2023年5月23日火曜日

Klaus Dodds, Jamie Woodward "The Arctic: A Very Short Introduction" [北極:非常に短い入門]

目次:1.北極の世界 2.物理環境 3.北極の生態系 4.北極の人々 5.探検と開発 6.北極の統治 7.北極の炭素貯蔵 8.北極の未来

目次から明らかなように、北極に関するほぼ全学問分野からの概説。高校の科目で言えば地理でも生物でも地学でも世界史でも政治経済でも、ここまで北極に詳しいことは求められないだろう。

人によって興味のあるところは違うとは思うが、わたしとしては、地球温暖化についての北極圏の役割は想像を超えていた。北極圏には前の氷河期以前に生物蓄積れた大量の炭素が保存されており、現在永久凍土がどんどん溶けて、大量の二酸化炭素とメタンが放出中と。地政学も面白いところだ。温暖化がどんどん進んでおそらく今世紀中に少なくとも夏場は北極海が航行可能になると例えば英国と日本が近くなる。スバールバルでは今もロシアが戦略上の都合から無意味に石炭を掘っているとか。グリーンランドがそのうち独立すると、資源を求めて中国資本などがどんどん入ってくるだろう。とにかく、今どんどん永久凍土が沼地化していると同時に、資源開発も進んでいる。

…というようなことはこの本では後半だが、こういう話を正しく理解するには、この本を全部読む必要がある。結局、物理環境とか生態系とか先住民の権利とか、全部絡み合っている。VSIではThe Antarctic南極(Klaus Dodds著)も面白かったが、現在の温暖化の進行状況を考えるとこっちのほうが必読かもしれない。

Authoritative apoaches to the arctic zones from all areas of scholarship.

Oxford Univ Pr (2022/2/1)
言語 : 英語
ISBN-13: 978-0198819288

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