2021年7月6日火曜日

Paul Engel "Enzymes: A Very Short Introduction" [酵素:非常に短い入門]

目次:1.酵素なくして生命なし 2.物事を起こすもの-触媒 3.酵素の化学的性質 4.触媒の構造 5.酵素の働き 6.代謝経路と酵素の進化 7.酵素と病気 8.道具としての酵素 9.酵素と遺伝子-新たな地平

大きく三部くらいの構成で、最初の部分は化学的な説明。単純な化学触媒の説明から出発しているが、すぐに複雑さのレベルが違うことが判明する。たとえば、一体どういう原理で特定の酵素がDNA分子の特定の部分を切断できるのか一般人向けに説明されていることはほとんどないが、この本では、一応原子レベルで何が起こっているのか説明されている。第二の部分は生物学的な部分で、これも、たとえば物を食べるとタンパク質を分解する酵素が分泌されてみたいな説明が、一応分子レベルまで見えるような気がしてくる。高校生物くらいだと、外敵が侵入すると免疫細胞が出動してみたいな擬人化されたような説明になっているところ、そんなのでは納得できないというようなムキには、とっかかりにはなるかもしれない。第三の部分は工学的な応用で洗剤に使う酵素もあるし、最近流行のPCRの説明もある。この本の執筆時点はレムデシビルが有効かもとかいう時期みたいだが…。

それほど分かりやすい本でもないが、対象自体がもともと高校レベルを越えているので仕方がない。とにかく先端医学とか生物工学とかいうような分野も、根本的には酵素反応なわけで、この本みたいに、擬人化した説明を越えてくる本は少ないのではないかと思う。

An introduction to enzyme reaction engineering, which is a fundamental block of vast range of fields.

Oxford Univ Pr (2020/12/2)
言語:英語
ISBN:978-0198824985

5 件のコメント:

  1. 生物学の入門的な教科書でお勧めのものありますか?日本語のものでもいいです。

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  2. 個人的には、キャンベル生物学がいいのかなあと思っているのですが。

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    1. あまり詳しくないので分からないですが、アメリカで良く使われているものなら間違いはないでしょう。

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  3. 学問をちゃんとした人は、教科書は、アメリカで一定の評価があるものは、信頼できるという感覚を持っている印象があるのですが、その辺を事情を知りたいです。そういうものですか?

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    1. アメリカというか大人数が使って版を重ねているような本は間違いや不備が除去されている確率が高いんじゃないですかね。

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