2025年5月6日火曜日

Fernanda Ferreira "Psycholinguistics: Very Short Introduction" [心理言語学:非常に短い入門]

Psycholinquistics (Amazon.co.jp)

目次:1. 心理学と言語学の関係 2. 言語を理解すること 3. 言語を生成すること 4. 会話と対話 5. 読むこと 6. 言語処理の個人差 7. バイリンガルであること 8. 手話と手ぶりの心理言語学 9. 次は何?

わりと最初のほうでgarden-path文の例が惹き込まれる。garden-pathというのはヨーロッパの迷路文化を前提にした専門用語だが、例えば次のような文を言う。

The horse raced past the barn fell.

これは完全に文法的に正しい英文だが、一発でまともに読める人はほぼ皆無という話だ。この類の文をめぐって様々な研究が行われているが、研究内容というよりは、こういう例自体が面白い。

しかし、結局、この本のピークはこのあたりだった。ほかにも色々な話題があるが、どれにしても「その程度のことしか分かっていないのか」「まあそうでしょうね」という感想しかない。

バイリンガルの件はちょつと面白かった。バイリンガルが老年性痴呆の抵抗因子であるということは確定しているらしいが、さらに言語以外の認知機能についてプラスかマイナスかという話がある。結論としてはよくわからないのだが、バイリンガルが認知機能にとって+/-という話と、移民差別/反差別の話がリンクしているらしい。

人によってはもっと拾うところもあるかもしれない。わたしとしてはイマイチだった。

Oxford Univ Pr (2025/4/23)
言語 ‏ : ‎ 英語
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-0192886774

2025年4月16日水曜日

Philip Dwyer "Violence: A Very Short Introduction" [暴力:非常に短い入門]

Violence (Amazon.c.jp)

Amazonのレビューに一つ酷評がついているが、全く同感だ。これまで大量にVSIシリーズを読んできたが、VSIに限らず、このブログの中でも屈指のダメ本だろう。

内容は、例によって最初に定義みたいな話はあるが、結局曖昧なまま進む。あとは特に近代以降の、社会問題化したような古今東西の暴力(戦争~残虐刑~DVを含む)を断罪陳列しているだけ。定義について曖昧にしたまま、著者の倫理観的に許されない暴力の事例が並べられているだけだ。

例えば、警察官が犯罪者を取り押さえたりするような場合や、子供同士のケンカなどは取り上げられもしない。植民地支配は暴力だが、それに対する反乱は暴力ではないらしい。死刑は暴力だが懲役は暴力ではないらしい。そういう定義ならそれで全く構わないが、それならその点ははっきりさせるべきだろう。

この本はVSIでたまにある「断罪系」なんだけど、本当にそれ以外に内容がほとんどない。こういう話なら、

・暴力の生物学的起原
・暴力の心理学的メカニズム
・国家による合法的暴力の独占の変遷
・暴力のコントロール方法
・暴力を制圧するための暴力
・…

など、色々な興味深い論点があるはずだが、ほぼ問題にされていない。せめて聞いたことのない事例が多く紹介されていれば世界史の勉強になったり、人によっては猟奇的ホラー的興味の対象になるかもしれないが、ほぼ聞いたことのある話だ。

まだまだ文句は言えるし、実際に書きもしたが、長くなるので消した。著者について少し調べたら、歴史の専門家で、生物学・心理学・社会学・哲学みたいな要素はない。歴史の特定の分野では権威なんだろう。

Oxford Univ Pr (2022/6/24)
言語 ‏ : ‎ 英語
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-0198831730

2025年4月14日月曜日

Daron Acemoglu, James A. Robinson "The Narrow Corridor: States, Societies, and the Fate of Liberty" [狭い回廊:国家と社会と自由の運命]

 The Narrow Corridor (Amazon.co.jp)

自由の命運(上)(Amazon.co.jp)

自由の命運(下)(Amazon.co.jp)

だいたい前著"Why Nations Fail"と同じ世界観で、巷ではより考察が深まったとか言われているが、それよりはさまざまな世界史エピソード集みたいな魅力が圧倒的で、本体の主張については、そんなに衝撃はない。主張自体は、①有能な国家と②国家の行動に足かせをつける社会の二つが常に競って能力を高めていく必要がある、というところ。別に読むのにそんなに予備知識はいらないし、一応ノーベル経済学賞案件なので、誰が読んでもまず損はない。日本語訳もしっかり出ている名著なので、概要はどこにでも書いてあるだろう。

個人的に一番興味があったのは、搾取するエリート層がいないにも関わらず、相互監視のせいで発展しない社会の例だ。つまり、ちょっと努力して少し蓄財したりすると、周りがタカってきてつぶしてしまうのである。このような社会では誰もまあまあの労働しかしないし、当然経済も発展しない…。

関係ない別の本の話だが、働かないおじさんがデフレ時代には合理的だったという話がある。詳しくは『物価を考える』(Amazon.co.jp)という和書があるが、要は、デフレ時代には労働の質を上げても給料が大して上がらないし、労働の質を下げても賃金の下方硬直性がある。これは労働に限ったことではなく、デフレ下では、高品質な物を作っても大して高価格に設定できない。競争は低品質低価格のほうに向かう。

こういう話を聞くと、自分の個人的な体験が思い起こされてくる。もちろん、本書の中心的な問題は前著同様「エリートが強すぎて何でも搾取してしまうので庶民が努力しない社会」と「無政府状態でまともな商取引などができない社会」で、一応どちらでもない(=回廊内にいる)とされている現代日本に生きているのは幸運なことだが、ローカルには現代日本にもそんなことはあるよなあ…と思う。

最後の部分はアメリカの未来にあてられている。アメリカの問題はエリートが強すぎて庶民が絶望していることで、ヒトラーを生み出したヴァイマール共和国みたいな話だが、本書出版以降、実際その路線を進行中である。実のところ、わたしとしては、本書の大雑把な主張で目の前の現実を捌けるとは思わないが、間違いなく一つの面をとらえているんだろう。

しかし、最初に書いたように、わたしが思う本書の最大の魅力は世界史エピソードにある。主張自体に興味がある人からすると、いろいろ物足りないかもしれないが、読んで損のない本だと思う。

出版社 ‏ : ‎ Penguin Press (2019/9/24)
言語 ‏ : ‎ 英語
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-0735224384

2025年3月12日水曜日

Natalie Labriola "Tarot: Timeless Secrets of the Ancient Mirror" [タロット:古代の鏡の永遠の秘密]

Tarot (Amazon.co.jp)

わたしにとってTarotは流行らないゲームだが、これはゲームではなく、占いで重視されるMajor Arcana 22枚の解説が主。フランス語圏と違って英語圏ではライダーウェイト版という権威があり、カードがわりと統一されている。

どのみちそんなに歴史のあるものでもないし、本質的にゲームカードなので、いくらでも想像は膨らむし適当なことも無限に言えるが、こういうのも社会情勢とか文化が反映される。そういうことではイルミナティカードのほうが面白い気もする。

たまに易経とか読むこともあるが、占いという作業も面白いのかもしれない。将来の展望や行動を考える時に、机の上に客観的なデータだけでなく、全くランダムなタロットや筮竹があったら考察が捗るのだろうか。全くあり得ない話でもない気がしてきた。というか、気が付いていないだけで、我々の思考は実は常にそんなものなのかもしれない。我々の思考は、体調や天候や場所や最近の出来事や、要するに多数の偶然に影響されているわけで、それにタロットを追加しても結果に大差はなく、むしろ考えやすいまであり得る。というか、それ以外に思考の方法があるのだろうか。

Wooden Books (2024/6/1)
言語 ‏ : ‎ 英語
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-1907155505

2025年3月5日水曜日

Arthur Conan Doyle "The Case-Book of Sherlock Holmes" [シャーロック・ホームズの事件簿]

The Case-Book of Sherlock Holmes (Amazon.co.jp)

ここまでシャーロック・ホームズの作品を基本的には発表順に読んできたが、正典と呼ばれるのはこれが最後。発表年では最初の作品から最後の作品までの間はほぼ40年間ある。このブログによれば、わたしが"A Study in Scarlet"を読んでからここまでだいたい8年と少し。

ホームズは基本的に馬車と電報のイメージだが、最後のほうは自動車とか電話とか言っているし、わたしの記憶にある限り、alibiという単語が出てきたのはこの作品集の一度切りだ。推理小説という形式も普通になってきたんだろう。40年の間に随分時代が進んだらしい。一方、わたしの8年間は大した進歩がないような気がする。やっていることが何も変わっていないからな…。

だいたい全部面白かった。一つだけ選ぶなら"The Hound of the Baskervilles"かもしれない。わたしの読書の中でフィクションが占める割合は大きくないが、常に何かしらは読んでいる。こういう安心して読んでいられる小説は良い。また何か探そう。

SeaWolf Press (2023/1/1)
言語 ‏ : ‎ 英語
ISBN-13 ‏ : ‎ 979-8886000832

2025年3月3日月曜日

Christian Jacq, Institut Ramsès "Le Petit Champollion illustré - Les hiéroglyphes à la portée de tous" [図解小シャンポリオン-みんなのヒエログリフ]

ヒエログリフの入門書。図解というのは、まあそもそもヒエログリフが図解ということかもしれない。入門と言っても、実際には文字集・単語集みたいな感じで、筆者のエッセイのようなものが綴られている。どこまでがエジプト学的に確定している事実で、どこからが筆者の感想なのか分かりにくい。面白いから売れているようだが。例えば中国語でいえば、漢字と熟語についての成り立ちを面白く解説しているようなもの、と言えばほぼ正確にこの本の実態を表しているだろう。文法とかそんな話はほとんどない。発音も結局は古代ギリシア語からの推測でしかなく、あまり真剣に考えても仕方がない。そもそもセム語とかその辺りの言語は母音を書かない。

ということで古代エジプト語を真剣に勉強するというような本ではない。一応練習問題とかもついていたりするが、気楽な読み物と考えるべきだろう。しかし、時々真剣に興味深い話もある。ちょっと記録しておこう。

ヒエログリフは基本的に象形文字を組み合わせて意味を表すが、音写もできるし、併用することもできる。フランス人に対してこの事態を説明するのは面倒だが、漢字と同じことなので我々には何の問題もない。で、アルファベット的にヒエログリフを並べた時にAに相当するのが𓄿だが、そもそもヒエログリフに母音を書く習慣はなく、これは実際には「子音のA」である。

我々は「子音のI(Y)」や「子音のU(W)」は知っているが、「子音のA」は知らない。本書にもそれ以上説明がないが、ヘブライ語のℵと同じで声門閉鎖音を表す。ドイツ語は単語の先頭の母音が無意識に必ずこの音になっており、したがって"Es ist ein...."みたいな文があったとしても単語がくっついて発音されることはない。アメリカ人でもappleて発音してみ、と言えば最初のappleの前に無意識に𓄿が入ることが多いようだ。というか、日本人でも「𓄿えっ!」と驚く時に入る人のほうが多いような気がする。しかしこれらの例では𓄿が入っても入らなくても言葉の意味は変わらないし、誰も気が付かないくらいかもしれないが、セム語では意味が変わってしまうのだろう。

読んでいるとこんなことも色々考える。あと、これはこの本がフランス語だから筆者も何にも思っていないのかもしれないが、日本語の「知っている」英語の"know"の一語に対し、フランス語には"connaître/savoir"の区別があり、スペイン語には"conocer/saber"の区別があり、ラテン語には"cognōscere/sapere"の区別がある。で、古代エジプト語にも当たり前のようにこの区別があるが、確かにこの二つは人間の脳の動作として全く別物の気がしてきた。

そんなことを考えていると、そういえばスペイン語のestar/serの区別はなんだとか、元のラテン語がどうとか、もはやヒエログリフとは関係のない話だが、どんどん余計な調べものをしていたので読み終わるのに時間がかかった。本質的にはヒエログリフの組み立てからイスラーム以前のエジプト人の思考を問うていく感じがハイデガーみたいだ。結果的には退屈しない本であった。

Robert Laffont (25 août 2022)
Langue ‏ : ‎ Français
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-2221263877

2025年2月26日水曜日

Octavia Wynne "Poetic Meter and Form" [詩の律と形式]

 Poetic Meter and Form (Amazon.co.jp)

英語の詩における形式、特に律(リズム)の解説。韻のほうはほとんど話されていない。俳句みたいな英語以外の話もあるが、この本には英語しか出てこないので、英語以外の律については辞典でしかない。

と言うと、マニアックな文学研究者しか読まないような感じになるが、わたしとしては、これは英語学習の基本だと思っている。わたしはかなり子供の段階で勉強したし、一瞬だけ行ったことのあるBerlitzでも多少扱っていた。別に内容を覚えてはいないが、詩に興味が無くても、ナチュラルに聞こえる英語を話すためにはリズムの話は避けられない。現代でもrapとかを理解するためには必須項目のように思われる。

というのも、本書でも軽く触れているが、英語は日本語やフランス語と違って強勢で話す。大げさに言うと"Canada"という単語を日本語もフランス語も「カ-ナ-ダ」と発音するが、アメリカ人は"Cand"くらいにしか発音しない。こんなことなんでカナダ人のフランス語はフランス人でも聞き取れないとかアメリカ人がスペイン語の語尾を真面目に発音しないので意味不明という話になるが、それはともかく、英語を日本語みたいに平ぺったく発音していると英語っぽく聞こえないという事実がある。この事態を矯正するためにもこういう勉強はしたほうが良い。

根本的な理由として日本語が高低アクセントで英語が強弱アクセントなせいだが、別に日本語教室では音の高低なんて教えていない。マニアックな日本語教室で橋と端と箸とかやっているかもしれないが、アナウンサーレベルでもどうでもよくなっているだろう。わたしはやたらこういうのが気になるので「次は根津。The next station is nedzu.」の根津とnedzuのアクセントが違う(低高と高低)とか文句を言っているが、誰も気にしていない。中国語は音の高低で意味が違ってしまうが、日本語では高低は大して問題にならない。

アクセントには違いがないが、日本語のアクセントがわりとどうでもいいのに対し、英語でアクセントを間違えると本当に通じない。英語でアクセントを間違えるのは日本語で母音の長短を間違える以上の重罪の気がする。日本語の英語学習書でもリズムに着目している本は多くあるんだろうけど、そういうことでは詩が一番の気がする。

Bloomsbury Pub Plc USA (2016/2/16)
言語 ‏ : ‎ 英語
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-1632864444

2025年2月25日火曜日

Adina Arvatu, Andrew Aberdein, Merrily Harpur "Rhetoric: The Art of Persuasion" [修辞:説得の技術]

 Rhetoric (Amazon.co.jp)

いわゆる修辞学ということで、こういうのやたら好きな人もいるが、実際にはこのWooden Booksの薄い本で網羅されているような気もする。修辞学は論理学と文法学とと並び称されるLiberal Artsの一部門だが、わたしとしては、そんなに価値があるのか不思議に思っている。一度調査したほうがいいかもしれない。それはともかく、欧米ではこんなのはわりと基礎的な教養としてみんな学習していて、彼らがやたら弁論とかが得意なのはそういうこともあるんだろう。

Bloomsbury Pub Plc USA (2016/2/23)
言語 ‏ : ‎ 英語
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-1632864437

Amy Jones "Narrative: Telling the Story" [物語:話を伝える]

 Narrative (Amazon.co.jp)

簡単にいうと小説の書き方の幾つかの側面の解説。「誰を語り手にするか」のほか、時制や、プロットを複数進行させるとか、手紙などの劇中劇みたいな方法とか。この著者のWooden Booksの本を読んだら、一通りフィクションを書くための方法論が揃うのかもしれない。映像でも同じことだと思うが。個人的にはフィクションについては読むだけだし、読書量の中でフィクションの占める割合は小さく、あんまり裏側のことを知りたいとも思っていないんだが…。あまりこういうのを知り過ぎるとシニカルな読み方になってしまう。しかし、わたしが小説を読まないと言っても、普通の人よりは圧倒的に大量に読んでいることに変わりはなく、どのみち裏読みみたいなことは避けられない。それか、いつか自分がフィクションを書く日が来るか…。

Wooden Books (2022/11/1)
言語 ‏ : ‎ 英語
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-1907155475

2025年2月21日金曜日

Amy Jones "Literary Devices" [文学技法]

 Literary Devices (Amazon.co.jp)

比喩とか誇張法とか擬人化とか、その類の利いた風な言葉遣いの図鑑みたいな感じ。たとえばカルチャーセンターとかでやっているような小説教室とか、そういうところではこういうことも教えているんだろうな…という感じ。わたしはあまりこういう創作の裏側みたいな話には醒めてしまって興味がないが、例として挙げられる文章はそれなりに面白く、読み込んでしまう。修辞学は意外にやたら好きな人もいるし、試しに読んでみるにはいい本かもしれない。

Wooden Books (2023/9/15)
言語 ‏ : ‎ 英語
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-1952178146

2025年2月20日木曜日

Mark Pallis "Lipsmacking Backpacking: Cooking Off the Beaten Track" [舌鼓バックパッキング:踏み鳴らされた道から外れた料理]

 Lipsmacking Backpacking (Amazon.c.jp)

要はハイキングとかで自然の中での料理の仕方みたいな本だが、レシピ集というよりはもっと基礎的/原始的な各種食材の調理法みたいな感じ。使う物はナイフと携帯コンロと鍋と網くらいだろうか。だいたい切れとか焼けとか煮ろとかそんなレベル。どこで食材を調達するとかいう話はない。食材は普通にスーパーとかで買って来る想定らしい。

従って、普段から普通に料理をしているわたしみたいな人間からすると、特に意外な情報はないが、何かと洋風な感じで、普段の考え方と少し違ってくる。例えばバナナ料理とか普段は考えないからな…。しかし料理なんて本質的にはこんなところで、わたしも普段そんなにレシピとか調味料の分量なんて真剣に考えていない。

総じて、普段あまり料理をしない人のための本かもしれない。あるいは料理をすると言ってもレシピ通りにしか作らない人にとっては、斬新かもしれない。

Wooden Books (2007/5/1)
言語 ‏ : ‎ 英語
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-1904263579

John Michell "Euphonics: A Poet's Dictionary of Sounds" [音調学:詩人の音の辞書]

Euphonics (Amazon.co.jp)

まずeuphonicsという言葉が存在しないようだ。英語の音素一つ一つについて解説と詩がついている。Aの項目を訳してみる。

A

a daring aviator aloft in the atmosphere

ある日本の賢者がなぜ人が建物から落ちる時に"Aaaaaa!"と叫ぶのかを説明している。それは上に行きたいという自然な欲求からであり、"Aaaa!"という音は心身共に上昇の特徴を持つ。

Aにはalacrity, active, happy, alert, agile, attentive aware, awakeな少年少女の意味がある。該当する鳥はlarkであり、次のように語りかけられるだろう:

Audacious avian arise!

Ascend aloft to azure skies!

Alert to your angelic strain

Our aspiration soar again.

こんな調子で続く。どうでもいいけど、さっきhappyという単語が混ざっていたが、それくらい英語ではhの音は存在感がない。この点はHの項目を見ればさらに明らかになるが…というような話に興味があれば面白い本だ。昔、英詩をやたら好き好んでいた時期があり、タッチタイプも英詩を打って覚えた個人的な過去もある。なんか懐かしい気がした。

Wooden Books (2006/2/15)
言語 ‏ : ‎ 英語
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-1904263432

2025年1月28日火曜日

Arthur Conan Doyle "His Last Bow" [最後の挨拶]

 His Last Bow (Amazon.co.jp)

ホームズの短編集としては三冊目。なんか粗い話が多かった気がする。第一次世界大戦前後で時代のせいだろう。だいたいジョジョの奇妙な冒険でいうところの第一部くらいという感じ。自動車とか言い始めているし。明確に言えるのは、ホームズとしては最初に読む一冊ではない。

CreateSpace Independent Publishing Platform (2014/9/30)
言語 ‏ : ‎ 英語
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-1502571120

2025年1月22日水曜日

Linda Johnson-Bell "North European Paganism" [北欧の異教]

 North European Paganism (Amazon.co.jp)

今の地域で言えば主にデンマーク・ノルウェー・スウェーデン・フィンランド・バルト三国くらいのキリスト教以前の宗教についてのエッセイという感じ。資料というよりは読み物。と言っても、ヨーロッパ、特に西欧は基本的にキリスト教のせいで古代の宗教はすべて滅亡しているし、あまりはっきりしたことも分からないのかもしれない。

こういうことだから、後でナショナリズムの時代になった時に、民族神話みたいなのをでっちあげる段になって苦労する。ローマ・ギリシアの伝統を引き継げる地域はいいが、イギリスとかフランスはケルトに訴えるしかないし、ドイツは北欧寄りになる。

で、その北欧だが、それにしても今、本気で北欧の神々が信仰されているフシもなく、この本も実際にはファンタジーの材料という感じ。日本人はまあまあ本気で神社にお参りしていると思うが、そういう感じではない。そもそもpaganismというのが元々侮蔑語で、異教というより邪教と翻訳するほうが正しいのかもしれない。

出版社 ‏ : ‎ Wooden Books (2023/9/15)
言語 ‏ : ‎ 英語
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-1907155468

Danu Forest "Nature Spirits: Wyrd Lore and Wild Fey Magic" [精霊:運命の伝承と自然の妖精魔法]

Nature Spirits (Amazon.co.jp)

日本で言えば妖怪図鑑みたいなもの。題材はギリシア~ケルト~北欧まで広いが、ほぼすべて欧州圏。妖怪というと未だに水木しげるのイメージが付きすぎていると思うが、日本に限らず、何でも謎の妖怪/妖精/精霊のせいにする文化はあるらしい。この本については、英語圏では中学生くらいが対象かと思うけど、この類の話を知っていないと、特に児童文学とかスッと読んでいけないこともあるだろう。基礎教養として読む本だ。

Wooden Books (2008/10/20)
言語 ‏ : ‎ 英語
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-1904263821