2012年9月7日金曜日

Peggy Garvin "Government Information Management in the 21st Century"

ISBN-13: 978-1409402060

世界の色々な国での公共図書館における、政府情報の提供に関する論文集。第一部は、公共図書館に焦点を当てて、政府情報を提供する際の様々な論点・実例を提示。特に電子政府と図書館の関係が問題になる。政府がサービス窓口として図書館を使っていくという方向もあるし、市民が図書館を通して政府情報に迫っていくという方向もある。情報の保存・アクセス等の問題は、電子・紙資料それぞれにあり、どこの国の図書館も大変だ。特に東欧のようにネットが普及していないのに電子政府だけ確立しているような地域では、アクセスを保証するために図書館を使うという面もあり・・・。

第二部は、情報を提供する側(政府機関)に焦点を当てて、「開かれた政府」の実現に関する様々な論点・実例を提示している。こちらも電子署名の問題やら著作権の問題やらで、具体的には大変だが、方向性はわりと見えている気もする。この辺りは、ヨーロッパ・北米の事例からbest practiceを学ぶというようなことで。

わたしの考えでは、この本は全ての公共図書館司書が読むべきだが・・・まあ、日本では無理だろう。英語が読めないというのは別として、残念ながら、日本と欧米では、図書館員の社会的地位が違い過ぎる。アメリカには連邦政府の寄託図書館制度(FDLP)があり、全米の1200館を越える寄託図書館は連邦政府の情報を保持し提供する義務がある。つまり、少なくともその1200館には政府情報を扱う司書がいるわけだ。もちろん、背景には、政府の透明性が民主主義にとって必須で、米国民には政府情報にアクセスする権利があるとかいう理屈がある。というか、そもそも図書館の数も質も絶望的に違うわけだが。アメリカでは修士を取っていないと図書館で働くのは難しい。

他方、日本の公共図書館で政府情報や法律について尋ねても、素人以下の答しか返ってこない。市の職員ならまだしも、近頃の司書はほとんどがバイトで、まあ司書資格は持っているんだろうが、司書過程では政府情報についてロクに教えていないんだろう。酷いところではTSUTAYAが図書館を経営していて、単なる娯楽施設としか思われていないのだろう。そもそも政府刊行物や法律書を置くスペースもない有様で、民主主義も開かれた政府もあったものではない。

というわけで、この本は、中央・地方の政府の情報公開担当者が読んでくれることに期待したい。正直なところ、日本政府には情報を提供するどころか、情報を収集する能力というか予算すらロクにない気がするが、情報がなければまともな政策を立案できるわけがない。民主主義のためとかいう理屈とは別に、情報の流通が改善すれば、それだけで日本経済に与える影響は大きいと思うのだ。残念ながら、本書では、その件については、アメリカとEUについてしか分析していないが・・・。

I bet this book is already well-know in the library world, because it is published by a famous publisher, Ashgate. Having read this book, I was forced to reflect that Japanese librarians enjoy much lower social status than their colleagues in Europe or north America. Someone must translate this book into Japanese. Or, at least write a review of this book in Japanese.

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