, Adelheid Schnorr-Dummler, Gabriele Forst, Raymond Sudmeyer "Mastering German Vocabulary: A Thematic Approach" [ドイツ語語彙攻略:主題別アプローチ]

5000語超のドイツ語単語集。Amazonでは絶賛されている本だが、類書が少ないんだと思う。二週間かかって全部読んだ。確かに良い本だが多分、最低で独検2級レベルからだろう。文法は完全に把握していなければ読めない。巻末に簡単な文法の解説があるが、この程度のことは完全に理解していないと本文が読めない。
この本の最大の利点は、例文が異様に充実している点にある。実際異様で、非常に初歩的な単語に対して付いている例文でも、理解するのに相当なドイツ語力を要する。この本は概して難易度の概念がなく、わたしは先頭から順に読んで行ったが、"sein"とか"vor"とか超初歩的な単語が最後のほうになって出てくる。後から読んだほうがマシだったかもしれないが、"haben"が出てくるのは真ん中あたりだった気が・・・。もちろん、この程度の単語を知らない人がこの本を読んでも非効率だろう。
難易度無視以外にも色々欠陥があり・・・
  • 若干古い。通貨はDMだし、IT関係の用語が完全に落ちている。
  • 名詞の複数形が書いていない。
  • 例文の英訳が逐語訳でないので知らない単語は別に調べないといけない。
ただ、これらの欠陥を補ってあまりある例文の充実ぶりというわけで、ドイツ語の文法は一通り終わった人なら読む価値はあると思う。
A good German vocabulary book. It has some drawbacks, including its relatively oldness (it lacks words for IT almost entirely), lack of plural forms of nouns and indifference to word frequency. However, the richness of example sentences compensates these faults and goes further.
Barrons Educational Series Inc (1995/08)
ISBN-13: 978-0812091083

2015年6月1日月曜日

Jonathan Slack "Genes: A Very Short Introduction" [遺伝子:非常に短い入門]


  • 1. 1944年以前の遺伝子
  • 2. DNAとしての遺伝子
  • 3. 突然変異と遺伝子変異
  • 4. マーカーとしての遺伝子
  • 5. 効果の小さな遺伝子
  • 6. 進化の中の遺伝子
  • 結論:遺伝子の様々な概念

遺伝子の解説書。最初の二章くらいは研究史と分子生物学の基本みたいなことで、日本で言えば高校の生物をちょっと超える程度。本題はその後で、1)分子生物学的な意味での遺伝子(DNA) 2)人口学的な意味での遺伝子(マーカー、犯罪捜査などに使う) 3)量的遺伝学的な意味での遺伝子(身長などの遺伝を決定する超複雑な変異など) 4)進化論的な意味での遺伝子(自然淘汰などとの関係) 5)人間の行動などを研究する社会生物学などが順に解説される。
印象に残るのは、要するに「複雑過ぎて永遠の謎」みたいなことが予想外に多いということだ。たとえば、血友病なんかは問題の遺伝子が特定されているが、こんなのは珍しい。最も熱い話としては、白人と黒人の間のIQの差がどの程度遺伝子のせいなのか、あるいは遺伝子なんか全く関係ないのか、科学的には判定できない。環境だの文化だのを別としても関連する遺伝子があまりに多過ぎて分析に堪えない。もちろん、IQが遺伝するの明らかだが、遺伝の影響を証明するのと実際の遺伝子を発見するのは全然違うことらしい。もっと単純な話、たとえば身長ですら遺伝子がよく分からない。統計解析の話はほとんど解説されていないが、要するに、関連する遺伝子が多過ぎて、どれだけデータがあっても有意な回帰式がほとんど作れないんだろう。実験が困難とか社会文化要素がとかいうこともあるが、それ以前に何より数学的に解析不可能なようだ。
そんなわけで、世間では遺伝子操作で超人を作るような話もたまに聴くが、どうやらこの本を読む限り、知能の高い人間どころか、身長の高い人間すら設計できないようだ。親の身長が高いと子の身長も高い傾向があるのは誰でも知っているが、それとこれとは全く別のことということは、本書で何度も強調される。地味なテーマだが、遺伝子に対する考え方がアップデートされた。
Genes are not merely sequences of DNA. Everybody knows that taller parents tend to born taller children, but specifying the genes responsible for this heredity is quite another thing, or, if I correctly understand this book, computationally impossible, because there are too many genes.
Oxford Univ Pr (2014/12)
ISBN-13: 978-0199676507