2018年5月8日火曜日

Alain Goriely "Applied Mathematics: A Very Short Introduction" [応用数学:非常に短い入門]

目次:1. 応用数学の何がそんなに面白いのか?モデリングと理論と方法 2.秘密を知りたいか?七面鳥と巨人と原子爆弾 3.モデルを信じるか?単純性と複雑性 4.方程式を解く方法を知っているか?回転するコマとカオス兎 5.ケネス、周波数とは何か?波と地震とソリトン 6.それを描けるか?X線とDNAと写真 7.数学は何の役に立つ?四元数と結び目とさらにDNA 8.我々はどこに行くのか?ネットワークと脳

どうも章タイトルは有名な曲のタイトルをもじっているらしいが、わたしは音楽に興味がなくて分からない。応用数学とは、要するに色々な現象について数理モデルを組み立てるというようなことで、物理現象に即して、次元解析から始まり、微分方程式、偏微分、フーリエ解析というような感じで、目次通り、色々な例を見ていく。従って、VSIとしては珍しく数式を避けておらず、日本の高校生程度の数学力では厳しいかもしれない。事例としては自然科学と工学に限られているが、それでもかなり広範囲である。大学新入生くらいが読んだら、これで数学を志す人も出てくるかもしれない。

わたしとしては結構楽しく読んだけど、実のところ、これだけ色んな例が満載なのに、ほとんど知らない話がなかったことがショックである。数学はもとより、自然科学・工学の分野については、もうVSIを卒業する頃合いなのだろうか。あと、関係ないけど、本書の中でラプラスの悪魔に対して解析解のない微分方程式があることを持ち出して論破したりしているが、これはこの本以外でも至る所で見かける論法で、わたしは認めていない。ラプラスの悪魔の論点は決定論であり、人間に微分方程式が解けないことは、決定論に全くダメージを与えていない。人間に三体問題が解けなくても、天体の運動は微分方程式が描く通りに進行する。量子力学でもそうで、観測によって決定できないことと、観測と無関係に本質的に不確定なのは全く意味が違う。前者は、単に「未来は人間には分からない」というだけのことで、決定論に変わりはない。

This book requries a bit math skills.

Oxford Univ Pr (2018/4/22)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0198754046

2 件のコメント:

  1. 決定論に関するの話が興味深いですね。

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    1. まあ「人間に予測不能」=「未来は不確定」というような考え方をする人もいますが、それはまた別のレベルの話ですな。19世紀の決定論は「人間には予測できなくても未来は確定している」です。

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