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2024年11月14日木曜日

Jean Servier "Les Berbères" [ベルベル人]

Les Berbères (Amazon.co.jp)

ベルベル人と言われても何のことか分からない人も多いと思われるが、フランス語やフランス文化を学ぶ人は「マグリブ」という謎の地名と共に必ず聞く話である。大雑把にはマグリブとはアフリカ北部の地中海沿岸地域で、ベルベル人は主にその辺りに住んでいる民族ということになるだろうか。ただ漠然とした印象では、当人たちがあまり民族という概念を尊んでいる感じがないし、あのあたりの通例で部族という概念のほうが強いのだろう。だいたいがイスラム教徒で、ベルベル諸語と言われるような言葉が話されていたりする。…というくらい。

で、正規のフランス語のコース教材みたいなを勉強していると、このマグリブとかベルベル人という概念がやたら出てくる。一応「先住民族」みたいな扱いもあり、「多様性を尊重する」とかいう流れの中で、公式な出版物ではかなり紙面面積を取る。本人たちがあまり民族性を主張していないのに、フランス政府が無理矢理一つの民族という枠にハメている感じは否めないが…。とにかく、今の価値観が「全人類を対等の権利を持つ民族集団に区分して各集団に平等にリソースを割り振る」ということになっているから仕方がない。

そういう背景があって、フランス文化の勉強をしているとあちこちで散発的にマグリブ文化の話を聞かされるが、結局ベルベル人というのが何なのかということになるとまとまった記述がない。あるとしたらこの本が第一と思われる。この本自体は教科書的というか公式的で読み物としてそんなに面白くないと思うが、散発的に聞いている話がまとまる感じはある。

QUE SAIS JE (1 mars 2017)
Langue ‏ : ‎ Français
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-2130792833

2023年5月29日月曜日

Jean Grondin "L'Herméneutique" [解釈学]

これは夢中で一気に読んだ。単純に読んでいて面白いのもあるが、実際、解釈学の概観としてこれが至上の基本書ではないだろうか。ただ、Que sais-jeのわりにガチの哲学書なんで、普段ハイデガーやデリダの言い草に馴染んでいないと何を言っているのか分からない可能性が高い。哲学科の学生は挑戦するべきだが、初心者にはお勧めできない。

もう少し簡単なのをということなら、Oxford Very Short Introductionにも"hermeneutics"というタイトルがあり、少しめくっただけでしっかり読んではいないが、多分あっちのほうが初心者向きだろう。

まず解釈学とは何かという話だが、古典的な意味では単に修辞学の逆である。伝えたい意図を言葉にする技術が修辞であり、言葉を解釈して著者が伝えたい意味を再構成する技術が解釈である。伝統的には聖書の解釈が大きな分野だが、法律の文章の解釈は今でも日常的に問題になっているし、昔の文学の解釈はそれだけで専門分野だし、学校の国語の授業でもそういうことを教えている。

次の段階として、19世紀になって「人文科学も自然科学のように客観的真理を得なければならない」という風潮が強烈だった時期があり、その時代には、人文科学の方法論として解釈学が議論されていた。この場合は、今で言う文学部の全分野、つまり文学も哲学も歴史学も社会学も、なんでもかんでも解釈学を使用することになる。解釈学が整備されれば人文科学も自然科学並みに客観的真理が得られると本気で信じられていたらしい。

第三段階として、本書でも頻繁に引用されるニーチェの「事実なぞ存在しない。解釈のみが存在する」みたいな話が出てくる。「時代の制約やイデオロギーや先入見を排除した完全に客観的な解釈は不可能」というくらいなら多分誰も反対しないと思うが、ここからどんどん話が過激になっていき、解釈のほうが事実に先行するみたいなニュアンスになっていく。もはや解釈学の対象は人文科学や社会科学だけでなく、自然科学も所詮社会的構成物なので解釈次第みたいなことになる。その究極が本書冒頭のソーカル事件みたいなことだろう。

本書の大半は第三段階の議論を巡っている。解釈抜きの生の事実なんか存在しないとか、人間は自らの目的に沿ってしか世界を解釈できないとか、そもそも解釈とは自分の先入見の破壊作業でしかないとか、誘惑的な過激な主張が色々出てくる。名前で言えば、ハイデガー・ガダマー・ハーバーマス・リクール・デリダなどが本書の主役だ。著者自身の立場は、事実は解釈による構成物に過ぎない的な虚無主義は避けているし、所詮我々は認識の枠組みの外に出られないとかいう悲観論も避けている。

そんなわけで、わたしの見るところでは、第三段階は古典的な事実vs解釈の関係を疑うのと解釈の前提になる構造(先入見・イデオロギー・パラダイム・実存…)を重視するのが大きな特徴だが、著者の視点がわりと穏当というか多分ガダマーに忠実なので安心感がある。個人的には「理解するというのは他人を自分の理解体系に組み込んで支配することなんじゃないんですか? 対話によって理解するなんて怖いんですけど」みたいなデリダ的言い草に馴染んでしまっており、それそれで生理的実感みたいなものだが、それ自体も解釈でしかない。…思考は永遠に続く。久しぶりに良い哲学書を読んだ。

C'est le meilleur livre sur l'herméneutique que j'ai lu.

QUE SAIS JE; 5e édition (11 mai 2022)
Langue ‏ : ‎ Français
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-2715411128

2023年4月12日水曜日

Serge Latouche "La Décroissance" [脱成長]

読むのに時間がかかったし、結論から言うと良い本と言えるかどうか微妙だが、考えることの多い本ではある。その間に日本語訳が出版されて、タイトルにも「脱成長」という非常に適切な訳が当てられた。

多分誰でも思うことだが、経済学を学び始めてすぐに「経済成長を続けなければ資本主義経済は維持できない」と教えられ、「いや地球は有限でいずれ限界が来るし現に人口は既に減り始めているし」と違和感を持つが、「人口が減っても生産性が上がれば問題ない」とか「持続可能な開発」とか意味不明な文言で言いくるめられてしまう。日本で言えば長年経済成長せずに特に生活水準が落ちている気もしないし、歴史的に見ても経済成長しないほとんどの時代でも普通に人間は存続してきた…。生活が良くなることの一つの指標として経済成長があり、別に経済成長しなくても生活が良くなればいいように思うが、今の風潮ではなんでもいいから経済成長が必要なことになっていて、何なら経済に貢献しない「生産性のない人間」は存在自体が悪みたいな…。そもそもサステナブルな社会のためにはどっちかというと成長しないほうがいいのでは…。

この一連の疑問は現代の価値観の中心部を直撃している。さしあたり地球温暖化ということでやむを得ず成長に制限が掛けられ始めたが、それでもグリーンニューディールで経済が成長すればいいとかそんなことになっており、ここで実質的な富の拡大と、金銭価値に換算した数値の成長が微妙に混同されている。それが本書でも言及されているような「自然環境の減価償却を計上せよ」みたいなことで全部解決するのか不明だが。

ということを日頃思っていて"Que sais-je"でこのタイトルに出会ったので即買いしたが、とにかく読みにくい。フランス語が難しいわけでなく、一つには衒学が過ぎるのと、一つには感情が多すぎる。多分、著者はものすごく論争を経験してきているのだろう。こういう話はすぐに「じゃあ石器時代に戻れというのか」とか「GAFAが悪い」というバカみたいな話が出てくるし、著者がその類の話から完全に自由だとも思わない。アングロサクソンの価値観はとか言う文句が典型的だが、わりと最初のほうで熱力学の第二法則とか言い出した時点でうんざりする。

しかし、これが脱成長の第一の論客ということでもあるので、読んで損のないところではある。著者の論理の根源は、成長がどうこうというより、生産力至上主義に対する批判だと思われる。従って人口が減ればいいという考えではない。これは資本主義でもマルクス主義でも関係がない。その意味では怠ける権利の正統後継者なのかもしれない。それに付随する諸概念は人によって賛否があるだろう。やたら連帯solidaritéを強調するのはフランスの伝統だから仕方がない。生態系的制約は誰も多分異論はないが、原発がどうとか個別の話はまた別かもしれない。グローバリゼーションを敵視するのはどうかとか、格差問題とリンクさせるとか他にもいろいろある。特に脱成長で失業問題が解決するとか言われても、フランスと日本では状況が違い過ぎる。こっちでは労働力不足が問題で。

ちと論点が多すぎてまとめきれない。結局、脱成長という概念自体は、「そんなに成長成長言わなくても」くらいのことなので、色々個別の政策として考えるというよりは、もっと根本的な社会全体の価値観の変化を促すものだと思う。フランス人みたく徹底的な労働嫌いになるのが幸せかどうか疑問だが…。

Depuis longtemps, on dit que la croissance est nécessaire pour maintenir l'économie. On se demande souvent si une croissance permanente est possible. Évidemment, ce n'est pas possible. C'est le début.

Éditeur ‏ : ‎ QUE SAIS JE; 2e édition (9 février 2022)
Langue ‏ : ‎ Français
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-2715409606

2021年7月30日金曜日

Marcel Pochard "Les 100 mots de la fonction publique" [公務の100語]

書名からは分かりにくいが、要するにフランスの公務員制度に関する概説だ。労働者の権利とかキャリアプランとか、かなり良くできていて実用的な本だと思うけど、普通の人にアピールするような本でもないし、わたしも業務の絡みがなければ手にも取らないところだったと思う。こんなのがQue sais-je?に入る前提として、そもそもフランスが公務員の多い国だということがある。統計の取り方にもよるが、フランス人が良く言っていたのは労働者の三割程度が公務員、どんな統計でも少なくとも20%は越えている。というわけで、こんな本も売れるわけだ。どこの国もそうだが、公務員は比較的教育水準が高いので、本も読むんだろう。

逆に日本の公務員の数が極端に少ない国で、しかもさらに減らせと言っているようなことだが、本当はこういう本でも読んで外国の例を参考にすればいい。別に公務員に限らずフランスは労働者の権利が日本なんかより遥かに守られており、労働時間も短く、もちろんストライキなども多いが、別にフランス人の生産性が日本人より低いわけでもないし、何より出生率が全然高い。この本を翻訳しても冊数的には売れないかもしれないが、間違いなく社会貢献にはなると思う。

Trés utile pour le pays où il y a peu de fonctionnaires comme le Japon....

QUE SAIS JE (20 janvier 2021)
Langue:Français
ISBN-13 ‏ : ‎ 978-2715405554

2021年7月29日木曜日

Denis Salas "Les 100 mots de la justice" [司法の100語]

業務的に微妙にフランス法に関わっているので読んでみたが、別にこれで入門できるわけではなく、門外漢向けの教養読み物みたいに割り切っているのがQue sais-jeがVSIと違うところだ。仕事でもなければ手にも取らない本だが、"Parabole du douzième chameau"の冒頭だけ翻訳してみる。

12頭目のラクダの寓話
死期が近いことを感じた父は相続を確定することにした。11頭のラクダを三人の息子に分けなければならない。長男は遺産の半分を受け取り、次男は1/4を受け取り、三男は1/6を受け取ることになった。父の死後、分割が数学的に不可能であることが分かった。息子たちは案件をカーディ(イスラム法の裁判官)の元に持ち込んだ。少し考えた後、カーディは言った。「わたしのラクダを1頭連れて行って、遺産の分割が終わったら返してください」。息子たちは12頭のラクダなら分割が可能(長男が6頭、次男が3頭、三男が2頭)なことに直ぐに気が付き、直ちに12頭目のラクダを返した。

この話、なんか子供の頃に読んだことがあるような気もする。本書ではこの件についてクリエイティブな司法だとか何だとか情緒的な話をしている。本書にはこの他に寓話として"Sentence du juge Ooka"(裁判官大岡の判決)も取り上げられていて裁判官も社会の一員だのなんだのと。そんなわけで、元々日本とフランスでそんなに法体系が違うわけでもないので、フランス語ができるがフランス法に深入りする必要のない法学部の学生などが読むには良いが、そんな人はほとんどいないだろうな…。もちろん、リアルにフランスに住むとかフランスと交易するとかいうようなことで真剣にフランス法を学ぶのなら、こんなものを読んでいる場合ではない。あと、どうでもいいけど、OokaじゃなくてOookaにしないのかね。

Ce livre n'est pas très pratique, mais assez intéressant.

PUF(2018/1/1)
言語:フランス語
ISBN-13:978-2130809685

2019年2月7日木曜日

Maryvonne Pellay, Jean-Louis Chaussade "Les 100 mots de l'eau" [水の100語]

目次:1.物理学・化学・生物学 2.水資源 3.水の用途 4.水質 5.地政学と管理 6.水の値段 7.歴史と文化の観点

水に関するよもやまというか取り留めもない話。100 motsの通例で、豆知識リストと思っていいだろう。たとえば近頃は日本でも水道民営化が議題になっているが、そういう個別方面については、この本の知識では浅すぎるとはいえる。水道事業に関しては確かにフランスは先進国だが。水配達業も増えていることだし、水に興味のある人は多いのだろうけど、そういう人がこういう本を読むのかというと疑わしい。水に本当に興味があったら、水配達なんて頼むはずがないと思われ、しかし、今後、世界的に水資源の枯渇が問題になるのは見えている。幸いにして日本は水資源大国だが、ムダに水を輸入している国でもある。今のうちに準備しておいても良いとは思う。

Un bon livre à lire.

PRESSES UNIVERSITAIRES DE FRANCE (25 août 2012)
Langue : Français
ISBN-13: 978-2130595571

2019年1月31日木曜日

Pascal Gauchon, Jean-Marc Huissoud "Les 100 mots de la géopolitique" [地政学の100語]

地政学という概念自体は最近どんどん流行ってきている気はするし、フランス語とかで新聞を読む場合には、この本に書いてあることくらいは知っておいたほうが良い。まあ、わたし自身にとっては、それほど新しく学んだことがないが、フランス語の勉強という意味。この「100語」という体裁は、BOBO本では最高の効果を挙げたが、こういう風な感じで時事用語みたいなのを解説するのでも良いのかもしれない。

Ce n'était pas mal.

Presses Universitaires de France: 4e édition (10 mai 2017)
Langue : Français
ISBN-13: 978-2130792796

2019年1月22日火曜日

David Simonnet "Les 100 mots de l'entreprise" [企業の100語]

会社にまつわる100語ということで、この方面の語彙を回収するために読んでみたが、途中で用がなくなり、そうなってみると特段面白い本ではない。Que-sais je?らしい大量の修辞疑問文が記憶に残る以外は、わりと普通の話ばかりで、フランス特有の労働者の強さと会社法事情を別とすれば、普通に新聞を読んでいる人のレベルの知識ばかりだろう。それに、この類の話はすぐに古くなるということもある。あえておすすめもしないし、翻訳もされないだろう。

Pas très interessant.

Presses Universitaires de France - PUF (20 janvier 2016)
Langue : Français
ISBN-13: 978-2130619796

2018年11月16日金曜日

Thomas Legrand, Laure Watrin "Les 100 mots des bobos" [ボボの100語]

これはクセジュの中でも稀に見る面白い本だった。boboとはブルジョワ・ボヘミアンの略で、簡単に言うと意識高い系とLOHASとサブカルクソ女が融合して生まれた最強種族のようなものと思えばほぼ間違いない。経済的に余裕はあるが政治的には左翼で、移民や同性婚に寛容で、フェミニストで、国際人で、子供には外国語を学ばせ、ヨガをし、隠れ家的レストランに通い、エコで、トートバッグを持ち歩き、菜食志向で、無農薬野菜を愛し、美術館が好きで、良く分からない前衛的なアートを支持し、仕事とプライベートの区別が薄く、ノマドで、スタバにマックブックを持ち込み、移動は自転車で、海外旅行に行くと観光客向けのところより地元民の通うような居酒屋などを好み、いやもう、あとはみなさんが勝手に想像でリストを続けられると思うが、それもほとんど間違えないと思う。一つ日本と違うとすれば、社会参画志向が日本より遥かに強くて、地域社会や学校などを積極的に改変していく点か。

この本で取り上げられる100語も全部紹介したいくらいだが、もう上記に出たのもあるし、グローカリゼーションとかカウンターカルチャーとか共同農園とかラテマキアートとか、基本的には全部半笑いで読み続けるしかない。実際、フランスでもboboは嘲笑の対象なのだが、現実に政治的には一つの勢力で無視できず、日本で言えば、立憲民主党の支持者のような感じなのだろう。右派が左派を非難する時にboboという言葉が頻出するようなことで、自分がboboであると認める人はいないが、しかし、実際はboboだらけという図である。思い返すと、少なくともわたしが知るフランス人は一人残らずboboだ。

もちろん、あまりに戯画的過ぎて、ただの筆者たちの妄想なのではという疑いもあるが、あまりにリアルで、フランスでは随分研究も重ねられているらしいし、一応公式っぽい定義として「経済資本より文化資本の最大化を目指す人たち」みたいな線で考えられているらしい。とにかく、左派政治家にとっては現実の問題であり、笑っている場合ではない。右派がポピュリズム政党として確立しつつある以上、左派は今までみたいな労働組合基盤というよりboboを基盤にするしかないのかもしれない。

個人的にはgentrificationという概念が面白かった。昔はドーナツ化現象とか言って、金持ちは郊外に住むことになっていた。それがその後逆転して、退廃した都心部に憧れたboboが逆流入してきて、地価が上がって貧乏人が追い出されるほか、行政も動かしてキレイな街になってしまい、下町とは名ばかりの高級住宅街やら囲い付きの住宅地ができてしまう。で、もともとの下町住民とタワーマンションの住人との関係が問題になるというような。

いずれ翻訳されるのかもしれないが、特に社会学とか人文地理学とか都市工学とかの学生には必読書として指定したい。その他、単に「意識高い系大全」みたいなノリの装丁で売っても売れるだろう。boboはライフスタイルであり、専門の雑誌がないのが不思議なくらいだ。こういう面白い本が日本の社会学から出てこないのは残念だが、せめて輸入してもらいたい。

Le meilleur dans la collection "Que sais-je?".

Presses Universitaires de France - PUF (5 septembre 2018)
Langue : Français
ISBN-13: 978-2130809128

2018年4月26日木曜日

Pascal-Henri Keller "La dépression" [鬱病]

目次:1.メランコリーから鬱病へ 2.鬱病を説明する事 3.鬱病と治療の希望 4.精神分析モデル 5.鬱病の未来と鬱病者の未来

鬱病の歴史から原因から治療法から市場規模までに至る概説。よくある類の本とは言えるが、フランスだからなのか、文学的というか哲学的な雰囲気が強い。精神分析を重視するのはフランスだからだろう。他方、近頃流行りのマインドフルネスについては僅かしか触れられていない。わたしとしては、この件については昔から色々考えていて、何にしろ身体的原因が第一に違いなく、精神分析含め、あまり文学的に解釈しても仕方がないと思っている。脳内ホルモンの大半は小腸でも作られるし、食べ物、特にアミノ酸を調整するのがお勧めだ。例えば、トリプトファンとかフェニルアラニンは明確に気分が変わる。前者はわたしはアレルギーがあるのでダメだし、人によって合う合わないがあると思うけど。

Je vous recommende des amino-acides.

Presses Universitaires de France (20 janvier 2016)
Langue : Français
ISBN-13: 978-2130635062

2018年4月24日火曜日

Jean-Claude Ellena "Le parfum" [香水]

目次:1.現代香水業の誕生 2.鼻と香り 3.材料と原料 4.職業訓練 5.職業 6.香水 7.時 8.マーケティング 9.市場展開 10.世界市場の役者 11.香水の保護

香水・調香師・香水業界の概説+著者個人の職業生活。ほぼ目次通りの全般的な解説だ。著者は業界では有名な調香師。作品にはわたしが好きなブルガリの緑茶とかエルメスのナイルの庭などがある。…と言われてピンとこないようだと、この本は多分厳しい。この本に出てくる香水や化学物質は、当然文字だけで香がついているわけでない。普段から香水を使わない人がこの本を読んでも意味が分からない部分が多すぎるだろう。実際に勉強するには、香見本が必要で、そういうセミナーみたいなのも日本には多いようだ。わたしは実は色んな香水を常用しているので、この本は楽しく読めたが、こんなのは例外だろう。著者の個人的な話が多すぎる気もするが、調香師なんて世界にそんなにいるわけでもないし、そもそもどうやったらなれるのかも明らかではない…。香水は意外に金のかからない趣味だし、始めるのにハードルもないが、どんなアンケートでも「異性につけて欲しい香水は何ですか」の答の不動の一位は「何もつけない」が不動の一位であるという現実がある。楽しい世界なのだが…。

J'aime bien le thè vert d'Ellena. Comment puis-je devenir parfumeur?

PUF (1 novembre 2017)
Langue : Français
ISBN-13: 978-2130798552

2018年3月7日水曜日

Marie-France Hirigoyen "Le harcèlement moral au travail" [職場のモラルハラスメント]

職場でのいじめに関する統計や背景や対策など。わりと公式的な話で、この辺り、フランスだから日本より進んでいるのかもしれないが、わたしとしては、正直な所、フランス語の語彙を拾う以外に特に価値はなかった。日本で実用的な話なら、メンヘル検定のテキストでも読むほうが良いかも知れない。わたしはII種を取ったが、特に実務経験とかが無くても取れる。

La même chose au Japon.

PRESSES UNIVERSITAIRES DE FRANCE (29 janvier 2014)
Langue : Français
ISBN-13: 978-2130624790

Jacques André "Les 100 mots de la sexualité" [性愛の100語]

早い話がセックスにまつわる100語について、文学作品の一節から引用したりしたエッセイ集みたいなものだが、精神分析が軸になっている点がどうか。わたしは精神分析を趣味の悪い文学の一ジャンルとしか思っておらず、実際、ここでも話を詰まらなくしている気がする。科学的な話はほとんどなく、かと言って実用的なアドバイスでもなく、ポルノでもなく、初耳な話もなく、ただ筆者の思いつきみたいな文学的思索集。多分、ここから妄想を養うのが最も楽しめる読み方だと思う。創作的な人の資料にはなるのかもしれない。わたしはというと、特に変な性癖もないが、まあ、こういう人たちもいるよね、くらいな。

Juste pour passer le temps.

Presses Universitaires de France (9 février 2011)
Langue : Français
ISBN-13: 978-2130582861

2017年12月17日日曜日

Pierre Delort "Le Big Data" [ビッグ・データ]

目次:1.企業の中の情報科学 2.データ 3.ビッグデータ 4.ビッグデータの技術 5.会社の中の決定 6.企業の変化

近頃流行りのビッグデータの入門書。最初のうちはIoTやらグーグルのインフルエンザの検索とか有名な話をしている。技術面ではNoSQLなデータベース技術や統計の話などのごく入門程度。最後に企業の組織などに与える影響。正直なところ、わたしにとっては、この程度の話は初歩的過ぎて、内容を公平に評価できない。本当に何も知らない人向けとしか…。わたしとしては、フランス語の勉強ということもあって、良く知っている分野の本を読むのがいいかと思ったところだが、この考え方は間違っていたかもしれない。つまり、知りすぎている話だと、適当に読めてしまうということもあるし、あまり真剣に読むモチベーションが上がらない。

Ce livre est trop basique pour moi. Je l'ai lu seulement pour etudier le français. Néamoins, lire un livre qui parle des choses que je connais trop n'étais pas une bonne idée.

PRESSES UNIVERSITAIRES DE FRANCE - PUF (22 avril 2015)
Langue : Français
ISBN-13: 978-2130652113

2015年7月21日火曜日

Pierre Carbone "Les bibliothèque" (Que sais-je?)[図書館(クセジュ)]

目次
  1. 現実世界の中の図書館
  2. 媒体の経済の中の図書館
  3. 組織の管理の中の図書館
  4. 資産の保存と価値付け
  5. 文化の発展
  6. 教育と訓練の支援
  7. 研究と調査
  8. 情報と資料収集
  9. 図書館間の協力
  10. デジタル図書館
  11. 電子資料と図書館コンソーシアム
  12. オンラインサービス

基本的にはフランスの図書館界隈の現状をQue sais-je?にありがちな淡々とした調子で叙述している。ここ十年くらいの図書館業界は色々な混乱があるが、基本的にはIT革命、つまりネットとデジタル化(numérisations)に巻き込まれているということで、混乱が収束するまでまだ後十年はかかるだろう。もちろん、一時期の「小さな政府」みたいなこともあって、日本なんかは民営化も進んでいるが、フランスはわりとこの波に抵抗できたようだ。著作権への対応なども日本と随分違うが、今後の日本の図書館業界には、色々参考になることもあるのではなかろうか。特に深い考察や今後の指針が示されているわけではないが、フランスの図書館事情をコンパクトにまとめた一冊である。
それはそれとして、こういう本は翻訳すれば一定数売れるに決まっているように思うのだが。フランスの図書館事情を解説している本なんてほとんど出ていないのだし、最低でも日本にある図書館は各館一冊ずつは買うだろうし、志のある図書館員や司書課程の学生と教員も買うだろう。出版業界の人間も買うだろうし、情報科学界隈でも売れそうである。簡単に一万部くらい出そうな気がするが、甘いのかな。
Une bonne introduction pour les bibliothèque en France./
PRESSES UNIVERSITAIRES DE FRANCE - PUF(14 septembre 2012)
ISBN-13: 978-2130594550
フランス語

2015年5月26日火曜日

François Gaudu "Les 100 mots du droit" [法律用語100選(クセジュ)]

法律100語というところだが、もちろんフランスの法律である。と言っても、日本の法律はもともとがフランスの法律の輸入品であり、日仏の事情の違いはあるものの、この本で解説されるような基本概念については、ほとんど違和感がない。きちんとフランス法を学ぶ気ならこんな本を読むより基本書をきちんと読むべきだが、もともと日本の法律にある程度詳しくて、フランスの基本的な法律用語を押さえておくくらいのつもりなら、ちょうどいい。ためしに短い一項目だけ訳してみた。文字通り訳すと読みにくいので若干意訳気味。
Meuble(動産)
フランス法ではsumma divisio、つまりすべての物体を分類するカテゴリーを確立することが好まれる。そういうわけで「すべての物体は動産または不動産である」。不動産は民法典によって厳密に定義されており、不動産でない物体はすべて動産である。従って、動産のカテゴリーに含まれる物には、共通の意味がない。たとえば、債権―人が給付を受ける権利―や「有価証券」―株、債券などがある。同様に、知的財産権―特許、商標、著作権・・・―も動産と考えられる。
動産と不動産の区別からくる規定の違いのため、今日では廃れたが、不動産のほうが動産より価値があるという考えが生まれる。また、概して不動産の売買は動産の売買よりも厳格な形式に従う。さらに、"lésion"、つまり実際の価値との比較で、合意された価格と実際の価値の相違が大きい場合、不動産の売買は無効になることがある。lésionは元の民法典の時代の表現では7/12、すなわち50%以上でなければならない。これに対して動産の売買では、lésionは無効の原因にはならない。
Je ne sais pas si les Françaises savent le fait, mais les droits japonais étaient essentiellement importés de la France. Ce livre aussi sert à savoir les droits japonais.
Puf (2010/10/17)
ISBN-13: 978-2130582946

2013年10月31日木曜日

Jean-Paul Betbèze, Jean-Dominique Giuliani "Les 100 mots de l'Europe"

これを読んだのは少し前で、忘れ気味だが、タイトルから分かりにくいが、要するにEUの解説と思って良い。ただ、EUの変化はIT業界並なので(特にこの間はリスボン条約)、今さらこの本は推奨しない。新版が出たらお勧め。

Une introduction de l'Union Européenne. Un peu vieille.

Presses Universitaires de France - PUF; Édition : 1 (13 avril 2011)
ISBN-13: 978-2130581437

Dominique Roux Xavier Niel "Les 100 mots de l'internet"

ネット関係のフランス語の語彙を拾うべく読んだが、(当たり前だが)一般人向けなので、わたしとしては当たり前のことしか書いていない。さらに、フランスはアメリカはもとより、日本や英国に比べてもネット普及が遅れている。ただ、一般人で多少ネットに興味があってフランス語の勉強をしようという人には良いだろう。一記事が短いので読みやすい。

Pour des amateurs, naturellement.

Puf (2012/11/28)
ISBN-13: 978-2130592112

2012年11月10日土曜日

Alain Bauer, Jean-Louis Bruguière "Les 100 mots du terrorisme"

フランス語。読んでて鬱になるが、100語でわかるテロリスムというところで、日本語訳すれば売れると思う。やはりテロというのはフランス語やスペイン語でやるものなのだろう。つまり、その辺が宗主国というか元凶なのである。基本的には少数民族・共産党・イスラム教の仕業で、日本からはオウム真理教がエントリー。毒ガステロは、その後出てこないが、テロリストとしてオウムの科学力は群を抜いていたらしい。しかし、欧米に比べれば、日本はのんきなものだ。テロといっても色々なパターンがあり、「そんなんで社会が変わるわけないだろ」というような、原理主義とかオウムとかみたいなテロもあるが、現実に国家主権を排除して地域を支配している集団もある。個人名も結構挙がっているが、目的なんかどうでもよくて、単に職業としてテロリストみたいなのも多い。日本人が読むと、結構、常識を覆されるのかもしれない。

Au Japon il n'y a pas beaucoup de terrorisme. Aum sinrikyo était une exéption notable. Peut-être que la France et l'Éspagna sont les pays origines.

2011年12月25日日曜日

Pascal Gauchon, Jean-Marc Huissoud "Les 100 lieux de la géopolitique"

戦略的に重要な地点と、地域紛争のある地点を挙げまくる本。日本に関しては、千島列島・竹島・尖閣諸島など。もちろん、日本列島そのものがロシアや中国の外洋展開を防いでいる意味もあり。一つ一つについては説明がそんなに詳しいわけではないけど、資料性はまあまあ。

なお、フランスの本なので、amazon.co.jpとかでは普通には買えない。amazon.frとか。

100 locations strategically important or where conflicts are going on. Descriptions for each location are not so detailed. However very concise and perfect for a reference.