2016年8月4日木曜日

U.S. Army Command and General Staff College "Outfought and Outthought: Reassessing the Mongol Invasions of Japan" [戦いで負けることと思考で負けること:モンゴルの日本侵略の再検討]

目次:1.導入 2.歴史文献 3.両軍の戦力 4.最初の侵略(1274)と結果 5.第二の侵略(1281) 6.戦略分析 7.孫子からの視点 8.結論

米軍による元寇(文永の役・弘安の役)の戦術分析。純粋に元寇の記述としてもモノスゴく面白い本で、翻訳したらブームになるのではないかと思う。これだけでは一冊にするには薄すぎると言うのなら、米軍司令部は他にも面白そうな研究をいっぱい出しているようだから、一緒に翻訳すればいいだろう。戦史ファンが飛びつくのは保証しよう。

まず、元寇における台風の役割は色々言われているが、この本では台風は既に敗北していたモンゴル軍に追い討ちを掛けただけという立場である。というのも、文永の役でも日本側の激しい抵抗で大宰府を陥落させられていないし、補給が続かず退却を余儀なくされている。弘安の役ではそもそもモンゴル軍は上陸を阻まれ、台風の前に二か月も侵攻できておらず、海上では常に劣勢で、既に敗北は確定的であった。

そして、米軍司令部は、当時無敵だったモンゴル軍のこの惨敗を孫子とクラウゼヴィッツに照らして批判する。一々尤もな話で、徴兵中心のモンゴル軍と職業軍人のサムライたちでは士気も装備も個々の戦闘能力にも差があった。先に対馬・壱岐を攻略したため、日本側に十分な迎撃態勢を作る時間を与えた。日本側の予想している地点(博多湾)に予想通り二度も突入する。日本側の行動速度が速く、側面からの攻撃が全て防がれる。日本側が完全に包囲して射撃陣地を構築している博多湾に身動きのできない大軍(夜襲を恐れて軍船を連結していた)で自ら包囲されに行くなど論外云々。

記述は戦術に限定されているわけではなく、それ以前の朝鮮などを通じた外交交渉の流れも描かれている。この辺りのモンゴルの外交も批判されるが、何より、日本に戦闘態勢を取らせたのがマズいという評価だ。フビライが孫子を読んでいた証拠はないが、中国人の将軍たちが読んでいたのは間違いなく、孫子の兵法に従っていれば、違う結果になっていたかも知れないとか言っている。

著者は中国語も日本語も読めないらしく、参考資料が英語または英訳文献しかないという制約があるものの、少なくともわたしが読んでいる分には不自然なところはなかった。専門家が読めばまた違う意見もあるのかもしれないが、差し当たり素人が読んでいてもモノスゴく面白い。単純に翻訳したいし、この辺りに詳しい日本人歴史家と軍事専門家の注釈にも期待したいのだが。

A tactical analysis of the Mongols vs. Samurai. Great Reading. I am not a specialist in history but have good command of old Japanese and Chinese language and some knowledge about overall history of east asia. I found no defect in this great narrative. The storytelling is very good and would never bore lay people like me.

Pennyhill Press (2014/1/13)
言語: 英語
ASIN: B00HV14CKK

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