日本の仏教教団、特に禅宗の戦争責任を追及する本。
・・・というと狭すぎるけど、その上で、「もともと禅の教義自体に殺人を肯定する要素があるのではないか」という問いが立てられている。まあ昔から武士道とか剣道とかと禅がリンクさせられているし。
この話をどう考えるかは別として、こういう本を外人が書くしかなかったのは、情けない気もする。日本語訳の訳文の評判がよろしくなく、わたしとしても、決して好きなタイプの訳文ではないけど、この本に関しては日本語文からの引用が多く、敢えて英語で読むのはお勧めしない。意味的に特に気になることはなかった。つか、正直なところ、著者の主張より、引用のほうが遥かに重要だし。
高徳の僧侶とされている人が、政治経済社会科学等について、あり得ないほど無知なことを言って、がっかりすることは多い。その最たる分野がこの辺りのところだろう。禅僧が全員剣の達人でないのと同様に、社会的にバカでも仕方がないとは一応言えるが、この本が問うているのはそんなハイレベルなことではなく、仏教と道徳の関係だ。つまり、殺人に反対するのには、仏教の不殺生戒だけで十分だったはずだというようなことで。
2010年12月27日月曜日
2010年12月26日日曜日
Robert J. McMahon "The Cold War" (Oxford Very Short Introductions)
第二次大戦からドイツ再統一に至る冷戦の通史。この本は、VSIの一つでありながら、この分野の定番の概説書となっている。
完全にアメリカ目線で、いわゆる「リアリスト」ということになるだろう。アメリカが如何に対ソ冷戦を戦ったかということを冷徹に描く。欧州以外では熱い戦争も多かったが、原爆やらベトナム戦争やらはアメリカの世界戦略の一環であり、同情的な描写は一切ない。この世界観自体どうかと思うけど、実際、冷戦期のアメリカの思考はこの通りだったんだろう。これが冷戦の全貌だとは思わないが、定番と言われるだけのことはある。
個人的には、歴史関係の本を読んでいて、一番面白いのが冷戦期だ。時代も近いので、あんまり妙なことを言うのも不謹慎かもしれないけど、どうもスリルがあるというか、夢があるというか。
完全にアメリカ目線で、いわゆる「リアリスト」ということになるだろう。アメリカが如何に対ソ冷戦を戦ったかということを冷徹に描く。欧州以外では熱い戦争も多かったが、原爆やらベトナム戦争やらはアメリカの世界戦略の一環であり、同情的な描写は一切ない。この世界観自体どうかと思うけど、実際、冷戦期のアメリカの思考はこの通りだったんだろう。これが冷戦の全貌だとは思わないが、定番と言われるだけのことはある。
個人的には、歴史関係の本を読んでいて、一番面白いのが冷戦期だ。時代も近いので、あんまり妙なことを言うのも不謹慎かもしれないけど、どうもスリルがあるというか、夢があるというか。
ラベル:
Very Short Introduction,
政治
2010年12月24日金曜日
S. V. Gupta "Units of Measurement" (Springer Series in Materials Sciense)
簡単に言うと「単位の百科事典」。もちろん、中心はSI単位系の解説だけど、他の単位系の解説や、条約、関連する科学者の伝記まである。個人的には次元解析みたいな話には興味がある。多分、通読する人は少ない。たとえば、古代インドの単位に興味を持つ人は少ない。筆者がインド人で、多分、インド人向きに書いているからだろうけど。
読み物として考えると、同じテーマの本は日本語でもいくつかあるし、特段この本が優れている気もしない。はっきり言って娯楽性が低く、淡々とした本だ。ただ、この手の参考書誌は、似たような本が沢山重複して、初めて役に立つ。英語であるというのも重要な利点だ。
読み物として考えると、同じテーマの本は日本語でもいくつかあるし、特段この本が優れている気もしない。はっきり言って娯楽性が低く、淡々とした本だ。ただ、この手の参考書誌は、似たような本が沢山重複して、初めて役に立つ。英語であるというのも重要な利点だ。
2010年12月17日金曜日
Toby Segaran, Colin Evans, Jamie Taylor "Programming Semantic Web"
オライリーという出版者とタイトルから想像される通り、セマンティックWebに関する、広範囲に渡る、具体的な概説書。翻訳もよくできているようだ。しかし、わたしはこの件について自分でコードを書く予定は今のところないし、ついでに、セマンティックWebに関してはもともと懐疑的なんで、その点を更に割り引かないといけない。
具体的なコードはPythonで書いてあるんだけど、わたしとしては、Prologのことが思い浮かんで仕方がない。特に日本はそうだけど、アメリカですら、冷戦期の大型計算機の成功体験が忘れられず、いまだに人工知能とかエキスパートシステムとか意思決定支援システムとか、それっぽいことを言えば予算を引っ張れるようなことではないかとかいうのが、わたしの懐疑の原点かもしれない。本書の中で人工知能はわざわざ否定されているけど、つまり、わざわざ断りを入れないといけないような世情なのであろう。実際にやっていることはPrologの頃とあまり変わっていない気がした。わたしの想像力のなさのせいかもしれないが、現に仕事でロクでもない開発例を何件も見ているんだから仕方ない。オントロジーとか言って哲学を引くのが流行りらしいけど、哲学者に失礼だろう。記号論はこんな雑な学問じゃない。
とはいえ、たとえば学術論文誌とか、そういう限られた世界では新展開が今後あるかも知れないという気もするので、一応こういう話は読んでおいて良かった。他にも入門書っぽい本はあるだろうけど、これが一番いいんじゃないかと思う。懐疑派であっても、読んで損したということにはならないと思う。
具体的なコードはPythonで書いてあるんだけど、わたしとしては、Prologのことが思い浮かんで仕方がない。特に日本はそうだけど、アメリカですら、冷戦期の大型計算機の成功体験が忘れられず、いまだに人工知能とかエキスパートシステムとか意思決定支援システムとか、それっぽいことを言えば予算を引っ張れるようなことではないかとかいうのが、わたしの懐疑の原点かもしれない。本書の中で人工知能はわざわざ否定されているけど、つまり、わざわざ断りを入れないといけないような世情なのであろう。実際にやっていることはPrologの頃とあまり変わっていない気がした。わたしの想像力のなさのせいかもしれないが、現に仕事でロクでもない開発例を何件も見ているんだから仕方ない。オントロジーとか言って哲学を引くのが流行りらしいけど、哲学者に失礼だろう。記号論はこんな雑な学問じゃない。
とはいえ、たとえば学術論文誌とか、そういう限られた世界では新展開が今後あるかも知れないという気もするので、一応こういう話は読んでおいて良かった。他にも入門書っぽい本はあるだろうけど、これが一番いいんじゃないかと思う。懐疑派であっても、読んで損したということにはならないと思う。
2010年12月8日水曜日
Rodolfo Saracci "Epidemiology" (Oxford Very Short Introduction)
多分、インフルエンザの流行に乗ろうとしたタイトルだけど、特に個別の疫病について解説するというよりは、一般的な疫学の方法論を解説している。個別の疫病については、方法論の説明の中で、肥満と糖尿病の関係や喫煙と肺癌の関係について解説されるくらい。パンデミックの防止法とかは書いていない。
・・・というと、専門的過ぎて一般に売れないような印象になるけど、疫学ほど統計の解釈に厳密な業界はない。統計的思考を鍛えるには、ある意味では、これは素晴らしい本だ。もちろん、実際には社会統計にも別の種類の難しさがあるけど、「統計的思考」という意味では、共通なことも多い。数理統計学の解説はほとんどないけど、実地での統計の使用に興味のある人には、疫学に興味がなくても面白いんじゃないかと思う。
・・・というと、専門的過ぎて一般に売れないような印象になるけど、疫学ほど統計の解釈に厳密な業界はない。統計的思考を鍛えるには、ある意味では、これは素晴らしい本だ。もちろん、実際には社会統計にも別の種類の難しさがあるけど、「統計的思考」という意味では、共通なことも多い。数理統計学の解説はほとんどないけど、実地での統計の使用に興味のある人には、疫学に興味がなくても面白いんじゃないかと思う。
ラベル:
Very Short Introduction,
科学
2010年11月22日月曜日
Jeff Kinney "Diary of a Wimpy Kid #5: The Ugly Truth"
こういう名作が日本の読者に届かないのは残念なことだ。今amazon.co.jpのランキングを見たら、洋書で66位となっていたから、そこそこ日本でも売れているらしい・・・。
日本語訳については、過度に自虐的な邦題と改悪された表紙を見ただけで、読む気をなくす。読む気をなくして中身を見ていないから、訳文がどうなのかは知らないけど。ただ、どっちみち、こういうのは原文で読まないと、面白さが半減する。
内容については、まあ、ごく普通の中学生の生活ということにしておく・・・。日本では児童向けみたいな売られ方をしているけど、PTA的見地からすれば、むしろ有害図書なんじゃないかと思う。だから、過剰にネガティブな邦題になるんだろう。本当のところは、大人が読んでこそ面白い。中学生くらいの子どもがいる親なら読む義務がある。英語も易しいし、「初めて洋書を読む」くらいの人でも大丈夫だろう。是非初巻から読みたい。
日本語訳については、過度に自虐的な邦題と改悪された表紙を見ただけで、読む気をなくす。読む気をなくして中身を見ていないから、訳文がどうなのかは知らないけど。ただ、どっちみち、こういうのは原文で読まないと、面白さが半減する。
内容については、まあ、ごく普通の中学生の生活ということにしておく・・・。日本では児童向けみたいな売られ方をしているけど、PTA的見地からすれば、むしろ有害図書なんじゃないかと思う。だから、過剰にネガティブな邦題になるんだろう。本当のところは、大人が読んでこそ面白い。中学生くらいの子どもがいる親なら読む義務がある。英語も易しいし、「初めて洋書を読む」くらいの人でも大丈夫だろう。是非初巻から読みたい。
2010年11月21日日曜日
Margarita Madrigal "Madrigal's Magic Key to Spanish"
これは単純に英語のできる人がスペイン語を習得するための本。CDがついていないが、もともとスペイン語の発音は簡単&方言が多いからどうでもいいだろう。
天下り式に活用表を提示するのでなく、ひたすら言葉で時、時制も人称も一つずつ確実に習得していく感じなので、多分、普通の文法書とかに慣れていると、まだるっこしい。その分地道にやれば確実に力にはなるが、普通の日本人には、もっとシンプルな文法書のほうが好まれるだろう。アメリカ人でも同じだと思うけど。
しかし、この本には圧倒的な利点がある。だからこそ、数十年前の本が復刊されて未だに売れているのだ。
この本の圧倒的な利点は、英語をスペイン語に自然に変換する方法を示している点にある。実感として、英語から最も簡単に移行できる言語は、ドイツ語でもフランス語でもなくて、スペイン語だ。もちろん、落とし穴もあるが、類書にない決定的な利点だ。この本をメインに勉強しなくても、サブとして必ず読むべき本だろう。英語ができることが前提だが・・・。
天下り式に活用表を提示するのでなく、ひたすら言葉で時、時制も人称も一つずつ確実に習得していく感じなので、多分、普通の文法書とかに慣れていると、まだるっこしい。その分地道にやれば確実に力にはなるが、普通の日本人には、もっとシンプルな文法書のほうが好まれるだろう。アメリカ人でも同じだと思うけど。
しかし、この本には圧倒的な利点がある。だからこそ、数十年前の本が復刊されて未だに売れているのだ。
この本の圧倒的な利点は、英語をスペイン語に自然に変換する方法を示している点にある。実感として、英語から最も簡単に移行できる言語は、ドイツ語でもフランス語でもなくて、スペイン語だ。もちろん、落とし穴もあるが、類書にない決定的な利点だ。この本をメインに勉強しなくても、サブとして必ず読むべき本だろう。英語ができることが前提だが・・・。
2010年11月17日水曜日
Ken Taylor "50 Ways to Improve Your Business English"
この本は、今まで読んだこの手の本で最善だった。
簡単に言うと、非ネイティブスピーカーのために、国際的な場での英語の使い方・身につけ方を解説している。非常に実際的で、英語力のレベルが様々な人たちが集まる会議の進め方もあるし、英語力の優位を悪用するネイティブスピーカーへの対処法まで解説されている。もちろん、普通の英文メールの書き方とか読解力の鍛え方なども解説。
「アメリカ人になりたい」くらいまで思っている人には物足りないかもしれないが、「外人との会議で話したい」というような方向なら、この本は必読と言える。著者は外人相手の英語教師だが、会うまでもなく超優秀であることがこの本で分かる。非ネイティブスピーカーの心理とか立場を本当によく分かってくれている。
あと、Further Readingで、参考図書やWebサイトを紹介してくれているのも有難い。
レベルはというと、最低でもこの本が読める程度の英語力ということになるが、易しく書いてくれているから、大学生くらいなら大丈夫なんじゃないかと思う。論旨は明快だから、この本で読解力をつけようとするのもアリだ。
この本が名著である理由は、第一に単純にその目的を果たしているからだけど、(裏表紙に"A book that does exactly what it says on the cover!"とある)、第二に一般的にhow-to本の模範例でもある。how-to本は、このように書くべきなのだ。
簡単に言うと、非ネイティブスピーカーのために、国際的な場での英語の使い方・身につけ方を解説している。非常に実際的で、英語力のレベルが様々な人たちが集まる会議の進め方もあるし、英語力の優位を悪用するネイティブスピーカーへの対処法まで解説されている。もちろん、普通の英文メールの書き方とか読解力の鍛え方なども解説。
「アメリカ人になりたい」くらいまで思っている人には物足りないかもしれないが、「外人との会議で話したい」というような方向なら、この本は必読と言える。著者は外人相手の英語教師だが、会うまでもなく超優秀であることがこの本で分かる。非ネイティブスピーカーの心理とか立場を本当によく分かってくれている。
あと、Further Readingで、参考図書やWebサイトを紹介してくれているのも有難い。
レベルはというと、最低でもこの本が読める程度の英語力ということになるが、易しく書いてくれているから、大学生くらいなら大丈夫なんじゃないかと思う。論旨は明快だから、この本で読解力をつけようとするのもアリだ。
この本が名著である理由は、第一に単純にその目的を果たしているからだけど、(裏表紙に"A book that does exactly what it says on the cover!"とある)、第二に一般的にhow-to本の模範例でもある。how-to本は、このように書くべきなのだ。
2010年10月28日木曜日
Christopher S. Goto-Jones "Modern Japan" (Oxford Very Short Introductions)
関ヶ原の合戦から現在までの日本の歴史。特に日本人のアイデンティティ、ナショナリズムと、「西洋」「近代」との軋轢を描く。Page-turnerとまでは言わないが、一気読みしてしまった。
普通の高校生であれば、事実として知らないことは多分ほとんど書いていない。歴史の教科書は瑣末な事項ばかりで読み物になっていないから読む気がしない。かといって、「日本の通史」みたいな本は、右翼だったり左翼だったり、どっちにしろ晦渋な本ばかりでうんざりする。その点、この本は何気ない。
わたしの場合は、外国からやってくる日本研究者の接待があるので、参考までに読もうと思っただけ。世の中には「英語で日本を説明する本」みたいなものはいくらでもあるが、ああいうのは、日本の歴史教科書をそのまま英語に直したようなもので、有用かもしれないが、それ自体は読んでも楽しくない。
この本の内容としては、ペリー来航以降、日本人のアイデンティティが、常に「西洋」・「近代」との戦いだったことが描かれる。んで、いろいろあって太平洋戦争になり、敗戦で傷つき、ノスタルジックな川端康成とか極右の三島由紀夫が出たり、いまだに戦争の謝罪だの靖国で揉めているのも、傷ついた自己イメージみたいなことで解釈できると。岸田秀とかが言及されているだけでも頭が痛い。最後のほうはこばやしよしのりとか田母神とかまで出てきて、つまり、この著者の真の興味はそのあたりなんだろう。特にウヨクな人は、読んでいて腹を立てる可能性が高いが、この本は権威あるOxford大学出版局から出ており、しかも売れ線であるから、腹を立てるためにだけでも読んだほうがいい。
わたしとしては、太平洋戦争は単なる石油の取り合いとしか思っておらず、特に今時の日本人にとって、「日本人とは何か」という問いがそんなに重要な気がしない。確かに明治の知識人の書いたものとか、太平洋戦争の頃のアジテーションとかを考えると、確かに「日本人のアイデンティティ」みたいなことが大問題のような印象はあるけど、一部の知識人とかウヨクが勝手に苦悩しているだけで、歴史を動かすほどの問題の気がしない。しかし、まあ、話としては面白かった。
普通の高校生であれば、事実として知らないことは多分ほとんど書いていない。歴史の教科書は瑣末な事項ばかりで読み物になっていないから読む気がしない。かといって、「日本の通史」みたいな本は、右翼だったり左翼だったり、どっちにしろ晦渋な本ばかりでうんざりする。その点、この本は何気ない。
わたしの場合は、外国からやってくる日本研究者の接待があるので、参考までに読もうと思っただけ。世の中には「英語で日本を説明する本」みたいなものはいくらでもあるが、ああいうのは、日本の歴史教科書をそのまま英語に直したようなもので、有用かもしれないが、それ自体は読んでも楽しくない。
この本の内容としては、ペリー来航以降、日本人のアイデンティティが、常に「西洋」・「近代」との戦いだったことが描かれる。んで、いろいろあって太平洋戦争になり、敗戦で傷つき、ノスタルジックな川端康成とか極右の三島由紀夫が出たり、いまだに戦争の謝罪だの靖国で揉めているのも、傷ついた自己イメージみたいなことで解釈できると。岸田秀とかが言及されているだけでも頭が痛い。最後のほうはこばやしよしのりとか田母神とかまで出てきて、つまり、この著者の真の興味はそのあたりなんだろう。特にウヨクな人は、読んでいて腹を立てる可能性が高いが、この本は権威あるOxford大学出版局から出ており、しかも売れ線であるから、腹を立てるためにだけでも読んだほうがいい。
わたしとしては、太平洋戦争は単なる石油の取り合いとしか思っておらず、特に今時の日本人にとって、「日本人とは何か」という問いがそんなに重要な気がしない。確かに明治の知識人の書いたものとか、太平洋戦争の頃のアジテーションとかを考えると、確かに「日本人のアイデンティティ」みたいなことが大問題のような印象はあるけど、一部の知識人とかウヨクが勝手に苦悩しているだけで、歴史を動かすほどの問題の気がしない。しかし、まあ、話としては面白かった。
ラベル:
Very Short Introduction,
政治
2010年10月22日金曜日
Raymond Wacks "Philosophy of Law" (Oxford Very Short Introductions)
こういうタイトルだと、極端な例を持ち出して「君はどう考えるか」みたいな本が増えている今日この頃、これは伝統的な法哲学の学説史。非常に薄いので、一つ一つの学者に関しては、端折過ぎの気がするし、これで分かった気になられてはたまらないとも思うけど、入門者にはこんなものかもしれない。
「著者が自分の見解を抑えている」というようなレビューもあるけど、本当に読んだのかと思う。かなりはっきりした価値評価をしているが、普通の主流派の判断なので、普通の人は流してしまうのかもしれない。ヴェーバー・デュルケム・ハバマスあたりを数ページで解説しようとするのもなかなかだが、最後のほうはフーコーとかラカンとかデリダまで超簡単に紹介して、結論としては「ほとんど法の理解に役に立たない」みたいな。じゃあ最初から書くなよと言いたいけど、アングロアメリカの法哲学界も、一時期ポストモダンの流行に巻き込まれてうんざりしたのだろう。・・・というようなことからも分かるように、「薄く広く」という本なので、ある意味頭を使わなくても読めるということはある。
「著者が自分の見解を抑えている」というようなレビューもあるけど、本当に読んだのかと思う。かなりはっきりした価値評価をしているが、普通の主流派の判断なので、普通の人は流してしまうのかもしれない。ヴェーバー・デュルケム・ハバマスあたりを数ページで解説しようとするのもなかなかだが、最後のほうはフーコーとかラカンとかデリダまで超簡単に紹介して、結論としては「ほとんど法の理解に役に立たない」みたいな。じゃあ最初から書くなよと言いたいけど、アングロアメリカの法哲学界も、一時期ポストモダンの流行に巻き込まれてうんざりしたのだろう。・・・というようなことからも分かるように、「薄く広く」という本なので、ある意味頭を使わなくても読めるということはある。
ラベル:
Very Short Introduction,
法律
2010年10月13日水曜日
Ken Binmore "Game Theory" (Oxford Very Short Introductions)
ゲーム理論については一通り勉強したことがあるし、今さら概説書を読んでも得る物もないだろうと思っていたが、書評が「素晴らしい」と「難し過ぎて意味が分からん」の二つに割れているようで、面白そうなので読んでみた。
わたしの感想としては、素晴らしい。研究に必要な数学は省かれているが、ゲーム理論の含意を知るのにそこは重要ではない。たいていの人は、ゲーム理論と言えば「囚人のジレンマ」とか「ナッシュ均衡」くらいの知識で止まっていて、面白い寓話ですね、くらいではないだろうか。この本では、それは入口に過ぎない。他に様々なゲームを検討していて、様々な社会的・生物学的現象をモデル化していく。「そんなのは所詮は現実を極端に単純化した玩具で、現実の社会はもっと不合理な道徳感情などによって支えられている」というのが普通の社会学者の言い分だと思うけど、この本を読むともう一度考え直したくなる。
わたしの理解が正しければ、この著者は、「ナッシュ均衡でない道徳制度や社会制度は長続きしない」と考えている。ホッブズは「万人の万人に対する闘争」を解決するために国家権力が必要だと考えた。それでいいとして、それによって出現する均衡状態はナッシュ均衡だけで説明できるのか、それとも人類学者や社会学者が考えるように、何か不条理な宗教的畏怖や権威の概念が必要なのか。むしろ宗教や感情はナッシュ均衡の作り出す幻ではないのか。わたしには何とも言えないが、この方向を追求する価値はあると思うのだが。
最後のほうでは、ゲームが成り立つ基礎みたいなことまで研究していて、ほとんどヴィトゲンシュタインみたいなことになっている。一般的なゲームの他にも、オークションや「利己的遺伝子」の話などもあって、面白い話が盛りだくさんだ。ただ、確かに、頭を使わないで読める本ではない。著者は明らかに楽しんで書いているし、わたしも、この楽しさを共有できる人が多いといいなあと思う。難しいという人が多いのも事実だが、わたしのこの書評をここまで読んでくれた人なら、問題なく読めるだろう。
わたしの感想としては、素晴らしい。研究に必要な数学は省かれているが、ゲーム理論の含意を知るのにそこは重要ではない。たいていの人は、ゲーム理論と言えば「囚人のジレンマ」とか「ナッシュ均衡」くらいの知識で止まっていて、面白い寓話ですね、くらいではないだろうか。この本では、それは入口に過ぎない。他に様々なゲームを検討していて、様々な社会的・生物学的現象をモデル化していく。「そんなのは所詮は現実を極端に単純化した玩具で、現実の社会はもっと不合理な道徳感情などによって支えられている」というのが普通の社会学者の言い分だと思うけど、この本を読むともう一度考え直したくなる。
わたしの理解が正しければ、この著者は、「ナッシュ均衡でない道徳制度や社会制度は長続きしない」と考えている。ホッブズは「万人の万人に対する闘争」を解決するために国家権力が必要だと考えた。それでいいとして、それによって出現する均衡状態はナッシュ均衡だけで説明できるのか、それとも人類学者や社会学者が考えるように、何か不条理な宗教的畏怖や権威の概念が必要なのか。むしろ宗教や感情はナッシュ均衡の作り出す幻ではないのか。わたしには何とも言えないが、この方向を追求する価値はあると思うのだが。
最後のほうでは、ゲームが成り立つ基礎みたいなことまで研究していて、ほとんどヴィトゲンシュタインみたいなことになっている。一般的なゲームの他にも、オークションや「利己的遺伝子」の話などもあって、面白い話が盛りだくさんだ。ただ、確かに、頭を使わないで読める本ではない。著者は明らかに楽しんで書いているし、わたしも、この楽しさを共有できる人が多いといいなあと思う。難しいという人が多いのも事実だが、わたしのこの書評をここまで読んでくれた人なら、問題なく読めるだろう。
ラベル:
Very Short Introduction,
社会学,
数学
2010年10月12日火曜日
Tom Rath "Strengths Finder 2.0"
主張としては「弱点の克服に時間を使うよりは長所を伸ばしたほうがいい」というようなことだけど、この本自体は本体ではない。本体はWeb上の自己診断テストで、それでタイプ分類が出るから、自分に関係するところだけ読めばいいようになっている。よくある「適性診断テスト」みたいな物の、デラックス版と思って良い。「あなたに向いている職業は~」みたいな話のほか、色々なアドバイスが出て来る。アクセスコードは本に付属。
テストは余裕で三十分くらいかかる。わたしは英語で受けたけど、日本語でもOKなようだ。わたしの結果は、Ideation, Maximizer, Analytical, Deliberative, Futuristicだった。もともと自己申告だから、星占いみたいに意外な結果が出たりはしない。そして、自己イメージに沿って褒め称えてくれるので気分が良い。こんなので喜んでいるのもどうかと思うが、星占いと同様に話のタネになるし、多分大間違いでもないだろう。自信喪失気味で、しばらく人に褒めてもらっていない人などにお薦めだ。
テストは余裕で三十分くらいかかる。わたしは英語で受けたけど、日本語でもOKなようだ。わたしの結果は、Ideation, Maximizer, Analytical, Deliberative, Futuristicだった。もともと自己申告だから、星占いみたいに意外な結果が出たりはしない。そして、自己イメージに沿って褒め称えてくれるので気分が良い。こんなので喜んでいるのもどうかと思うが、星占いと同様に話のタネになるし、多分大間違いでもないだろう。自信喪失気味で、しばらく人に褒めてもらっていない人などにお薦めだ。
2010年10月9日土曜日
Robert A. Heinlein "The Door into Summer"
これ読んだのは相当昔だけど、急に思い出したので紹介する。今まで読んだ小説の中では、多分五本の指に入るだろう。わたしは基本的に復讐話が好きだ。もっとも、これは結局はあんまり復讐ではないんだけど。SFだけど、そんなに難しくもないし、普段SFを読まない人でも楽しく読めると思う。恋愛小説という説もあるが、その辺りはわたしはあんまり反応していない。けど、そういう楽しみ方もあるんだろう。猫小説という分類も有り得る。
2010年10月7日木曜日
Stephen Hawking, Leonard Mlodinow "The Grand Design"
ホーキング博士の最新刊。宇宙論という分野は、進歩が激しいというか情報爆発みたいな感じで、専門家ですら最新の情勢についていくのが大変らしいが、そこでホーキング博士みたいな人が書いてくれると話が早い。例によって一々神の非存在を論じていてうんざりするが、間違いなく本人が書いているというようなことで。
半分以上が、ギリシアの叡知をキリスト教が抑圧したとかいう世界観と、量子力学と相対論のよくある概説みたいなので占められている。本題はそこから先で、M-theoryと言う理論(群)を推してくるが、最終的にはライフゲームみたいなもので、単純な規則から見かけ上複雑な状況も作れるということらしい。まあ、昔から「宇宙のすべては単純なアルゴリズムの反復で生成できる」みたいな主張をする人はいるわけで、ホーキングはそこまで野心的ではないが、とにかく、「宇宙の存在を説明するのに、神は不要」ということがひたすら強調されていて、多分、普通の日本人には、そこまで必死になる理由が分からないんじゃないかと思う。
と思ってタイトルを見なおすと"The Grand Design"というのは、キリスト教系の"intelligent design"論に対抗する意味のようだ。日本語に翻訳しても、あんまり売れないかなあ。
半分以上が、ギリシアの叡知をキリスト教が抑圧したとかいう世界観と、量子力学と相対論のよくある概説みたいなので占められている。本題はそこから先で、M-theoryと言う理論(群)を推してくるが、最終的にはライフゲームみたいなもので、単純な規則から見かけ上複雑な状況も作れるということらしい。まあ、昔から「宇宙のすべては単純なアルゴリズムの反復で生成できる」みたいな主張をする人はいるわけで、ホーキングはそこまで野心的ではないが、とにかく、「宇宙の存在を説明するのに、神は不要」ということがひたすら強調されていて、多分、普通の日本人には、そこまで必死になる理由が分からないんじゃないかと思う。
と思ってタイトルを見なおすと"The Grand Design"というのは、キリスト教系の"intelligent design"論に対抗する意味のようだ。日本語に翻訳しても、あんまり売れないかなあ。
2010年9月27日月曜日
Graham Hutton: "Programming in Haskell"
Haskellの基本的入門書であり、Haskellを勉強しようと考えた人がこの本を見逃すことは考えられないし、敢えて読まないことも考えにくい。読んでから気がついたが、和訳があって、訳もちゃんとしているし、訳注が素晴らしいので、日本語を読めるんなら、日本語で読んだほうがいい。少なくとも参照する価値はある。
本自体は文句の付けようがないし、MUST-READなので、特に推奨の書きようもないんだけど、この際なのでHaskellを推奨する。近頃、関数型言語が流行り始めているが、色々な関数型言語の中では、このHaskellこそが最も基本というか過激派というか、関数型原理主義者とか理論家になりたいのなら、これが選択肢だ。実際のところ、数学の素養のある全くの素人にとっては、最も易しい言語だろう。それに呼応して、本書に出てくる多くのプログラム例は、実際にはそのままの形では動作しない。そんな関心は二の次なのだ。しかし、真面目な話、関数型言語の何たるかを知るのに最善の本でもある。
本自体は文句の付けようがないし、MUST-READなので、特に推奨の書きようもないんだけど、この際なのでHaskellを推奨する。近頃、関数型言語が流行り始めているが、色々な関数型言語の中では、このHaskellこそが最も基本というか過激派というか、関数型原理主義者とか理論家になりたいのなら、これが選択肢だ。実際のところ、数学の素養のある全くの素人にとっては、最も易しい言語だろう。それに呼応して、本書に出てくる多くのプログラム例は、実際にはそのままの形では動作しない。そんな関心は二の次なのだ。しかし、真面目な話、関数型言語の何たるかを知るのに最善の本でもある。
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