2015年5月22日金曜日

Thomas Piketty "Le capital au XXIe siècle"[21世紀の資本]

これは世界的なベストセラーであり、日本語訳も大層売れて時間も経っているから、今更内容を説明しなくていいだろう。要は格差拡大の構造的な理由を解明している。かなり大部な本だが、ほとんど退屈する部分もなく読めた。

第一に内容が素晴らしい。普段、わたしが肌で感じていることを明確なデータで示してくれている(日本もヨーロッパも状況に大差ない)。格差社会がどうとかいう話は根拠不明の感情的な言い争いになりがちなところ、最善のデータを提示することで論争のための土台を用意してくれる。この本の影響で、今後はムダな感情論が減ることを願う。

第二に、一度は社会科学を志したことのあるわたしとしては、社会科学とはこういうものだと感動すると同時に、「これは俺には無理だったな」と思わされる。実は言っていること自体は、少なくともわたしは何となく分かっていたことではある。わたしは個人的な事情で、億万長者から生活保護世帯まで、色々な社会階層の人たちを見てきた。しかし、それをこの形、つまり、実証的であると同時に説得的である形にまとめるのは、超人的だ。

第三に、わたしは仕事柄、公文書や行政データに多少詳しいが、ピケティがこれだけのデータを集計・分析するのにどれだけの労力を費やしたかと思うと、めまいがする。手下とか学生とかに手伝わせたとしても、高度な計画性が必要な一大事業である。本書の中で、統計データが利用できることが決定的に重要と何度も繰り返されるが、微力ながら何か貢献できればなあと思う。

大部だが読んで損はない。若干クドい部分はあるものの、分かりにくい話ではない。日本語はかなり気持ち悪い文体に訳されているようで非常に残念だが、それでも多分、巷に蔓延る便乗本よりはマシだろう。大きな本屋で一通り日本語の便乗本を見たが、読むに値するようなものはない。ある本なんかはピケティの解説と称しながら、適当に開いたページに「日本では1%と99%の格差よりも正社員と非正規の間の格差のほうが重要である」とか、よくもこんな恥知らずなことが書けると吐き気がした。これは極端かもしれないが、本来ピケティに論破されているはずの連中が、ピケティを無理矢理捻じ曲げて「解説」と称している例が多い気がする。日本の状況には絶望したくなるが、別に難しい話でもなく、原書を読めば誰の目にも明らかなことだ。

Très bien écrit et passionnant. 1)Je connais personnellement des gens de couches sociales très pauvres à celles très riches. Cette oeuvre offre les preuves concrètes pour des délibérations. 2)Quand j'étais étudiant, je rêvais de devenir un scolaire de sciences sociales. Maintenant, je réalise que je ne suis pas assez intelligent grâce à M. Piketty. 3)Je m'occupe d'information du gouvernement japonais. J'imagine que M. Piketty doive avoir travaillé beaucoup pour obtenir les données.

Seuil (30 août 2013)
ISBN-13: 978-2021082289

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