2018年11月20日火曜日

Nataël, Béja "Bye Bye tristesse" [悲しみよさようなら]

要するにエロマンガなんだけど、一つには時系列が少しよれているのと、一つには感情の動きが謎過ぎて読みにくい。わたしの理解したところでは、フランスの話にありがちな「究極の愛を求めてエロいことをしまくったが結局なんか悲しい」というような話のようだ。ただしこの場合は、くっついた夫が浮気、というかムチャクチャな夜会をしているのを発見したので、殺害して「悲しみよさようなら」ということだろうか。違うのかもしれないが、そんなに論理的に構成されているような気もしない。

この特に性的なことで好き勝手して結局何か満たされず悲しくて、そこに何かポエジーを感じろというフォーマットは昔からよくある気がする。ボヴァリー夫人からなのだろうか。ただボヴァリー夫人は厳密に科学的というか現実的というか、必然の道程を辿っているのがわたしにも分かるが、類似品は何のことやらわからないことが多い。何かの別の意味で厳密なのかもしれないが、わたしには分からない世界のようだ。

Je n'ai pas arrivé à comprendre le développement du sentiment.

Glénat BD (1 août 2012)
Langue : Français
ISBN-13: 978-2356482778

2018年11月17日土曜日

VOUTCH "Les joies du monde moderne" [現代世界の喜び]

一応現代社会への皮肉を込めた一コママンガ集。と言っても、別にそんなに声を出して笑うほど面白いわけでもないし、そんなに絵が見飽きないとかいうわけでもなく、しかし、こういうのを漫然と眺めている時間を楽しむのが大人なような気もして来た。National Geographicとか東京人みたいに応接間や待合室用の雑誌があるが、これは待合室用の本なのかもしれない。もちろん、来客がフランス語を読めなければ意味を為さないが…。飾りとして悪くないし、趣味も良いし、フランス語が読めれば、内容も退屈ではないというような。わたしなら医者の待合室にこれがあったらかなりうれしいし、外人客の多い高級美容室なんかに良いのではないか。

Pour une salle d'attente.

Cherche Midi (5 janvier 2017)
Langue : Français
ISBN-13: 978-2749143743

2018年11月16日金曜日

Thomas Legrand, Laure Watrin "Les 100 mots des bobos" [ボボの100語]

これはクセジュの中でも稀に見る面白い本だった。boboとはブルジョワ・ボヘミアンの略で、簡単に言うと意識高い系とLOHASとサブカルクソ女が融合して生まれた最強種族のようなものと思えばほぼ間違いない。経済的に余裕はあるが政治的には左翼で、移民や同性婚に寛容で、フェミニストで、国際人で、子供には外国語を学ばせ、ヨガをし、隠れ家的レストランに通い、エコで、トートバッグを持ち歩き、菜食志向で、無農薬野菜を愛し、美術館が好きで、良く分からない前衛的なアートを支持し、仕事とプライベートの区別が薄く、ノマドで、スタバにマックブックを持ち込み、移動は自転車で、海外旅行に行くと観光客向けのところより地元民の通うような居酒屋などを好み、いやもう、あとはみなさんが勝手に想像でリストを続けられると思うが、それもほとんど間違えないと思う。一つ日本と違うとすれば、社会参画志向が日本より遥かに強くて、地域社会や学校などを積極的に改変していく点か。

この本で取り上げられる100語も全部紹介したいくらいだが、もう上記に出たのもあるし、グローカリゼーションとかカウンターカルチャーとか共同農園とかラテマキアートとか、基本的には全部半笑いで読み続けるしかない。実際、フランスでもboboは嘲笑の対象なのだが、現実に政治的には一つの勢力で無視できず、日本で言えば、立憲民主党の支持者のような感じなのだろう。右派が左派を非難する時にboboという言葉が頻出するようなことで、自分がboboであると認める人はいないが、しかし、実際はboboだらけという図である。思い返すと、少なくともわたしが知るフランス人は一人残らずboboだ。

もちろん、あまりに戯画的過ぎて、ただの筆者たちの妄想なのではという疑いもあるが、あまりにリアルで、フランスでは随分研究も重ねられているらしいし、一応公式っぽい定義として「経済資本より文化資本の最大化を目指す人たち」みたいな線で考えられているらしい。とにかく、左派政治家にとっては現実の問題であり、笑っている場合ではない。右派がポピュリズム政党として確立しつつある以上、左派は今までみたいな労働組合基盤というよりboboを基盤にするしかないのかもしれない。

個人的にはgentrificationという概念が面白かった。昔はドーナツ化現象とか言って、金持ちは郊外に住むことになっていた。それがその後逆転して、退廃した都心部に憧れたboboが逆流入してきて、地価が上がって貧乏人が追い出されるほか、行政も動かしてキレイな街になってしまい、下町とは名ばかりの高級住宅街やら囲い付きの住宅地ができてしまう。で、もともとの下町住民とタワーマンションの住人との関係が問題になるというような。

いずれ翻訳されるのかもしれないが、特に社会学とか人文地理学とか都市工学とかの学生には必読書として指定したい。その他、単に「意識高い系大全」みたいなノリの装丁で売っても売れるだろう。boboはライフスタイルであり、専門の雑誌がないのが不思議なくらいだ。こういう面白い本が日本の社会学から出てこないのは残念だが、せめて輸入してもらいたい。

Le meilleur dans la collection "Que sais-je?".

Presses Universitaires de France - PUF (5 septembre 2018)
Langue : Français
ISBN-13: 978-2130809128

2018年11月13日火曜日

Jeff Kinney "Diary of a Wimpy Kid #13: Meltdown" [軟弱な子供の日記13巻:融解]

日本語訳グレッグのダメ日記も未だにほぼ同時発売されているようで結構なことだ。ポプラ社の力かも知れないが全世界的に売れているという話でもある。わたしはあの装丁が受け付けないし、一切見ていないが、普通の中学生じゃ原書はキツいだろうか。それにしても高校生なら読めるだろうというようなかなり易しい英語だ。

今回は真冬の話で、前半は登下校などで寒さから逃れる方法、後半はこのシリーズには珍しく子供たちの雪合戦の話。そもそもこの主人公、友達はほぼ一人だけだし、大勢の子供と遊ぶようなエピソードはこれまでなかったかもしれない。まあ遊ぶと言っても、どうもわたしはこれを素直に楽しそうとは思えず、この辺りに子どもの頃から変わらないわたしの性格の問題というか発達障害があるのだろう。このシリーズ、もともと犯罪すれすれのエピソードなどもあり、児童書にしては教育上良いとは思えないのだが、特にケガ人が出るとわたしはしんどい。

そう思って読者レビューなどを見ると、概ね評価が高く、文句を言っている連中のが堅物過ぎる印象は拭えない。主人公の生活水準が髙過ぎるというようなのは仕方がない。日本の子供向けマンガもほとんど平均より金持ち側だ。ただ、主人公の周囲の見下し方に引っかかるのは分からなくはない。わたしがちびまる子ちゃんが大嫌いなのと同じようなことだろう。ただ、弁護のために、グレッグには偽善がなく、彼が周囲を見下していること自体も笑いの対象として描かれていることは言っておく必要がある。

このシリーズ、最初は必ずしも子供向けとは限らなかったような気がするが、巻が進むにつれてはっきり児童向けになった。大人が読んでも面白いが、子供が読んだらもっと面白いのだろうと思う。こんな風に余計なことは考えないだろうし。それに、グレッグみたいなタイプを肯定的に描いてくれる児童書は少ないんじゃないか。このタイプの子供は否定的な自己イメージを形成しがちと思えば、やはり教育上良いのかもしれない。

Not for strict parents.

Harry N. Abrams (2018/10/30)
言語: 英語
ISBN-13: 978-141972743

2018年11月6日火曜日

Joseph Heller "Catch-22" [キャッチ=22]

有名な厭戦小説。設定は第二次世界大戦イタリアの米軍爆撃部隊だが、出版されたのがちょうどベトナム戦争でアメリカ中がうんざりしていた時期ということで流行ったようだ。

この小説のタイトルは不条理の代名詞みたいに英語になっているが、確かに色々不条理なせいで、特に最初のうちは読みにくい。たとえば、カフカの小説の不条理さは、作者の設定した状況が不条理なだけで、文章自体は冷静だ。だから状況の不条理さが浮き立つことになる。しかし、この小説については、戦争と組織の現実の不条理さと作者の設定した不条理さが混ざっている。さらに、登場人物がふざけているのと作者の書き方がふざけているのも混ざっている。それと無関係ではないと思うが、難しい単語が多く、原文で読む人は覚悟したほうがよい。平均的なアメリカ人でも少ししんどいのではないかと思う。あと、時系列通りに話が進まないことは、最初に知って置いたほうが良い。

というわけで、特に前半は、あまり戦争の直接の描写が少ないこともあり、ただ前線から離れた基地で規則に縛られた不条理な生活をしているだけで、話も進まないから、早目に挫折してしまう人も多いだろう。後から読み返すと面白いが…。これも戦争の現実なのだろう。中盤以後はイタリアの売春宿の実情や爆撃団が曝される死の危険などはリアルでゾッとすることになる。基地で命令しているだけの上官は平気だが、読者の馴染みの主人公の友達はどんどん死んでいく…。諧謔小説みたいに言われるが、そもそもが戦争なので、笑って読める小説ではない。

主人公はB-25爆撃機の爆撃手で、彼の最大の目的は生きてアメリカに帰ることであり、任務はイヤイヤこなしていて、仮病などを使ってできる限り逃れようとしている。徴兵制で、何回か爆撃ミッションをこなすとアメリカに帰れる制度らしいが、出世したい上官がその回数をどんどん増やすので帰れないという状況だ。わたしとしては、基本的に仕事をサボろうとする主人公が好きなので、それが戦争かどうかはあまり関係がない。とはいうものの、爆撃機が対空砲火に曝される場面はなかなか緊迫していて勉強になった。我々は爆撃される側の恐怖は良く伝え聞くが、爆撃する側の話はあまり聞かない…。

戦争の話だから、下世話な話も多く、グロい描写も多いので、誰にでもお勧めというわけではないが、著者の実体験に基づいているというし、これも戦争の実態の一つなので、そういう意味ではお勧めできる。ただ、とにかく単語が難しい。それでも読む価値はある。日本語訳は見ていないけど、文句を言っている人もいるようだ。しかし、原書で全部読んだわたしとしては、原文自体が厳しいからな…と言っておきたい。

Generally speaking, I love the protagonist who tries to escape from his official mission, whether it is war or not. The superior officers are meanies even if it is not a wartime. The savage war only accentuates it.

出版社: Everyman's Library (1995/9/21)
言語: 英語
ISBN-13: 978-1857152203

2018年10月25日木曜日

Collectif "Une Parole par jour de Sagesse 2019" [賢人の言葉一日一言2019]

フランス語の一日一名言卓上日めくりカレンダー。毎日フランス語を強制的に読むのは悪い話ではない。誰でも知っている名言も語学力の一部として重要だ。ただ問題点もある。まず、大きさが随分小さい(大きいトランプくらい)し、置くときに角度があまりなく、平置きに近い。あと、曜日と日本の祝日が入っていない。まあ最後の点については、わたしとしては、曜日や祝日を日めくりで確認する機会はないのであまり問題ではない。しかし、どっちにしろ、カレンダーというより勉強用という気分だ。来年の日めくりカレンダーは職場がLiz Climo、自宅がSports Illustratedで決定とする。このフランス語日めくりは自宅の玄関にでも置いておく。

Un calendrier qui manque le jour de la semaine.

Hugo Image (11 octobre 2018)
Langue : Français
ISBN-13: 978-2755639032

2018年10月12日金曜日

Liz Climo "The Little World of Liz Climo 2019 Day-to-Day Calendar" [リズ・クリモの小さな世界2019年日めくりカレンダー]

今年のが大変気に入ったので、来年も自宅用はこれで。土日が一枚なので、本当は職場で使う想定かもしれないが、個人的には職場ではちょっと和み過ぎる気もする。単行本を買うより、毎日カレンダーで見るのがちょうど良い。

The best desktop calendar ever.

Andrews McMeel Publishing (2018/7/17)
言語: 英語
ISBN-13: 978-1449492885

Trends International "Sports Illustrated Swimsuit 2019 Calendar" [スポーツ・イラストレイテッド2019年水着カレンダー]

来年の職場用の日めくり卓上カレンダーを考えていた。長らくDilbertを使っていて、パッと見、品も悪くないし面白いんだけど、作者のWin Biglyを読んでうんざりしたこともあり、代わりを探していた。で、これくらいならお洒落かなと思って、実際現物はとてもお洒落で気に入っているんだけど、ちょっと職場には置けない…。というのも、水着写真とは言え、乳首が透けていたりするので、人目のつく範囲に置いたらセクハラと言われてしまうだろう…。

ただ、あくまでわたし目線で見てのことだが、お洒落で下品でもないし、健康的だし、エロいという気もしないし、本当なら机の上に置いておけばかなり気分が良いはずだ…。この点については感じ方は人それぞれだと思うので何とも言えないが、一遍に机の上が明るくなる印象がある。毎日、その月のカレンダーもついているのはあまり見たことが無く、実用的だ。というわけで、正直、取扱いに困っているが、枕元にでも置いておくか…。

Very good, though I do not know where to put it....

Trends Intl Corp (2018/8/15)
言語: 英語
ISBN-13: 978-1438859682

2018年9月27日木曜日

Matthew Frederick, Vikas Mehta "101 Things I Learned in Urban Design School" [私が都市計画学校で学んだ101のこと]

全くの素人に都市計画者の視点を教える本。まあ、何がどう計画されているのか分からない町も世の中にはたくさんあると思うが、それにしても一応計画されている。もちろん、比較的新しい関東の私鉄沿線の都市などは分かりやすいし、今でも湾岸はゼロから計画されている。一応こういう本を読んでおくと、デベロッパーや行政が何を考えているのか多少は分かるようになり、街歩きの楽しみが増えるというものだ。とは言うもののこの本、"101 Things I Learned®"の中では、今一つだった気もする。理由の一つは、都市計画に限らず、何の事業にでもあてはまるような教訓が多いせいだろう。

Good enough, though not as good as I expected from other 101 things books.

Three Rivers Press (2018/4/3)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0451496690

2018年8月23日木曜日

Eliane Kurbegov, Edward Weiss "Barron's AP French Language and Culture" [APフランス語と文化対策]

APはアメリカの試験で、受かると大学入試で有利になったり、大学の単位として認定されたりする。SATより上級。わたしがこの本をやった感触では、欧州基準でB2くらいあるかもしれない。B1よりは上だ。仏検なら一級か準一級か…。採点基準が分からないので、実際に受けてどうなるか分からないが、問題自体はそんな感じ。別にこの本でフランス語力をつける趣旨でもないと思うが、トランスクリプト付の音声も大量に入っているので勉強になるし、一通りフランス語文法を終えた人が試しにやって見るにはいいだろう。仏検二級くらいの力ならSATの対策本を見たほうが良い。

わたしとしては、この本はかなりしんどかった。興味の無い内容の長文や音声に集中することの難しさを痛感する。結局、こういう試験で取り上げられるテーマは限られているし、その意味では十分に対策可能なのだろう。作文の模範解答も完備しているし、会話とか口頭発表とかの模範解答も全部音声があり、もちろん流し読み/聞きしただけだが、今更こんな上流階級の頭の良い子みたいな文章を書いたり発表したりできないよなあ…と。しかし、仏検一級を狙うくらいの人なら、こんなのはクリアしないといけないはずだ。自信を無くすが、まあ、別に大学に入るわけでもないし…。

Americans are very good at oral expositions. They are trained to that in this way. I just can't....

Barrons Test Prep; 2版 (2016/2/1)
言語: 英語
ISBN-13: 978-1438076034

Tracy Arrington, Matthew Frederick "101 Things I Learned in Advertising School" [広告学校で学んだ101のこと]

時々、広告業界入門的な本を読むと「広告は嘘をつく技術ではない」という趣旨の言葉は必ず入っていて、その度に「どう言い繕っても…」と思う。広告技術にそこまで深い興味がなくても、広告を見せられる側の自衛のためにこういう本はみんな読むべきなんだろう。一時期日本でも「クリエイティブ」であることが至高の価値とされていた時代があったけど、基本的に広告業界の思想だったんだろうと思う。それはそれとして、今でも所謂意識髙い系にとって、広告技術の基礎は必須課目だろう。実際のところ、広告のイロハも知らないお偉方が広告に口出ししてグチャグチャにしているのを今も目の前で見ているし、みなさんも自分がそんな風になる前に最低でもこの程度の本は読んで置いてもらいたい。お前がどう感じるかなんか、専門家と統計の前では何の意味もないんだよ…。このシリーズは簡単にすぐ読めるし、一般的にも評判が良い。もっとどんどん出してほしい。

For those who like to interfere and trash works of PR specialists.

出版社: Three Rivers Press (2018/4/3)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0451496713

2018年8月16日木曜日

Helen Graham "The Spanish Civil War: A Very Short Introduction" [スペイン内戦:非常に短い入門]

1.スペイン内戦の起源 2.反乱と革命と抑圧 3.動員と生存:共和国の戦争 4.反乱スペインの成り立ち 5.包囲される共和国 6.勝利と敗北:戦後の戦争 7.歴史の価値

高校の世界史レベルでは、第二次世界大戦におけるスペインの立場が分かりにくい。フランコとかいう独裁者はファシストでヒトラーやムッソリーニと仲が良く、完全に枢軸国側でドイツやイタリアを支援していたが、なぜか法的には中立国ということになっており、ヒトラーとムッソリーニが排除された後も、フランコは普通に独裁を続けていた。で、何かよく分からないうちに民主化されて普通のEU加盟国みたいになっているというような…。スペイン人の話を聞いても、フランス人のレジスタンスの話を聞くようなもので、後から良いように言っているだけのようにも聞こえるし、曖昧な話が多い。日中戦争と同じで、実際の経験者が語りたがらないということが多いらしい。

そこでこの本を読むと、確かに要因が入り組み過ぎていて、誰がどっち側なのか難しい。基本的には共和国vsファシストという認識で、社会主義者・共産主義者・都市労働者は共和国側、農業地帯・カトリック教会はファシスト側と。当然地域差があり、クーデターが起こった直後に軍が掌握したのは基本的に田舎であり、マドリッド他の都会は共和国側。あと独立性の高いバスクなどは共和国側だが、共和国は中央集権を目指すので内部の軋轢がある。ドイツ・イタリアはファシストを支援して、これが戦争の行方を決定する。他方共和国にはソ連がついている。今から考えれば英仏が共和国を支援しないのは意味不明だが、この時期の英仏はなぜかヒトラーに妥協しまくっていて、オーストリアもチェコスロバキアもどんどん呑み込まれている。しかも、内政不干渉とかいう建前で、フランス国境などもほぼ封鎖されており、これではファシストに勝てるはずがない。ファシスト側としては戦争に勝つのは分かっているが、できるだけ戦争を長引かせて赤色分子を殺戮しつくすのがスペイン浄化の為に必要ということで、ゆっくり人を殺していく。結局、ヒトラー体制は打倒されるが、連合国軍の進撃はピレネー山脈で止まり、その後スペインはずっとファシストの支配が続く。

だいたい、歴史を学んでその国のことが好きになることは少ないが、これはなかなか酷い。スペインの場合、話の前提として中南米とアフリカで大量殺戮しているということがある。その巨大な植民地を失って行き場をなくした軍人が、近代化しようとするスペインを過去に引きずり戻した図になっている。当たり前だが、この本は共和国側に同情的な書き方になっており、ずっと悲しい感じで読むことになる。戦後、共和国側の住民は強制収容所や強制労働などに放り込まれて、善良なスペイン人は全員殺されたような印象がある。スターリンのソ連と同じで、近所の人の密告なども恐れないといけないし、当時の人たちが昔のことを語りたがらないのも分かる。孫の代になって実は祖父母が共和国側だったので殺されたことが判明するとかが普通らしい。スペインを脱出した共和国軍軍人がフランスのレジスタンスに参加したりパリ解放とかスターリングラード防衛で戦うとかいうようなエピソードもあるが、大多数のスペイン人のリアルではないだろう。

内戦時の記録は各地の政府の文書館や、カトリック教会の文書館などに残っているらしいが、公開が進んでいないらしい。探ったら誰が誰を殺したとか密告したとかいうことが判明して、やっかいなことになるのだろう。ファシストへのカトリック教会の貢献はこの本でも強調されているが、これも酷い話だ。スペインに旅行することがあったら、その辺りの内戦記念碑的なものばかり見ることになりそうだ。ともあれ、これでヘミングウェイの「誰がために鐘は鳴る」を読む準備ができた。

A sad history of Spain.

Oxford Univ Pr (2005/6/23)
英語
ISBN-13: 978-0192803771

2018年7月18日水曜日

Joachim Whaley "The Holy Roman Empire: A Very Short Introduction" [神聖ローマ帝国:非常に短い入門]

目次: 導入.神聖ローマ帝国とは何だったのか 1.ローマ帝国とドイツの王国:カールからオットー朝へ 2.中世盛期:ザーリア朝からホーエンシュタウフェン朝へ 3.中世後期の帝国:ハプスブルク家の勃興 4.近代前期の帝国(1):マクシミリアンI世から三十年戦争へ 5.近代前期の帝国:ヴェストファーレン条約から1806年へ 後書き.神聖ローマ帝国の遺産

神聖ローマ帝国は神聖でもなければローマでもないが、だいたいフランク王国からナポレオンがやってくるまでの中世近代のドイツの政治史。この辺りの歴史が分かりにくいのは、建前としては封建制で、ドイツの各地域というか各家の独立性が高く、それぞれが自律的に行政や同盟や戦争をやっている上に、その中のどこかの家の誰かが選ばれて皇帝になって、一応尊重されるという二重構造になっている。

しかも一応教皇の承認ももらいたいとか、しかし教皇領も奪いたいだとか、プロテスタントが出現したり宗教的な問題もある。地理的には西からフランス人が攻めてくるし東からトルコ人が攻めてくるし北からスウェーデン人が攻めてくるし南からイタリア人が攻めてくる。その上でスイスが独立したりハンガリーがもめたり、その他ハプスブルクだのルクセンブルクだのブランデンブルクだの内部の争いも絶えない。ハプスブルク家の時代になるとスペインも関与するしポーランドの王位も問題になり、とにかくヨーロッパの真ん中の国は大変だ。

この辺りのややこしく長い歴史を本書は丁寧に編年体で追ってくれていて大変勉強になる。これでも大筋に過ぎず、完全には程遠いのだろうけど、意外にこういう通史はあまりない気がする。少なくとも高校の世界史レベルでは何のことやらほぼ分からない世界だ。VSIなのでさして頁数もないが、かなり濃密な読書体験になる。調べ出せばキリがないし、世界史が好きな人の気持ちも少し分かってきた。面白いし、翻訳すれば世界史選択の高校生の必読書になると思うがどうか。とにかく、日本人が想像で作るドラクエ的なインチキヨーロッパ中世とは、こういう中央ヨーロッパ史であり、イギリスでもフランスでもない。

The best introduction to the history of the central Europe.

Oxford Univ Pr (2018/10/1)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0198748762

2018年6月28日木曜日

Andrew F. Cooper "The Brics: A Very Short Introduction" [BRICS:非常に短い入門]

目次:1.BRICSを構想すること 2.議論の余地のある発明 3.歴史的な出発 4.一緒につるんでいるいること 5.新しい開発銀行の設立 6.社会ではなく国家の認知としてのBRICS 7.BRICSの留まる力

BRICSという概念はゴールドマン・サックスの発明らしいが、どうも今一つ盛り上がらない…というのも、この本でも説明されている通り、G8みたくlike-mindednessがあるわけでもく、互いに対立している部分もあり、本人たちが公式機関化を避けて目立たず行動する傾向があったりで、結局、投資信託の名称くらいでしか聞かないからである…。ただ、本書によると、それでも一応多少は集団として影響力を行使することがなくもないというのもあるらしい。国内においては大体が市民活動に対して弾圧的で、中国に至っては未だに一党独裁であり、G8の住人からすると懐疑的になるのはやむをえない。本書は各国の国内事情というより、国際舞台でのBRICSの振る舞いに注目している。G8みたいな共同謀議を行うような気もしないが、少なくとも今のところは一定の影響力はあるようだ。

A good introduction to the shadowy club.

Oxford Univ Pr (2016/7/1)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0198723394

2018年6月25日月曜日

Renee White, Sylvie Bouvier "Barron's SAT Subject Test French" [Barron SAT主題試験フランス語]

以前も別のSATフランス語の問題集を読んだが、こっちのほうが質量共に比較にならないほど優れており、こちらを読めば前のは要らない。こちらはリスニングも大量にこなせる。

それはそれとして、特にリスニングについては解説を読んでも納得しかねる問題が多々あり、これはこの本の問題ではなく、SAT自体がそういうものなのだろう。日本の大学入試で同じようなことがあれば、非難が殺到するのは間違いない。レベルとしては、やはり単語が難しいことを別とすれば、仏検二級くらいのものだろう。あくまで試験問題集なので、別にこれでフランス語の勉強をするような趣旨の本でもないと思うが、こんなのでもしないとわたしの場合はフランス語力が上がらない。

Le meilleur livre pour SAT French.

Barrons Test Prep; 4版 (2017/9/1)
言語: 英語
ISBN-13: 978-1438077673