Why Nations Fail (Amazon.co.jp)
国家はなぜ衰退するのか(上)(Amazon.co.jp)
国家はなぜ衰退するのか(下)(Amazon.co.jp)
原著2012年刊の時点で注目していた本だが、気になりながらずっと放置しているうちに2024年ノーベル経済学賞受賞ということで、読むしかなくなった。
ずっと放置していた最大の理由は書名が大風呂敷過ぎるように感じたからだが、実は書名の質問に対する答えは比較的単純なものだ。わたしがまとめると、要するに1私有財産権が守られないほどの無政府状態になるか2ごく一部の政治エリート層が富を独占して残りの国民から搾取するから。このどちらでも、技術革新が起こらないので国家が衰退する。
1の状態は論外として、2の状態では、例えば貴族と奴隷みたいな社会だと、好き放題収奪される奴隷の側では技術革新を起こす理由がないし、外国から新技術を取り入れる理由もない。エリート層は自分たちの地位を守るために技術革新を阻止する。さらに2の状態ではクーデターの魅力が大きい。その結果、革命は起こるが、単に支配者が入れ替わるだけで少数が多数を抑圧搾取する構造は何も変わらない。
実例が大量に挙げられ、ほとんど世界史のおさらいみたいになる。本書が分厚く見えるのはそのせいで、書いている理論が難しいからではない。例えば韓国と北朝鮮のとんでもない格差の原因は、北朝鮮では一部エリートが政治権力を独占していて私有財産権が認められていないからだとか。面白いけど、高校生程度の世界史の知識は必要かもしれない。
などと言っているうちに、つい先日、韓国の大統領が突然夜中に非常戒厳を発令していて何のこっちゃみたいな話になっている。そもそも軍隊も警察も真剣に従わない。しかし、同じ話が中南米とかアフリカとかで発生しても、そんなに驚かない。この違いは民度がどうとかいう話ではなく…という話はこの本を読んだ人と語る話だ。最近ダボス会議でのアルゼンチンの大統領の演説もだいたいこの本の路線に乗ったものだっただろうか。
面白くてわりと一気に読んだ本だった。あまり大風呂敷系のタイトルは読まないけど、この著者については読んでいってもいいかもしれない。
Crown Currency (2013/9/17)
言語 : 英語
ISBN-13 : 978-0307719225