目次:1.いくつの物があるか? 2.存在しない物をどのようにわたしたちは語れるか? 3.あなたはわたしの言っている意味が分かるか? 4.わたしたちが言ったり考えたりできることに限界はあるか? 5.どのようにわたしたちはもっと明晰に考えられるか? 6.それで分析哲学とは何か?
分析哲学の導入書。各章ごとに問題を出して考えながら、正典的な哲学者を紹介し、最後に分析哲学全体の歴史・外観を提示する。薄い本だが、良くできていると思う。これから哲学をやろうというムキには安心してお勧めできるところだ。念のために確認しておくが、哲学の世界は大陸哲学と分析哲学に二分されており(この二分法自体、本書で批判されているが)、この本は分析哲学のほうを紹介している。
わたしとしては散々やったことなので、今更入門書でもないが、時折こういうのを見たくなるというのは、微細な議論にうんざりしているからで、哲学なんて、やればやるほど微細な所に入っていく。少し気が利いた人間なら早晩哲学の限界に絶望するはずだと思うが、哲学は無限に絶望を先送りできるのも事実だ。そして、この本の著者の主張に反し、少なくとも日本では、哲学者というのは哲学の文献学者のことで、本気で哲学をしている人は少ないし、学生の分際でそんなことをしようものなら、まず先人の業績を学べと正論で潰されることになっている。一体、車輪の再発明はそれほど無価値なのだろうか…。
それはそれとして、この本に限ったことではないが、分析哲学の用語はかなり情報科学に流用されていて、その件について語る哲学者を見かけない。どこかにいるだろうから探し出したいと思っている。もう一つ、少し前にビジネス書で流行った"critical thinking"というのは、分析哲学由来らしい。少し気になるところだ。
A neat introduction to analytic philosophy.
Oxford Univ Pr (2018/1/23)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0198778028
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