2022年6月21日火曜日

Bertrand Russell "In Praise of Idleness" [無為を讃えて]

目次:1.無為を讃えて 2.「無駄な」知識 3. 建築と社会問題 4.現代のミダス 5.ファシズムの起源 6.スキュラとカリブディスまたは共産主義とファシズム 7.社会主義のために 8.西洋文明 9.若い冷笑について 10.現代の均一性 11.人間対昆虫 12.教育と規律 13.ストア主義とメンタルヘルス 14.彗星について 15.魂とは何か?

ラッセル卿のエッセイ集で、今時はめっきり減ったタイプの本だなあと思う。だいたい社会批評みたいなことだが、原著出版年が1935年という、ちょうどヒトラーが暴れ始めている頃で、時代の空気もあり。時々日本への言及もあるのは、やっぱり日本は大国だったのだろう。社会主義に対する楽観は今となっては目立つ。

ラッセル卿と言えばノーベル文学書受賞者であり、数理論理学の大家だが、あまり流行らなくなっていくだろうと思うのは、数理論理学とか数学基礎論とか呼ばれる分野がどう見ても衰退しているからだ。数学科では明確に衰退したし、哲学科でもどうなんかな。論理学自体は基本的に思考の訓練用で、もちろん細々と続いているのだとは思うが。「ゲーデル・エッシャー・バッハ」とか、もうあの頃は衰退気味だったのかもしれない。メタ数学だの集合論だの不完全性定理だのを嬉々として語っていた人たちはどこにいったのだろうか。計算機科学では確かに論理回路レベルで分析哲学みたいな話はあるが、関数型プログラミングとか永遠に離陸しない。VSIでもMetaphysicsとかかなり面白いが、話が微細になり過ぎて専業でやるのはしんどいかもしれない。

とにかくラッセル卿は数理論理学者としては間違いなく大家には違いないが、この類のエッセイについては、直弟子のヴィトゲンシュタインですらあまりに感心していなかったようだ。ただ、そこはノーベル文学賞受賞者であり、数理論理学自体が読まれなくなっても、エッセイについては名文だという理由で今でもしぶとく読まれているらしい。わたしがこれを読んだのはタイトルに惹かれたからで、簡単に言うと別にそんなに働かなくても人類は食えるだろうというようなことで、社会主義を推奨するようなことだ。ラッセル卿は常識的な人であり、変に尖った意見とかはないし、特に感動するような文明批評もないが、なんとなく最後まで読んでしまうあたりは人柄なんだろう。昔から英文読解のいい材料になっているし、高校生でも読めるだろう。

Nowadays nobody talks about foundations of mathematics. His essays will survive a bit for his famous clear English....

Thomas Dunne Books; Reprint版 (2017/6/6)
言語:英語
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-1250098719

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