有名な厭戦小説。設定は第二次世界大戦イタリアの米軍爆撃部隊だが、出版されたのがちょうどベトナム戦争でアメリカ中がうんざりしていた時期ということで流行ったようだ。
この小説のタイトルは不条理の代名詞みたいに英語になっているが、確かに色々不条理なせいで、特に最初のうちは読みにくい。たとえば、カフカの小説の不条理さは、作者の設定した状況が不条理なだけで、文章自体は冷静だ。だから状況の不条理さが浮き立つことになる。しかし、この小説については、戦争と組織の現実の不条理さと作者の設定した不条理さが混ざっている。さらに、登場人物がふざけているのと作者の書き方がふざけているのも混ざっている。それと無関係ではないと思うが、難しい単語が多く、原文で読む人は覚悟したほうがよい。平均的なアメリカ人でも少ししんどいのではないかと思う。あと、時系列通りに話が進まないことは、最初に知って置いたほうが良い。
というわけで、特に前半は、あまり戦争の直接の描写が少ないこともあり、ただ前線から離れた基地で規則に縛られた不条理な生活をしているだけで、話も進まないから、早目に挫折してしまう人も多いだろう。後から読み返すと面白いが…。これも戦争の現実なのだろう。中盤以後はイタリアの売春宿の実情や爆撃団が曝される死の危険などはリアルでゾッとすることになる。基地で命令しているだけの上官は平気だが、読者の馴染みの主人公の友達はどんどん死んでいく…。諧謔小説みたいに言われるが、そもそもが戦争なので、笑って読める小説ではない。
主人公はB-25爆撃機の爆撃手で、彼の最大の目的は生きてアメリカに帰ることであり、任務はイヤイヤこなしていて、仮病などを使ってできる限り逃れようとしている。徴兵制で、何回か爆撃ミッションをこなすとアメリカに帰れる制度らしいが、出世したい上官がその回数をどんどん増やすので帰れないという状況だ。わたしとしては、基本的に仕事をサボろうとする主人公が好きなので、それが戦争かどうかはあまり関係がない。とはいうものの、爆撃機が対空砲火に曝される場面はなかなか緊迫していて勉強になった。我々は爆撃される側の恐怖は良く伝え聞くが、爆撃する側の話はあまり聞かない…。
戦争の話だから、下世話な話も多く、グロい描写も多いので、誰にでもお勧めというわけではないが、著者の実体験に基づいているというし、これも戦争の実態の一つなので、そういう意味ではお勧めできる。ただ、とにかく単語が難しい。それでも読む価値はある。日本語訳は見ていないけど、文句を言っている人もいるようだ。しかし、原書で全部読んだわたしとしては、原文自体が厳しいからな…と言っておきたい。
Generally speaking, I love the protagonist who tries to escape from his official mission, whether it is war or not. The superior officers are meanies even if it is not a wartime. The savage war only accentuates it.
出版社: Everyman's Library (1995/9/21)
言語: 英語
ISBN-13: 978-1857152203