2023年2月20日月曜日

Philip Moriarty "Nanotechnology: A Very Short Introduction" [ナノテクノロジー:非常に短い入門]

目次:1. NanoPutへようこそ 2.閉じ込められた量子 3.バラバラにすることと組み立てること 4.bitからitへ、itからbitへ 5.ナノマシン 6.ナノボットは近い?

最先端のナノテクノロジーの紹介。技術的詳細というよりは、今何ができるようになっているかの紹介がメインだ。最初のうちは原子を一つずつ目的の場所に置いていくようなことだが、この程度は序の口で、最終的には特定の化学結合や原子の特定の電子一個のスピンを操作するところまで行っている。「今そんなことできるようになってんの」みたいな驚きが圧倒的で、なんかその驚きだけで一冊読み終わってしまった感じだ。原子なんて粒子というよりほとんど波みたいなものだし、そんな物をつまんで好きな場所におけること自体が異常だが、既に解像度は原子以下のレベルに到達している。ただしどうやってそんなことができるのかの説明はほぼない。この本でわかるのは超真空とほぼ絶対零度の環境が必要なくらいだ。そういうことでは"Microscopy: A Very Short Introduction"が詳しい。ただ、7年前の出版だともしかするとこの分野の場合は既に昔かもしれない。

応用面では量子コンピュータを含む計算機と生物学にかなり紙幅を取って、最後はSFみたいな話になっている。この分野は一時期未来予測や人体への害で相当な論争があったらしく、著者の考えも述べられている。ただこの辺りは言っている意味は分かるが、背景に詳しくないとあまり議論が白熱する意味がわからないかもしれない。全体的にSFみたいな読後感だが、実際に実験室内では進行している話だし、近い将来日常生活に応用製品が出てくるかもしれない。それまではSFを読むのとそんなに気分は変わらない本かもしれない。

This is not a science fiction, though, I read it as such. It is still an in-lab technology. Someday, there will be abundant products of nanotechnology in our daily life.

Oxford Univ Pr (2023/2/23)
言語 ‏ : ‎ 英語
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-0198841104

0 件のコメント:

コメントを投稿