2026年5月4日月曜日

Katherine Hawley "Trust: A Very Short Introduction" [信頼:非常に短い入門]

Trust (Amazon.co.jp)

 目次:導入:朝食の席での信頼と不信 1. 信頼と不信とは何か 2. 信頼と信頼性がなぜ問題になるのか 3. 信頼と協力の進化 4. 金を持って逃げる 5. 正直と不正直 6. 知識と専門性 7. インターネットでの信頼 8. 機関と陰謀と国 結語:信頼に値することの重要性

かなりの部分が"trust"という言葉の日常的な使用法に関する記述で、また一般向け英米哲学書のこのパターンか、と思う部分もあるが、この本については少し事情が違うところがある。というのは"trust"が実際に重要な局面が日常にあふれているからだ。

例えば、「囚人のジレンマ」的な実験経済学の話などはどうでもいいと思うが、現実に信頼がないと商取引が成立しない。信頼される人でないと出世しない。この本で論じられているだけでも、SNSで知り合っただけの人をどうやって信頼するか。どうやって信頼できる医者や弁護士などを選ぶのか。科学と疑似科学をどうやって見分けるか。Wikipediaは信頼できるのか。他国が侵攻して来ないと信頼できるか。等々。

それぞれの話は別に面白くないが、著者が有名になったのは、trustをcommitmentに還元したせいらしい。わたしの理解では「相手の善意に身を任せるということではなく、相手が社会規範に従っていると判定すること」らしい。いつも通りcommitmentと言う言葉が日本語に訳しにくいが、要は「責任を問われる立場に自分を置くこと」なんだろう。この説では、信頼は、一対一の関係ではなく、広範な社会規範が前提になる。

もちろん、この説では、幼児が母親を信頼しているわけでないことになるが、わたしとしては、そんな言葉の定義をいじっても面白い話は出てこないと思っている。そもそも"trust"を「信頼」ではなく「信用」と翻訳すれば、「信じて用いる」のだから、話はもっと分かりやすい。乱暴に言えば、西洋と東洋の違いかもしれない。そもそも絶対的に孤独な自我から出発して他我とか神とかをどうやって信頼するかなどという問題の立て方が…。

というような話ならもっと面白いと思うが、そういうのはフランス哲学のやることであって、英米哲学ではない。一種の自己啓発書と思えば、面白いと感じる部分もあるだろう。

出版社 ‏ : ‎ Oxford Univ Pr

発売日 ‏ : ‎ 2012/9/8

言語 ‏ : ‎ 英語

ISBN-13 ‏ : ‎ 978-0199697342

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