2019年12月19日木曜日

Graham Patrick "Organic Chemistry: A Very Short Introduction" [有機化学:非常に短い入門]

目次: 1.導入 2.基礎 3.有機化合物の合成と分析 4.生命化学 5.医薬化学 6.殺虫剤 7.感覚の化学 8.重合体とプラスチックと繊維 9.ナノ化学

VSIのこういう「一般的過ぎるタイトル」はレベルが低いことが多いが、多分、高校でやる程度の化学をだいたい分かっていれば大丈夫だろう。構造式は大量に掲載されているし、エチレンの構造式を書けないレベルでも問題ない。内容はほぼ目次から予想される通りで、有機化学の基本を少し解説した後は、いろいろな応用分野の解説だ。個人的には有機化学系の知識としては、毒劇物と登録販売者の資格を持っているくらいだが、退屈はしない。特に重合体のあたりは結構手薄なところだったので、勉強になった。一般にも評判がいい本のようだ。

A good reading.

Oxford Univ Pr (2017/5/1)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0198759775

2019年12月17日火曜日

Jeff Kinney "Diary of a Wimpy Kid: Wrecking Ball" [軟弱な子供の日記:鉄球]

シリーズ14作目。表紙から想像されるような大騒ぎはなく、引っ越しの話。翻訳も直ぐに出ているようで、一定の需要があるのだろう。多分作者の実体験だと思うが、前から気になっているが、Gregの家が裕福過ぎて、引っ越しもどうも実感がない。どこまでが誇張でどこまでが実際にあり得る話なのか、わたしには判別しかねる。恐らく二階に水回りの施設があると、水漏れの問題は確かにあるだろうけど、どれくらいの話なのか…。特にMannyの件が信じがたい。個人的な事情として、わたし自身がミニマリストなので、物が散らかる話はフィクションでもちょっとしんどいということがあり、この巻については、少し下がったかな…。

A tale about a rich family.

Puffin (2019/11/5)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0241412039

2019年11月28日木曜日

Essi Viding "Psychopathy: A Very Short Introduction" [サイコパス:非常に短い入門]

目次:1.どのようにして誰かがサイコパスまたはサイコパスになる危険があると分かるのか 2.共感の無さを説明すること 3.衝動性と社会的な行動ができないことを説明すること 4.なぜサイコパスになる人がいるのか 5.サイコパスをどう扱うべきか?

サイコパスという言葉は日本ではわりと適当、またはムダにロマンチックに使われている気がするが、ここで言うサイコパスのイメージはもっと具体的で、だいたいが粗暴で、往々にして刑務所に入るが再犯を繰り返すような感じ。そもそも他人に共感する能力がないが、特に本人自身が苦痛について鈍く、必然的に他人の苦痛など配慮せず、他人を操作する目的以外で親切なことはない。同様に、罰から学習する能力も低く、犯罪を犯すにしても衝動的で、ものすごく些細な利益のために割の合わない暴力を振るい、何度も収監される。同情心のなさ、苦痛に対する鈍感は、本人は自分の才能だと思っており、他人に配慮したりする人間を見下しているので、治療法が見つかったとしても本人の協力は期待できない。

というようなわけで、世間で面白半分に言われているよりは殺伐とした話で、確かにこんな人間がいるのはみんな知っている。近頃は犯罪報道でも前科〇犯みたいなことは言われないが、この人種はいっぱいいるんだろう。でこの本だが、サイコパスについて分かっていないことが多すぎるので、この本も事象の表面をひっかいているだけというのが正直な印象だ。脳の構造とか遺伝要因とかも調べられているが、他人に共感するための脳の領域の活動が低いとか、まあその程度の話だし、処置については鋭意研究中だが、今のところ有効な手段もないようだ。著者がどういうつもりか分からないが、わたしとしては「生まれつきこういう奴」という印象で、教育とか治療とか処罰でどうにかなる問題に見えない。

他は心理学一般に言えるような一般論とか警告で、あまり読んでいて発見のある本ではなかった。ただ世の中にあふれるサイコパス診断みたいなのがバカバカしくなるのは間違いない。

There is too much yet to know about this phenomenon.

Oxford Univ Pr (2020/1/1)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0198802266

2019年11月12日火曜日

Vincenti Aurore "Les Mots du Bitume" [瀝青の言葉]

直訳ではタイトルの意味が分からないが、瀝青→アスファルト→歩道ということで、要するにフランスの俗語辞典である。日本で瀝青を使うのは車道のほうだが、フランスでは違うのだろうか。どうでもいいが。

わたしが入手した版は装丁もきれいだった。内容的にも良心的で丁寧に作ってある感じだ。ただまあ、俗語時点の類は英語などでも読んだことがあるが、どうもあんまり響かない。一つには俗語に用がないというのがあるし、流行り廃りも早いし、外国人が使うにはリスキー過ぎるというのもある。それに、例えば日本語でも似たようなものがあるが、そういうのがニュアンスを正しく伝えているかどうかというと、かなり疑問がある。

しかし、外国語を学ぶ人にとっては、そうは言っても知りたくなるには違いない。通読しやすいし、実際に採取した使用例も載っていることだから、大間違いもないだろう。英語やアラビア語からの借用も多いが、目立つのはやはりverlanだった。俗語だらけのフランス語映画を見た後で読んだが、verlanに慣れるのは大きい。

Utilizer ces mots est trop risqué pour nous. Quand même, on veut les savoir....si seulment pour les comprendre.

Le Robert (2017/10/5)
言語: フランス語
ISBN-13: 978-2321011163

2019年11月4日月曜日

Judea Pearl, Dana Mackenzie "The Book of Why: The New Science of Cause and Effect" [なぜの本:原因と結果の新しい科学]

まるで一般書のように売られており、確かに一応一般人向けに書いているような気はするが、実際には多少統計学をやったことがないと分かりにくい。日本語では「統計的因果推論」と言うが、統計学的にデータから因果関係を計算するかなり新しい分野で、その第一人者が一般向けに書いた本である。と言っても、そもそも一般人にはこんなのがなぜ新しい分野なのか分かりにくいと思われる。

今でも統計学の初学者は「相関関係は因果関係ではない」という呪文をひたすら唱えさせられることになっている。そして疑似相関とか交絡因子とかいう概念を学び、実際に相関係数だの回帰係数だのを学ばされるが、永久に因果関係の概念は教えられることはない。これは古典流でもベイズ統計でも同じことで、統計学で判明するのは相関関係だけで、それを因果関係とは何かについては統計学の範囲外ということになっている。

それはそれでその通りなのだが、著者は、因果関係を明示したグラフ図を導入し、そのグラフを利用してデータを解釈することで、今までに不可能だった計算が可能になると主張する。著者が最も重視するのは反実仮想、つまり、「もし違うようにしていたらどういう結果になっていたか」という確率計算だ。これは人工知能との関連で未来のある話である。もっとも、グラフ図をどうやって思いつくかは謎であることに変わりはなく、"Causation"で扱われるような形而上学的問題は素通りされているが、そこは筆者の関心ではないようだ。

さらに、それ以前に、因果関係を表すグラフの導入により、今までの統計が行ってきた誤りがどんどん暴かれるのも深刻な話である。著者の言うところでは、伝統的な統計学の方法は、多くの場合に交絡因子を統制し過ぎており、そのせいで誤った結論を出しているという。たいてい我々は主題でない因子は統制すればするほど良いみたいに教えられているが、実際には統制してはいけない因子もあり、その判別は因果モデルを表すグラフを用いれば代数的にできる。

その辺りの詳しい話は本書を読むしかなく、わたしはこの本は統計に少しでも関わる人の必読書と思っている。それはそれとして、この本の書き方はちょっと酷いような気もしている。まず、最初から三分の一くらいは著者の言うところの"causal revolution"の能書きが延々と書かれてかなり退屈だ。do-calculusという言葉もわりと最初のほうに紹介されるが、随分読み進めないと具体的に説明されず、それまで延々と統計学史と革命の効能を聞かされる。統計学の歴史を振り返るにしても、全体的に感情過多でムダに論争的で、もうこれはネイマンピアソン以来の統計学の伝統なのだろうか。

素人が読んでいて、統計的因果推論の有効性がようやく明らかになってくるのは半分くらい読んで喫煙-肺がんの例が出てくるあたりで、そこから先は、やはりムダに感情が多いのは別として、意味が分かってくる。最後のほうの法学的または哲学的考察は、個人的には話を進めすぎだと思うが、とかく、全体的に誇大表現のような気のするところが多い。と言っても、著者の発案による統計的因果推論が重要であることは間違いない。時間ができたらなるべく早いうちに研究しようと思う。まあ、我慢して読んだ甲斐はあった。

I find this book too wordy. Considering the importance of the casal inference, it's a bit pity. Or maybe it's a tradition of the dicipline.

Basic Books (2018/5/15)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0465097609

2019年10月15日火曜日

A. J. Gillam "Simple Checkmates" [簡単なチェックメイト]

簡単な1mover(1手詰め)と2mover(3手詰め)が400問以上載っている。一ページに二問、答はページ下。いわゆるproblemではなく、一応実戦形で、答も一通りとは限らない。あと、これはproblemと同じく、ムダな合い駒も一手に数えられるし、2moverでは一手目はチェックである必要がない。パズル好きというよりは、チェスを強くなりたい人のために書かれているが、別に誰が読んでも退屈しない。チェスで言えば、一通りルールを把握した人が次に取り組むくらいの本だ。チェスを学ぶには、openingとかmiddle gameより第一にcheckmateのパターンを学ぶべきで、実際、二冊目として最善かもしれない。多分英語を読める必要すらない。

というわけで、わたしには少し易し過ぎ、チェックメイトだけなら10秒以内に答えられる問題がほとんどだが、とはいえ400問以上あるし、何より答が複数あるから、台風の間、そこそこヒマつぶしになった。

It was a great book for the time of the evacuation due to the typhoon "Haggis".

Ballantine Books (1996/4/30)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0345403070

2019年10月8日火曜日

"Sports Illustrated Swimsuit 2020 Calendar" [スポーツイラストレイテッド水着2020年カレンダー]

水着女性卓上日めくりカレンダー。今年一年使って、当初は失敗したかなと思ったが、結局気に入って来年も続行する。どう説明していいのか分からないが、エロくはないが美しい。机の上が常夏化して気分が良い。あと、日めくりなのに毎日当月のカレンダーが小さくついているのも良い。このシステムは他の日めくりでも採用するべきだと思う。ただ、職場で使えないのが残念だ。

A collection of nice swimsuits for your desktop.

Trends Intl Corp (2018/9/15)
言語: 英語
ISBN-13: 978-1438868448

2019年9月27日金曜日

Liz Climo "The Little World of Liz Climo 2020 Day-to-Day Calendar" [リスクリモの小さな世界2020年日めくりカレンダー]

迷ったが、来年の職場用カレンダーはLiz Climoで続行だ。75 new cartoonsとあるから、大半は見たことのあるものにはなるとは思うが、Peanutsでも同じことではあるし…。Dilbertは、たまにWebで見ているが、基本的に見切りをつけた。xkcdが出してくれたら買うんだが。本当はこっちを自宅用にしてSports Illustrated Swimsuitsのほうを職場に置きたいのだが、人目があるんでね…。

I Will continue life with Liz Climo's calendar.

Andrews McMeel Publishing (2019/6/4)
言語: 英語
ISBN-13: 978-1449498177

Trends International LLC "Sports Illustrated Swimsuit 2020 Calendar" [スポーツイラストレイテッド水着2020年カレンダー]

来年2020年のスパイラル綴じの週間手帳で、最近こういうのが好きなのだが、実際には使えないかなあ…。週ごとに右が予定表、左側は全面水着モデル。パラパラ見ていても美しい。マイナス要素として、洋カレンダーの通例で日本の休日が載っていない。元号が載っていないのはこの際問題ではないだろう。手帳にしてはムダに重いということもある。何か月か使ってみないと実用的にどうか分からないが、使えなくても後悔はない。感じ方は人それぞれだと思うが、わたしの感覚では、基本的にエロさが全くなく、ただ美しく健康的で心が安らぐ。

I do not find them healthy and beautiful, without being erotic. I love them.

Dateworks (2019/9/15)
言語: 英語
ISBN-13: 978-1438871523

2019年9月23日月曜日

Randall Munroe "How To" [どうやって]

これは予約買いして直ぐに読んだが、基本的に"What if"を読んで面白かった人が読む物だろう。そのうち翻訳も出るんだろうと思う。内容は「穴を掘る方法」とか「引っ越しする方法」とか色々だが、要は色々あり得ない方法を物理学的に研究している。その限りで勉強になることもあるし、世間的にはpop scienceの一種みたいな受け取り方になるだろう。何にしろ、What ifを読んで面白かった人は読むだろうし、そうでなかった人は読まないというだけのことになりそうだ。それにしても、What ifと同様に密度の高い本で、こういう感じだと、通常のpop scienceの著者みたいに大量に書けないだろうなあとは思う。

Another good easy Reading from xkcd.

John Murray Publishers Ltd (2019/9/3)
言語: 英語
ISBN-13: 978-1473680326

2019年8月24日土曜日

Jamie A. Davies "Synthetic Biology: A Very Short Introduction" [合成生物学:非常に短い入門]

目次:1.生物学:分析から合成へ 2.合成生物学はどのように為されるか 3.合成生物学と環境 4.合成生物学と保健 5.工学のための合成生物学 6.基礎研究のための合成生物学 7.生命を創ること 8.文化的影響

これもなかなか楽しい本だった。"Genomics: A Very Short Introduction"と対になるような本で、Genomicsのほうは基本的にDNAを読むだけだが、こっちはDNAを書いたり編集したりしている。ただ、読むほうの技術に関しても、こっちの本のほうが分かりやすく書けている感じだ。前半はやはりDNAを編集する技術解説をしているが、後半は好き勝手に生物を改変している。自己修復する建物くらいならともかく、勝手に生えてくる建物とかやりたい放題で楽しい。こういう話が日本語で説明されると、改造人間とかバイオハザードとかグロテスクなほうに強調されがちだが、そういうのと比較すると、この本はネガティブな面がunderplayされているような気もする。一応最後に取ってつけたように倫理問題なども論じられているが…。この辺りは宗教の違いも感じるところだ。わたしの感覚では適当なたんぱく質を組み合わせて生物を作れたらもうそれで生物を作ったと言っていいような気がするが、一切生物に由来しない無機物から作って「生気」のようなものが生命にとって不要であることを証明しないと気が済まないらしい。

Hmm... DIY bio-tech would be my favorite hobby....

Oxford Univ Pr (2018/10/1)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0198803492

2019年8月17日土曜日

Margaux Motin "La Tectonique des plaques" [プレートテクトニクス]

相変わらず30女の生活ということだが、全く意外でもないが前作から離婚したらしく、シングルマザーの日記というようなことになり、絵はまあ上手いんだけど品はなく、いよいよサイバラ相当という…。まず30代シングルマザーという人種に興味があるかというところで結構選別されると思われ、この品の無さは著者が自分を良く描きすぎるせいかとも思うが、まあ、ちびまる子ちゃんを筆頭に女性マンガ家はみんなそうな気もするが、しかしたとえばPénélopé Bagieuにそんな印象はない。もっとも自分がシングルマザーで著者に共感できる立場ならこれくらいに描いてもらったほうが良いのかもしれないみたいな。ただ一つ、これは弁解不能だと思うが、一々英語が入ってくるのは、わりと色々な人のカンに障るのではないか。

Je ne veux pas lire l'anglais ici....It gets on my nerve.

Delcourt (8 mai 2013)
Langue : Français
ISBN-13: 978-2756041957

2019年8月11日日曜日

Margaux Motin "La théorie de la contorsion" [ひねりの理論]

前作に比べて絵は見やすい。要するに30女(夫娘あり)の日記ということに変わりはなく、別に面白いことも言っていないが、こういう人の主観を体験する価値があるというような。下ネタも普通に生活の当然の分量は入っている。一つ、考えたら今時は筆記体を読めない人のほうが日本でも多いかも知れない。自分でも筆記体でサラサラ書くわたしでも時々読みにくいくらいで。

Comme ci comme ça.

Marabout (22 septembre 2010)
Langue : Français
ISBN-13: 978-2501063876

2019年8月10日土曜日

Margaux Motin "J'aurais adoré être ethnologue" [民族学者になりたかった]

30女の日常というマンガ。一コマ集に近く、特にストーリーはない。あんまり笑えないし、品格は西原理恵子相当というところで、絵は嫌いではないが字が汚いというような。ただ、題材が面白いというか、珍しいということがあり、意外に30女の視点というのは世間的に取り上げられていないのか、単にあまりわたしの目に留まっていないだけなのか。フランスでもPénélope Bagieuのコピーみたいな言われ方をされたりして、30代女の生活ということでは "Ma vie est tout à fait fascinante"も同じだが、こっちは既に夫と娘がいる。そのせいかどうか、より下品というか、こっちのほうが実態なのかもしれない。ただ、下品とは言うものの、フランスというだけでお洒落に見えるムキもあると思われ、翻訳したら一定数売れるとは思う。

La vie d'une femme de 30 ans....

Marabout (13 mai 2009)
Langue : Français
ISBN-13: 978-2501061636

2019年8月8日木曜日

John Archibald "Genomics: A Very Short Introduction" [ゲノム学:非常に短い入門]

目次:1.ゲノム学とは何か 2.生命の本をどう読むか 3.遺伝子とゲノムの理解 4.生物学と医学の中の人ゲノム 5.進化ゲノム学 6.ゲノム学と微生物の世界 7.ゲノム学の未来

これは中々熱い本だった。前半はどうやってDNAのヌクレオチド配列を読むかの技術的な説明。この本は難しいという評判だが、恐らくこの部分で引っかかるのだろう。少なくとも高校の生物の教科書に書いてある程度の細胞の構造くらいは知っていないと厳しい。とは言え、高校生でも理解できる話だと思うがなあ…。実際のところ、DNAの二重螺旋を剥がして端から読んでいくのがそんなに簡単なはずがないが、あまり具体的な方法の説明は聞いたことがなかった。しかし、これこそがゲノム解析/工学の基幹となる技術であり、ここをスキップすることはできない。

後半は具体的な各種応用分野の解説。結構面白い話が山積みだった。まさに無限に未踏の世界が広がっている感じだ。例えば海苔を消化できるのは日本人だけとかアルゼンチン人が遺伝子レベルで砒素に強いとかどうだろうか。人類の進化のクダリも面白かったし、ウイルスとか微生物の話は常に面白いし、全体的に退屈な部分はなかった気がする。この方向、個人で何かできるわけではないが、少し読書を進めていこうかと思う。

A very exciting field.

Oxford Univ Pr (2018/5/22)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0198786207

Jeff Kinney "Diary of an Awesome Friendly Kid" [素晴らしくフレンドリーな子供の日記]

たまたま本屋で見かけて気が付いて買ったが、"Diary of a Wimpy Kid"のスピンオフ企画。副題は"Rowley Jefferson's Journal"で、Gregの友達のRowleyの日記という体裁。日本語訳が出ていないが、ここまでずっとほぼ同時に翻訳を出しているのだから、出さない意味が分からない。まあ、児童書というわりに、教育上よろしい本かどうか疑問だが…。もう十年以上続いているシリーズだが、すぐに読めるので初巻から読み始めてもすぐに追いつく。英語学習者にもお勧めしている。

この巻は一応RowleyがGregの伝記を書くという体裁になっていて、何かイベントがあるというより日常の細々した話の集積。だいたいRowleyはGregより一段頭が悪い善良な子という設定だから、たいていがGregの悪行の描写になり、我々はRowleyをお人好し=良い奴と認識するが、どうもアメリカ人的にはお人好し=バカという認識で、Gregがヒーローみたいなことになるらしい。このあたりにドラえもんがアメリカで流行らない理由があるのだろう。彼らにとってはジャイアンこそがヒーローであり、それを卑怯なのび太がやっつけている図になって全然痛快ではないのだろう。従って連中はこの本についてはずる賢いGregのほうに感情移入するらしい。

しかし、わたしとしてはこの図ではRowleyのほうがわたしに近く、どうもRowleyが可哀そうというか、冗談が過ぎて笑えないところがあるのはこのシリーズの通例ではあるが。だいたいこのシリーズは、洋物には珍しく意識低い系クズ人間を主人公にした点が画期的なのであり、頭が悪いだけで善良なRowleyが迫害されるのはどうかと思う。彼もやられっぱなしではないので、その点は少し安心だが。色々思うことはあるが、ほとんどの人は特に気になることもなく楽しめるんだろう。

Well, I am rather on Rowley's side.

Harry N. Abrams (2019/4/9)
言語: 英語
ISBN-13: 978-1419740275

2019年7月5日金曜日

Sarah Harper "Demography: A Very Short Introduction" [人口学:非常に短い入門]

目次:1.人口学は宿命…か否か 2.55000人から70億人へ 3.人口学思想の先人 4.統計と数理モデルの導入 5.動因 6.人口転換―人口学の中心 7.人口学者の道具箱 8.人口ピラミッドと予測 9.下位分野の登場 10.人口政策と将来の課題

あまり面白そうな学問とも思えず、とは言え、現に日本社会の現在の最大の論点を直撃している学問なので読んでみたが、特に認識は変わらなかった。この本はVSIの標準的な書き方で、大学生向けに業界の歴史、方法論、現状と今後の課題を概説しているが、本当の初学者向けかなと思う。普通に社会科学を勉強していれば、自然に人口学の知識も入ってきているはずで、そういう人たちが一度整理しようと読むにしても特に推奨はできない…。この本は人口学の方法論と業界事情の記述がメインで、しかも、ほとんど常識的だ。例えば9章の下位分野の紹介は、おそらくアルファベット順でしかない。なにより人口学の研究の具体的な成果の記述がほとんどない。日本に言及されているのが、記憶の中では一か所しかなかったが、日本とは言わなくても、せめてイギリスの人口動態について一章くらい当ててくれれば人口学の意義がもっとわかりそうなものだ。

唯一最後のほうの各国の政策の具体例とその結果(中国の一人っ子政策やルーマニアの反避妊政策やオーストラリアの移民政策など)の記述はものすごく面白く、こういう話をもっとしてほしいが、VSIはそういう趣旨じゃないということだろうか。あくまで業界入りを考える学生のための本で、一般人向き啓蒙書、日本で言う新書みたいなことではない。

Not for everybody. It comprises of descriptions of the academic world, few concrete examples of each countries.

Oxford Univ Pr (2018/7/24)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0198725732

2019年6月21日金曜日

"Critical Theory: A Very Short Introduction" [批判理論:非常に短い入門]

目次:1.フランクフルト学派 2.方法の問題 3.批判理論とモダニズム 4.疎外と物象化 5.啓蒙された幻想 6.ユートピア実験室 7.幸福の意識 8.偉大な拒否 9.諦めから刷新へ 10.未完の仕事:連帯と抵抗とグローバル社会

入門と言いながらこれも素人にはお勧めしかねる本だ。評判はものすごく良いようだが…。人名で言えば、アドルノ・ホルクハイマー・フロム・マルクーゼ・ベンヤミン・ルカーチ・グラムシ・マンハイム・ハバマスとかまあ、たいてい日本語の訳書があるし、この界隈を一応読んでいないと、この本だけ読んでもしんどいかと思う。というのも、この本は一人一人の思想を解説するというよりは、目次にあるようなテーマについてフランクフルト学派の態度を著者が解釈していくというような体裁なので、まったくとっかかりのない人が読むのは少し無理がある。あるいは、続いて個別の思想家に取り組んでいくという前提でこれから読み始める手はありえる…。

というわけで、主たる読者は軟弱化する以前のヘヴィな社会学を学ぶ志の高い社会学か政治学の学生というところだと思われる。その前提で書くが、この界隈の最大の問題意識は、フランス革命の経緯からも例示されている通りに、啓蒙が反動、最悪ファシズムをもたらすという事態をどう考えて対抗するかというところだと思われる。思想に思想で対抗するのは無理なような気もするし、何ならフランクフルト学派みたいな考え方は詰んでいるような気もするが、油断をしていると、この平和な日本でさえファシズムからそんなに遠くないような気もする。さしあたり英米基準で作られた日本国憲法の価値観というものがあり、それにどんな問題があるにしても、江戸時代の日本の政治体制のほうが良かったとは思えない。しかし、これがファシズムの出現を阻止するのに十分かどうかは明らかではない。少なくとも格差社会の激化を阻止するには足りないようだ。

というようなことを真剣に考える人にはフランクフルト学派を避けて通れるはずもない。我々が常識と思っている考え方のかなりの部分が血塗られた歴史の後に勝ち取られていることが再認識される。結局、こういうことについて中立な立場などは存在しない。ただ、思想で解決する問題とも思えない…。

A great overview of the Frankfurt school, though not for introduction.

Oxford Univ Pr (2017/10/20)
英語
ISBN-13: 978-0190692674

2019年6月20日木曜日

Pink Dandelion "The Quakers: A Very Short Introduction" [クエーカー:非常に短い入門]

目次:1.クエーカーは誰か 2.クエーカー教の歴史 3.礼拝 4.信仰 5.神学と言語 6.教会一致運動 7.クエーカー教の未来

著者の名前に引っかかるが、まあいい。この本はクエーカー教徒自身にも教科書として使われているようなことらしい。だから良いとは言えないが、別に歴史上、クエーカー教徒は平和主義者で迫害されることはあっても問題を起こした気がしない。だいたい文学作品などでクエーカー教徒という言葉が出てきても「ふうん」と言って無視しているが、こういう本で改めて確認すると、特に風変わりな教義のような気もしない。個人的には否定神学か不可知論みたいなのは面白かったが、キリスト教の一つの究極形のような気もする。

It seems that the quakers themselves cherish this book.

Oxford Univ Pr (2008/3/20)
英語
ISBN-13: 978-0199206797

2019年6月19日水曜日

John Robertson "The Enlightenment: A Very Short Introduction" [啓蒙:非常に短い入門]

目次:1.啓蒙 2.宗教との関り 3.人間の境遇の改善 4.公衆を啓蒙すること 5.哲学と歴史の中の啓蒙

VSIにしては内容が重くて素人にはお勧めしかねるというような…。ある程度歴史と哲学の基礎知識がないと読めない。我々が歴史で習う啓蒙の時代というのは、要するに今の時代に通るような自然法の理論とか自然科学とかが確立されて、タイムスリップしたとしても、まあ何とか一応知的な話が通じるようになった時代みたいなことだろうと思う。その後世界に起こったことは、つまずきながらもカントとかハバマスとかが考えるような公共圏みたいな公正というか透明というかそういう単一の世界に進み続けているというような…。こういう話を脱構築するのは簡単だが、良くも悪くも何となく目指すべき社会の方向は共有されているのだろう。例えばの話、国家が特定の宗教を強要することを良いとは我々は思わないし、この前提を共有しない人間とは話にならないような気がしている。しかし、そういう話と関係のない、例えば江戸時代の日本が同時代の西欧に比べて野蛮だった気もしないし、どうもこの辺りがわたしの中で整理がついていない。こういう本を読むと、さらに何のことやらわからなくなる。現実的にはハバマスが考える線で生きていくしかないと思うが…。

At least, this book does not serve as an "introduction".

Oxford Univ Pr (2015/12/1)
英語
ISBN-13: 978-0199591787

2019年6月18日火曜日

Ian Stewart "Infinity: A Very Short Introduction" [無限:非常に短い入門]

目次:1.パズルと証明と逆説 2.無限との遭遇 3.無限の歴史的な見方 4.無限の裏面 5.幾何学的無限 6.物理的無限

こういうpop-mathというかpop-scienceみたいな本はもう読まなくなったが、たまに読むとそれなりに発見もあり…。たとえば超準解析がε-δよりマシだといのなら、一つ勉強するか…とか。この著者はこの類の数学書では大御所で、興味があるムキには安心してお勧めできる。言っていること自体は、まあ数学志向の高校生ならついていけると思う。別に紙と鉛筆が必要な本ではない。

A nice work of a famous author.

Oxford Univ Pr (2017/7/23)
英語
ISBN-13: 978-0198755234

Katarzyna de Lazari-Radek, Peter Singer "Utilitarianism: A Very Short Introduction" [功利主義:非常に短い入門]

目次:1.起源 2.正当化 3.何を最大化するべきなのか 4.異論 5.規則 6.現場功利主義者

最初に少し歴史が語られるが、基本的には有名なトロリー問題のあたりから始まって倫理学の問題についてのガチの議論が本体だ。正直なところわたしは普遍的な道徳判断基準の導出というものが可能とも有益とも信じていないし、この著者たちの主張にもあまり同意できないところがあるが、この類のパズルに興味がある人は面白く読めるだろう。結局、功利主義は、政治判断を正当化するために最も持ち出されることの多い原理かもしれない。一つだけ引用すると、「食用動物を殺すのはその動物に損害を与えない、なぜなら殺す前提でなければ、そもそもその動物は生まれなかったから」という主張は衝撃的だった。こういうことになるから倫理学というのは油断できない。

Utilitarianism is one of the strongest political decision criteria all over the world. We cannot ignore it, regardless our preferences....

Oxford Univ Pr (2017/9/27)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0198728795

Susan Llewelyn, Katie Aafjes-van Doorn "Clinical Psychology: A Very Short Introduction" [臨床心理学:非常に短い入門]

目次:1.現場の臨床心理学者 2.揺り籠から墓場まで 3.商売道具 4.臨床心理化が使う枠組み 5.反省する科学者-実践家としてのわたしたちのアイデンティティを作ること 6.現在の合意と議論 7.臨床心理学の対象の拡張

簡単に言うと心理カウンセラー業の職業案内というところ。その手の学科に入った/入ろうとしている大学生などに良いのではなかろうか。個人的にはこの類の職業の人に感心したことがほとんどないが、必要な職業ではあるのだろう。そしてどんどん業務も拡張されているようなので、そのうち何もかもカウンセラーに相談する世の中になるかもしれない。ここでもマインドフルネスが取り上げられていて、もう完全にこの業界の定番になっているようだ。

A nice concise introduction to the field.

Oxford Univ Pr (2017/6/14)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0198753896

2019年5月6日月曜日

Paul Luna "Typography: A Very Short Introduction" [活版印刷術:非常に短い入門]

目次:1.完全な文字 2.実用的な文字 3.言葉を提示すること 4.種類と配置 5.絵文字 6.感情か情報か? 7.活版印刷を可読化すること 8.ポジティブ活版印刷術

目次も分かりにくいが、最初は活字・字体について話しているが、少しずつ段組みやページレイアウト、さらに抽象的な一般的なデザイン論に発展していく。終盤になって心理学やバリアフリーみたいな話になると再び字体の話に戻ってくる。ほぼすべてラテンアルファベットの話で、日本文字の話はない。あと、かなりの部分は物理活版ではなく、画面上のフォントの話だったりする。

個人的な話として、わたしの字、特に英字は人に褒められることが多く、実は一時期カリグラフィーに凝っていたせいだが、その延長でフォントにも色々興味があり、その辺りの話は興味深かった。ただ中盤の一般的なデザイン論はわたしには退屈としか言いようがない。この本の致命的な問題点は、このテーマなのに図版が少なすぎる。まあ、ググればすぐに出てくる有名フォントばかりだが、手元にWeb環境がないと読むのはしんどい。ただ、このテーマで段組みなども実際に再現しているので、この本自体は電子版より紙で読んだほうがいいという…。

Only if more illustrations were presented....

Oxford Univ Pr (2019/2/1)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0199211296

2019年4月3日水曜日

Mark H. A. Davis "Mathematical Finance: A Very Short Introduction" [数理ファイナンス:非常に短い入門]

目次:1.貨幣と銀行業と金融市場 2.リスクの定量 3.オプション価格の古典理論 4.金利 5.信用リスク 6.ファンド管理 7.リスク管理 8.銀行危機と余波

表題通りの本だが、これまで読んだVSIの中で最も数式に頼った本だ。数学自体は高校生でも理解できると思うのだが、こういう話は経済/物理学特有の考え方を理解しないと本題に入る前に前提で引っかかる人が多いし、この本は入門として良さげだ。経済数学にありがちな話で現実を数学に合わせて単純化し過ぎて結果崩壊するというこもとあるが、それにしても一応の理屈を知っておく必要がある。将棋と同じで、現在主流の考え方が最適とは絶対に証明できないようなものの、ナッシュ均衡みたいなもので、ずれたらずれただけ損するというのが普通だ。現在の理論の誤りを突いて大儲けしようと企んでいるにしても、まず現在の考え方を理解する必要はありそうだ。

古典的な話については、昔読んだ「金融・証券のためのブラック・ショールズ微分方程式」が良かったので、志の高い人はそっちに進むべきだろう。しかし、世の中には賢い人がいくらでもいるので、そんな高度な裁定の機会は我々が発見する前に取り尽くされている。個人投資家は専門家に任せたほうがいいし、専門家が何をやっているのかの感じくらいはこの本でつかめる。それに、特に上場株式みたいなものは、既にその価格に専門家の知見が取り込まれていると考えていいのではないだろうか。

とは言え近頃はアルゴリズム取引の暴走だとか誤発注fat-finger syndromeみたいなこともあるので、素人に勝ち目がないわけでもない。ただそういう話は、この本では「将来の課題」ということで、扱われていない。扱われるようになったら、いよいよファイナンス市場は完全に数理的に管理されて、一切のチャンスが失われるのだろうか。とてもそうは思えないが…。

I have never read a VSI that so heavily relies on mathematical formulas. The style is very succinct and easy to follow. A good introduction to the field.

Oxford Univ Pr (2019/3/24)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0198787945

2019年2月21日木曜日

Elizabeth Hellmuth Margulis "The Psychology of Music: A Very Short Introduction" [音楽心理学:非常に短い入門]

目次:1.音楽心理学の技法と科学 2.音楽の生物学的起源 3.言語としての音楽 4.時間の中で聴くこと 5.音楽演奏の心理学 6.人間の音楽性 7.音楽への欲望 8.未来

音楽心理学のアウトライン。後から思うと、「まあそうでしょうね」みたいなことしか書いていなかった気もする。8章「未来」に面白そうな話がまとまっていた気がするが、つまり、これから面白くなる学問なんだろう。根本的な問題として、この学問は、音楽好きの心理学者がやるのか、微妙に挫折した音大の学生がやるのか。どっちにしろ、この本は入門書だ。これからは音楽ビッグデータを利用して、科学的にキャッチーな音楽を作れるのかもしれないとか。

全く個人的な事情だが、わたし自身は義務教育以上の音楽の教育も受けていない。しかし聴いた曲を直ちにリコーダーで再生できる程度の音感がある。別にそれほどレアな才能ではないかもしれないが、ザラにもいないだろう。しかも、音楽にほとんど興味がなく、意図的に音楽を聴くことはほぼない。携帯で音楽を聴いたりもしないし、一人の時間はだいたい無音で過ごしている。そして、わたしの知る限り、音感のない・音痴の人間のほうが音楽を良く楽しんでいる気がする。これがどういことなのか著者に聞きたいものだ。

An outline of the dicipline.

Oxford Univ Pr (2018/11/1)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0190640156

2019年2月7日木曜日

Maryvonne Pellay, Jean-Louis Chaussade "Les 100 mots de l'eau" [水の100語]

目次:1.物理学・化学・生物学 2.水資源 3.水の用途 4.水質 5.地政学と管理 6.水の値段 7.歴史と文化の観点

水に関するよもやまというか取り留めもない話。100 motsの通例で、豆知識リストと思っていいだろう。たとえば近頃は日本でも水道民営化が議題になっているが、そういう個別方面については、この本の知識では浅すぎるとはいえる。水道事業に関しては確かにフランスは先進国だが。水配達業も増えていることだし、水に興味のある人は多いのだろうけど、そういう人がこういう本を読むのかというと疑わしい。水に本当に興味があったら、水配達なんて頼むはずがないと思われ、しかし、今後、世界的に水資源の枯渇が問題になるのは見えている。幸いにして日本は水資源大国だが、ムダに水を輸入している国でもある。今のうちに準備しておいても良いとは思う。

Un bon livre à lire.

PRESSES UNIVERSITAIRES DE FRANCE (25 août 2012)
Langue : Français
ISBN-13: 978-2130595571

2019年1月31日木曜日

Pascal Gauchon, Jean-Marc Huissoud "Les 100 mots de la géopolitique" [地政学の100語]

地政学という概念自体は最近どんどん流行ってきている気はするし、フランス語とかで新聞を読む場合には、この本に書いてあることくらいは知っておいたほうが良い。まあ、わたし自身にとっては、それほど新しく学んだことがないが、フランス語の勉強という意味。この「100語」という体裁は、BOBO本では最高の効果を挙げたが、こういう風な感じで時事用語みたいなのを解説するのでも良いのかもしれない。

Ce n'était pas mal.

Presses Universitaires de France: 4e édition (10 mai 2017)
Langue : Français
ISBN-13: 978-2130792796

2019年1月22日火曜日

David Simonnet "Les 100 mots de l'entreprise" [企業の100語]

会社にまつわる100語ということで、この方面の語彙を回収するために読んでみたが、途中で用がなくなり、そうなってみると特段面白い本ではない。Que-sais je?らしい大量の修辞疑問文が記憶に残る以外は、わりと普通の話ばかりで、フランス特有の労働者の強さと会社法事情を別とすれば、普通に新聞を読んでいる人のレベルの知識ばかりだろう。それに、この類の話はすぐに古くなるということもある。あえておすすめもしないし、翻訳もされないだろう。

Pas très interessant.

Presses Universitaires de France - PUF (20 janvier 2016)
Langue : Français
ISBN-13: 978-2130619796

2019年1月20日日曜日

Thorstein Veblen "The Theory of the Leisure Class" [有閑階級の理論]

これは社会学の古典として必ず挙がる本だが、多分、先生方もそれほどプッシュせず、学生も読まないし、せいぜい就職試験とかで「ウェブレン‐有閑階級の理論‐誇示的消費」という連想だけ覚えているのが現実だろう。読んでみれば理由は明らかで、読みにくいとかムダにprovocativeというのは別としても、根拠不明の独断と偏見に満ち溢れていて、こんなのが社会学と思われては教育上問題がある。今の基準から言えばヴェーバーもデュルケムも酷いという話もあるが、これについては学問と言えるレベルではなく、せいぜいが文明批評というしかない。

ただまあ、それでも今のところまだ名著と呼ばれている理由も分からなくはない。たとえば、今の世で「品が良い」と言われるようなものは、要するにムダに使える閑暇か財力を表現するようなものであるというような主張がある。こういう断言は、根拠を示して正しいとか間違っているとかいうような命題ではなく、単に一つの見方の提示で、今の学界では排除されるのかもしれないが、しかし無意味な命題でもない。そして、現代の階級制度について冷笑的な分析を行っているが、マルクス主義的では全くない。

そういうことでは、今ならブルデューを読んでおけば上位互換の気もするし、わたしとしては、ボボの100語を強く推奨したい。あえてこの本を強く推奨しないが、こういう本を読んで引用して閑暇を誇示するのも一興かもしれない…。有名な本だし、読んで損したとは思わないし…。

A nice book to read to show off your abundant leisure.

Blurb (2019/1/9)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0464712701

2019年1月7日月曜日

Alistair MacLean "The Guns of Navarone" [ナヴァロンの砲]

第二次世界大戦中、イギリス軍の特殊部隊がギリシアの島に設置されているドイツ軍の要塞砲を破壊する物語。その筋では冒険小説の名作とされている。年末年始の休みに楽に読むのにちょうど良かった。

と言っても、わたしにとってはまず映画「ナヴァロンの要塞」の原作ということで読んでいる。映画は子供の頃テレビで、やはり正月に見たはずだが、記憶にあるのは三つのシーンしかない。多分最初のほうのナヴァロンの砲を撃つ時にドイツ兵が耳を両手でふさぐところと、最後の給弾装置で爆破装置が作動するところ、そしてドイツ軍に捕まったところでアンドレアが俺は関係ねえとか言って芝居をしてから反撃するところだ。この三つ目のシーンは、どう考えても小説より記憶の中の映画のシーンのほうが良い。主観を簡単に描写できるのが小説の利点ではあるが、ここではマロリーの主観を書くべきではなかった。

話自体は面白くてどんどん読めるのだが、色々疑問なフシがあり…。まず12インチの砲というのがそんなに巨大な気がしない。二門と言わずもっと設置できる気が。主人公たる特殊部隊の指揮官マロリーは世界トップのロッククライマーということで、山岳戦闘の描写がかなりあるが、多少登山に詳しければ、描写の薄みは感じる。全体に具体的にどういうことをやっているのかも分かりにくいところも所々あり、結局こういうのは映画のほうが向いているのだろう。そしてドイツ軍が間抜け過ぎる…というのは、話の都合上、仕方がないかもしれない。人が結構死ぬというか、言い訳しながらどんどん殺していくので、受け付けない人にはお勧めできない。チープというのは言い過ぎだが、少なくとも純文学ではない。

しかし、こうやってツッコんでいくのも本来は野暮なことだろう。難しく考えないで楽しければ良い。

It was a good reading for holiday seasons.

HarperCollins(2004/5/4)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0006172475

Richard Carlson "Don't Sweat the Small Stuff: And It's All Small Stuff" [細かいことにこだわるな:そして全部細かいことだ]

随分昔に読んだ本で、未だに本屋に置いてあるところを見ると、良い本なのだろう。最近は洋書をあまりリアル店舗で買わないが、神保町の三省堂で買った記憶がある。一項目ずつが短く、英語も易しいので英語学習には良いだろう。今見ると別にいいやと思うが、鬱が酷い人には気分転換に良いかも知れない。中身はHow to Stop Worrying and Start Livingとさして変わらないが、こっちのほうがはるかに読みやすい。なんかこの類の本は卒業してしまった感じもあり、どっちかというと若者向けだろうか。当時「車の運転はそんなイライラスするものなのか」と思った記憶がある。わたしは車を運転しないので分からない。通勤電車も今は随分空いている電車に乗っているし…。日本語訳も売れているようで、「小さなことにくよくよするな」のほうが良い翻訳タイトルだろう。中身的には「くよくよ」よりは「イライラ」のほうが多かった気がするが、"worry"と同様にアメリカ人はこの二つを区別しないのかもしれない。サンマーク出版ということもあるし、長距離鉄道に乗る時なんかにちょうどいいかもしれない。

Hodder Paperback (1998/2/5)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0340708019

2019年1月2日水曜日

Mike Goldsmith "Waves: A Very Short Introduction" [波動:非常に短い入門]

1.波の本質 2.水の波 3.音波 4.地震波 5.生物学的な波 6.電磁波 7.量子波 8.重力波

5章を除いて基本的に物理学の概説。正弦関数だのフーリエ解析だの屈折だの干渉だのというような数理的な説明は1章にまとめられているが、別に数式が解説されるわけでもなく、ポピュラーサイエンスの範疇と言っていい。わたし自身を基準にして言えば、2章の水たまりに風が吹くところからの説明は、流体力学を一通り勉強したくらいでは知っている人は少ないと思われ、なかなか感動的だ。34章についてはわたしは騒音振動の勉強をしているから詳しいが、そんな人も少ないだろう。それでも初耳な話が多い。5章は他の章と毛色が違い、蛇がどうやって進むかとか興味深い話が多かった。6章については電気通信や無線や放射線の勉強をしているので、やはり知らないことは少ないが、それでも面白い。78章はさんざんポピュラーサイエンスでこすられている内容。

知っていることも多いのに、とにかく読んでて楽しい本だった。これはもしやと思ったらやはり"Sound:Very Short Introduction"と同じ著者だった。わたしが音の勉強を始めるきっかけになった本だ。さしあたり去年は騒音振動の公害管理者試験に受かったが、この方向は今年もどんどん進めていく。

Very fascinating book.

Oxford Univ Pr (2019/2/1)
言語: 英語
ISBN-13: 978-0198803782