2018年12月21日金曜日

Michael Fairhurst "Biometrics: A Very Short Introduction" [生体認証:非常に短い入門]

目次:1.あなたはあなたが言うとおりの人か? 2.生体認証:どこから始めようか? 3.生体認証を実用化する 4.生体認証処理の強化 5.予測的生体認証 6.わたしたちはどこに向かうのか?

この本では生体認証として指紋や網膜、声紋や筆跡が例示されるが、主な内容は個別の技術よりも、全体的な概念模型のほうで、むしろ抽象的な話が多い。わたしみたいに既に情報セキュリティに相当詳しい人が、知識を補完するためにこの本を読んでも新たな知見はほとんどない。初心者が読むと違う感想になるかもしれないが、わたしとしては、常識でわかることや、同じことを繰り返す冗長な記述が多すぎるように思う。薄い本なのでさっさと読めるが、VSIでは久しぶりに期待外れだった。

I could not recommend this book anyone who have already some knowledge about information security. It is too basic.

Oxford Univ Pr (2019/2/1)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0198809104

2018年12月18日火曜日

Lucien Nahum "Shadow 81" [シャドー81]

ベトナム戦争を背景にしたハイジャック小説。戦争自体は背景に過ぎず、そこで実戦投入されている最新鋭戦闘機を盗み出し、アメリカ西海岸で旅客機の背後につけて脅迫して身代金を要求する。基本的にサスペンスだが、政治家の醜さやマスコミのウザさを描くクダリもあり、読むハリウッド映画という趣だ。なぜ映画化されなかったのか不思議なくらいだが、どうも英語圏ではそこまで売れた小説ではないらしい。主人公のやってることが建前としても正義でも何でもなく、単なる私利私欲というのが原因かもしれない。

その点を気にしなければなかなかのサスペンスで、少なくとも日本ではかなり売れたようだし、確かに名作だ。荒唐無稽としか言いようのない部分もあるが、それもこの類の話ではやむを得ず、ベトナム戦争当時に超音速VTOL機という時点で微妙にSFなのだし、VTOL機が木製の台に着地するくらいは仕方ないだろう。物語の中心は、ハイジャック機"SHADOW81"と旅客機"PGA81"と管制塔のやりとりが中心で、全体的にストイックな作りだ。センチメンタルな要素は全くなく、安心して読める。小説なのでネタバレは避けるが、読んで損することはないだろうし、特に読んで不愉快になる人がいる気もしない。

全く個人的な話だが、この小説を始めて見たのは、高校の図書室でのことだった。もちろん翻訳版の新潮文庫だったが、ただ二機の飛行機が青空を飛んでいるだけのカバー絵に、「シャドー81」というストイックなタイトルがカッコ良かった。原書よりずっと良い。どうも当時からわたしの趣味は変わっていないらしい。内容もその通りストイックなので、映画映えしないかもしれない。結局、高校の時には読まなかったが、ずっとひっかかっていた。もう一つ同じひっかかり方をしているのが坂口安吾「不連続殺人事件」で、これもこれから読むつもり。

An extremely good hijacking novel.

New English Library Ltd (February 5, 1976)
Language: English
ISBN-13: 978-0450028564

2018年12月7日金曜日

Elisabeth Vanasse "Récits coquins des plaisirs défendus" [禁じられた喜びの淫らな話]

短編エロ小説集。一話は数ページ程度ですぐに読める。読者はほぼ女性のようで、あまり詳しく設定されていないが、すべて、だいたい30前後の独身女性の独白という形で書かれている。内容はというと、ただ色々な状況と趣向でヤリまくっているだけで、特に情緒も感情も何もない。というか、そんなことは読者が好きに想像すればいいんで、書かないほうが良いのだろう。暴力的な内容はないが、場合によっては生理的に受け付けないような場面もあるだろう。これもフランス語の勉強になるかと思って読んでみたが、果たしてなったのかどうか…。仏検二級くらいなら辞書さえあれば読めるだろう。幾つか普段は勉強しない単語があるくらいで、同じ単語が何度も出てくるし特に難しくはない。ただ、別の局面で使える単語でもなく…。

Un peu trop barbares....

J'ai lu (11 septembre 2010)
Langue : Français
ISBN-13: 978-2290017555

2018年12月6日木曜日

Robert Cialdini "Pre-Suasion: A Revolutionary Way to Influence and Persuade" [事前説得:影響と説得のための革命的方法]

目次:1.Pre-suasion:注意の前倒し 2.連想の役割 3.最良実施例:Pre-suasionの最適化

タイトルのpre-suasionはpersuasionのperをpreに変えた造語。効果的な説得のための戦略(下準備)をまとめたもの。何でも"Influence"という有名な前著があってそれの更新版みたいなことらしい。互酬性を利用するとか連想の力を使うとか環境に気を遣うとか、まあ、この類の話に馴染みのある人には、それほど目新しい話はない。ただ、馴染みのない人は身を守るためにも読んでおいたほうが良い。我々は常に宣伝広告営業に晒されているし、専門家はこの程度のことは当然知っている…知らなくてもこの本読むはずだ。

わたしがこの本を知ったのは、直接にはWin Biglyからだが、この本は余計な自慢話などがないから遥かに読みやすい。中核的な主張も、Win Biglyに比べれば全然控え目だが、大よそ似た線と言っていいだろう。要するに、我々は自分で考えていると思っているが、実は無意識のうちに色々な技術で操られているということだ。わたしとしては他人を操作する用事がほとんどないので、その点はどうでもいいが、自分の行動を律するためにpre-suasionの技術も使えるわけだし、そのうち何か有効な使用法を思いつくかもしれない。しかしまあ、この類の本を読むたびに、自分の力で考えていることなんてほとんどないんだなあと思う。翻訳はあまり良くないという話もあるが、読めるだろう。

A good textbook. We think almost nothing by ourselves....

Simon & Schuster (2016/9/6)
言語: 英語
ISBN-13: 978-1501109799

2018年11月20日火曜日

Nataël, Béja "Bye Bye tristesse" [悲しみよさようなら]

要するにエロマンガなんだけど、一つには時系列が少しよれているのと、一つには感情の動きが謎過ぎて読みにくい。わたしの理解したところでは、フランスの話にありがちな「究極の愛を求めてエロいことをしまくったが結局なんか悲しい」というような話のようだ。ただしこの場合は、くっついた夫が浮気、というかムチャクチャな夜会をしているのを発見したので、殺害して「悲しみよさようなら」ということだろうか。違うのかもしれないが、そんなに論理的に構成されているような気もしない。

この特に性的なことで好き勝手して結局何か満たされず悲しくて、そこに何かポエジーを感じろというフォーマットは昔からよくある気がする。ボヴァリー夫人からなのだろうか。ただボヴァリー夫人は厳密に科学的というか現実的というか、必然の道程を辿っているのがわたしにも分かるが、類似品は何のことやらわからないことが多い。何かの別の意味で厳密なのかもしれないが、わたしには分からない世界のようだ。

Je n'ai pas arrivé à comprendre le développement du sentiment.

Glénat BD (1 août 2012)
Langue : Français
ISBN-13: 978-2356482778

2018年11月17日土曜日

VOUTCH "Les joies du monde moderne" [現代世界の喜び]

一応現代社会への皮肉を込めた一コママンガ集。と言っても、別にそんなに声を出して笑うほど面白いわけでもないし、そんなに絵が見飽きないとかいうわけでもなく、しかし、こういうのを漫然と眺めている時間を楽しむのが大人なような気もして来た。National Geographicとか東京人みたいに応接間や待合室用の雑誌があるが、これは待合室用の本なのかもしれない。もちろん、来客がフランス語を読めなければ意味を為さないが…。飾りとして悪くないし、趣味も良いし、フランス語が読めれば、内容も退屈ではないというような。わたしなら医者の待合室にこれがあったらかなりうれしいし、外人客の多い高級美容室なんかに良いのではないか。

Pour une salle d'attente.

Cherche Midi (5 janvier 2017)
Langue : Français
ISBN-13: 978-2749143743

2018年11月16日金曜日

Thomas Legrand, Laure Watrin "Les 100 mots des bobos" [ボボの100語]

これはクセジュの中でも稀に見る面白い本だった。boboとはブルジョワ・ボヘミアンの略で、簡単に言うと意識高い系とLOHASとサブカルクソ女が融合して生まれた最強種族のようなものと思えばほぼ間違いない。経済的に余裕はあるが政治的には左翼で、移民や同性婚に寛容で、フェミニストで、国際人で、子供には外国語を学ばせ、ヨガをし、隠れ家的レストランに通い、エコで、トートバッグを持ち歩き、菜食志向で、無農薬野菜を愛し、美術館が好きで、良く分からない前衛的なアートを支持し、仕事とプライベートの区別が薄く、ノマドで、スタバにマックブックを持ち込み、移動は自転車で、海外旅行に行くと観光客向けのところより地元民の通うような居酒屋などを好み、いやもう、あとはみなさんが勝手に想像でリストを続けられると思うが、それもほとんど間違えないと思う。一つ日本と違うとすれば、社会参画志向が日本より遥かに強くて、地域社会や学校などを積極的に改変していく点か。

この本で取り上げられる100語も全部紹介したいくらいだが、もう上記に出たのもあるし、グローカリゼーションとかカウンターカルチャーとか共同農園とかラテマキアートとか、基本的には全部半笑いで読み続けるしかない。実際、フランスでもboboは嘲笑の対象なのだが、現実に政治的には一つの勢力で無視できず、日本で言えば、立憲民主党の支持者のような感じなのだろう。右派が左派を非難する時にboboという言葉が頻出するようなことで、自分がboboであると認める人はいないが、しかし、実際はboboだらけという図である。思い返すと、少なくともわたしが知るフランス人は一人残らずboboだ。

もちろん、あまりに戯画的過ぎて、ただの筆者たちの妄想なのではという疑いもあるが、あまりにリアルで、フランスでは随分研究も重ねられているらしいし、一応公式っぽい定義として「経済資本より文化資本の最大化を目指す人たち」みたいな線で考えられているらしい。とにかく、左派政治家にとっては現実の問題であり、笑っている場合ではない。右派がポピュリズム政党として確立しつつある以上、左派は今までみたいな労働組合基盤というよりboboを基盤にするしかないのかもしれない。

個人的にはgentrificationという概念が面白かった。昔はドーナツ化現象とか言って、金持ちは郊外に住むことになっていた。それがその後逆転して、退廃した都心部に憧れたboboが逆流入してきて、地価が上がって貧乏人が追い出されるほか、行政も動かしてキレイな街になってしまい、下町とは名ばかりの高級住宅街やら囲い付きの住宅地ができてしまう。で、もともとの下町住民とタワーマンションの住人との関係が問題になるというような。

いずれ翻訳されるのかもしれないが、特に社会学とか人文地理学とか都市工学とかの学生には必読書として指定したい。その他、単に「意識高い系大全」みたいなノリの装丁で売っても売れるだろう。boboはライフスタイルであり、専門の雑誌がないのが不思議なくらいだ。こういう面白い本が日本の社会学から出てこないのは残念だが、せめて輸入してもらいたい。

Le meilleur dans la collection "Que sais-je?".

Presses Universitaires de France - PUF (5 septembre 2018)
Langue : Français
ISBN-13: 978-2130809128

2018年11月13日火曜日

Jeff Kinney "Diary of a Wimpy Kid #13: Meltdown" [軟弱な子供の日記13巻:融解]

日本語訳グレッグのダメ日記も未だにほぼ同時発売されているようで結構なことだ。ポプラ社の力かも知れないが全世界的に売れているという話でもある。わたしはあの装丁が受け付けないし、一切見ていないが、普通の中学生じゃ原書はキツいだろうか。それにしても高校生なら読めるだろうというようなかなり易しい英語だ。

今回は真冬の話で、前半は登下校などで寒さから逃れる方法、後半はこのシリーズには珍しく子供たちの雪合戦の話。そもそもこの主人公、友達はほぼ一人だけだし、大勢の子供と遊ぶようなエピソードはこれまでなかったかもしれない。まあ遊ぶと言っても、どうもわたしはこれを素直に楽しそうとは思えず、この辺りに子どもの頃から変わらないわたしの性格の問題というか発達障害があるのだろう。このシリーズ、もともと犯罪すれすれのエピソードなどもあり、児童書にしては教育上良いとは思えないのだが、特にケガ人が出るとわたしはしんどい。

そう思って読者レビューなどを見ると、概ね評価が高く、文句を言っている連中のが堅物過ぎる印象は拭えない。主人公の生活水準が髙過ぎるというようなのは仕方がない。日本の子供向けマンガもほとんど平均より金持ち側だ。ただ、主人公の周囲の見下し方に引っかかるのは分からなくはない。わたしがちびまる子ちゃんが大嫌いなのと同じようなことだろう。ただ、弁護のために、グレッグには偽善がなく、彼が周囲を見下していること自体も笑いの対象として描かれていることは言っておく必要がある。

このシリーズ、最初は必ずしも子供向けとは限らなかったような気がするが、巻が進むにつれてはっきり児童向けになった。大人が読んでも面白いが、子供が読んだらもっと面白いのだろうと思う。こんな風に余計なことは考えないだろうし。それに、グレッグみたいなタイプを肯定的に描いてくれる児童書は少ないんじゃないか。このタイプの子供は否定的な自己イメージを形成しがちと思えば、やはり教育上良いのかもしれない。

Not for strict parents.

Harry N. Abrams (2018/10/30)
言語: 英語
ISBN-13: 978-141972743

2018年11月6日火曜日

Joseph Heller "Catch-22" [キャッチ=22]

有名な厭戦小説。設定は第二次世界大戦イタリアの米軍爆撃部隊だが、出版されたのがちょうどベトナム戦争でアメリカ中がうんざりしていた時期ということで流行ったようだ。

この小説のタイトルは不条理の代名詞みたいに英語になっているが、確かに色々不条理なせいで、特に最初のうちは読みにくい。たとえば、カフカの小説の不条理さは、作者の設定した状況が不条理なだけで、文章自体は冷静だ。だから状況の不条理さが浮き立つことになる。しかし、この小説については、戦争と組織の現実の不条理さと作者の設定した不条理さが混ざっている。さらに、登場人物がふざけているのと作者の書き方がふざけているのも混ざっている。それと無関係ではないと思うが、難しい単語が多く、原文で読む人は覚悟したほうがよい。平均的なアメリカ人でも少ししんどいのではないかと思う。あと、時系列通りに話が進まないことは、最初に知って置いたほうが良い。

というわけで、特に前半は、あまり戦争の直接の描写が少ないこともあり、ただ前線から離れた基地で規則に縛られた不条理な生活をしているだけで、話も進まないから、早目に挫折してしまう人も多いだろう。後から読み返すと面白いが…。これも戦争の現実なのだろう。中盤以後はイタリアの売春宿の実情や爆撃団が曝される死の危険などはリアルでゾッとすることになる。基地で命令しているだけの上官は平気だが、読者の馴染みの主人公の友達はどんどん死んでいく…。諧謔小説みたいに言われるが、そもそもが戦争なので、笑って読める小説ではない。

主人公はB-25爆撃機の爆撃手で、彼の最大の目的は生きてアメリカに帰ることであり、任務はイヤイヤこなしていて、仮病などを使ってできる限り逃れようとしている。徴兵制で、何回か爆撃ミッションをこなすとアメリカに帰れる制度らしいが、出世したい上官がその回数をどんどん増やすので帰れないという状況だ。わたしとしては、基本的に仕事をサボろうとする主人公が好きなので、それが戦争かどうかはあまり関係がない。とはいうものの、爆撃機が対空砲火に曝される場面はなかなか緊迫していて勉強になった。我々は爆撃される側の恐怖は良く伝え聞くが、爆撃する側の話はあまり聞かない…。

戦争の話だから、下世話な話も多く、グロい描写も多いので、誰にでもお勧めというわけではないが、著者の実体験に基づいているというし、これも戦争の実態の一つなので、そういう意味ではお勧めできる。ただ、とにかく単語が難しい。それでも読む価値はある。日本語訳は見ていないけど、文句を言っている人もいるようだ。しかし、原書で全部読んだわたしとしては、原文自体が厳しいからな…と言っておきたい。

Generally speaking, I love the protagonist who tries to escape from his official mission, whether it is war or not. The superior officers are meanies even if it is not a wartime. The savage war only accentuates it.

出版社: Everyman's Library (1995/9/21)
言語: 英語
ISBN-13: 978-1857152203

2018年10月25日木曜日

Collectif "Une Parole par jour de Sagesse 2019" [賢人の言葉一日一言2019]

フランス語の一日一名言卓上日めくりカレンダー。毎日フランス語を強制的に読むのは悪い話ではない。誰でも知っている名言も語学力の一部として重要だ。ただ問題点もある。まず、大きさが随分小さい(大きいトランプくらい)し、置くときに角度があまりなく、平置きに近い。あと、曜日と日本の祝日が入っていない。まあ最後の点については、わたしとしては、曜日や祝日を日めくりで確認する機会はないのであまり問題ではない。しかし、どっちにしろ、カレンダーというより勉強用という気分だ。来年の日めくりカレンダーは職場がLiz Climo、自宅がSports Illustratedで決定とする。このフランス語日めくりは自宅の玄関にでも置いておく。

Un calendrier qui manque le jour de la semaine.

Hugo Image (11 octobre 2018)
Langue : Français
ISBN-13: 978-2755639032

2018年10月12日金曜日

Liz Climo "The Little World of Liz Climo 2019 Day-to-Day Calendar" [リズ・クリモの小さな世界2019年日めくりカレンダー]

今年のが大変気に入ったので、来年も自宅用はこれで。土日が一枚なので、本当は職場で使う想定かもしれないが、個人的には職場ではちょっと和み過ぎる気もする。単行本を買うより、毎日カレンダーで見るのがちょうど良い。

The best desktop calendar ever.

Andrews McMeel Publishing (2018/7/17)
言語: 英語
ISBN-13: 978-1449492885

Trends International "Sports Illustrated Swimsuit 2019 Calendar" [スポーツ・イラストレイテッド2019年水着カレンダー]

来年の職場用の日めくり卓上カレンダーを考えていた。長らくDilbertを使っていて、パッと見、品も悪くないし面白いんだけど、作者のWin Biglyを読んでうんざりしたこともあり、代わりを探していた。で、これくらいならお洒落かなと思って、実際現物はとてもお洒落で気に入っているんだけど、ちょっと職場には置けない…。というのも、水着写真とは言え、乳首が透けていたりするので、人目のつく範囲に置いたらセクハラと言われてしまうだろう…。

ただ、あくまでわたし目線で見てのことだが、お洒落で下品でもないし、健康的だし、エロいという気もしないし、本当なら机の上に置いておけばかなり気分が良いはずだ…。この点については感じ方は人それぞれだと思うので何とも言えないが、一遍に机の上が明るくなる印象がある。毎日、その月のカレンダーもついているのはあまり見たことが無く、実用的だ。というわけで、正直、取扱いに困っているが、枕元にでも置いておくか…。

Very good, though I do not know where to put it....

Trends Intl Corp (2018/8/15)
言語: 英語
ISBN-13: 978-1438859682

2018年9月27日木曜日

Matthew Frederick, Vikas Mehta "101 Things I Learned in Urban Design School" [私が都市計画学校で学んだ101のこと]

全くの素人に都市計画者の視点を教える本。まあ、何がどう計画されているのか分からない町も世の中にはたくさんあると思うが、それにしても一応計画されている。もちろん、比較的新しい関東の私鉄沿線の都市などは分かりやすいし、今でも湾岸はゼロから計画されている。一応こういう本を読んでおくと、デベロッパーや行政が何を考えているのか多少は分かるようになり、街歩きの楽しみが増えるというものだ。とは言うもののこの本、"101 Things I Learned®"の中では、今一つだった気もする。理由の一つは、都市計画に限らず、何の事業にでもあてはまるような教訓が多いせいだろう。

Good enough, though not as good as I expected from other 101 things books.

Three Rivers Press (2018/4/3)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0451496690

2018年8月23日木曜日

Eliane Kurbegov, Edward Weiss "Barron's AP French Language and Culture" [APフランス語と文化対策]

APはアメリカの試験で、受かると大学入試で有利になったり、大学の単位として認定されたりする。SATより上級。わたしがこの本をやった感触では、欧州基準でB2くらいあるかもしれない。B1よりは上だ。仏検なら一級か準一級か…。採点基準が分からないので、実際に受けてどうなるか分からないが、問題自体はそんな感じ。別にこの本でフランス語力をつける趣旨でもないと思うが、トランスクリプト付の音声も大量に入っているので勉強になるし、一通りフランス語文法を終えた人が試しにやって見るにはいいだろう。仏検二級くらいの力ならSATの対策本を見たほうが良い。

わたしとしては、この本はかなりしんどかった。興味の無い内容の長文や音声に集中することの難しさを痛感する。結局、こういう試験で取り上げられるテーマは限られているし、その意味では十分に対策可能なのだろう。作文の模範解答も完備しているし、会話とか口頭発表とかの模範解答も全部音声があり、もちろん流し読み/聞きしただけだが、今更こんな上流階級の頭の良い子みたいな文章を書いたり発表したりできないよなあ…と。しかし、仏検一級を狙うくらいの人なら、こんなのはクリアしないといけないはずだ。自信を無くすが、まあ、別に大学に入るわけでもないし…。

Americans are very good at oral expositions. They are trained to that in this way. I just can't....

Barrons Test Prep; 2版 (2016/2/1)
言語: 英語
ISBN-13: 978-1438076034

Tracy Arrington, Matthew Frederick "101 Things I Learned in Advertising School" [広告学校で学んだ101のこと]

時々、広告業界入門的な本を読むと「広告は嘘をつく技術ではない」という趣旨の言葉は必ず入っていて、その度に「どう言い繕っても…」と思う。広告技術にそこまで深い興味がなくても、広告を見せられる側の自衛のためにこういう本はみんな読むべきなんだろう。一時期日本でも「クリエイティブ」であることが至高の価値とされていた時代があったけど、基本的に広告業界の思想だったんだろうと思う。それはそれとして、今でも所謂意識髙い系にとって、広告技術の基礎は必須課目だろう。実際のところ、広告のイロハも知らないお偉方が広告に口出ししてグチャグチャにしているのを今も目の前で見ているし、みなさんも自分がそんな風になる前に最低でもこの程度の本は読んで置いてもらいたい。お前がどう感じるかなんか、専門家と統計の前では何の意味もないんだよ…。このシリーズは簡単にすぐ読めるし、一般的にも評判が良い。もっとどんどん出してほしい。

For those who like to interfere and trash works of PR specialists.

出版社: Three Rivers Press (2018/4/3)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0451496713

2018年8月16日木曜日

Helen Graham "The Spanish Civil War: A Very Short Introduction" [スペイン内戦:非常に短い入門]

1.スペイン内戦の起源 2.反乱と革命と抑圧 3.動員と生存:共和国の戦争 4.反乱スペインの成り立ち 5.包囲される共和国 6.勝利と敗北:戦後の戦争 7.歴史の価値

高校の世界史レベルでは、第二次世界大戦におけるスペインの立場が分かりにくい。フランコとかいう独裁者はファシストでヒトラーやムッソリーニと仲が良く、完全に枢軸国側でドイツやイタリアを支援していたが、なぜか法的には中立国ということになっており、ヒトラーとムッソリーニが排除された後も、フランコは普通に独裁を続けていた。で、何かよく分からないうちに民主化されて普通のEU加盟国みたいになっているというような…。スペイン人の話を聞いても、フランス人のレジスタンスの話を聞くようなもので、後から良いように言っているだけのようにも聞こえるし、曖昧な話が多い。日中戦争と同じで、実際の経験者が語りたがらないということが多いらしい。

そこでこの本を読むと、確かに要因が入り組み過ぎていて、誰がどっち側なのか難しい。基本的には共和国vsファシストという認識で、社会主義者・共産主義者・都市労働者は共和国側、農業地帯・カトリック教会はファシスト側と。当然地域差があり、クーデターが起こった直後に軍が掌握したのは基本的に田舎であり、マドリッド他の都会は共和国側。あと独立性の高いバスクなどは共和国側だが、共和国は中央集権を目指すので内部の軋轢がある。ドイツ・イタリアはファシストを支援して、これが戦争の行方を決定する。他方共和国にはソ連がついている。今から考えれば英仏が共和国を支援しないのは意味不明だが、この時期の英仏はなぜかヒトラーに妥協しまくっていて、オーストリアもチェコスロバキアもどんどん呑み込まれている。しかも、内政不干渉とかいう建前で、フランス国境などもほぼ封鎖されており、これではファシストに勝てるはずがない。ファシスト側としては戦争に勝つのは分かっているが、できるだけ戦争を長引かせて赤色分子を殺戮しつくすのがスペイン浄化の為に必要ということで、ゆっくり人を殺していく。結局、ヒトラー体制は打倒されるが、連合国軍の進撃はピレネー山脈で止まり、その後スペインはずっとファシストの支配が続く。

だいたい、歴史を学んでその国のことが好きになることは少ないが、これはなかなか酷い。スペインの場合、話の前提として中南米とアフリカで大量殺戮しているということがある。その巨大な植民地を失って行き場をなくした軍人が、近代化しようとするスペインを過去に引きずり戻した図になっている。当たり前だが、この本は共和国側に同情的な書き方になっており、ずっと悲しい感じで読むことになる。戦後、共和国側の住民は強制収容所や強制労働などに放り込まれて、善良なスペイン人は全員殺されたような印象がある。スターリンのソ連と同じで、近所の人の密告なども恐れないといけないし、当時の人たちが昔のことを語りたがらないのも分かる。孫の代になって実は祖父母が共和国側だったので殺されたことが判明するとかが普通らしい。スペインを脱出した共和国軍軍人がフランスのレジスタンスに参加したりパリ解放とかスターリングラード防衛で戦うとかいうようなエピソードもあるが、大多数のスペイン人のリアルではないだろう。

内戦時の記録は各地の政府の文書館や、カトリック教会の文書館などに残っているらしいが、公開が進んでいないらしい。探ったら誰が誰を殺したとか密告したとかいうことが判明して、やっかいなことになるのだろう。ファシストへのカトリック教会の貢献はこの本でも強調されているが、これも酷い話だ。スペインに旅行することがあったら、その辺りの内戦記念碑的なものばかり見ることになりそうだ。ともあれ、これでヘミングウェイの「誰がために鐘は鳴る」を読む準備ができた。

A sad history of Spain.

Oxford Univ Pr (2005/6/23)
英語
ISBN-13: 978-0192803771

2018年7月18日水曜日

Joachim Whaley "The Holy Roman Empire: A Very Short Introduction" [神聖ローマ帝国:非常に短い入門]

目次: 導入.神聖ローマ帝国とは何だったのか 1.ローマ帝国とドイツの王国:カールからオットー朝へ 2.中世盛期:ザーリア朝からホーエンシュタウフェン朝へ 3.中世後期の帝国:ハプスブルク家の勃興 4.近代前期の帝国(1):マクシミリアンI世から三十年戦争へ 5.近代前期の帝国:ヴェストファーレン条約から1806年へ 後書き.神聖ローマ帝国の遺産

神聖ローマ帝国は神聖でもなければローマでもないが、だいたいフランク王国からナポレオンがやってくるまでの中世近代のドイツの政治史。この辺りの歴史が分かりにくいのは、建前としては封建制で、ドイツの各地域というか各家の独立性が高く、それぞれが自律的に行政や同盟や戦争をやっている上に、その中のどこかの家の誰かが選ばれて皇帝になって、一応尊重されるという二重構造になっている。

しかも一応教皇の承認ももらいたいとか、しかし教皇領も奪いたいだとか、プロテスタントが出現したり宗教的な問題もある。地理的には西からフランス人が攻めてくるし東からトルコ人が攻めてくるし北からスウェーデン人が攻めてくるし南からイタリア人が攻めてくる。その上でスイスが独立したりハンガリーがもめたり、その他ハプスブルクだのルクセンブルクだのブランデンブルクだの内部の争いも絶えない。ハプスブルク家の時代になるとスペインも関与するしポーランドの王位も問題になり、とにかくヨーロッパの真ん中の国は大変だ。

この辺りのややこしく長い歴史を本書は丁寧に編年体で追ってくれていて大変勉強になる。これでも大筋に過ぎず、完全には程遠いのだろうけど、意外にこういう通史はあまりない気がする。少なくとも高校の世界史レベルでは何のことやらほぼ分からない世界だ。VSIなのでさして頁数もないが、かなり濃密な読書体験になる。調べ出せばキリがないし、世界史が好きな人の気持ちも少し分かってきた。面白いし、翻訳すれば世界史選択の高校生の必読書になると思うがどうか。とにかく、日本人が想像で作るドラクエ的なインチキヨーロッパ中世とは、こういう中央ヨーロッパ史であり、イギリスでもフランスでもない。

The best introduction to the history of the central Europe.

Oxford Univ Pr (2018/10/1)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0198748762

2018年6月28日木曜日

Andrew F. Cooper "The Brics: A Very Short Introduction" [BRICS:非常に短い入門]

目次:1.BRICSを構想すること 2.議論の余地のある発明 3.歴史的な出発 4.一緒につるんでいるいること 5.新しい開発銀行の設立 6.社会ではなく国家の認知としてのBRICS 7.BRICSの留まる力

BRICSという概念はゴールドマン・サックスの発明らしいが、どうも今一つ盛り上がらない…というのも、この本でも説明されている通り、G8みたくlike-mindednessがあるわけでもく、互いに対立している部分もあり、本人たちが公式機関化を避けて目立たず行動する傾向があったりで、結局、投資信託の名称くらいでしか聞かないからである…。ただ、本書によると、それでも一応多少は集団として影響力を行使することがなくもないというのもあるらしい。国内においては大体が市民活動に対して弾圧的で、中国に至っては未だに一党独裁であり、G8の住人からすると懐疑的になるのはやむをえない。本書は各国の国内事情というより、国際舞台でのBRICSの振る舞いに注目している。G8みたいな共同謀議を行うような気もしないが、少なくとも今のところは一定の影響力はあるようだ。

A good introduction to the shadowy club.

Oxford Univ Pr (2016/7/1)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0198723394

2018年6月25日月曜日

Renee White, Sylvie Bouvier "Barron's SAT Subject Test French" [Barron SAT主題試験フランス語]

以前も別のSATフランス語の問題集を読んだが、こっちのほうが質量共に比較にならないほど優れており、こちらを読めば前のは要らない。こちらはリスニングも大量にこなせる。

それはそれとして、特にリスニングについては解説を読んでも納得しかねる問題が多々あり、これはこの本の問題ではなく、SAT自体がそういうものなのだろう。日本の大学入試で同じようなことがあれば、非難が殺到するのは間違いない。レベルとしては、やはり単語が難しいことを別とすれば、仏検二級くらいのものだろう。あくまで試験問題集なので、別にこれでフランス語の勉強をするような趣旨の本でもないと思うが、こんなのでもしないとわたしの場合はフランス語力が上がらない。

Le meilleur livre pour SAT French.

Barrons Test Prep; 4版 (2017/9/1)
言語: 英語
ISBN-13: 978-1438077673

2018年6月20日水曜日

Stephen J. Davis "Monasticism: A Very Short Introduction" [修道院生活:非常に短い入門]

目次:1.定義 2.差異 3.規則と社会組織とジェンダー 4.聖人と精神性 5.現実と想像の空間 6.現代世界での世界的な現象

一応、主題別の目次になっていて、比較宗教学・考古学・歴史学というようなことで、宗教としてはキリスト教と仏教がメイン。実際には、歴史的・地理的な修道院組織の博物誌くらいの感じ。色々あっても全制施設の運営はどこでも同じなんだろう。何なら軍隊とか病院とか刑務所でも大して変わらない気がする。わたしとしては、時々僧堂に入りたいと思うこともあったが、実際に入っていた人の話が口を揃えて言うのは、イジメもあれば仕事もあり、世間と何も変わらないらしい。そんなことなら同志の集うシェアハウスみたいなほうが良い気もするが、それはそれで運営が難しいんだろう。というような内部の社会学的な事態はこの本では論じられず、制度的な建前のほうの研究がメイン。

About one kind of total institutions.

Oxford Univ Pr (2018/4/1)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0198717645

2018年6月19日火曜日

Yujin Nagasawa "Miracles: A Very Short Introduction" [奇跡:非常に短い入門]

目次:1.奇跡とは何か? 2.宗教的文書の中でどのような奇跡が報告されているか? 3.なぜこれほど多くの人が奇跡を信じるのか? 4.奇跡を信じることは合理的か? 5.超自然的でない奇跡はあり得るか?

基本的には宗教上、特にキリスト教の文脈での奇跡だか奇蹟だかを扱っている。奇跡の定義とか博物誌的記述を別とすれば、人間の心理バイアスとかヒュームの懐疑論など。奇跡の真偽には立ち入っていないが、著者が否定派でないことは明白に思われる。奇跡を認知しやすい人間の性向があるのだとすれば、奇跡が起こったと主張することで利益を得る性向とかもあるだろうし、こういうことなら宗教の起源とか奇跡の利用法などにも踏み込んでほしいところだが、多分、この著者には無理だろう。「ムー」とかを読むのとあまり気分は変わらない。

Many interesting cases of alleged miracles.

Oxford Univ Pr (2018/1/23)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0198747215

2018年6月14日木曜日

Timothy H. Lim "The Dead Sea Scrolls: A Very Short Introduction" [死海文書:非常に短い入門]

目次:1.文化的アイコンとしての死海文書 2.考古学的現場と洞窟 3.文書と断片について 4.ヘブライ語聖書への新しい光 5.正典と真正な書と文書 6.誰が文書を持っていたか? 7.文書収集物の文献的構成 8.第二神殿時代のユダヤの分派 9.死海文書のコミュニティ 10.分派コミュニティの宗教的信念 11.文書と初期キリスト教 12.最も重大な手稿の発見

死海文書というタイトルでは素人向けに胡散臭い本も多いので、これを読むのが最も無難だ。学者からすると相手にするのもバカバカしそうな話も、本書では丁寧に反駁している。かなり読みやすく、ユダヤ教や中東の歴史に詳しくなくても問題ないだろう。クムランの洞窟から見つかった巻物の中には、後世になって旧約聖書に収録される前の状態の文書も含まれており、場合によってはそのせいで伝統的な旧約聖書が訂正されたりしている。文書の内容自体だけでなく、クムランの考古学的研究や一般的なユダヤの歴史も詳しく記述されていて、文献学と歴史学と考古学の融合はとても面白い。別にわたしはユダヤ教にもキリスト教にも思い入れがないが、だからこそ、純粋に娯楽として楽しめるのかもしれない。

念のため、基本的に死海文書はキリスト教(とかいうユダヤ教の分派)より前に、エッセネ派の所有していた文書ということになっており、キリスト教の信仰とは関係がない。ただし、初期キリスト教徒が読んでいた旧約聖書が、今の我々の読んでいる旧約聖書と少し違うとしたら、その限りでキリスト教徒にとっても問題になる。ずっと後のグノーシスの文書みたいな奔放な話もないし、使徒が人類と対立する的な話もなく、ただある時期のユダヤ教の一つの分派の生活や信仰などが解明されるだけだが、一般教養として知っておいていい。なぜ翻訳されないのか不思議だ。

The best introduction to the Dead Sea scrolls.

Oxford Univ Pr; 2版 (2017/5/1)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0198779520

2018年6月7日木曜日

Jean-Claude "Noir" [黒]

例によって舞台はアメリカということになっている。正直言って、これは何度読んでも意味が分からない。まず画面が黒くて人物の判別に苦労する。あと時系列も狂っているのだろうか。また気が向いたらメモを取りながら読んでみるが、それとも難しく考えすぎているのか。ただ、おそらくこのマンガのポイントはストーリーではなく、例によってフランス人の考える50年代アメリカの雰囲気なので、ストーリーを解明できたとしても、あまり感心しないだろう。

Je ne comprend pas ce qui se passe.

Bdartiste (10 avril 2012)
Langue : Français
ISBN-13: 978-2919243075

2018年6月3日日曜日

Craig Jeffrey "Modern India: A Very Short Introduction" [現代インド:非常に短い入門]

目次:1.希望 2.植民地インド:貧困化 3.植民地インド:宗教とカースト分割 4.インドを動作させる?1947-1989 5.インド再考 6.社会革命 7.若者

インド人がこれを読んでどう思うのかどうか分からないが、差し当たり、ものすごくバランスの取れたインドの記述に思える。歴史・社会・経済・文化・政治について満遍なく記述されていて、流行りのボリウッドや一昔前のサイババも省略されていない。もし何らかの理由で就職試験などでインドのことを問われるのなら、まず、この本を読むべきなのだろう。この一冊でだいたいわかったような気にもなるし、読み物として完全に成立しているので退屈はしない。貧富の格差も酷く、昔からある「貧しいインド」のイメージも間違っていないようだし、植民地としての歴史も人口ピラミッドの構造も日本とかけ離れていてなかなか面白い。わたしとしては、インドは、昔新聞を読んでいたくらいの知識で行ったこともないし、特にインド人の知り合いもいないが、問題山積みながら、未来のある国という印象だ。

It seems to me a very well-rounded and very balanced book on India.

Oxford Univ Pr (2018/2/1)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0198769347

2018年5月31日木曜日

Annie Heminway "Practice Makes Perfect: French Reading and Comprehension" [練習が完全を生む:フランス語読解]

目次:1. エッフェル塔:議論と論争 2. ママ教えて、フライドポテトは木になるの? 3. 治療し楽しませるハチミツ 4. ヒグマの回帰 5. フランソワ・ガバール、海の王子:78日で世界一周 6.ルークソール、灰からの再生 7. 映画監督・グラフィックデザイナー・内装建築家にどうやってなるか 8. マダムかマドモワゼルか 9. 大臣がフェミニズムの授業を受ける 10. モントリオールの歴史の中心のラシーヌ運河 11. マリーアントワネットについて聞けなかったけどずっと知りたかった全て 12. 図書館に行ってはどうでしょう? 13. 全方位のデジタル化 14. クレール、ブリュッセルの給仕 15. 人生を変える:自由の代償 16. 幹部の文盲、知られない現象と禁忌 17. MuCEM:欧州と地中海の文明博物館 18. バルタバス、馬術劇場の天才 19. 三角移住:ジャンヌ・セギン-ラフラム 20. 最初のショック:ウェイ・ウェイ 21. 海の耳にささやく若い男:エドゥアルド・マネ 22. ビクトルのポンディチェリの冒険:アリエット・アルメル 23. わたしはカメラ(10の例):ダニ・ラフェリエール

フランス語の読解を中心にした問題集。まず文章が示され、続いて読解を試す問題や文法・語法の解説と問題・仏作文など、フランス語総合コースという趣。文章は実際の新聞記事などから採られている。内容は目次から分かるように、社会・文化・芸術の話題が中心。初級のフランス語読本みたく、リア充大学生の優雅な日々やフランスの初歩的な歴史を読まされたりする気遣いはない。レベル的には、裏表紙にadvanced bignner-intermediateとあるが、実際には上級、欧州規準でB2レベルと考えて良いだろう。こういう機会でもない限り、一生興味も持たないような記事も多いが、外国語学習を考えると、興味のない文章でも読んだほうがいいのは確か。一般にもとても評判のいい本だ。

わたしはと言うと、この本は気が向いた時に少しずつやっていたが、結局、買ってから二年以上経って終わった。文法的には問題なくても、なにぶんにもリアルでそこそこ学術的なフランス語が多く、単語が難しい。文章の内容自体は、正直言ってあまり面白くなかったが、記憶に残っているので言えば、16章の幹部の文盲はヤバい。結構な高学歴で社会的に地位の高い人でも文盲が結構いるとか言う話で、俄かに信じがたいが、フランス語の綴りの難しさを考えると有り得なくはないのか。にしても、わたしみたいに読むことしかできないより全然良いと思うが。

ともあれ、二年以上かかってようやく終えたのは感慨深い。ゆっくりやり過ぎて、この本でどれだけフランス語力が伸びたのか測定できないが、また学習意欲が出てきた。

I finished this book after two years from the point of purchase... It was a enormously difficult task, but I hope it was worth it.

McGraw-Hill Education(2014/7/4)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0071798907

2018年5月17日木曜日

Princeton Review "Cracking the SAT Subject Test in French" [SAT主題試験フランス語対策]

SATは日本の大学入試センター試験に当たるアメリカの試験で、日本人でもアメリカに留学する人は受けることになることが多いようだ。ただ、わたしの知る限り、たいていの科目は簡単なので、日本人は特に理由がなければ、敢えて難しいフランス語は受けないだろう。わたしも多分一生受ける事はないが、試しに練習テストをやってみたく思って本書を購入した。

試験内容はセンター試験とかなり傾向が違うので単純に比較はできないが、難易度は同じくらいなのではないかと思う。わたしの力では、どちらもほぼ間違えないが、完全に満点を取りきるのは実際にはどうかというところ。全部マークシートだが、「別にこっちでもいいやん」みたいな答があるのは、TOEICでも他の語学の試験でも良くあることで避けられない。仏検二級くらいあれば、八割はとれるかと思う。しかし、これも語学の試験に通例の話だが、日本の語学の試験は単語力をあまり問わない。単語のレベルで言えば、SATのほうがずっと厳しい気がする。

本書の構成はフルセットの練習テストが二つと、各セクション(単語・文法・穴埋め・読解)の練習問題+受験テクニックがメイン。それぞれのフランス語力に応じて勉強になったり確認になったりするだろう。重大な注意事項として、本書には聴き取りの問題が含まれていない。聴き取りを受けるかどうかは選択できるらしいが、16版にもなって含まれていないのは、実際には受ける人が少ないのだろう。

It is not that I will take the exam. Just for amusement. Assez facil.

Princeton Review 16版(2017/12/12)
言語: 英語
ISBN-13: 978-1524710774

2018年5月13日日曜日

Max de Radiguès "Bâtard" [私生児]

ネタバレせずに説明するのは難しいが、要するに犯罪者の母と息子の逃亡劇ということで、暴力が無意味に多い。無意味なセックスもある。舞台はニューメキシコとかで砂漠のシーンもあり。フランス人の考えるアメリカン・ハードボイルドという良くあるパターンだと思ったが、著者はベルギー出身らしい。絵は見やすくていいけど、特にヒネリもないし、殺伐としたポエジー的なものもないので、あえてお勧めはしない。かりにこれが映画だとしても、ちょっと何もなさすぎる。もっとも、暇つぶしに読んだだけなので、感性の豊かな人が読んだら違うかもしれないが…。

Très simple. Un american-hardboild à la française ou belgieque?

Casterman (7 juin 2017)
Langue : Français
ISBN-13: 978-2203141414

2018年5月8日火曜日

Alain Goriely "Applied Mathematics: A Very Short Introduction" [応用数学:非常に短い入門]

目次:1. 応用数学の何がそんなに面白いのか?モデリングと理論と方法 2.秘密を知りたいか?七面鳥と巨人と原子爆弾 3.モデルを信じるか?単純性と複雑性 4.方程式を解く方法を知っているか?回転するコマとカオス兎 5.ケネス、周波数とは何か?波と地震とソリトン 6.それを描けるか?X線とDNAと写真 7.数学は何の役に立つ?四元数と結び目とさらにDNA 8.我々はどこに行くのか?ネットワークと脳

どうも章タイトルは有名な曲のタイトルをもじっているらしいが、わたしは音楽に興味がなくて分からない。応用数学とは、要するに色々な現象について数理モデルを組み立てるというようなことで、物理現象に即して、次元解析から始まり、微分方程式、偏微分、フーリエ解析というような感じで、目次通り、色々な例を見ていく。従って、VSIとしては珍しく数式を避けておらず、日本の高校生程度の数学力では厳しいかもしれない。事例としては自然科学と工学に限られているが、それでもかなり広範囲である。大学新入生くらいが読んだら、これで数学を志す人も出てくるかもしれない。

わたしとしては結構楽しく読んだけど、実のところ、これだけ色んな例が満載なのに、ほとんど知らない話がなかったことがショックである。数学はもとより、自然科学・工学の分野については、もうVSIを卒業する頃合いなのだろうか。あと、関係ないけど、本書の中でラプラスの悪魔に対して解析解のない微分方程式があることを持ち出して論破したりしているが、これはこの本以外でも至る所で見かける論法で、わたしは認めていない。ラプラスの悪魔の論点は決定論であり、人間に微分方程式が解けないことは、決定論に全くダメージを与えていない。人間に三体問題が解けなくても、天体の運動は微分方程式が描く通りに進行する。量子力学でもそうで、観測によって決定できないことと、観測と無関係に本質的に不確定なのは全く意味が違う。前者は、単に「未来は人間には分からない」というだけのことで、決定論に変わりはない。

This book requries a bit math skills.

Oxford Univ Pr (2018/4/22)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0198754046

2018年5月1日火曜日

Daniel Fleisch, Julia Kregenow "A Student's Guide to the Mathematics of Astronomy" [学生のための天文学の数学の案内]

目次:1.基礎 2.重力 3.光 4.視差・視直径・分解能 5.星 6.ブラックホールと宇宙論

近頃、高校の物理学を復習していたが、昔読んだ"A Student's Guide to Maxwell's Equations"に感銘を受けて、同じ著者の本を読んでみようと思った次第。しかし、こちらは随分対象レベルが下がっているように思われる。日本で言えば、せいぜいが高校生レベルだろう。宇宙に関心のある日本の中学生が読んでも、多分、分からないことは書いていない。もちろん、この程度のことはセンター試験で地学を選択する人間なら知っていなければまずい。なお、「算数でわかる天文学」という邦訳が岩波書店から出ているようだが、翻訳の評判が悪く、多分その通りなのだと思う。あるいは、特に物理学や計算に縁の無い、純粋な天文鑑賞ファンにはそれなりに科学的な雰囲気を提供するのかもしれない。とにかく、数字をやたら計算させるわりには、数学的に難しいことは全く言っていないから、数学に自信がなくても、その点は安心してよい。

A good book but really elementary. An average junior-high school student would be able to read this book.

Cambridge University Press (2013/8/29)
言語: 英語
ISBN-13: 978-1107610217

2018年4月26日木曜日

Pascal-Henri Keller "La dépression" [鬱病]

目次:1.メランコリーから鬱病へ 2.鬱病を説明する事 3.鬱病と治療の希望 4.精神分析モデル 5.鬱病の未来と鬱病者の未来

鬱病の歴史から原因から治療法から市場規模までに至る概説。よくある類の本とは言えるが、フランスだからなのか、文学的というか哲学的な雰囲気が強い。精神分析を重視するのはフランスだからだろう。他方、近頃流行りのマインドフルネスについては僅かしか触れられていない。わたしとしては、この件については昔から色々考えていて、何にしろ身体的原因が第一に違いなく、精神分析含め、あまり文学的に解釈しても仕方がないと思っている。脳内ホルモンの大半は小腸でも作られるし、食べ物、特にアミノ酸を調整するのがお勧めだ。例えば、トリプトファンとかフェニルアラニンは明確に気分が変わる。前者はわたしはアレルギーがあるのでダメだし、人によって合う合わないがあると思うけど。

Je vous recommende des amino-acides.

Presses Universitaires de France (20 janvier 2016)
Langue : Français
ISBN-13: 978-2130635062

2018年4月25日水曜日

Michael Beaney "Analytic Philosophy: A Very Short Introduction" [分析哲学:非常に短い入門]

目次:1.いくつの物があるか? 2.存在しない物をどのようにわたしたちは語れるか? 3.あなたはわたしの言っている意味が分かるか? 4.わたしたちが言ったり考えたりできることに限界はあるか? 5.どのようにわたしたちはもっと明晰に考えられるか? 6.それで分析哲学とは何か?

分析哲学の導入書。各章ごとに問題を出して考えながら、正典的な哲学者を紹介し、最後に分析哲学全体の歴史・外観を提示する。薄い本だが、良くできていると思う。これから哲学をやろうというムキには安心してお勧めできるところだ。念のために確認しておくが、哲学の世界は大陸哲学と分析哲学に二分されており(この二分法自体、本書で批判されているが)、この本は分析哲学のほうを紹介している。

わたしとしては散々やったことなので、今更入門書でもないが、時折こういうのを見たくなるというのは、微細な議論にうんざりしているからで、哲学なんて、やればやるほど微細な所に入っていく。少し気が利いた人間なら早晩哲学の限界に絶望するはずだと思うが、哲学は無限に絶望を先送りできるのも事実だ。そして、この本の著者の主張に反し、少なくとも日本では、哲学者というのは哲学の文献学者のことで、本気で哲学をしている人は少ないし、学生の分際でそんなことをしようものなら、まず先人の業績を学べと正論で潰されることになっている。一体、車輪の再発明はそれほど無価値なのだろうか…。

それはそれとして、この本に限ったことではないが、分析哲学の用語はかなり情報科学に流用されていて、その件について語る哲学者を見かけない。どこかにいるだろうから探し出したいと思っている。もう一つ、少し前にビジネス書で流行った"critical thinking"というのは、分析哲学由来らしい。少し気になるところだ。

A neat introduction to analytic philosophy.

Oxford Univ Pr (2018/1/23)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0198778028

2018年4月24日火曜日

Jean-Claude Ellena "Le parfum" [香水]

目次:1.現代香水業の誕生 2.鼻と香り 3.材料と原料 4.職業訓練 5.職業 6.香水 7.時 8.マーケティング 9.市場展開 10.世界市場の役者 11.香水の保護

香水・調香師・香水業界の概説+著者個人の職業生活。ほぼ目次通りの全般的な解説だ。著者は業界では有名な調香師。作品にはわたしが好きなブルガリの緑茶とかエルメスのナイルの庭などがある。…と言われてピンとこないようだと、この本は多分厳しい。この本に出てくる香水や化学物質は、当然文字だけで香がついているわけでない。普段から香水を使わない人がこの本を読んでも意味が分からない部分が多すぎるだろう。実際に勉強するには、香見本が必要で、そういうセミナーみたいなのも日本には多いようだ。わたしは実は色んな香水を常用しているので、この本は楽しく読めたが、こんなのは例外だろう。著者の個人的な話が多すぎる気もするが、調香師なんて世界にそんなにいるわけでもないし、そもそもどうやったらなれるのかも明らかではない…。香水は意外に金のかからない趣味だし、始めるのにハードルもないが、どんなアンケートでも「異性につけて欲しい香水は何ですか」の答の不動の一位は「何もつけない」が不動の一位であるという現実がある。楽しい世界なのだが…。

J'aime bien le thè vert d'Ellena. Comment puis-je devenir parfumeur?

PUF (1 novembre 2017)
Langue : Français
ISBN-13: 978-2130798552

2018年4月13日金曜日

Onfray Michel, LE ROY "Nietzsche : Se créer liberté" [ニーチェ:自由の創造]

ニーチェの伝記マンガ。翻訳も出ていて評判も良いようだが、雰囲気重視のBDなので、これで伝記になっているかどうかは微妙だ。フランス人はニーチェが好きだし、わたしも相当読んで、おかげでムダに大仰な言い方や、ムダに人を偽善者扱いする論法に感染してしまってこの有様だが、伝記はほとんど知らなかった。このBDの語るニーチェの生涯については、かなり陰鬱で、まあそんなところだろうというような感想だ。

Je ne sais pas de grande chose sur la vie de Nietzshe mais je trouve que ce BD est assez convaincant.

Le Lombard (19 mars 2010)
Langue : Français
ISBN-13: 978-2803626502

2018年4月3日火曜日

Thomas Pink "Free Will: A Very Short Introduction" [自由意志:非常に短い入門]

目次:1.自由意志の問題 2.自由意志としての自由 3.理性 4.自然 5.自由なき道徳? 6.自由意志論者の自由についての懐疑 7.自己決定と意志 8.自由と自然の中のその位置

わたしはこの件について特に深い関心もなく、自由意志とは、人間関係を調整するための法的虚構に過ぎないと思っており、しかもそれ以外のマトモな使用法がないと思っているが、著者の立場は遥かに常識的というか、常識に沿うように概念を調整している感じ。割と伝統的であり、単純明快な議論を期待しているムキにはお勧めできない。単純な極論、例えば「人間の意志は脳の物理的動作によって必然的にか偶然的にか決定されている」というような言い分に、著者がどう答えるのかも明らかでない。多分「そのように我々は日常的に理解していない」となるのだろうか。著者の関心は自由意志に関する日常的な理解の防衛にあるようだ。無論、常識は価値があるから常識なのであり、そうして人間は進化してきたのだし、法学者には都合がいいだろうが、常識と別に真相があるかも知れないと考える人には物足りないだろう。関心の向きが違うと言えばそれまでだが、総じてぼんやりしている印象があるが、関心の持ち方が著者と合う人もいるかもしれない。

In my opinion, this book failed to repel extremists.

Oxford Univ Pr (2004/8/5)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0192853585

2018年3月9日金曜日

H. G. Wells "The Island of Dr Moreau" [モロー博士の島]

有名な作品なので今更ネタバレにもならないとは思うが、獣人を作っている博士の支配する島に辿り着いた主人公の冒険。予想を越えることは基本的に起こらず、特に前半のオチの見えている逃走劇のあたりはどうするのかと思ったが、読み終えてみると、確かに名作だったとは思う。

獣と人ということでは、わたしの第一のイメージは「けものフレンズ」なんだけど、時代が違う以上に、獣と人を峻別するキリスト教文明が違う。昔からヨーロッパには獣人の伝統があるが、そこには可愛さの要素が全くなく、殺伐としている。映画化も何回かされているようで、現代の遺伝子工学を予見していたとかいう話になっているが、単に怪奇ブラックユーモアと理解している。ただ、獣と人が融合するのに恐怖を感じるためには、特定の文明に属している必要がある気もする。その点の恐怖感が、Wellsの意図通りにはわたしに伝わっていないだろう。

ここまでThe War of the WorldsThe Invisible ManThe Time Machineを読んだけど、Wellsは面白い話をするおじさんだ。作り話で金をとるというのはこういうことだと思う。そのうち全作品を読んでしまうかもしれない。

Hilarious. But I recommend you "Kemono Friends". It is still better.

Alma Classics (2018/5/31)
言語: 英語
ISBN-13: 978-1847496591

2018年3月7日水曜日

Marie-France Hirigoyen "Le harcèlement moral au travail" [職場のモラルハラスメント]

職場でのいじめに関する統計や背景や対策など。わりと公式的な話で、この辺り、フランスだから日本より進んでいるのかもしれないが、わたしとしては、正直な所、フランス語の語彙を拾う以外に特に価値はなかった。日本で実用的な話なら、メンヘル検定のテキストでも読むほうが良いかも知れない。わたしはII種を取ったが、特に実務経験とかが無くても取れる。

La même chose au Japon.

PRESSES UNIVERSITAIRES DE FRANCE (29 janvier 2014)
Langue : Français
ISBN-13: 978-2130624790

Jacques André "Les 100 mots de la sexualité" [性愛の100語]

早い話がセックスにまつわる100語について、文学作品の一節から引用したりしたエッセイ集みたいなものだが、精神分析が軸になっている点がどうか。わたしは精神分析を趣味の悪い文学の一ジャンルとしか思っておらず、実際、ここでも話を詰まらなくしている気がする。科学的な話はほとんどなく、かと言って実用的なアドバイスでもなく、ポルノでもなく、初耳な話もなく、ただ筆者の思いつきみたいな文学的思索集。多分、ここから妄想を養うのが最も楽しめる読み方だと思う。創作的な人の資料にはなるのかもしれない。わたしはというと、特に変な性癖もないが、まあ、こういう人たちもいるよね、くらいな。

Juste pour passer le temps.

Presses Universitaires de France (9 février 2011)
Langue : Français
ISBN-13: 978-2130582861

2018年2月22日木曜日

Emmanuel Guibert "Va & vient" [行ったり来たり]

フランスのマンガ、いわゆるBDと言っていいんだろう。ハイセンスかつシンプルな絵で非常に短く、かなり感銘を受けたけど、ネタバレせずに紹介するのが難しい。一コマごとについているフランス語の文も短くシンプルで、初学者でも理解可能だろう。というか、全くフランス語ができなくても、意味を推定できるかもしれない。短いながら三部構成と考えられ、最初、シュールなコントでも始まるのかと思ったら、第二部でエロくなり、なんだこれはと思ったら、第三部できちんと話が収束する。こういうのは、やはり第二部から前後を考えているのだろうか。さらっとエロを描いているところは、やっぱりフランスだと思うが、よく考えるとただの下品な下ネタのような気もする。BDの常で絵の質だけは大丈夫だ。日本で翻訳出版するなら、そのままの体裁で、フランス語もそのままで、最後のページに小さく翻訳文をまとめて載せておく感じだろう。一つだけヒントとして、このタイトルも第一部・第二部・第三部にそれぞれ異なる状況で出てくるが、第二部では性的な意味になるわけで…。

Je ne sais plus quoi dire...

L'Association (22 mars 2005)
Langue : Français
ISBN-13: 978-2844141699

2018年2月11日日曜日

Robert Jones "Branding: A Very Short Introduction" [ブランド:非常に短い入門]

目次:1.ブランドの勝利 2.ブランドとは何か 3.ブランドの歴史 4.ブランドはどのように作用するか 5.ブランドビジネス 6.ブランド事業 7.ブランドの倫理 8.ブランドの未来?

ブランドをめぐる商売、特に広告業界のあれこれ。類書と違うのは、ブランドが客に対してもつ効果のほか、従業員に対してもつ効果についても紙幅をさいている。自社製品に自信があるなら、製品に自社名を明示するはず、と考えるので、わたしも元々ブランド品には興味があった。たとえばIntel Insideみたいな広告はこの範疇だが、この本が考えるブランドは、そういう古典的な枠を超えて、漠然としたイメージ、例えばHonda="The Power of Dreams"とか雰囲気的なところに中心がある。

LVMHみたいな高級ブランドでなくても、ブランド商売の裏側を見るのは勉強になる。折しも某区立小学校の標準服がアルマーニに監修されたとかで問題になっている。この小学校が銀座というそれ自体がブランドみたいな場所にあるわけで、校長がバカで、制服もブランド品にしたかったのだろう。個人的には、銀座の路面店はアルマーニ以外にもっといい趣味の店もあるし、是非ユニクロに監修してもらうべきだった。このように、消費者もムダにブランドに振り回されているので、業界の裏側をこの本で知っておくのは自衛のためにも重要だ。特段衒学的なところもなく、気軽に読める本だ。就職活動にも会社のブランドが影響する、というのはこの本の中心的な主張の一つだが、特にブランド性の高い会社や広告業界に就職する学生は読む価値がありそうだ。

それはそれとして、この本を読んだ収穫の一つは、Superdryという世界的なブランドを知ったことだった。日本に触発されたデザインが売りとかで、商品にはJapanとか書いてあったりするが、実際には製造元は日本と全く関係がなく、というか、日本人はそんなブランドを知りもしないし、書いてある日本語はほとんどデタラメだし、謎の簡体字だったりするが、日本以外の全世界で売れているらしい。本書の説明では、ハーゲンダッツが北欧と何も関係がないように、Superdryも日本と何も関係がないが、ブランドというものは雰囲気なので、それで成立しているらしい。面白過ぎるし、高級ブランドには違いないし、物自体はしっかりしているから、早速発注した。

I am a native Japanese speaker and I have never heard of the brand "Superdry". Japanese letters on their products are pretty bizzare but they have strangely ironical appeal to me. Their strange Japanese letterings might irritate some Japanese people, but I find that very amusing.

Oxford Univ Pr (2017/8/1)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0198749912

2018年2月8日木曜日

Charles Forsman,‎ Max de Radiguès "Hobo Mom" [流浪の母]

フランスのマンガ、いわゆるBDの中でも薄いので、気軽に手に取って読んでしまった。内容はというと、マンガ本体にはあまり説明がなく、最初に書いてあるhoboの説明を読まないと分からない。要するに、放浪癖があって適当にブラブラしながら働いている人が結構世の中にはいて、この主人公はたまたまママで、昔の男と子供のところに戻ってきてまた去っていくというだけのことらしい。何か起こるのかと思って読んでいたが、ただそれだけのことで、細かい事情も分からないが、何となく詩情を感じてくれということのようだ。カリフォルニアとか言っているので舞台はアメリカなんだろう。フランス人の考えるアメリカの風情なのか。わたしはというと、この方面の繊細さが欠けているので、何コマかのエロシーンが記憶に残った。放浪するママも性欲は普通にあるらしい。絵はシンプルで良い。BDにありがちな描き込み過ぎて読むのがしんどいのとは真逆で、日本のマンガに近い。フランス語も易しい。

Très sympa. Simple.

L'employé du Moi (16 septembre 2015)
Langue : Français
ISBN-13: 978-2390040101

2018年2月6日火曜日

James Young "A Technique for Producing Ideas" [アイデアを生み出す為の技法]

「アイデアのつくり方」という訳書も出ている。非常に短いので一瞬で読めるし、ここで解説する意味もないくらいだ。古い本で、広告業界では古典なんだろう。何でも知って置けとか京大カード的な道具を使えとか、思考の整理術的なことが書いてある。その類の本を読んだことのある人にとっては目新しいことはない。というか、この本がその類の本の原典らしい。わたしとしては、自分が創造的な人間だとも思っていないし、アイデアマンを職人の上位に置く思想に対して共感もしていない。カードで整理みたいなことは、今ならマインドマップみたいなことだと思うけど、まあ、何でも描いてみることはいいことだ。そういうことならDraw to Winはとても良い本だった。

A classic. Very short and easy to read.

Stellar Editions (2016/3/4)
言語: 英語
ISBN-13: 978-1987817461

2018年2月4日日曜日

Pénélope Bagieu "Ma vie est tout à fait fascinante" [わたしの生活は全く素晴らしい]

30代独身女性の日常一コママンガ集。まあ他愛もない話だけど、30代独身女性の共感を得るのかもしれない。別にフランスも日本も変わらんと思う。翻訳したら売れるかも知れない。多分、フランス語原文とのバイリンガルで出版すれば、フランス語の学習者層に浸透すると思われる。こんなの、別に日本の漫画家でも描けそうなものだが、どうもお洒落である。なんでもそうだけど、日本人が同じことを描くと、もっと強いオチを要求されそうだ。

Très amusant.

Livre de Poche (2009/1/11)
言語: フランス語
ISBN-13: 978-2253131557

2018年1月18日木曜日

Jill Norman "Herbs & Spices: The Cook's Reference" [ハーブとスパイス:クックのための手引き]

ハーブとスパイスの事典。料理例もあり。二年くらい前に買って、時々読んでいる。わたしは、料理は時々するくらいだが、薬味というものがかなり好きで、やたら色々使っている。本なんか読んでも味も香りもないし、素人には本格的過ぎるかもしれないが、何か見ているだけで楽しい。翻訳されているのかもしれないが、まあ、日本語でも類書は多いだろう。

For spice lovers.

出版社: DK(2015/5/5)
言語: 英語
ISBN-13: 978-1465435989

2018年1月11日木曜日

Liz Climo "The Little World of Liz Climo 2018 Day-to-Day Calendar" [リズ・クリモの小さな世界2018年日めくりカレンダー]

日めくりマンガカレンダー。The Little World of Liz Climoでも書いたように、マンガ自体は"Liz Climo"でGoogleを検索すればいくらでも画像が出てくる。わたしとしては、職場では毎年Dilbertのカレンダーを使っているのだけど、Win Bigly"で作者にうんざりしたこともあり、別の物を探していた。職場にはDilbertを置いてあるので、これは自宅用とする。アメリカ東海岸から直輸入したので入手に時間がかかったが、待った甲斐があった。

This calendar will be placed at home.

Andrews McMeel Publishing (2017/8/15)
言語: 英語
ISBN-13: 978-1449486525

2018年1月10日水曜日

Alan Taylor "Colonial America: A Very Short Introduction" [植民地時代のアメリカ:非常に短い入門]

目次:1.遭遇 2.新しいスペイン 3.新しいフランス 4.チェサピークの植民地 5.新しいイングランド 6.西インドとカロライナ 7.英領アメリカ 8.帝国

いつも通りタイトルが分かりにくいが、ここで言うアメリカとは大体今のアメリカ合衆国の領土を指し、時代としては主にコロンブス以降で、一応ハワイの併合までということになる。独立戦争自体の詳細は省かれており、名著The American Revolutionを読む事になる。通読できる歴史書として読みやすいし、予備知識も必要が無い。ただ、やはり、たいていの人はアメリカの地図があったほうがいいだろう。

Easy Spanish Readerで分かっている通り、メキシコの歴史も血塗られているが、北米も凄惨で、新しい要素として、アフリカからの奴隷の輸入が加わり、帝国同士の植民地の奪い合いがある。わたしとしては、今まで、アメリカの都市名にスペイン語が目立つ地域(西海岸とフロリダ)とフランス語の目立つ地域(中部)があることは認識していて、何となく合衆国拡大の歴史は認識していたが、この本で一気に整理されたのは良かった。

大雑把にいうと、スペインが中南米とかカリブやフロリダの砂糖地域を占拠し、次にフランスが毛皮交易のできるカナダからミシシッピを下って中部を奪って原住民に武器を供給し、空いていた中間の温暖なところにイギリスが入ってきたという流れになる。この間、始終各地の原住民との交流があり、その点が詳しく書かれているのが多分、類書と異なる点だろう。一々血塗られているが、事実だから仕方がない。

VSIの世界史カテゴリは外れがほとんどないが、これも良い読み物だった。これからもどんどん読んでいく。

A brief bloody history of colonial north America. Very readable.

Oxford Univ Pr (2012/11/8)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0199766239

2018年1月3日水曜日

Liz Climo "The Little World of Liz Climo" [リズ・クリモの小さな世界]

動物を主人公にした一コマか二コマくらいのほのぼのマンガ。実物はLiz Climoでgoogleで画像を検索すればいくらでも出てくる。本人が異常に美人なのも気になるが。知らなかったけど翻訳も出ているようだ。ほぼ中学レベルの英語と思われ、誤訳の余地もないだろう。こういうのは好き好きなので、とにかくググってもらうのが一番だ。多分、大学生男子が読んで面白いものではないと思うが、子供が読んでも今一つ分からないような気もする。作者と同じ母親に一番ハマると思うが、わたしもかなり好きだ。久しぶりに良い英語マンガを見つけた。こういうのを描ける人は羨ましい。

Cute.

Running Press (2014/9/30)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0762452385