関ヶ原の合戦から現在までの日本の歴史。特に日本人のアイデンティティ、ナショナリズムと、「西洋」「近代」との軋轢を描く。Page-turnerとまでは言わないが、一気読みしてしまった。
普通の高校生であれば、事実として知らないことは多分ほとんど書いていない。歴史の教科書は瑣末な事項ばかりで読み物になっていないから読む気がしない。かといって、「日本の通史」みたいな本は、右翼だったり左翼だったり、どっちにしろ晦渋な本ばかりでうんざりする。その点、この本は何気ない。
わたしの場合は、外国からやってくる日本研究者の接待があるので、参考までに読もうと思っただけ。世の中には「英語で日本を説明する本」みたいなものはいくらでもあるが、ああいうのは、日本の歴史教科書をそのまま英語に直したようなもので、有用かもしれないが、それ自体は読んでも楽しくない。
この本の内容としては、ペリー来航以降、日本人のアイデンティティが、常に「西洋」・「近代」との戦いだったことが描かれる。んで、いろいろあって太平洋戦争になり、敗戦で傷つき、ノスタルジックな川端康成とか極右の三島由紀夫が出たり、いまだに戦争の謝罪だの靖国で揉めているのも、傷ついた自己イメージみたいなことで解釈できると。岸田秀とかが言及されているだけでも頭が痛い。最後のほうはこばやしよしのりとか田母神とかまで出てきて、つまり、この著者の真の興味はそのあたりなんだろう。特にウヨクな人は、読んでいて腹を立てる可能性が高いが、この本は権威あるOxford大学出版局から出ており、しかも売れ線であるから、腹を立てるためにだけでも読んだほうがいい。
わたしとしては、太平洋戦争は単なる石油の取り合いとしか思っておらず、特に今時の日本人にとって、「日本人とは何か」という問いがそんなに重要な気がしない。確かに明治の知識人の書いたものとか、太平洋戦争の頃のアジテーションとかを考えると、確かに「日本人のアイデンティティ」みたいなことが大問題のような印象はあるけど、一部の知識人とかウヨクが勝手に苦悩しているだけで、歴史を動かすほどの問題の気がしない。しかし、まあ、話としては面白かった。
2010年10月28日木曜日
2010年10月22日金曜日
Raymond Wacks "Philosophy of Law" (Oxford Very Short Introductions)
こういうタイトルだと、極端な例を持ち出して「君はどう考えるか」みたいな本が増えている今日この頃、これは伝統的な法哲学の学説史。非常に薄いので、一つ一つの学者に関しては、端折過ぎの気がするし、これで分かった気になられてはたまらないとも思うけど、入門者にはこんなものかもしれない。
「著者が自分の見解を抑えている」というようなレビューもあるけど、本当に読んだのかと思う。かなりはっきりした価値評価をしているが、普通の主流派の判断なので、普通の人は流してしまうのかもしれない。ヴェーバー・デュルケム・ハバマスあたりを数ページで解説しようとするのもなかなかだが、最後のほうはフーコーとかラカンとかデリダまで超簡単に紹介して、結論としては「ほとんど法の理解に役に立たない」みたいな。じゃあ最初から書くなよと言いたいけど、アングロアメリカの法哲学界も、一時期ポストモダンの流行に巻き込まれてうんざりしたのだろう。・・・というようなことからも分かるように、「薄く広く」という本なので、ある意味頭を使わなくても読めるということはある。
「著者が自分の見解を抑えている」というようなレビューもあるけど、本当に読んだのかと思う。かなりはっきりした価値評価をしているが、普通の主流派の判断なので、普通の人は流してしまうのかもしれない。ヴェーバー・デュルケム・ハバマスあたりを数ページで解説しようとするのもなかなかだが、最後のほうはフーコーとかラカンとかデリダまで超簡単に紹介して、結論としては「ほとんど法の理解に役に立たない」みたいな。じゃあ最初から書くなよと言いたいけど、アングロアメリカの法哲学界も、一時期ポストモダンの流行に巻き込まれてうんざりしたのだろう。・・・というようなことからも分かるように、「薄く広く」という本なので、ある意味頭を使わなくても読めるということはある。
ラベル:
Very Short Introduction,
法律
2010年10月13日水曜日
Ken Binmore "Game Theory" (Oxford Very Short Introductions)
ゲーム理論については一通り勉強したことがあるし、今さら概説書を読んでも得る物もないだろうと思っていたが、書評が「素晴らしい」と「難し過ぎて意味が分からん」の二つに割れているようで、面白そうなので読んでみた。
わたしの感想としては、素晴らしい。研究に必要な数学は省かれているが、ゲーム理論の含意を知るのにそこは重要ではない。たいていの人は、ゲーム理論と言えば「囚人のジレンマ」とか「ナッシュ均衡」くらいの知識で止まっていて、面白い寓話ですね、くらいではないだろうか。この本では、それは入口に過ぎない。他に様々なゲームを検討していて、様々な社会的・生物学的現象をモデル化していく。「そんなのは所詮は現実を極端に単純化した玩具で、現実の社会はもっと不合理な道徳感情などによって支えられている」というのが普通の社会学者の言い分だと思うけど、この本を読むともう一度考え直したくなる。
わたしの理解が正しければ、この著者は、「ナッシュ均衡でない道徳制度や社会制度は長続きしない」と考えている。ホッブズは「万人の万人に対する闘争」を解決するために国家権力が必要だと考えた。それでいいとして、それによって出現する均衡状態はナッシュ均衡だけで説明できるのか、それとも人類学者や社会学者が考えるように、何か不条理な宗教的畏怖や権威の概念が必要なのか。むしろ宗教や感情はナッシュ均衡の作り出す幻ではないのか。わたしには何とも言えないが、この方向を追求する価値はあると思うのだが。
最後のほうでは、ゲームが成り立つ基礎みたいなことまで研究していて、ほとんどヴィトゲンシュタインみたいなことになっている。一般的なゲームの他にも、オークションや「利己的遺伝子」の話などもあって、面白い話が盛りだくさんだ。ただ、確かに、頭を使わないで読める本ではない。著者は明らかに楽しんで書いているし、わたしも、この楽しさを共有できる人が多いといいなあと思う。難しいという人が多いのも事実だが、わたしのこの書評をここまで読んでくれた人なら、問題なく読めるだろう。
わたしの感想としては、素晴らしい。研究に必要な数学は省かれているが、ゲーム理論の含意を知るのにそこは重要ではない。たいていの人は、ゲーム理論と言えば「囚人のジレンマ」とか「ナッシュ均衡」くらいの知識で止まっていて、面白い寓話ですね、くらいではないだろうか。この本では、それは入口に過ぎない。他に様々なゲームを検討していて、様々な社会的・生物学的現象をモデル化していく。「そんなのは所詮は現実を極端に単純化した玩具で、現実の社会はもっと不合理な道徳感情などによって支えられている」というのが普通の社会学者の言い分だと思うけど、この本を読むともう一度考え直したくなる。
わたしの理解が正しければ、この著者は、「ナッシュ均衡でない道徳制度や社会制度は長続きしない」と考えている。ホッブズは「万人の万人に対する闘争」を解決するために国家権力が必要だと考えた。それでいいとして、それによって出現する均衡状態はナッシュ均衡だけで説明できるのか、それとも人類学者や社会学者が考えるように、何か不条理な宗教的畏怖や権威の概念が必要なのか。むしろ宗教や感情はナッシュ均衡の作り出す幻ではないのか。わたしには何とも言えないが、この方向を追求する価値はあると思うのだが。
最後のほうでは、ゲームが成り立つ基礎みたいなことまで研究していて、ほとんどヴィトゲンシュタインみたいなことになっている。一般的なゲームの他にも、オークションや「利己的遺伝子」の話などもあって、面白い話が盛りだくさんだ。ただ、確かに、頭を使わないで読める本ではない。著者は明らかに楽しんで書いているし、わたしも、この楽しさを共有できる人が多いといいなあと思う。難しいという人が多いのも事実だが、わたしのこの書評をここまで読んでくれた人なら、問題なく読めるだろう。
ラベル:
Very Short Introduction,
社会学,
数学
2010年10月12日火曜日
Tom Rath "Strengths Finder 2.0"
主張としては「弱点の克服に時間を使うよりは長所を伸ばしたほうがいい」というようなことだけど、この本自体は本体ではない。本体はWeb上の自己診断テストで、それでタイプ分類が出るから、自分に関係するところだけ読めばいいようになっている。よくある「適性診断テスト」みたいな物の、デラックス版と思って良い。「あなたに向いている職業は~」みたいな話のほか、色々なアドバイスが出て来る。アクセスコードは本に付属。
テストは余裕で三十分くらいかかる。わたしは英語で受けたけど、日本語でもOKなようだ。わたしの結果は、Ideation, Maximizer, Analytical, Deliberative, Futuristicだった。もともと自己申告だから、星占いみたいに意外な結果が出たりはしない。そして、自己イメージに沿って褒め称えてくれるので気分が良い。こんなので喜んでいるのもどうかと思うが、星占いと同様に話のタネになるし、多分大間違いでもないだろう。自信喪失気味で、しばらく人に褒めてもらっていない人などにお薦めだ。
テストは余裕で三十分くらいかかる。わたしは英語で受けたけど、日本語でもOKなようだ。わたしの結果は、Ideation, Maximizer, Analytical, Deliberative, Futuristicだった。もともと自己申告だから、星占いみたいに意外な結果が出たりはしない。そして、自己イメージに沿って褒め称えてくれるので気分が良い。こんなので喜んでいるのもどうかと思うが、星占いと同様に話のタネになるし、多分大間違いでもないだろう。自信喪失気味で、しばらく人に褒めてもらっていない人などにお薦めだ。
2010年10月9日土曜日
Robert A. Heinlein "The Door into Summer"
これ読んだのは相当昔だけど、急に思い出したので紹介する。今まで読んだ小説の中では、多分五本の指に入るだろう。わたしは基本的に復讐話が好きだ。もっとも、これは結局はあんまり復讐ではないんだけど。SFだけど、そんなに難しくもないし、普段SFを読まない人でも楽しく読めると思う。恋愛小説という説もあるが、その辺りはわたしはあんまり反応していない。けど、そういう楽しみ方もあるんだろう。猫小説という分類も有り得る。
2010年10月7日木曜日
Stephen Hawking, Leonard Mlodinow "The Grand Design"
ホーキング博士の最新刊。宇宙論という分野は、進歩が激しいというか情報爆発みたいな感じで、専門家ですら最新の情勢についていくのが大変らしいが、そこでホーキング博士みたいな人が書いてくれると話が早い。例によって一々神の非存在を論じていてうんざりするが、間違いなく本人が書いているというようなことで。
半分以上が、ギリシアの叡知をキリスト教が抑圧したとかいう世界観と、量子力学と相対論のよくある概説みたいなので占められている。本題はそこから先で、M-theoryと言う理論(群)を推してくるが、最終的にはライフゲームみたいなもので、単純な規則から見かけ上複雑な状況も作れるということらしい。まあ、昔から「宇宙のすべては単純なアルゴリズムの反復で生成できる」みたいな主張をする人はいるわけで、ホーキングはそこまで野心的ではないが、とにかく、「宇宙の存在を説明するのに、神は不要」ということがひたすら強調されていて、多分、普通の日本人には、そこまで必死になる理由が分からないんじゃないかと思う。
と思ってタイトルを見なおすと"The Grand Design"というのは、キリスト教系の"intelligent design"論に対抗する意味のようだ。日本語に翻訳しても、あんまり売れないかなあ。
半分以上が、ギリシアの叡知をキリスト教が抑圧したとかいう世界観と、量子力学と相対論のよくある概説みたいなので占められている。本題はそこから先で、M-theoryと言う理論(群)を推してくるが、最終的にはライフゲームみたいなもので、単純な規則から見かけ上複雑な状況も作れるということらしい。まあ、昔から「宇宙のすべては単純なアルゴリズムの反復で生成できる」みたいな主張をする人はいるわけで、ホーキングはそこまで野心的ではないが、とにかく、「宇宙の存在を説明するのに、神は不要」ということがひたすら強調されていて、多分、普通の日本人には、そこまで必死になる理由が分からないんじゃないかと思う。
と思ってタイトルを見なおすと"The Grand Design"というのは、キリスト教系の"intelligent design"論に対抗する意味のようだ。日本語に翻訳しても、あんまり売れないかなあ。
2010年9月27日月曜日
Graham Hutton: "Programming in Haskell"
Haskellの基本的入門書であり、Haskellを勉強しようと考えた人がこの本を見逃すことは考えられないし、敢えて読まないことも考えにくい。読んでから気がついたが、和訳があって、訳もちゃんとしているし、訳注が素晴らしいので、日本語を読めるんなら、日本語で読んだほうがいい。少なくとも参照する価値はある。
本自体は文句の付けようがないし、MUST-READなので、特に推奨の書きようもないんだけど、この際なのでHaskellを推奨する。近頃、関数型言語が流行り始めているが、色々な関数型言語の中では、このHaskellこそが最も基本というか過激派というか、関数型原理主義者とか理論家になりたいのなら、これが選択肢だ。実際のところ、数学の素養のある全くの素人にとっては、最も易しい言語だろう。それに呼応して、本書に出てくる多くのプログラム例は、実際にはそのままの形では動作しない。そんな関心は二の次なのだ。しかし、真面目な話、関数型言語の何たるかを知るのに最善の本でもある。
本自体は文句の付けようがないし、MUST-READなので、特に推奨の書きようもないんだけど、この際なのでHaskellを推奨する。近頃、関数型言語が流行り始めているが、色々な関数型言語の中では、このHaskellこそが最も基本というか過激派というか、関数型原理主義者とか理論家になりたいのなら、これが選択肢だ。実際のところ、数学の素養のある全くの素人にとっては、最も易しい言語だろう。それに呼応して、本書に出てくる多くのプログラム例は、実際にはそのままの形では動作しない。そんな関心は二の次なのだ。しかし、真面目な話、関数型言語の何たるかを知るのに最善の本でもある。
2010年9月26日日曜日
David Canter: Forensic Psychology (Oxford Very Short Introductions)
このタイトルを「犯罪心理学」と訳すと意味が狭過ぎる。犯罪の原因に関する心理学の他、法廷心理学、陪審員選び、精神鑑定、ウソ発見、証人の記憶の信憑性、刑務所や矯正施設での心理学、性犯罪者や薬物中毒者の処遇、プロファイリング等、要するに犯罪・刑事・司法のあらゆる分野における心理学の応用を概説する。
とにかく読みやすい。だいたいわたしは心理学という学問をあんまり信用していないが、犯罪心理学の泰斗だけあって、科学者としての良心が一々感じられる。科学的なカテゴリと、司法行政の現場でのカテゴリの間の矛盾にも敏感だ。「何にでも○○症候群とか付けるな」とか、「精神鑑定なんて当てにならない」と思っている人は読む価値があるだろう。読んでも疑念は晴れないが、しかし、こういうのが全然無いとマズいのも厳然たる事実というようなことは分かる。
特に英語圏では"プロファイリング"という言葉が濫用されて、まあそれで優秀な人間がForensic Psychologyに集まって来るのはいいけど、科学的に確実な範疇を越えて濫用されても困るというような、とても常識のある著者なので、安心して読めるだろう。
とにかく読みやすい。だいたいわたしは心理学という学問をあんまり信用していないが、犯罪心理学の泰斗だけあって、科学者としての良心が一々感じられる。科学的なカテゴリと、司法行政の現場でのカテゴリの間の矛盾にも敏感だ。「何にでも○○症候群とか付けるな」とか、「精神鑑定なんて当てにならない」と思っている人は読む価値があるだろう。読んでも疑念は晴れないが、しかし、こういうのが全然無いとマズいのも厳然たる事実というようなことは分かる。
特に英語圏では"プロファイリング"という言葉が濫用されて、まあそれで優秀な人間がForensic Psychologyに集まって来るのはいいけど、科学的に確実な範疇を越えて濫用されても困るというような、とても常識のある著者なので、安心して読めるだろう。
ラベル:
Very Short Introduction,
心理学
2010年9月16日木曜日
Anthony Giddens "Sociology" (6e)
わたしがこの本に出会ったのは随分昔のことになるけど、その当時は退屈な本にしか思えなかった。翻訳だったせいも大きいと思うけど、当時は、もっと尖った、極端で不条理な理論書みたいなほうが好きだったからな・・・。今でもパラパラ見ることがあるけど、そのたびに考える材料を提供してくれる。
そういうわけで、わたしの口からは、「社会学を学ぶ奴は全員読め」とは言いにくい。それぞれの興味の持ち方によっては、退屈な部分もある多々あるだろうし。しかし、とにかく分厚いから、興味を惹いたところだけでも、適当に拾い読みしていれば、論文のネタに困るなどということはない。
そういうわけで、わたしの口からは、「社会学を学ぶ奴は全員読め」とは言いにくい。それぞれの興味の持ち方によっては、退屈な部分もある多々あるだろうし。しかし、とにかく分厚いから、興味を惹いたところだけでも、適当に拾い読みしていれば、論文のネタに困るなどということはない。
Programming F# (O'Reilly)
F#を勉強しようという人が本を探すと、この本が真っ先に出てくるはずで、ほとんど選択の余地もないし、本自体もちゃんとした基本書なので、わたしがどうこう言う話でもないのだが・・・。和訳が出たのにさっき気が付いたので、訳の仕上がりは知らない。まあ海外とやりとりする際などには英語で話さないといけないから、原著のほうが間違いないだろう。
一応、基本から解説してあるから、関数型プログラミングについて無知でも読めることは読める。非手続き型言語本にありがちなマニアックな理論はあまり語られない。そういうことが楽しいムキは、LispとかHaskellみたいなので勉強した方が楽だろう。まあ、F#も特に変な言語ではないので、その方向からF#を選択するのも間違いとは思わない。Lisperなら、この本をチラ読みするだけでも、十分概要をつかめるし、それでとりあえず終了かもしれない。
Microsoft流の実用主義というようなことで、はたしてF#に先行投資する価値があるのかどうかは知らない。わたしはあると思っているが・・・。あと関係ないけど、IO Booksの"関数プログラミング言語「F#」"は、全くお勧めできない。
一応、基本から解説してあるから、関数型プログラミングについて無知でも読めることは読める。非手続き型言語本にありがちなマニアックな理論はあまり語られない。そういうことが楽しいムキは、LispとかHaskellみたいなので勉強した方が楽だろう。まあ、F#も特に変な言語ではないので、その方向からF#を選択するのも間違いとは思わない。Lisperなら、この本をチラ読みするだけでも、十分概要をつかめるし、それでとりあえず終了かもしれない。
Microsoft流の実用主義というようなことで、はたしてF#に先行投資する価値があるのかどうかは知らない。わたしはあると思っているが・・・。あと関係ないけど、IO Booksの"関数プログラミング言語「F#」"は、全くお勧めできない。
2010年9月14日火曜日
Harriet Bulkeley, Peter Newell "Governing Climate Change" (Routledge Global Institutions)
たとえば、Shell一社でサウジアラビア一国の二酸化炭素排出量を越えているというような時に、従来型の国際機関-国-企業・私人というようなガバナンスには限界があるというような問題意識から書かれている。企業は規制の厳しい国からは逃げることができるし、途上国の住民を立ち退かせて森にしてカーボン・シンクなどと言い張ることもできる。
このような状況では、国以外に、コミュニティベースの運動や企業連合のようなものが重要になってくるというのが一貫した主張だ。HIVと同じで、似たような団体や標準が増えすぎている気もするし、果たしてどれだけ有効なのかも良く分からない。一方、ネオリベラルな思考に基づいた排出権取引のようなガバナンスもあるとかで、有効無効は別として、色々考えさせられる。
そして、もちろん、ガバナンス推進派と懐疑派との間の知識社会学的戦闘も描かれているが、筆者たちは基本的には懐疑派を科学的に問題にならないと考えているようだ。なんにしろ、この本は、温暖化問題に対する対策を記述するというよりは、新しいタイプのグローバル・ガバナンスの勃興に興味がある。その点に関しては、わたしももっと研究したくなった。
わたしは実は個人的には温暖化問題を真剣に考えていないのだが、二酸化炭素原因説が陰謀だという話より、二酸化炭素が原因じゃないというの説が陰謀だと言うほうが説得力がある。どっちにしろ多少の陰謀はあるんだろうけど、その辺りも少し記述がある。
純粋に温暖化問題について概要を知りたいという場合は、たとえば、Oxford Very Short Introduction Seriesの"Global Warming"をお勧めしたいけど、別に日本語でも色々あるだろう。
このような状況では、国以外に、コミュニティベースの運動や企業連合のようなものが重要になってくるというのが一貫した主張だ。HIVと同じで、似たような団体や標準が増えすぎている気もするし、果たしてどれだけ有効なのかも良く分からない。一方、ネオリベラルな思考に基づいた排出権取引のようなガバナンスもあるとかで、有効無効は別として、色々考えさせられる。
そして、もちろん、ガバナンス推進派と懐疑派との間の知識社会学的戦闘も描かれているが、筆者たちは基本的には懐疑派を科学的に問題にならないと考えているようだ。なんにしろ、この本は、温暖化問題に対する対策を記述するというよりは、新しいタイプのグローバル・ガバナンスの勃興に興味がある。その点に関しては、わたしももっと研究したくなった。
わたしは実は個人的には温暖化問題を真剣に考えていないのだが、二酸化炭素原因説が陰謀だという話より、二酸化炭素が原因じゃないというの説が陰謀だと言うほうが説得力がある。どっちにしろ多少の陰謀はあるんだろうけど、その辺りも少し記述がある。
純粋に温暖化問題について概要を知りたいという場合は、たとえば、Oxford Very Short Introduction Seriesの"Global Warming"をお勧めしたいけど、別に日本語でも色々あるだろう。
ラベル:
Global Institutions,
政治
2010年9月10日金曜日
Writings from the Zen Masters (Penguin Great Ideas)
無門関・十牛図のほか、あとは日本の禅僧のランダムな逸話。前二者は日本語でも容易に手に入るし、最後のも、日本語でそれらしい本を読んでいれば、知っていることがほとんどだろう。しかし、英語で読んだほうが、直接響いてくることもある。不思議なものだけど、どうも日本語は雰囲気で読んでしまっているところがあるのかなあ。
2010年9月9日木曜日
Dale Carnegie: How to Stop Worrying and Start Living
今更だけど、この本はやっぱり挙げておきたい。日本語訳が「道は開ける」とかいう残念なタイトルになっているので、気持ち悪がって手にも取らない人が多いんじゃないだろうか。しかし、読んだ人はみんな絶賛しているし、わたしも絶賛する。大体書店の自己啓発のエリアに陳列されていて、そのエリア全体をバカにしていると、下手をすると一生手に取らない。確かに自己啓発本のルーツではあるんだけど、決して今時の胡散臭い本ではない。むしろ、アメリカ哲学の最後の傑作と言うべきなんだろう。
"Worry"という単語は、「クヨクヨする」という意味もあるが、「イライラする」という意味もある。だから、心配と訳すると意味が狭すぎるけど、基本的に心配性の人のために書かれた本だ。楽天家がこの本を読んでどう思うのかは分からない。わたし自身が心配性だから。そして、別に困ってもいない人に敢えて勧めるのも躊躇われる。
内容は、心配性の人に心配をやめる様々な方法を具体的に教えるものだ。それも胡散臭い呪術的な方法ではなく、激しく古典的な方法が挙げられていく。たとえば、何かに夢中になってしまえば、心配をしているヒマがない。そういう意味では、斬新なことは何も書いていないが、それでもわたしを含めて多くの人が絶賛している。まあ、わたしが説明するより、とにかく手にとってもらいたい。少し大きめの本屋ならどこでも日本語訳は置いてあるし。英語で読んでも易しい。
今ではわたしはたまにしかこの本を見ない。結局、心配をやめるには、単に心配をやめるしかない。心配をやめたいと思っているのなら、やめればいい。分かる人はこれで分かるんだろう。分からなければ、ひとまずこんな本を読むしかない。だから、わたしにとってこの本は、いずれ卒業しないといけない本だ。いつかわたしはこの本を忘れるだろうか。
"Worry"という単語は、「クヨクヨする」という意味もあるが、「イライラする」という意味もある。だから、心配と訳すると意味が狭すぎるけど、基本的に心配性の人のために書かれた本だ。楽天家がこの本を読んでどう思うのかは分からない。わたし自身が心配性だから。そして、別に困ってもいない人に敢えて勧めるのも躊躇われる。
内容は、心配性の人に心配をやめる様々な方法を具体的に教えるものだ。それも胡散臭い呪術的な方法ではなく、激しく古典的な方法が挙げられていく。たとえば、何かに夢中になってしまえば、心配をしているヒマがない。そういう意味では、斬新なことは何も書いていないが、それでもわたしを含めて多くの人が絶賛している。まあ、わたしが説明するより、とにかく手にとってもらいたい。少し大きめの本屋ならどこでも日本語訳は置いてあるし。英語で読んでも易しい。
今ではわたしはたまにしかこの本を見ない。結局、心配をやめるには、単に心配をやめるしかない。心配をやめたいと思っているのなら、やめればいい。分かる人はこれで分かるんだろう。分からなければ、ひとまずこんな本を読むしかない。だから、わたしにとってこの本は、いずれ卒業しないといけない本だ。いつかわたしはこの本を忘れるだろうか。
2010年9月8日水曜日
Political Philosophy (Oxford Very Short Introduction)
実のところわたしは政治哲学というものにあんまり関心がなく、サンデル教授が正義について語っても、パラパラ見て、「思いつき言ってるだけやん」と思って放置してしまう。まだ中国や日本の昔の思想家のほうが興味がある。少なくとも、彼らは次の日から現実に適用可能なことを語っている。
現実から離れた・単純化された・異常な状況について、ああだこうだと理屈を重ねるのは楽しいけど、それはそれで終わりというのが、だいたいのわたしの哲学全般に対する思いだ。記号論とかは本当に面白いけど、厳密な議論ほど現実に適用できないというのが、デリダの教えだと思っている。
とは言え、社会哲学がないと困るのは事実だし、それで踊っている人が現実にいるんだから、無視してばかりもいられない。そうすると、「考えてみよう」みたいな本より、単なる学説史紹介みたいな本のほうがいいけど、その点では、この本はわたしには初歩的過ぎた。初学者には良いと思う。理屈を捏ねるのが好きな人は、サンデル先生のほうがいいかもしれない。流行でもあるし。
現実から離れた・単純化された・異常な状況について、ああだこうだと理屈を重ねるのは楽しいけど、それはそれで終わりというのが、だいたいのわたしの哲学全般に対する思いだ。記号論とかは本当に面白いけど、厳密な議論ほど現実に適用できないというのが、デリダの教えだと思っている。
とは言え、社会哲学がないと困るのは事実だし、それで踊っている人が現実にいるんだから、無視してばかりもいられない。そうすると、「考えてみよう」みたいな本より、単なる学説史紹介みたいな本のほうがいいけど、その点では、この本はわたしには初歩的過ぎた。初学者には良いと思う。理屈を捏ねるのが好きな人は、サンデル先生のほうがいいかもしれない。流行でもあるし。
ラベル:
Very Short Introduction,
政治
2010年8月31日火曜日
The U.S. Congress(Oxford Very Short Introduction)
このシリーズのフォーマットに則った、米国連邦議会の入門書。機能と現状と歴史を交えながら解説していく。最後はCapitolの案内まで。翻訳しても売れると思うけど、米国議会を学ぼうとするくらいなら、この程度の英文は読めるはず。最初の一冊としてもお奨めだし、基礎教養ということなら、これで完結している。
これを読み終わると、"Congressional Procedures and the Policy Process"がだいたい理解できるようになる。こっちはすべての議会関係者・ロビイストの必携書ということになっていて、立法過程の戦略が詳細に解説されている。これ以上詳しく学びたいということだと、"The Hill"とか"Roll Call"みたいな業界紙を読みながら専門に研究するか、この本を片手に連邦議会周辺で働くしかない。
もっとも、米国の法律が主たる興味という場合は、"Congressional Record"とか"Federal Register"とか判例とかを読めるようになるほうが優先課題だ。この辺りは、わたしはNOLOの"Legal Research"で学んだけど、もっと重い本でよければいくらでもあるし。
それにしても、日本の国会に関しては、こういう分かりやすい中立な解説書がなさすぎる。一番それらしいのが「新・国会事典」だけど、どうも建前な解説が多くて、リアルなところが分からない。議会の歴史がまだ浅いのかな・・・。
これを読み終わると、"Congressional Procedures and the Policy Process"がだいたい理解できるようになる。こっちはすべての議会関係者・ロビイストの必携書ということになっていて、立法過程の戦略が詳細に解説されている。これ以上詳しく学びたいということだと、"The Hill"とか"Roll Call"みたいな業界紙を読みながら専門に研究するか、この本を片手に連邦議会周辺で働くしかない。
もっとも、米国の法律が主たる興味という場合は、"Congressional Record"とか"Federal Register"とか判例とかを読めるようになるほうが優先課題だ。この辺りは、わたしはNOLOの"Legal Research"で学んだけど、もっと重い本でよければいくらでもあるし。
それにしても、日本の国会に関しては、こういう分かりやすい中立な解説書がなさすぎる。一番それらしいのが「新・国会事典」だけど、どうも建前な解説が多くて、リアルなところが分からない。議会の歴史がまだ浅いのかな・・・。
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