2026年5月21日木曜日

Rob Boddice "Pain: A Very Short Introduction" [痛み:非常に短い入門]

Pain (Amazon.co.jp)

目次:1. 痛みの概念 2. 痛みと敬虔さ 3. 痛みと機械 4. 痛みと文明 5. 同情と思いやりと共感 6. 喜びとしての痛み 7. 現代医学と科学の中の痛み 8. 慢性的な痛み 9. 痛みの分化

麻酔については、かなり前に読んだAiden O'donnell "Anaesthesia: A Very Short Introduction"のほうが遥かに詳細である。本書"Pain"については、著者は歴史学者らしく、医学的記述や哲学的考察はほとんどない。西欧における痛みの文化誌というところ。だいたい想像がつくが、古代ギリシアとか、キリスト教とか、文化的社会的偏見とか…。まあ、痛みというものに対して抱いている観念を相対化するのには役立つのかもしれない。個人的にはあまりこの類の博物誌に感心しないのだが、時々面白い話もある。

特にわたしが注目する点としては、この本は一貫して心の痛みと体の痛みという二分法を拒否している。もう少し詳しく書いてほしいところだったが、単なる痛覚と簡単に言うが、想像以上に上位精神とか文化との相互作用があるらしい。一体、痛みとは、脳へのインプットなのか、脳からのアウトプットなのか。最近、アメリカでプラセボの鎮痛効果が向上しているが、プラセボに勝たないと新しい鎮痛薬は出せない。このため新しい鎮痛薬はほとんど市場に出てこない云々。こういう面白そうな論点はところどころあるのだが、全く表面的にしか記述されないのが残念だ。

しかし、こういうところが気になるのはわたしの趣味であって、社会史とか文化誌に興味の中心のある人たちはまた興味の中心が違うんだろう。ここまで色々な本を読んできて、そういうこともようやく分かってきた。

出版社 ‏ : ‎ Oxford Univ Pr

発売日 ‏ : ‎ 2017/10/1

言語 ‏ : ‎ 英語

ISBN-13 ‏ : ‎ 978-0198738565

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