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2024年12月25日水曜日

Imari Walker-Franklin, Jenna Jambeck "Plastics" [プラスチック]

 Plastics (Amazon.co.jp)

目次:1. 導入 2. プラスチック製造と利用 3. 廃プラスチックを管理する 4. プラスチックゴミの発見 5. プラスチックに関連する化学物質 6. プラスチックの環境への影響 7. プラスチックの社会への影響 8. プラスチック政策 9. プラスチックの代替と介入

プラスチックの環境問題に関する解説書。高分子化学や石油化学工業の解説書ではない。ただし予備知識として、プラスチックの何が問題なのかを論じている部分を理解するためには、日本の高校程度の化学の知識が必要かと思われる。解決策について論じている部分については、そのような知識はあまり必要ではない。著者たちはこの問題が化学で直接解決できるとは信じていないようで、その方面に深入りしていない。

というのも、現状ではエベレストの頂上だろうとマリアナ海溝の底だろうと農産物だろうと人体の中だろうと、この惑星は既にプラスチックに汚染されきっており、仮にプラスチックが今すぐ全部生産停止になっても、今後数十万年は被害は出続ける。海岸や川で多少ゴミ拾いをしたところで、生産量が圧倒的過ぎて焼け石に水。ゴミを捨てるなとかいう道徳的キャンペーンで解決する社会問題なんか存在しない。どんなに気を付けてもプラスチックは環境に流れ出る。これらの手段が無意味というわけではないが、根本的に生産を規制する以外にないというのが著者たちの立場のようだ。ちなみにプラスチックの大半を消費しているのは包装であり、ここが主要なターゲットになるだろう。

しかし、この本の著者たちは知らなかったことだが、これから第二次トランプ政権が始まるというようなことで、状況は悪化している。著者たちはgreenwashを非難しているが、世界はwoke mind cultureにうんざりしている。環境問題に右翼も左翼もないはずだが、現実にはそんなことになっていない。

個人的に思い返すと、公害防止管理者試験で、騒音振動・大気一種・水質一種に合格したが、廃プラスチックとかいう話は記憶にない。そのうちプラスチック一種とかできるかもしれないが、結局、この本でも問題にしているように、プラスチック公害は基本的に消費者の責任にされていて、生産者は責任を逃れ続けている。

そんなことで色々考えさせる本だったが、この本は入口としてはいいけど、個人的にはもう少し化学工業について勉強していこうと思っている。

The MIT Press (2023/8/22)
言語 ‏ : ‎ 英語
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-0262547017

2024年12月5日木曜日

Daron Acemoglu, James A. Robinson "Why Nations Fail: The Origins of Power, Prosperity, and Poverty" [国家はなぜ衰退するのか:権力と繁栄と貧困の起源]

Why Nations Fail (Amazon.co.jp)
国家はなぜ衰退するのか(上)(Amazon.co.jp)
国家はなぜ衰退するのか(下)(Amazon.co.jp)

原著2012年刊の時点で注目していた本だが、気になりながらずっと放置しているうちに2024年ノーベル経済学賞受賞ということで、読むしかなくなった。

ずっと放置していた最大の理由は書名が大風呂敷過ぎるように感じたからだが、実は書名の質問に対する答えは比較的単純なものだ。わたしがまとめると、要するに1私有財産権が守られないほどの無政府状態になるか2ごく一部の政治エリート層が富を独占して残りの国民から搾取するから。このどちらでも、技術革新が起こらないので国家が衰退する。

1の状態は論外として、2の状態では、例えば貴族と奴隷みたいな社会だと、好き放題収奪される奴隷の側では技術革新を起こす理由がないし、外国から新技術を取り入れる理由もない。エリート層は自分たちの地位を守るために技術革新を阻止する。さらに2の状態ではクーデターの魅力が大きい。その結果、革命は起こるが、単に支配者が入れ替わるだけで少数が多数を抑圧搾取する構造は何も変わらない。

実例が大量に挙げられ、ほとんど世界史のおさらいみたいになる。本書が分厚く見えるのはそのせいで、書いている理論が難しいからではない。例えば韓国と北朝鮮のとんでもない格差の原因は、北朝鮮では一部エリートが政治権力を独占していて私有財産権が認められていないからだとか。面白いけど、高校生程度の世界史の知識は必要かもしれない。

などと言っているうちに、つい先日、韓国の大統領が突然夜中に非常戒厳を発令していて何のこっちゃみたいな話になっている。そもそも軍隊も警察も真剣に従わない。しかし、同じ話が中南米とかアフリカとかで発生しても、そんなに驚かない。この違いは民度がどうとかいう話ではなく…という話はこの本を読んだ人と語る話だ。最近ダボス会議でのアルゼンチンの大統領の演説もだいたいこの本の路線に乗ったものだっただろうか。

面白くてわりと一気に読んだ本だった。あまり大風呂敷系のタイトルは読まないけど、この著者については読んでいってもいいかもしれない。

Crown Currency (2013/9/17)
言語 ‏ : ‎ 英語
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-0307719225

2024年3月13日水曜日

Oliver P. Richmond "Peace: A Very Short Introduction" [平和:非常に短い入門]

Peace (Amazon.co.jp)

目次: 1. 平和の複数の次元 2. 平和を定義する 3. 歴史の中の勝者の平和 4. 歴史の中の平和:啓蒙時代へ 5. 現代の平和:立憲的平和 6. 次の段階:制度的平和 7. 革新的な段階:市民的平和と社会運動 8. 国際平和機関の発展 9. 平和維持・平和構築・国家構築 10. 平和・平和形成・対抗平和の混合形式

この本の言う「平和」とは主に政治的な意味で、国家間や武装勢力間の戦争・紛争がない状態を指す。日本国憲法的な意味での平和だ。ということで本書の半分くらいは世界史の復習みたいなことで、残りは現代の平和構築の色々な例という感じ。単なる哲学的思索というよりはリアルだが、現場というほどリアルではない。大学の授業とか国会の前で平和デモをしている団体くらいのリアルというか…。こんな感想になるのは、一つには戦争が起こる理由の説明がなさすぎるからだと思われる。おかげで話は難しくなく、読みやすい本ではあった。

Peaceful reading. Provides you with a necessary vocabulary.

Oxford Univ Pr (2023/6/28)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0192857026

2024年1月18日木曜日

Abigail Shrier "Irreversible Damage: The Transgender Craze Seducing Our Daughters" [回復できない損害:わたしたちの娘たちを誘惑するトランスジェンダーの流行]

少し前にKADOKAWAが翻訳書を出版しようとしていたが、どっかの団体の抗議を受けて出版中止になったという本。内容は要するに十代の女の子が希望したからと言って、簡単に男性ホルモン投与だの乳房切除手術するな/勧めるなということだ。

別に万民が読むべきとも思わないが、この本を翻訳出版すべき/するなとか騒いでいる人々の99.99%は実際にこの本を読んでいないだろう。翻訳出版してもこの状況がそんなに変わる気もしない。英語圏でもそんな感じらしいし。この記事にたどり着いた人のほとんども読んでいないし読みもしないだろう。わたしは一応読み終えはしたが、内容的にもそんなに面白いわけではない。ここで内容を詳しく説明して読んだ気になられても詰まらない。

ただ、印象として、書きぶりが戦闘的過ぎてその時点で引いてしまうところがある。考え方が一々保守的なのは間違いない。わたしは常に自由の側に立つ傾向があるので、外科手術なんかして仮に後で後悔しても本人の勝手では…などと思うが、まあそれはそれで極論なんだろう。入れ墨なんかより深刻な健康問題があるようだ。しかし、親の権利がどうとか、子供をSNSから引き剝がせとか、それもなあという。自由の側に立つ傾向のあるわたしとしては、翻訳出版中止もおかしいだろと思わなくもないが、現場ではそんなことを言っている場合ではないのかもしれない。

Regnery Publishing (2020/6/30)
言語: 英語
ISBN-13: ‎ 978-1684510313

Irereversible Damage (Amazon)

2023年8月2日水曜日

Richard Bellamy "Citizenship: A Very Short Introduction" [市民性:非常に短い入門]

目次:1.市民性とは何でなぜそれが問題なのか 2.市民性の理論と歴史 3.成員資格と所属 4.権利と「権利を持つ権利」 5.参加と民主主義

まずタイトルcitizenshipは「市民権」と訳すと狭すぎるということで、権利の他にも共同体への参加や所属意識的なことも含むということで適当な訳語がない。そもそもcitizenを市民と訳したのが、明治時代の人にしては下手だったのではないかとか思う。「公民性」のほうがマシかもしれない。諦めて「シチズンシップ」で済ませるのも多いようだ。

と言うと規範的なお説教のようなニュアンスが生じるが、この本はそういうことではない。もちろん著者の「かくあるべし」というのはあるが、現実の問題を考えると簡単な話は少ない。著者の書き方が晦渋すぎるという評判もあるが、物事を丁寧に考えるとこうなるしかない気もする。ということで、「こういうことです」とこの本を簡単に紹介できないというような…。

例えば、3章成員資格のところは、ムチャクチャ大雑把に言うと「どういう人間に参政権を認めるか」というようなことで、昔からいろんな基準があった。古代ギリシアであれば「いざという時に国のために戦って死ねるか」、つまり徴兵に応えられるかが基準になっていた。国家総動員となった第一次世界大戦に女性参政権が一気に拡大したのもその伝統の上云々。他にも国内に土地や財産を持っているかとか、その国の言語や文化に通じているかとか、居住歴とか色々。いつでも国外に逃げればいいやと思っている奴に投票権なんか与えたくない気持ちも分かるし。

4章の「そもそも誰でも持っている人権」と「その共同体に所属している人間だけが持っている権利」の関係も面白いところだが、考えれば考えるほど単純に折り合いの付く話ではない。実務的には一件一件考えていくしかないんだろうけど。色々面倒くさい話だが、これを考え抜ける人でないと政治には向いていないのかなあとも思う。

Summarizing is challenging due to the profound nature of the author's thoughts. Challenging to read, but worth the effort.

Oxford Univ Pr (2008/11/30)
言語:英語
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-0192802538

2023年5月23日火曜日

Klaus Dodds, Jamie Woodward "The Arctic: A Very Short Introduction" [北極:非常に短い入門]

目次:1.北極の世界 2.物理環境 3.北極の生態系 4.北極の人々 5.探検と開発 6.北極の統治 7.北極の炭素貯蔵 8.北極の未来

目次から明らかなように、北極に関するほぼ全学問分野からの概説。高校の科目で言えば地理でも生物でも地学でも世界史でも政治経済でも、ここまで北極に詳しいことは求められないだろう。

人によって興味のあるところは違うとは思うが、わたしとしては、地球温暖化についての北極圏の役割は想像を超えていた。北極圏には前の氷河期以前に生物蓄積れた大量の炭素が保存されており、現在永久凍土がどんどん溶けて、大量の二酸化炭素とメタンが放出中と。地政学も面白いところだ。温暖化がどんどん進んでおそらく今世紀中に少なくとも夏場は北極海が航行可能になると例えば英国と日本が近くなる。スバールバルでは今もロシアが戦略上の都合から無意味に石炭を掘っているとか。グリーンランドがそのうち独立すると、資源を求めて中国資本などがどんどん入ってくるだろう。とにかく、今どんどん永久凍土が沼地化していると同時に、資源開発も進んでいる。

…というようなことはこの本では後半だが、こういう話を正しく理解するには、この本を全部読む必要がある。結局、物理環境とか生態系とか先住民の権利とか、全部絡み合っている。VSIではThe Antarctic南極(Klaus Dodds著)も面白かったが、現在の温暖化の進行状況を考えるとこっちのほうが必読かもしれない。

Authoritative apoaches to the arctic zones from all areas of scholarship.

Oxford Univ Pr (2022/2/1)
言語 : 英語
ISBN-13: 978-0198819288

2023年4月12日水曜日

Serge Latouche "La Décroissance" [脱成長]

読むのに時間がかかったし、結論から言うと良い本と言えるかどうか微妙だが、考えることの多い本ではある。その間に日本語訳が出版されて、タイトルにも「脱成長」という非常に適切な訳が当てられた。

多分誰でも思うことだが、経済学を学び始めてすぐに「経済成長を続けなければ資本主義経済は維持できない」と教えられ、「いや地球は有限でいずれ限界が来るし現に人口は既に減り始めているし」と違和感を持つが、「人口が減っても生産性が上がれば問題ない」とか「持続可能な開発」とか意味不明な文言で言いくるめられてしまう。日本で言えば長年経済成長せずに特に生活水準が落ちている気もしないし、歴史的に見ても経済成長しないほとんどの時代でも普通に人間は存続してきた…。生活が良くなることの一つの指標として経済成長があり、別に経済成長しなくても生活が良くなればいいように思うが、今の風潮ではなんでもいいから経済成長が必要なことになっていて、何なら経済に貢献しない「生産性のない人間」は存在自体が悪みたいな…。そもそもサステナブルな社会のためにはどっちかというと成長しないほうがいいのでは…。

この一連の疑問は現代の価値観の中心部を直撃している。さしあたり地球温暖化ということでやむを得ず成長に制限が掛けられ始めたが、それでもグリーンニューディールで経済が成長すればいいとかそんなことになっており、ここで実質的な富の拡大と、金銭価値に換算した数値の成長が微妙に混同されている。それが本書でも言及されているような「自然環境の減価償却を計上せよ」みたいなことで全部解決するのか不明だが。

ということを日頃思っていて"Que sais-je"でこのタイトルに出会ったので即買いしたが、とにかく読みにくい。フランス語が難しいわけでなく、一つには衒学が過ぎるのと、一つには感情が多すぎる。多分、著者はものすごく論争を経験してきているのだろう。こういう話はすぐに「じゃあ石器時代に戻れというのか」とか「GAFAが悪い」というバカみたいな話が出てくるし、著者がその類の話から完全に自由だとも思わない。アングロサクソンの価値観はとか言う文句が典型的だが、わりと最初のほうで熱力学の第二法則とか言い出した時点でうんざりする。

しかし、これが脱成長の第一の論客ということでもあるので、読んで損のないところではある。著者の論理の根源は、成長がどうこうというより、生産力至上主義に対する批判だと思われる。従って人口が減ればいいという考えではない。これは資本主義でもマルクス主義でも関係がない。その意味では怠ける権利の正統後継者なのかもしれない。それに付随する諸概念は人によって賛否があるだろう。やたら連帯solidaritéを強調するのはフランスの伝統だから仕方がない。生態系的制約は誰も多分異論はないが、原発がどうとか個別の話はまた別かもしれない。グローバリゼーションを敵視するのはどうかとか、格差問題とリンクさせるとか他にもいろいろある。特に脱成長で失業問題が解決するとか言われても、フランスと日本では状況が違い過ぎる。こっちでは労働力不足が問題で。

ちと論点が多すぎてまとめきれない。結局、脱成長という概念自体は、「そんなに成長成長言わなくても」くらいのことなので、色々個別の政策として考えるというよりは、もっと根本的な社会全体の価値観の変化を促すものだと思う。フランス人みたく徹底的な労働嫌いになるのが幸せかどうか疑問だが…。

Depuis longtemps, on dit que la croissance est nécessaire pour maintenir l'économie. On se demande souvent si une croissance permanente est possible. Évidemment, ce n'est pas possible. C'est le début.

Éditeur ‏ : ‎ QUE SAIS JE; 2e édition (9 février 2022)
Langue ‏ : ‎ Français
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-2715409606

2023年1月26日木曜日

Paul Lafargue "Le Droit À La Paresse: Réfutation Du Droit Au Travail De 1848" [怠ける権利:1848年労働法への反駁]

有名な古典で、多分Bertrand Russell "In Praise of Idleness" [無為を讃えて]の直接の元ネタだろう。別に入り組んだ内容ではない。Russellと共通する中心的な認識は、機械化の進展で必要な労働量が減っているにも拘わらず労働はどんどん厳しくなり、そのわりに失業は増え、労働者による過剰生産と資本家の過剰消費が発生しているということだ。この事態を批判するはずの社会主義勢力も労働を神聖なものと持ち上げたり、あまつさえ労働の権利などと言い始める始末で、狂っていることに変わりはない。重要なのは労働権le droit au travailなどという狂気の概念ではなく、怠惰の権利le droit à la paresseである云々。わたしとしては御尤もな説だと思う。

LafargueまたはRussellの時代と現代日本の差はどれくらいあるだろうか。と考えた時に過剰生産vs過剰消費と過剰労働vs失業の対立が主な議題にはなると思うが、それはそれとして、個人的には「労働が美徳か悪徳か」というのはかなり大きな論点だ。または、どんな労働でもやらないといけないのなら楽しくやったほうが精神衛生に良いとしても、「働かないと暇すぎて苦痛」などというのは人として堕落しているような気もする。一般論としてプロテスタントは労働を神聖視するがカトリックはそうでもないとか、資本主義経済の下での労働が酷いとしても共産国の労働よりマシだろうとか、とにかく、この本を出発点に色んなことを無限に語れ過ぎて、今ここに書く気にならない。日本語訳もあるので読書サークル的なもので選定すれば、無限に議論が続くのは確実だ。

On peut avoir des discussions sans fin basées sur ce livre.

Legare Street Press (2022/10/27)
言語: フランス語
ISBN-13: 978-1016892148

2021年11月8日月曜日

David Garland "The Welfare State: A Very Short Introduction" [福祉国家:非常に短い入門]

目次:1.福祉国家とは何か 2.福祉国家以前 3.福祉国家の誕生 4.福祉国家1.0 5.変種 6.問題 7.新自由主義とWS2.0 8.ポスト産業社会への転換:WS3.0へ 9.不可欠の福祉国家

救貧法がどうとかいうところからの福祉国家の変遷。もちろん最新流行は新自由主義叩きで本書もそのあたりは踏まえてはいるが、現実の財政を無視するような話でもなく、あくまで現実的に考えているところは好感が持てる…いや好感とかそういう問題でもないような気がするが、この辺りは思想の問題なのでなんとも言えない。個人的に現在バカみたいな保守主義小説を読んでいるところだったので実に心が安らぐ。具体的な制度よりは福祉国家への考え方がメインだが、思想というほど抽象的な話でもない。実際の福祉の経済効果などの数値も欲しいところだが、とにかく自由経済を維持しつつ福祉もその不可欠の一部としてやっていくしかないわけで…。というような福祉国家の基礎知識としては必読書だろう。

An indispensable reading about the welfare state.

Oxford Univ Pr (2016/6/1)
言語:英語
ISBN-13:978-0199672660

2021年11月5日金曜日

Michael Freeden "Liberalism: A Very Short Introduction" [リベラリズム:非常に短い入門]

目次:1.多くの住居を持つ家 2.リベラルの物語 3.リベラリズムの層 4.リベラリズムの形態学 5.リベラルの有名人 6.哲学的リベラリズム-正義の理想化 6.盗用・中傷・退廃

政治思想に関する本は大抵書きぶりが面倒くさく、この本も例外ではないとは言えるが、かなりマシなほうかと思う。現実の現行の政治と関係し過ぎるせいもあるけど、本質的に入り組んでいるのだろう。自由主義と資本主義がどう関係するのかとか、自由主義と民主主義に必然的な関係があるのかとか、ちょっと考えただけで面倒くさい。こういう概念の整理に価値がないと言い切ってしまいたくもなるが、整理できないまでも考えたほうがいいのだろう。著者の信念が強く反映されるのは止むをえないが、それでも常識的とされている話からそんなにずれている気もしない。この類の話の整理の仕方として一番良いのは歴史的事件と思想の発展史の対応を理解することで、というか、それ以外の方法があるような気もせず、この本もその方向でしっかり書かれている。例えばchapter3は圧政からの自由→自由な経済活動→自己表現→社会調和→多様性みたいな整理で、この時点で随分分かりやすいような気もする。現代に近いところほど著者の個人的見解が強く感じられ、例えばいわゆるネオリベラリズムは仲間にすら入れてもらえないような感じだが、それでもリベラリズムを名乗るのは価値のあることなんだろう。名乗るのならこの本みたいな入門書くらい読んでおくべきなのかもしれない。

Relatively easy to comprehend, among many books on this topic.

Oxford Univ Pr (2015/8/1)
言語 ‏ : ‎ 英語
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-0199670437

2021年7月30日金曜日

Marcel Pochard "Les 100 mots de la fonction publique" [公務の100語]

書名からは分かりにくいが、要するにフランスの公務員制度に関する概説だ。労働者の権利とかキャリアプランとか、かなり良くできていて実用的な本だと思うけど、普通の人にアピールするような本でもないし、わたしも業務の絡みがなければ手にも取らないところだったと思う。こんなのがQue sais-je?に入る前提として、そもそもフランスが公務員の多い国だということがある。統計の取り方にもよるが、フランス人が良く言っていたのは労働者の三割程度が公務員、どんな統計でも少なくとも20%は越えている。というわけで、こんな本も売れるわけだ。どこの国もそうだが、公務員は比較的教育水準が高いので、本も読むんだろう。

逆に日本の公務員の数が極端に少ない国で、しかもさらに減らせと言っているようなことだが、本当はこういう本でも読んで外国の例を参考にすればいい。別に公務員に限らずフランスは労働者の権利が日本なんかより遥かに守られており、労働時間も短く、もちろんストライキなども多いが、別にフランス人の生産性が日本人より低いわけでもないし、何より出生率が全然高い。この本を翻訳しても冊数的には売れないかもしれないが、間違いなく社会貢献にはなると思う。

Trés utile pour le pays où il y a peu de fonctionnaires comme le Japon....

QUE SAIS JE (20 janvier 2021)
Langue:Français
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-2715405554

2020年6月7日日曜日

Sally Davies "The Drugs Don't Work: A Global Threat" [薬が効かない: 世界的危機]

目次:1.人と微生物と微生物叢 2.感染症の興亡 3.再び薬が効くようにすること

自粛期間中に本屋で平積みになっているのを見かけて読んでみただけで、内容としては「抗生剤の使い過ぎ/不適切な使用のために耐性菌が増えている」「危機を回避するために国際的な取り組みが必要」の二点にほぼ尽きている。だいたいその通りですねみたいなことだけど、特に「新しい抗生剤の開発のために資金を」という点について少し引っかかる…というのも、このブログで紹介しているような本、特にVSIなんか読んでいると、もはや地球上に存在し得るたいていの化学物質はテスト済みで、単純にはもうこれ以上抗生剤の候補がないというように聞いているが…。もっとも単純に化学ではなく、ナノテクだのdeliveryの技術とかでまだまだ道はあるのかもしれないが…。少し古い本が平積みになっていたのはもちろんCOVID-19に便乗ということだと思うが、この本の主たる対象である微生物とウイルスは少し話が違うと思われる。

This books is about antimicrobes, not anitvirus.

Viking (2014/1/28)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0241969199

2019年2月7日木曜日

Maryvonne Pellay, Jean-Louis Chaussade "Les 100 mots de l'eau" [水の100語]

目次:1.物理学・化学・生物学 2.水資源 3.水の用途 4.水質 5.地政学と管理 6.水の値段 7.歴史と文化の観点

水に関するよもやまというか取り留めもない話。100 motsの通例で、豆知識リストと思っていいだろう。たとえば近頃は日本でも水道民営化が議題になっているが、そういう個別方面については、この本の知識では浅すぎるとはいえる。水道事業に関しては確かにフランスは先進国だが。水配達業も増えていることだし、水に興味のある人は多いのだろうけど、そういう人がこういう本を読むのかというと疑わしい。水に本当に興味があったら、水配達なんて頼むはずがないと思われ、しかし、今後、世界的に水資源の枯渇が問題になるのは見えている。幸いにして日本は水資源大国だが、ムダに水を輸入している国でもある。今のうちに準備しておいても良いとは思う。

Un bon livre à lire.

PRESSES UNIVERSITAIRES DE FRANCE (25 août 2012)
Langue : Français
ISBN-13: 978-2130595571

2019年1月31日木曜日

Pascal Gauchon, Jean-Marc Huissoud "Les 100 mots de la géopolitique" [地政学の100語]

地政学という概念自体は最近どんどん流行ってきている気はするし、フランス語とかで新聞を読む場合には、この本に書いてあることくらいは知っておいたほうが良い。まあ、わたし自身にとっては、それほど新しく学んだことがないが、フランス語の勉強という意味。この「100語」という体裁は、BOBO本では最高の効果を挙げたが、こういう風な感じで時事用語みたいなのを解説するのでも良いのかもしれない。

Ce n'était pas mal.

Presses Universitaires de France: 4e édition (10 mai 2017)
Langue : Français
ISBN-13: 978-2130792796

2018年11月16日金曜日

Thomas Legrand, Laure Watrin "Les 100 mots des bobos" [ボボの100語]

これはクセジュの中でも稀に見る面白い本だった。boboとはブルジョワ・ボヘミアンの略で、簡単に言うと意識高い系とLOHASとサブカルクソ女が融合して生まれた最強種族のようなものと思えばほぼ間違いない。経済的に余裕はあるが政治的には左翼で、移民や同性婚に寛容で、フェミニストで、国際人で、子供には外国語を学ばせ、ヨガをし、隠れ家的レストランに通い、エコで、トートバッグを持ち歩き、菜食志向で、無農薬野菜を愛し、美術館が好きで、良く分からない前衛的なアートを支持し、仕事とプライベートの区別が薄く、ノマドで、スタバにマックブックを持ち込み、移動は自転車で、海外旅行に行くと観光客向けのところより地元民の通うような居酒屋などを好み、いやもう、あとはみなさんが勝手に想像でリストを続けられると思うが、それもほとんど間違えないと思う。一つ日本と違うとすれば、社会参画志向が日本より遥かに強くて、地域社会や学校などを積極的に改変していく点か。

この本で取り上げられる100語も全部紹介したいくらいだが、もう上記に出たのもあるし、グローカリゼーションとかカウンターカルチャーとか共同農園とかラテマキアートとか、基本的には全部半笑いで読み続けるしかない。実際、フランスでもboboは嘲笑の対象なのだが、現実に政治的には一つの勢力で無視できず、日本で言えば、立憲民主党の支持者のような感じなのだろう。右派が左派を非難する時にboboという言葉が頻出するようなことで、自分がboboであると認める人はいないが、しかし、実際はboboだらけという図である。思い返すと、少なくともわたしが知るフランス人は一人残らずboboだ。

もちろん、あまりに戯画的過ぎて、ただの筆者たちの妄想なのではという疑いもあるが、あまりにリアルで、フランスでは随分研究も重ねられているらしいし、一応公式っぽい定義として「経済資本より文化資本の最大化を目指す人たち」みたいな線で考えられているらしい。とにかく、左派政治家にとっては現実の問題であり、笑っている場合ではない。右派がポピュリズム政党として確立しつつある以上、左派は今までみたいな労働組合基盤というよりboboを基盤にするしかないのかもしれない。

個人的にはgentrificationという概念が面白かった。昔はドーナツ化現象とか言って、金持ちは郊外に住むことになっていた。それがその後逆転して、退廃した都心部に憧れたboboが逆流入してきて、地価が上がって貧乏人が追い出されるほか、行政も動かしてキレイな街になってしまい、下町とは名ばかりの高級住宅街やら囲い付きの住宅地ができてしまう。で、もともとの下町住民とタワーマンションの住人との関係が問題になるというような。

いずれ翻訳されるのかもしれないが、特に社会学とか人文地理学とか都市工学とかの学生には必読書として指定したい。その他、単に「意識高い系大全」みたいなノリの装丁で売っても売れるだろう。boboはライフスタイルであり、専門の雑誌がないのが不思議なくらいだ。こういう面白い本が日本の社会学から出てこないのは残念だが、せめて輸入してもらいたい。

Le meilleur dans la collection "Que sais-je?".

Presses Universitaires de France - PUF (5 septembre 2018)
Langue : Français
ISBN-13: 978-2130809128

2018年6月28日木曜日

Andrew F. Cooper "The Brics: A Very Short Introduction" [BRICS:非常に短い入門]

目次:1.BRICSを構想すること 2.議論の余地のある発明 3.歴史的な出発 4.一緒につるんでいるいること 5.新しい開発銀行の設立 6.社会ではなく国家の認知としてのBRICS 7.BRICSの留まる力

BRICSという概念はゴールドマン・サックスの発明らしいが、どうも今一つ盛り上がらない…というのも、この本でも説明されている通り、G8みたくlike-mindednessがあるわけでもく、互いに対立している部分もあり、本人たちが公式機関化を避けて目立たず行動する傾向があったりで、結局、投資信託の名称くらいでしか聞かないからである…。ただ、本書によると、それでも一応多少は集団として影響力を行使することがなくもないというのもあるらしい。国内においては大体が市民活動に対して弾圧的で、中国に至っては未だに一党独裁であり、G8の住人からすると懐疑的になるのはやむをえない。本書は各国の国内事情というより、国際舞台でのBRICSの振る舞いに注目している。G8みたいな共同謀議を行うような気もしないが、少なくとも今のところは一定の影響力はあるようだ。

A good introduction to the shadowy club.

Oxford Univ Pr (2016/7/1)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0198723394

2018年6月3日日曜日

Craig Jeffrey "Modern India: A Very Short Introduction" [現代インド:非常に短い入門]

目次:1.希望 2.植民地インド:貧困化 3.植民地インド:宗教とカースト分割 4.インドを動作させる?1947-1989 5.インド再考 6.社会革命 7.若者

インド人がこれを読んでどう思うのかどうか分からないが、差し当たり、ものすごくバランスの取れたインドの記述に思える。歴史・社会・経済・文化・政治について満遍なく記述されていて、流行りのボリウッドや一昔前のサイババも省略されていない。もし何らかの理由で就職試験などでインドのことを問われるのなら、まず、この本を読むべきなのだろう。この一冊でだいたいわかったような気にもなるし、読み物として完全に成立しているので退屈はしない。貧富の格差も酷く、昔からある「貧しいインド」のイメージも間違っていないようだし、植民地としての歴史も人口ピラミッドの構造も日本とかけ離れていてなかなか面白い。わたしとしては、インドは、昔新聞を読んでいたくらいの知識で行ったこともないし、特にインド人の知り合いもいないが、問題山積みながら、未来のある国という印象だ。

It seems to me a very well-rounded and very balanced book on India.

Oxford Univ Pr (2018/2/1)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0198769347

2017年12月21日木曜日

Scott Adams "Win Bigly: Persuasion in a World Where Facts Don't Matter" [大きく勝つ:事実が問題でない世界での説得]

目次:1.なぜ事実が過大評価されているのか 2.どのように現実をもっと有益な方法で見るか 3.どのようにトランプ大統領は他人にできない事をするか 4.どのようにビジネスと政治で説得を使うか 5.なぜ集団に属すると強くなり盲目になるのか

アメリカでは選挙が終わるたびに「こうなると分かっていたわたしの賢さについて」という本が出てくるが、これもその一冊。普通ならこんな本は読まないが、著者はわたしのデスクの上のマンガを描いているマンガ家で、たまたま目についたので読んでみた。主たるテーマはトランプの選挙運動の優秀性について。多分、日本では誰も読まないのでわたしがまとめると、この本は主に五つの要素から成り立っている。

初歩的な心理学の説明
認知不協和だの確証バイアスだの。本人は学位を持っていないが、訓練を受けた催眠術師だと言っている。日本で言えば苫米地博士相当と思って良いんだろう。初歩的だが、言っていることは間違ってはいない。
自慢
トランプの勝利を予測したほか、自分には財産があるだのビジネスで成功しているだのフォロワーが多いだのマスコミのインタビューを受けただの。こういうのを並べると説得力が増すと思っているんだろう。このあたりも苫米地博士みたいだ。
トランプとクリントンの選挙運動の分析
自分も説得のプロなのでわかるがトランプはスゴいとか、途中からクリントン側にとんでもない軍師がついたはずとか。トランプの選挙運動を逐一追っていて、これが本来のテーマのはず。冷静に書いていれば広報や選挙運動の教科書になるはずだが、本人は学者ではないので、個人的な事情と混ぜ合わされて書かれている。
苦労話
トランプは色々スキャンダルもあったし、クリントン支持者から嫌がらせをされたとか身の危険を感じたとか。実際、カリフォルニアでトランプを支持するようなこと(元々は誤解だが)を言ってたら、ヤバいのかもしれないし、政治評論家としてやって行こうとしている本人にとっては手に汗握るレースだったんだろうけど、わたしのような外国人が読む分には哀れというか滑稽と言うか。
オカルト
ポジティブシンキングとか成功哲学みたいな話もあるが、それ以上に自分に予知能力があるとか仄めかしている。わたしはこの著者にこういう痛いところがあるのは知っているから驚かないが、初めての人が政治の本だと思って読んだら大抵引くはず。

別にこの本を推奨はしないが、アメリカでは政治評論などで多少知名度はあるみたいだし、この調子で当て続けていけば、いずれ影響力を持って日本にも名が轟いてくる可能性がなくはない。さしあたり、"Dilbert"の作者がblogやtwitterなどで政治評論をしていて、こんな本を書いていることを覚えておいても良いかも知れない。

I am not an American and my impression of the election is "much ado about nothing". But for a political pundit like this author, that was a thrilling race. Living histories are always interesting.

BTW, if you keep saying good things about a candidate, people assume you are a supporter of that candidate. It must have been obvious to you, Scott.

Portfolio (2017/10/31)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0735219717

2017年11月20日月曜日

Cas Mudde,‎ Cristobal Rovira Kaltwasser "Populism: A Very Short Introduction" [ポピュリズム:非常に短い入門]

目次:1.ポピュリズムとは何か 2.世界のポピュリズム 3.ポピュリズムと動員 4.ポピュリズムの指導者 5.ポピュリズムと民主主義 6.原因と反応

近頃目立つ話題なのでVSIも流れに乗ったということか。わたしの理解したところでは、要するにポピュリズムとは、「庶民のため」という主張以外に特に深いコンセプトのない政治運動というところだろうか。庶民の反対側には、もちろん既得権益がいて、それがどう定義されるかは状況によって適当だったりする。無暗に危機感を煽るとか矢鱈気の強そうなリーダーとか共通点はあるものの、要するに、見世物感が重要で、内容が重要でないというのが論点なんだろう。元々ポピュリズムという言い方自体にネガティブなニュアンスがあるし。それより、この類の政治理論書の通例で、理論自体より、紹介される事例が面白かったりする。主張が不明のまま、なんか既得権益を潰してくれるというイメージだけで勢いを得るのは、日本に限ったことではないということで。

A good overview over populism movements around the world and a theory.

Oxford Univ Pr(2017/2/1)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0190234874

2017年6月23日金曜日

John C. Maher "Multilingualism: A Very Short Introduction" [多言語使用:非常に短い入門]

目次:1.多言語世界 2.多言語使用を勧める理由 3.多言語使用、神話、論点 4.人々、言語、危険な物 5.個人の多言語使用:一つの心と多数の言語 6.政治、言語、国家 7.アイデンティティと文化 8.共通語、混合、人工言語 9.絶滅危惧言語

社会レベル・個人レベルでひたすら多言語使用を推奨する本。この著者の念頭にあるのは、単一言語環境に生きている単一言語しか話せない人間、要するに英語圏の英語話者なんだろう。

まず、多言語使用がどれほど普通のことであるかが説かれる。本書によると、世界人口の2/3が少なくとも二言語以上を話すらしい。従って、多言語使用が普通であることは、少なくとも世界人口の2/3にとっては周知の事実でしかないが、公用語自体が二言語以上ある国も含め、とにかく大量に例が挙げられる。さらには、こんな有名人もマルチリンガルだとか、マルチリンガルの子供のほうがモノリンガルの子供より学業成績が良いとか、多面的に物事を考えられるとか、果ては就職に有利とか、マルチリンガルの美点が大量に書き連ねられる。もちろん、我々は気分が良いが、モノリンガルの人が読んだら気を悪くしそうだ。

この件については"Translation"もそんな感じだったが、ちょっと引っかかる。もちろんわたしもマルチリンガルであるに越したことはないと思っているし、頑なに日本語とか英語しか話さない・方言すらバカにするような人種はバカにしているが、この本はマイナス面を明らかにdownplayしている。実際、多言語環境で育ってどの言語も十全でなく困っている子供もいるし、身の回りを見てもマルチリンガルを鼻にかけている種類の帰国子女はむしろ学業成績が低い。何より、著者は言語を習得するのに必要な労力について何も言わない。

後半は社会学的な記述が始まり、少しは厳しい現実が語られる。社会的に地位の高い言語も差別される言語もあるし、国家による強制もあるし、使用されている言語の数はどんどん減っている。しかし、ここでも筆者は基本的に明るい面を強調し、アイルランド語の復興とかエスペラントなどを肯定的に見ている。全体的に言えるのは、世界の言語情勢を客観的に解説する本というよりは、多言語使用を煽る本と言える。外国語を学習しようとする人には、良い動機づけになるだろう。個人的には、わたしも筆者にほぼ同意だし、さらには言語統制機関、日本で言えば国語審議会とかNHKアクセント辞典などに何の敬意も持っていないが、Oxford Universityという出版社にしては、煽り要素が強い気がした。

I am afraid that monolingual people would be offended reading this book. If you are a multilingual or are studying foreign languages other than your mother tongue, this book is for you.

Oxford Univ Pr (2017/6/22)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0198724995