2012年4月14日土曜日

Steven W. Lockley, Russell G. Foster "Sleep: A Very Short Introduction"

この本は睡眠愛好家というか、睡眠する人なら必読書と言えよう。短眠とかサマータイムみたいな危険思想を社会から排除するためにも、緊急に翻訳されることを望む。

大きく生理学パートと疫学パートに分けると、生理学的には、睡眠はほとんど謎だ。サーカディアンクロックの元締めがSCNだったり、青色光やメラトニンが生物時計の調整にとって有効だったりとか断片的なことは分かっているが、「そもそもなぜ睡眠が必要なのか」みたいなことは良くわかっていない。したがって、睡眠関係の障害にも決定的な治療がなかったりする。ただ、サーカディアンリズムに明確な個人差・年齢差等があるのははっきりしている。たとえばティーンエージャーはテレビゲームがどうこうとかではなく、生理的に夜型なのであり、学校の開始時刻はもっと遅らせるべき云々。

疫学的には、明確な統計も多い。サマータイム(DST)は明確に有害である。眠気運転は飲酒運転と少なくとも同程度以上に犯罪的である。シフト労働には発がん性がある。その他色々深刻な統計が多いが、我々の文明は睡眠をあまりにも軽視し過ぎており、こういうことが大々的に問題にならないのは異常だ。わたしに言わせれば、人の睡眠を邪魔するのは重大な犯罪であり、刑法に条文を設けるべきかと思われる。

How to本ではないが、実用的なアドバイスもいくつかある。社会そのものの変革を要するような提言はともかく、最適な時差の克服法などは科学的で直ぐに試せるだろう。わたしとしては、コーヒーの消費量を減らそうと考えている。何よりも睡眠を大事にすることだ。それは「早寝早起き」などというような非科学的な話ではなく、各人のサーカディアンリズムにあった最適な睡眠を確保することである。特に十代・二十代は、今の社会では生理的に無理なリズムを強いられている。学校や病院、公衆衛生の担当者にも読んでほしいところだ。

A must-read for all sleepers. Physiologically, there are lots yet to explore about sleep. Epidemiologically, however, much is known and we do not understand why people ignore those overwhelming evidence that our society should prioritize sleep more than ever. I remember the recent rolling blackout in Tokyo. Those nights were sad but so excellent. Seriously, this book is a must-read for those in public health sector and schools.

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