2013年8月21日水曜日

Kenneth Falconer "Fractals (Very Short Introductions) "

かつて一世を風靡したフラクタル幾何学の入門書。英語力を別にすれば、日本の高校生くらいなら余裕で読めるが(多分中学生でもいい)、コッホ曲線から始めてジュリア集合もマンデルブロ集合もハウスドルフ次元も一応数学的に構成している。自然科学・社会科学への応用とフラクタルの歴史も一通り概説している。予備知識の何もない人が、フラクタルの何たるかを把握するには良いかもしれない。これを読んでから深入りするかどうかを考えるとか。ただ、VSIにありがちなことだが、数学的にはやはりレベルが低い。同じ事ならマンデルブロ先生の原著を読んでもよさげだ。

全く個人的な意見だが、「フラクタル」という言葉に80年代の響きがする。バブル期というかニューアカというか、その頃はフラクタルが流行していた。「世界は極めて単純なアルゴリズムの反復だけで作られている」的な主張もその頃のものだろう。コンピュータがわりと個人でも使えるようになった頃だ。純粋に数学的な構築物としては、この本でも面白さが伝わると思うが、実用科学への応用という点については、素人目には昔から大して進歩がないように思う。たとえば、ブリテン島の海岸線のフラクタル次元を測定して、何の利益があるのかよく分からない。ほとんど同じことが「カオス理論」についても言えるが、VSIのChaosは、この本よりはずっと読み応えがあった。哲学的な破壊力が違う。もっとも、これはあくまで個人的な感想で、人によってはフラクタル幾何学に感動するのかなあ。何にしろ、知らないのなら教養として概要だけでも知っておいたほうが良い。

A good concise introduction, though too elementary for me.

Oxford Univ Pr(2013/12)
ISBN-13: 978-0199675982

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