2020年8月4日火曜日

J. L. Collins "The Simple Path to Wealth" [富への単純な道]

日本語訳「父が娘に伝える自由に生きるための30の投資の教え」が書店で平積みになっていなければ手にも取らなかった本だが、読んで損したとも思わない。良い邦題で、成功者の静かなお言葉だが、推奨している方針は確かに単純で、インチキ投資本ではない。ただ前提条件が多すぎる。

言っていることは単純だ。まず話の前提として、借金をするな(しているならまずそれを解消しろ)、収入の範囲内で生活しろ、余った金は直ちに全額投資しろ。そうすれば会社から自由になれる。投資対象は全額バンガードの全米株インデックスが最強。資産が年支出の25倍を越えれば資産は減らない(いわゆる4%ルール)。ある程度金融リテラシーがあれば常識ばかりだが、こういうのは語り方でも印象が違うので、目を通すくらいしてもいいのではないか。

わたしも基本的にこの推奨通りの生活をしている。常識からすれば超攻撃的ということになるが、余剰は全額株に突っ込んで放置しているしドルコスト平均法なんか最初から信じていない。どんなに暴落しても売りはしない。多少の買い替えはあっても、基本的に買いばかりで全額貼り付けだ。インデックスはあまり相手にしていないが、十分に分散していればインデックスと大して変わらない。十数年そうしているが、会社から自由になれる金からはまだ遠い。いくつかこの本の前提条件からはずれているからだ。

・まず時期が悪い。著者はだいたい1975年からの資本主義の黄金期で考えている。今は低成長の時代だ。
・場所が悪い。米国株は確かに伸びているが日本株は低迷している。
・筆者みたいにそもそも稼得能力が高くて、仕事をやめてもすぐに必要な時に再就職できれば「会社から自由になれる金」は小さいが、わたしはそうではない。

ただ、これだけ文句を言ったところで、低コストインデックスが最強であることに変わりはない。インデックスに採用される銘柄はプレミアがつくし、全米株は良い選択だろう。国際分散も著者の言う通りで、米国の会社自体が国際分散して事業しているから、別に他国の株を買う必要はない。

初耳だったのはいわゆる4%ルールで、基本的には、資産の4%以内で生活していれば資産が減らないというくらいの緩い法則。かりに生活費を年に400万使っていたら、1億の資産があれば減らないという計算になる。しかしこれも前提に満ちた話だ。総じて夢のない話に思えたが、これが現実だろう。金の話はこれくらいにして、もっと面白い本でも読むか…。

Just simple buy & hold.

Amazon Digital Services (2016/6/18)
言語: 英語
ISBN-13: 978-1533667922

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